Side:アインス
暦の密命を果たす為に百鬼隊に潜り込む事になったが、さて如何した物だろうね?……相馬は、あれで中々頭が切れるだろう
から、下手に事を進めては疑われてジ・エンドだからな?
取り敢えず、普通に話しかけてみるか――相馬。
「お前か。如何した、俺に何か用か?」
「用と言うか、お前が率いる参番隊に、体験と言う形で入りたいんだが、駄目か?」
「参番隊に入りたい?……如何言う風の吹き回しだ?」
「戦い方を学びたいと言うのは如何だ?……それとも、相馬に付いて行きたいと言った方が良いかな?」
「ハハハ!余程俺に惚れ込んだと見える!……とでも言うと思ったか?
あからさまに胡散臭いな?――お前、また何か面倒事を始める気だな?……生憎『百鬼隊』に正式に入るには、霊山の許可
がいる。
……だがまぁ、勝手に付いて来る分には構わん――目的は知らんが、断る理由もないからな。」
其れは有り難いな。
――こう言っては何だが、私の力は百鬼隊にも大いに役に立つと思うからね。
「確かにな。……ならば、暫く一緒に来い。隊の連中にも紹介してやろう。」
「あぁ、頼むよ相馬。」
しかし、私が何かをしようとしていると見抜きながらも、こうして己の部隊に招き入れるとは……こう言っては何だが、暦の読みは
外れの可能性が高い気がするぞ?
相馬が間者であったら、こんな事はしない筈だ……尤も、これも演技の可能性がある訳だが……先ずは其れを見極めなくては
だな。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務61
『百鬼隊に張り付け!相馬を探れ!』
で、現在百鬼隊の参番隊の連中と顔合わせだな――尤も、連中の装備は、顔を覆っているから表情は読めないがな。
と言うか、なんで顔を覆うのか……相馬みたいに角を付けるだけじゃ駄目だったのだろうか?……百鬼隊には謎が多いみたい
だな……
「ウタカタの隊長だ。これからしばらく行動を共にする。」
「よろしくお願いします、隊長殿。」
「あぁ、此方こそ宜しく頼むよ――百鬼隊の精鋭、参番隊の諸君。」
「私は参番隊の副官を務めています。ご用命が有れば、私にお申し付けください。」
「コイツは可成りの手練れだ。適当に技を盗んでおけ。」
確かに、彼女は可成りの修羅場を潜り抜けて居るみたいだな?……実力は、桜花に勝るとも劣らずと言う所か?……流石、霊
山直属の部隊の副官だけはあるな。
だが、盗む技など有るのだろうか?……六爪流は私しか使わないし、魔法も私だけ……タマフリの効果的な使い方でも学ぶとし
ておくか。――全てのタマフリを使えるとは言え、何処でどのタマフリを使うか迷う事も有るからね。
「ものはついでだ。お前に参番隊の隊則を教えておく。」
「隊則?」
「任務に出る前は、隊則を復唱するのが『百鬼隊』の決まりだ。――俺と一緒に来るんだろ?なら覚えておけ。」
「了解した。」
が、何だろう……物凄く嫌な予感がするな?言うなれば、ヴィータが何処かに悪戯を仕掛けていたとか、シャマルがキッチンに
入って行った時のような嫌な予感が……
「一、『鬼』はぶっ殺せ!
一、ミタマは使い倒せ!
一、仲間は守れ!
一、誰も死ぬな!
一、死んでも生きて帰れ!――以上、参番隊・隊則だ。」
予感的中か此れは!!
いや、言わんとしてる事は良く分かるし、3~5番目はとっても大事な事だ。5番目の隊則は可成り矛盾した言い回しだがな!?
だがな、敢えて言わせて貰うぞ相馬……幾ら何でも適当過ぎる!!というか、言い回しが頭悪過ぎだろ此れは!!
参番隊は何か?考えるよりも先に身体が動く脳筋の集団なのか!?一体、誰が此の適当な隊則を考えたんだ!!
「なに、適当すぎる?
ハハハ、悪く思うなよ。オオマガドキまでは、参番隊と言えば阿呆の集まりでな。
阿呆は全員死んだが、こうして間抜けな隊則だけは生きている――形見のようなものだ。そう、疎かにも出来ん。」
「阿呆の集団から生まれた隊則だが、戦友の形見と言う訳か……其れならば、確かに疎かにも、おいそれと変える事も出来な
いか……うん、分かった。」
「隊則に背いた奴は除名だ。精々気をつけろ。」
「まぁ、背く事は無いだろうから其れは気にしてないがね。」
「さて、説明も此処までだ。そろそろ任務に出るぞ?参番隊・隊則、復唱!」
……あぁ、任務に出る前だから復唱するのか?
