Side:アインス


『蝕鬼』の元を探し出すのが新たな任務だが、同時に残党狩りも行わなくてはならない……普通に考えたらかなりハードな事なん
だが……

「今更私達を如何こう出来ると思うな思うなよ、この牛野郎!!」

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』



ただいま、『安』の領域で、絶賛ゴズコンゴウをフルボッコ中だ。
ゴウエンマ以上のパワーを持ち、棍棒での攻撃をも行ってくる難敵だが――そうであっても、私の前に於いては、貴様如きは赤子
に等しい……だからもう、此処で朽ち果てろ!!



――キュゴォォォォォォォ……



「咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを貫く光となれ……貫け極光!スターライト……ブレイカアァァァァァ!!!!



――ドッガァァァァァァァァァァァァン!!!



そしてこの一撃で、ゴズコンゴウは爆発消滅!……存在その物を撃滅してやったさ。



「……まさか、『鬼』に同情する日が来るとは思わなかったぞ?」

「其れは、自分も同じ……」

「ま、良いんじゃねぇか?此れだけ強い奴が味方に居りゃあ、早々負けるこたぁねぇだろうからな。」



うん、まぁ少しやり過ぎたとは思ってるよ?すこ~~~しな。
だが、この戦いで『蝕鬼』の元を見つけ出す事は出来なかったか……まぁ、この広大な異界から、蝕鬼の元を見つけ出すと言うの
は正に九牛の一毛だからな?

焦らずに、そして急がずに地道に行くしかないな此れは。












討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務74
『残党狩り、北の真実、九葉の考え』











ゴズコンゴウをスターライトブレイカーでステーキにした後は、今度は『安』の侵域でアメノカガトリの討伐か……ステーキに焼き鳥だ
と、焼き肉が続くから、さてコイツは如何料理してやろうかな……



「相手は鳥型の『鬼』であるので、此処は唐揚げが最適かと考えますアインス。」

「唐揚げか~~……確かに唐揚げは美味しいなうん。
 だが、只の唐揚げと言うのも味気ないから、此処は少し手を加えて油淋鶏にでもしてみようか。」

「ゆーりんちー?何ですか其れは?」

「粉を付けて揚げた鳥肉に、香味野菜をたっぷり入れた酢醤油のタレを掛けた大陸の料理だよホロウ。」

「其れはとても美味しそうですね。期待しています。」

「……アインスもホロウも、もう少し緊張感を持ってくれないか?
 仮にも『鬼』との戦いなんだからな……」

「まぁ、そうは言ってもアインスが居れば大概の『鬼』には簡単に勝てちゃうから、緊張感を持てってのが無理かもしんないけど…」



ふ、別に緊張感が無い訳じゃないさ……寧ろこうして無防備な姿を曝していれば――相手の方から攻撃して来てくれるからな?
だから、其処を捉える!!



――ザクゥ!!



『!!?』

「無防備と見て回転体当たりを仕掛けて来たんだろうが、その程度の攻撃で私を如何にか出来ると思っているのか?
 第一に無駄話をしている様でも、常に周囲には気を配っているんだ、そんな攻撃を喰らう筈がないだろう……フン!!」



――ズバァ!!



アメノカガトリの回転体当たりを、左手の刀3本で突き刺す形でカウンターし、右手の刀3本で翼を切り落とす!!
だが、此れだけでは終わらん!刀を納刀して、そのまま今度は腕と足を使って、両方の翼を極める!そして絞め上げる!!

如何だ、完璧に極められては動く事も出来まい?――此の隙に切り刻め、桜花、初穂!そして撃ち抜けホロウ!!



「全く大型の『鬼』の巨体を関節技で押さえつけるとは……共に戦うたびに、君が味方で本当に良かったと思うよアインス。」

「ホントに頼りになるんだから♪……所で其れ、何て技?」



チキンウィングアームロックと言うプロレスの技だ。
チキンウィングとは鶏の翼の事だから、鳥型の『鬼』であるアメノカガトリを抑えるのにはピッタリだろう?……其れに、決めるだけじ
ゃなく――えい。



――ボキィ!!!



この様に、梃子の原理を応用して力を加えれば簡単に折る事が出来るしな?
そして、私が翼を折るのと同時に、桜花の斬心開放、初穂の鬼千切り、ホロウの擲弾射撃が炸裂して、アメノカガトリの両足と尾と
角を破壊したか。

角を破壊された事でアメノカガトリはスタン状態に……ならば、この間にトドメを刺す!

「深き闇に沈め!」

先ずはアッパーカットで打ち上げ、そして落ちて来る間に力を溜め、落ちて来たら……


――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!


