Side:アインス


どんな意図があったのかは知らんが、単騎で出撃するなど命知らずも良い所だぞホロウ!――私の様なチート無限のバグキャラ
ならば兎も角、大型の『鬼』を相手に1人で出撃するなど自殺行為だ!!

ホロウが出撃したのは『雅』の領域か。
ならば、那木と速鳥は私と共に来てくれ!――残ったモノは、全力で里の防衛を!何処から北の『鬼』が来るか分からんからな。



「ハッ!里は俺達に任せて、テメェはサッサとあの不思議女郎を連れ戻して来やがれ!
 アイツは色々と面倒な奴だが、もうウタカタの一部になっちまってるから、いねぇといねぇで落ち着かねぇんだ……そう言う訳で
 頼んだぜアインス?」

「ふふ、了解だ。」

矢張り富嶽は見た目と違って、只の無頼漢ではなく、仲間の事を誰よりも考えているみたいだ――だからこそ、ホロウを絶対に助
けろと言外に伝えてくれたからな。

勿論ホロウは絶対に連れ帰るから安心しろ富嶽。
何よりも、敵は私の逆鱗に触れる事をしてくれたんだ……協議の余地もなく有罪で滅殺は確定だけれどな!――精々、覚悟を
決めておくが良いさ!!

そして知れ、私がこの世にいる限り、『鬼』が繁栄する事は永久にないと言う事をな!!
さぁ、行くぞ!!


――バシュン!!












討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務72
『残忍なる翼~アンクウバッコ~』











して、毎度おなじみの瞬間移動で『雅』の領域に来たんだが、予想通り『侵域』と化していたか……加えて、ヤチギリの時以上に
瘴気が濃いな?……相手はそれ程の相手だと言う事か。
そして今度のスタート地点は階段の上から……如何して『雅』の侵域だけスタート地点がこうも妙なのか……



「参りましょう。急ぎホロウ様を助けなくては。」

「無事でいてくれ、我が師よ。」

「安心しろ速鳥、ホロウの気配は感じているからまだ無事な筈だ――とは言え、急ぐに越した事は無いか……と言う訳で、失礼す
 るぞ那木。」


――ヒョイ


「なななな、アインス様!?なぜ抱きかかえるのでしょうか!?」



何故ってそれはだなぁ?こうして、階段を、一気に、飛び降りる為にだよ!!!
走って降りても良いが、那木は服的に階段を駆け下りるのは向いてないから、こっちの方が断然早い。速鳥は忍者だから、此れ
位の事は朝飯前だろうしね。



「ですがその……重かったのでは?」

「……大型の『鬼』を投げ飛ばせるんだが何か?」

「そうでございました……」

「矢張り隊長は凄まじい……」



隊長だからな。
さて、この赤い鳥居の向こうには一体どんな『鬼』が居るのやら――


――バサ!バサバサ!!


『ギョアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』



此れは、まるで蝙蝠の様な『鬼』だな?――物見によって付けられた名前は『アンクウバッコ』だったか?
蝙蝠となると、素早い動きと、超音波に注意だが、吸血行動をしてくるかもしれないから其れにも注意だな……あの巨体に血を吸
われたら、人の血液などあっと言う間に枯渇してしまうだろうからね。

「無事かホロウ!!」

「貴女はアインス。其れに那木、速鳥。
 如何したのですか、こんな所まで。」

「弟子として助けに来た。」

「私を助けに?其れは一体何の為に?」



仲間を助けるのに理由が必要か?――理由など必要ない!お前が私達の大切な仲間だから助ける、強いて理由を上げるとする
ならそんな所だ。
如何して1人で出撃したのかとか、言いたい事は色々有るが、其れは里に戻ってからだ……先ずは『鬼』退治だ!!



「了解です。最優先指令と認識しています。」



ならば良い。
さてと、此のメンバーだと、私と速鳥がトップ、那木とホロウがバック――あ~~、私と速鳥が前衛で、ホロウと那木が後衛での援
護が最適だな。


――ジャキン!!


さて、覚悟して貰うぞ蝙蝠野郎!!



『カァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』



っと、先ずは巨体を生かしての踏みつぶし攻撃か……矢張り蝙蝠の様な見た目だけあって、巨体であっても素早いな?一足飛び
で10m以上の距離を詰めて来るとは思わなかったよ。
――尤も、その巨大さ故に軌道が見え見えだったので、避けるのに難は無かったがな。

っと、今度はすかさず翼を振り回してのラリアットか?
真面に喰らったらモノノフであっても、当たり所によっては即死だろうが……えい。


――サクッ!


相手の方が腕を突き出してくれるなら、其処に刀を差し出しておけば自動的に突き刺さる訳だ――とは言え、此れは私だから出
来る芸当なので、良識あるモノノフは真似しちゃダメだぞ。



「では、良識のないモノノフならば真似しても良いと言う事ですね?
 記憶がないので良識に欠けていると認めます。なので、良識に欠けたゼロ距離射撃です。」



って、ノリが良いのか何なのか、トンデモない事をしてくれたなホロウ!?
銃弾の威力は、距離に反比例して低くなるから、ゼロ距離が最も威力があるとは言え、普通はやらないぞそんな事?……あ、あ
の子が私にかましてくれた一撃はゼロ距離だったか……
だがまぁ、効果はあったみたいだな。
アレだけの大口径の銃での一撃をゼロ距離で、其れも榴弾を喰らったら如何に大型の『鬼』とて堪ったモノではないだろうさ。

実際に、ホロウがゼロ距離射撃を喰らわせた足は、一撃で部位破壊されてしまったからね
そして足を部位破壊すれば転ぶから……今の内に斬って斬って斬りまくれ速鳥!!那木とホロウは、部位の鬼祓いを頼むぞ!



「御意に。」

「お任せ下さい。」

「了解しました。」



ダウンしているアンクウバッコを斬って斬って斬りまくり、残った足も破壊して、翼も尾も破壊して、角を破壊して丸裸だ!
とは言っても、内部生命力は残っているから、立つ事も出来るし、飛ぶ事も可能だがな。



『キャオアァァァァァァァァァァ!!』

「マガツヒになって、回転ラリアット&雷球攻撃か?……悪くないコンビネーションだが、モーションが大きすぎる!!」

回転ラリアットにはカウンターで刀を突き刺し、雷球は蹴り飛ばすなり切り裂くなりしてやったら、今度は飛びあがってヒップドロップ
を落として来たが……其れで潰せると思うなよ、私の事を!!

ふん!!



――ガシィィィィィィ!!



「流石、見事なきゃっちであると認めます。」

「おぉっと、此れで驚いてくれるなよ?
 本番は此処からなんだからね!!」

キャッチしたアンクウバッコを上空に放り投げ、其れを追って、追い抜いたら回し蹴りで吹き飛ばし、追撃で六爪流で連続斬り!!
此れだけでも大ダメージだろうが、其処から更に身体に刀を突きさした上で、足を掴んで急降下し、其のまま地面にダイレクトアタ
ック!!

魔法で刀を回収したら、バック中で距離を取り……喰らえ、魔貫光殺砲!!


――ズドォォォォォォォォォォォォン!!!


クリーンヒットだな。
並の大型『鬼』ならば、これで完全KOなんだが……『北』の新型『鬼』では、そう簡単には行かないのだろうな――尤も、此れ位
でやられてしまっては拍子抜けだがね。



『グガ……ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』



ふ、今の攻撃を受けてタマハミになったか?
だが、その時を待っていた!!速鳥!!



「逃しはせぬ!不動金縛り!



――バリィィィ!!



トラップ発動ってな。
不動金縛りは、例え相手が大型の『鬼』であっても、その動きを完全に束縛する――時間にしては10秒にも満たないが、戦いの
中で、相手の動きが確実に5秒以上止まるのなら充分だ。

其れだけの時間があれば、相手を絶命させるのは容易だからな!!
那木、ホロウ!!



「好機でございます。」

「ブチかまします!!」



先ずは那木が専心、ホロウが榴弾射撃でダメージを与え、



「覚悟を……」


速鳥が速駆けの連撃から跳躍攻撃に繋いで、空中連撃からの飛燕――此れだけでも充分なダメージが入った筈だが、矢張りト
ドメは確り刺しておかねばだ。
そう言う訳で……貴様の下賤な遊びは終わりだ!泣け、叫べ、そして……死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!