まぁ、これも役目だから仕方ないので、参番隊と一緒に隊則を復唱したが、実際に声に出してみると、意外と気分が乗るモノだ。
士気を上げるときなんかに、意外と使えるかも知れないな此れは。
さて、復唱した後で任務なんだが……まぁ、宜しく頼むよ副官殿。
行き成りで悪いんだが、参番隊は現在どんな任務を行っているんだ?
「よろしくお願いします、アインス殿。
参番隊では現在、北の『鬼』の捜索、討伐任務を展開中です。必要に応じて、ウタカタの方々にも応援を要請しています。
今後は、御同行頂けると言う事で、非常にありがたく思います。――どうか、隊長をお支え下さい。」
「うん、勿論その心算だ。」
「参番隊は、一度壊滅した部隊……現在、相馬隊長の下で再建中です。
古兵は去り、後に残るは、まだ経験の浅い者ばかり――是非、貴女の戦いぶりを学ばせてください。」
私の戦いから学べる物があるなら好きなだけ盗めばいいさ――六爪流や魔法は無理でも、一刀流の居合や、二刀流での連撃
に、無手の格闘から盗めるモノはあるかも知れないからね。
さて、行くか!!
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で、先ずは『雅』の領域でのキンキ5体の討伐任務だったんだが、極めて楽勝だったな?
目標であるキンキだけでなく、タケイクサも出て来たが、最早あのくらいの『鬼』では私の敵ではない……まぁ、流石にタケイクサ
をぶん回した上で放り投げてキンキを叩きのめした時には、同行した参番隊の連中の目が点になっていたけどね。
こう言っては何だが、戦闘其の物よりも、あの広い領域からキンキを5体探す方に骨が折れたよ――ぶっちゃけ、戦闘時間より
も探索時間の方が長い位だったからね。
取り敢えず無事に戻って来たぞ。
「ご帰還をお待ちしておりました、隊長。アインス殿。」
「出迎えご苦労。捜索の状況は、どうなってる?」
「はっ。北の『鬼』については、新たな痕跡を発見。
現在捜索隊を出して追わせています――近い内に捕捉できるかと。
件の捜索対象に関しては、現在のところ手掛かりはありません。」
「そうか、ではまず北の『鬼』を優先しろ。……お前は少し休め、働き詰めだろう。」
「了解しました。……隊長も御自愛ください。」
……此れは、何と言うか少し驚いたな?
相馬は、己を英雄と言い、どんな時でも自信満々だと思っていたのだが、参番隊の隊員の前では其れだけではないようだね。
「どうした、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているぞ?」
「いや、今のお前は隊長っぽいと思ってね。」
「まぁ、隊長だからな。
此れが参番隊の日常だ――ついて来たところで、目新しいものはない。
何を知りたいのか分からんが、大した物は出て来んぞ。
まぁ、こっちは戦力が増えて大助かりだ。気が済むまで見聞していけ。」
「無論、そうさせて貰うさ。」
「あれ?こんにちは!相馬さん、アインスさん!」
この声は、木綿か?……ウタカタのアイドルに出迎えて頂けるとは光栄だ。
して、その手に持って居るのは何だ?
「ちょうど今、おはぎを作っていたんです。良かったら、お一つ如何ですか?。」
「……其れは有り難い。是非一つ頂こう。」
「どうぞ!あ、でもあと一つしかない……」
おはぎと聞いて期待したが、粗方配り終えてしまった後だったのか……此処に居るのが私だけならば、有り難く頂戴しているん
だが、相馬が居るとそうは行かんだろうな。
あぁ、皆まで言うな相馬。お前の言いたい事は分かってる――今回はお前に譲るとするよ。
「ふ、矢張りお前は分かって居るな。」
「……そのおはぎ、ちょっと待ったぁ!!」
って、平和的に解決しようとしてた所で、なんで出て来るかな息吹!?
正直言って、お前と相馬が絡むと碌な事が起きないから、出来れば大人しくしていてほしかったんだが……こうなってしまっては
諦めるより他ないな。
「……何だお前は。あと一歩近付いたら、素っ首刎ねるぞ。」
「……随分なご挨拶で……
しかし、俺にも意地って奴があってな……そのおはぎ、アンタに渡す訳には行かねぇ。」
馬鹿かお前は?そんな意地など捨てるか、或いは犬に喰わせてしまえ!!