上、中、下段にフリッカージャブの雨霰の猛連打だ!
1発1発の威力は大きくなくとも、塵も積もれば山となる!山が積もったらもうお終い!殴りに殴って100ヒット!一遍死んで来い!



――ドガァァァァァァン!!!



トドメは魔力を込めたアッパーと、魔力で操作した刀の一斉掃射だ。
刀の一斉掃射は私のオリジナルだが……ふふふ、矢張り『蛇ドリル』は決めると気持ちが良いな?前の世界で、『山崎竜二』は私
の持ちキャラだったしね。



「初穂、アインスの腕が何本にも見えたのは気のせいか?」

「気のせいじゃないわ桜花。アタシにもそう見えたから。」

「実に見事ですアインス。えくせれんとであると認めます。」

「お褒めに預かり光栄だな。」

この『蛇ドリル』でアメノカガトリも討伐完了だからね。――さて、里に戻るか。



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と言う訳で任務を終えて……帰還口ではなく、本部の正面玄関から帰って来てみたが如何だろう大和?こう言う帰還の仕方と言
うのも新鮮だろう?



「あぁ、新鮮だ。
 そして、新鮮であると同時にお前ならばと納得してしまうぞアインス――尤も、帰還したと言う事は任務は果たしたと言う事だから
 喜ばしいがな。」

「ふ、私を誰だと思っているんだ大和?
 幾多の世界を滅ぼして来た私にとって、『鬼』は多少手強くとも相手ではない――と言うか、『鬼』よりも、私と戦った小さき勇者の
 方が遥かに強かったからね。」

単純にパワーだけなら互角かも知れんが、彼女には『鬼』と違って不屈の闘士と信念があった……其れが、彼女の強さを底上げし
ていたのかも知れないけどね。
逆に言うなら、信念など無く、只人を襲うだけの『鬼』は其の力を十全に引き出す事は出来ないのかも知れんな。



「ふ、ならば頼もしい。
 引き続き、残党狩りを行いつつ、九葉の言っていた手掛かりを探せ。――北の『鬼』の元凶は、絶対に潰さねばならんからな。」

「あぁ、分かっているさ。」

北の『鬼』――蝕鬼の元凶とやらを放っておく事は出来ないからね。
取り敢えず禊で穢れを落としてから次の任務に……って、アレは……?



「……久しぶりね、秋水。」

「……三年ぶりになりますか、凛音さん。」

「全然顔を見せないから、死んだかと思ったわ。……相変わらず、見果てぬ夢を追っているのかしら?」

「えぇ、僕の命が続く限り、其れは変わりません。」

「やれやれ、馬鹿ね貴方も……」



凛音と秋水?
何だ、お前達は顔見知り――と言うか、結構気の知れた間柄だったのか?



「これは、任務ご苦労様ですアインスさん――如何しました、そんなに驚いた顔をされて?」

「驚くも何も、二人は知り合いだったのか?」

「そうね……『戦友』ってとこかしら?――私も秋水も、『北』の生き残りよ。
 聞いた事位あるでしょ?見捨てられた『北』の地の事を……」

「!!!」

見捨てられた『北』の地の――すまないが、もしよかったら詳しい話を聞かせてくれないか?



「詳しい話を聞きたい?……貴女も物好きね。――そうね、話してあげたら、秋水。」

「僕が?そうですね……では一通の『命令書』の話をしましょう。
 オオマガドキで最初の敵は、北の地の北端に出現したのは御存知ですか?――異形の塔を依代に出現した『鬼』が、その地に
 鬼門を開いたんです。
 其処から続々と『鬼』が現れ、付近の人里は次々と異界に呑まれていきました。
 時を同じくして、北の地の各里に、ある命令書が届けられたのです。」

「北の地の頭は、精鋭と、神垣ノ巫女を連れて霊山に集結せよ――確かそんな内容だったかしら?」



精鋭と神垣ノ巫女を?
其れは、言うなれば各里の主力を霊山に結集しろと言っているのと同じではないのか?



「……えぇ、その通りです。
 そして其れは、『鬼』が迫ってる事を知っていたら、決して承服しなかったであろう命令です――しかし、『鬼』の出現からまだ間が
 無く、状況に気付いている里は少なかったのです。
 北の地のお頭達は、何も知らず、まんまと霊山付近に呼び集められました。」

「私も、当時付き従っていたお頭と共に、霊山に下ったわ。」

「そして、手薄になった『北』は、鬼に食い破られた……」



何だと……!?
霊山は、意図して北の地を滅ぼしたと言うのか!?……外道どころの騒ぎじゃないぞ其れは!!――霊山は、一体人の命を何だ
と思ってるんだ!!