――ババババババババ!ドガァァァァァァァァァァン!!!!


「ウタカタを落とす心算だったのだろうが、ホロウに見つかったの運の尽きだったな。
 見つからなければホロウが単騎出撃する事も無かったし、そうなれば私達が出撃する事も無かったからね……御愁傷様としか
 言えないが、取り敢えずそのまま死ね。」

『ギャオアァァァァァァァァ!!!!』



ヤチギリよりは強かったが、其れでも私の敵ではなかった様だなアンクウバッコよ――精々、ウタカタに牙を剥いた事を後悔しな
がら地獄に落ちるが良いさ。



「自己の存在価値に付いて、問い質す必要を認めます……私は一体、何の為に戦うのでしょうか?」

「生憎と、その問いの答えは持ち合わせていないな。」

兎に角、任務は達成したから、ウタカタに戻るぞ?――詳しい話は其れからだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



で、毎度お馴染み瞬間移動でウタカタに戻って来たんだが……



「……ご迷惑をおかけしました。」



戻って来たホロウの第一声が謝罪と言うのは、悪いが驚いたな……こう言っては何だが、ホロウは罪悪感とは縁遠いと思い込ん
で居たからね。
まぁ、お前が無事だったから良いさ――だがホロウ、お前は何故1人で異界に行ったんだ?



「或は、記憶が戻る手掛かりがないかと、異界を彷徨っていました。」

「記憶を?」

「記憶が無くては、私は何者でもありません。存在理由を認められません。
 ――私は何の為に戦うのか、其れが分からず、彷徨い歩いていました。」

「やれやれ、人騒がせな……」

「……皆さんは、何の為に戦うのですか?」


って、理由を聞いていたら逆に難しい質問が来たな此れは!?
何の為に戦うか……私の場合は、そうだな――過去の贖罪や、破壊の力を人々の為に使いたいとか理由はあるが、一番の理由
はウタカタが好きだからだ。



「『好き』……?『好き』ですか……」

「そうだが、おかしかったか?」

「…………成程、そう言う事ですか。私が美味しい物が『好き』なのと、同じと言う事ですね?」



――ドンガラガッシャーン!!!



こ、此処でボケ倒してくるとは流石だなホロウ?
と言うか、カウンターで途轍もないボケをかますな!!私所か大和に凛音、挙げ句の果てには九葉までずっこけたぞ!!九葉が
ずっこけるってドレだけだお前は!!
まぁ、あながち大間違いでは無いのが更に性質が悪いがな!!



「桜花は橘花が、那木は星々が、速鳥は天狐が『好き』……夫々の『好き』を守る為に戦う……成程、単純な事でした。
 私は私の『好き』を守る為に、戦っていたのですね。」

「……ま、良いんじゃないか?そう言うのは人夫々だ。」



だが確かに息吹の言う通り、其れは人夫々だからな……お前が戦う意味を見出せただけでも僥倖と言う所だよ。



「……ありがとうアインス。私は、大切な欠片を取り戻せた気がします。」

「なら良かったよ……自分の道を見つけたんだな?」

「ならば此れからは、私が記憶の回復に助力致します――この世界の歴史やら何やら、色々と聞いてくださいホロウ様。」

「ありがとう那木、其れでは早速……」

「いや、ちょっと待て……」



だが此処で那木のエンドレス説明が始まりそうだったので、全員で那木を止めた――中々応じてくれなかったので、チェーンバイ
ンドで拘束して、那木の首を縦に振らせた私は絶対に悪くないからな!!








――――――








Side:九葉


やれやれ、マッタク持って呆れたモノだなウタカタのモノノフは……否、アインスは。
アレだけの力があれば或いは――何にしてもそろそろ頃合いか……



『キュイ~……』

「ふ、悪いが少し利用させて貰うぞ。」

この選択が如何転ぶか……まぁ、お前ならば最終的に如何にかしてしまうのだろうが、精々見させてもらうぞアインスよ……












 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場