「その命令書を出したのが、九葉さんです。」

「どうやってかは分からないけど、九葉は敵の戦力を正確に把握していたようね。
 北の地を放棄して、防衛線を下げなければ、万が一にも勝機は無いと九葉は判断した――そこで、素知らぬ顔で命令書を出して
 戦力の中核を前線から遠ざけた……中つ国に戦力を集結して『鬼』を討つために。」

「……そして、僕達は『北』に取り残された――其処から先は、あまり楽しい話ではないので省きましょう。
 最終的に僕は、結界石の洞窟を通って、辛うじて中つ国付近まで脱出しました。
 逆に凛音さん達は、北を救おうとし、シラヌイの里の近くに陣を張っていました。」

「そこで、暦と、秋水を拾ったと言う訳。中々素敵な出会いだったわよ秋水。」



九葉が……大局を見た上での判断ならば正しいのかも知れんが、人の命を数で数えるようになったらお終いだぞ?
そんな事は、アイツほどの軍師ならば分かって良そうなものだが……若しかして、確実に勝つ事を求め続けた結果、犠牲を払う事
に慣れてしまってるのか九葉は?



「と言う訳でアインスさん、九葉さんは危険な方です――努々気を許さないよう、お気を付けください。」

「悪人には見えないが……警戒はしておこう。」

「アレだけ恨みを買っても、平然としてるのは大した胆力だけど……じゃ、私はそろそろ行くわ。またね、二人とも。」



あぁ、また任務でな。
しかし九葉……『血塗られた『鬼』』の異名を持ってるとは言え、まさか北の地の崩壊に直接関与していたとはな……少し、九葉に
話を聞いた方が居かも知れないな此れは。

と言う訳で、少し話があるんだが良いか九葉?



「……今更お前がどんな形で現れようと驚かんが……私に何か用か?」

「あぁ、単刀直入に聞く……お前、オオマガドキの時にどうやって情報を集めた?」

「ふむ……秋水にでも聞いたか?……余り私の周囲を嗅ぎ回らぬ事だ。
 ……私にも昔、優秀な部下達が居た。選りすぐりの諜報部隊がな。この地のありとあらゆる情報を、私に届けてくれたものだ。
 ……尤も、長い戦の中で、殆ど死んでしまったがな――残っているのは、もう一人だけだ。其れが、私の最後の切り札……
 ……覚えておけ、アインス。世界はある日、お前に選択を迫る。」



選択、だと?



「どんな選択をするかは知らん。
 だが、選択したならば、決して振り返るな――己を信じて進め……もう、用は済んだだろう?早く任務に戻れ。」



選択したならば振り返るな、か。
言われるまでもないさ九葉――選択するは己の意思なのだから、己の意思で選択したのならば振り返ってはならない……振り返
って悔んだら己の選択を否定する事になるからね。

その選択が何かは分からないが、今は先ず目の前の事を片付けるべきだな?――残党狩りと、蝕鬼の元凶……何方も残らずに
見つけ出して粉微塵にしてくれる!
ウタカタの守護の破壊神に逆らった事を悔いるが良い!――ふふふ……ふははは……は~っはっはっは!!!



「ねぇ桜花、アインスが怖い。」

「情け容赦ない高笑い……確かに怖いな?――アインスの場合、絵になるのも否定できんが。」



其処は突っ込むな。単純に八神庵の真似をしただけだからな。
其れは其れとして、残党狩りと蝕鬼の元凶探しは兎も角として、なはとは一体何処に行ってしまったのか……如何にも、嫌な予感
がしてならないな?

私の杞憂で済めば良いのだがね……












 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場



任務で受けた穢れを落とす為に禊をしましょう、そうしましょう。――で、何でいるんだ秋水?



「貴女が間違っただけでしょうアインスさん!?
 こう言っては何ですが、貴女は禊場の札の色を確認してますか?」

「札の色って何?」

「存在すら認識してなかった!?」



札の色があるなんて今初めて知った。
と言うか時間がどうのこうのじゃなくて、任務に出たら禊、任務に出る前も禊だからな?……そう言う訳で、仲良く禊をしようじゃな
いか秋水?



「如何言う訳か分かり兼ねますが……その、もう少し離れて下さい、目のやり場に困りますので。」

「なんだ、別に見ても構わんぞ?減るモノでもないしな。」

「もう、勘弁して下さい……」



飄々として掴み所が無い感じでも、お前も年頃の男の子だったんだな秋水。
まぁ、これ以上はやり過ぎのR-18になりかねんから自重しておこうか――しかし、如何にも私は我が主の影響を多大に受けた事
が否定できんな?
まぁ良い、禊によって穢れは浄化されたからな……次の任務もパーフェクト勝利間違いなしだ。