「……何?」
そしてお前も本気で反応するな相馬!!
「そのおはぎを貰うのは、此の俺だ!」
「え、えぇ!?」
「困惑するその気持ち、良く分かるぞ木綿……」
「ハハハハ!……ふざけるな、此のおはぎは俺のものだ。」
「……なら、勝負するしかないな。」
「ほう……望むところだ。どこからでもかかってこい。」
「おいおい、モノノフ同士の切った張ったは御法度だぜ?……ここは一つ、ジャンケンで決めよう。」
モノノフ同士の切った張ったが御法度だと言うのなら余計な事を言うな息吹!お前が、変な横槍を入れなければ、私が相馬に
譲る形で平和的に解決したのだからな!!
まぁ、ジャンケンで決めると言うのならば悪くはないがな……そう言えば、我が主の作ったおかずを巡って、将とヴィータは良くジ
ャンケン対決をしていたな。
「ジャンケンだ?……まぁいい、受けて立ってやる。」
「そう来ないとな。さぁ、いざ尋常に勝負だ!」
こうなった以上は仕方ないな……決着が付くまでとことんジャンケンで勝負すると良いさ。但し、1回勝負でな。
「……何の騒ぎだ、これは?」
「桜花か……木綿のおはぎを巡って、息吹と相馬がジャンケン対決だ。どうやら、残った1個を分け合うと言う考えは、コイツ等に
は無いらしい。」
「お、お二人とも!またいっぱい作りますから……!」
「木綿ちゃん……男には、退けない勝負って奴があるのさ。」
「さっさと始めるぞ。どうせ勝つのは俺だ。」
「おいおい、俺はウタカタのジャンケン王と呼ばれる男だぜ?」
初めて聞いたぞ息吹……と言うか、息吹も相馬も、モノノフのプライドを、今この時だけは完全にどぶに捨てているな……
「……馬鹿が集まると碌な事にならねぇ。」
「至言だな富嶽。」
本気で富嶽はウタカタ一の常識人なのかも知れないな……言動は粗野で粗暴だが、口から出てくる言葉はとても的確なモノが
多いからね。
で、始まったジャンケン対決は、4度の相子の果てに息吹が勝利したか……少々後出し感がしたが。
「あっはははは、大勝利!」
「貴様……後出ししたな?卑怯だぞ!」
「勝てば官軍てね。」
「ふざけるな。貴様の失格で俺の勝ちだ。」
「……何の騒ぎだこれは?」
良い所に来てくれたな大和。少々収拾が付かなくなりかけていたんだ。
「あ、お父さん、じゃなかった、お頭!おはぎを作ったんですが……」
「ほう……?美味そうだな。どれ、一つ貰おうか。」
「あ…………」
って、残ってた最後のおはぎを、何のためらいもなく食すとは、大和恐るべし――此れで、息吹と相馬の阿呆な争いは、完全に
無駄になった訳だ……御愁傷様だな
「うむ、美味いな。」
「……御愁傷さん。」
「お…………」
「お……?」
「俺のおはぎがぁ!!」
「アンタのじゃねぇ!!」
突っ込む所はそこか相馬!!そして、お前の物でもないぞ息吹!!!
オオマガドキ以前は、参番隊は阿呆の集まりだと言っていたが、その筆頭はお前だったんじゃないだろうな相馬?……とっても
失礼かもしれないが、今のお前を見ているとそう思ってしまうよ。
「やれやれ……揺さぶりをかけろとは言ったが、おはぎを奪えとは言っていないぞ、息吹……」
「……今のは相馬が間者かどうかを探る為の揺さぶりだったのか……」
だとしたら人選ミスとしか言いようがないんだが、今のを見る限り、相馬が間者である可能性は可成り低いと思うんだが、そうな
ると何が目的で里から居なくなるんだ?
先程副官と話していた『件の事』と関係があるのだろうか?……此れは、もう少しよく探ってみる必要がありそうだな。
To Be Continued…
おまけ:本日の禊場
任務の後の禊は基本だ。『鬼』の瘴気で穢れた身体を清めておかねば、どんな悪い事が起きるか分からないからね。
「そうですね、穢れはちゃんと落としてくださいアインスさん。
幾らアインスさんが規格外に強いって言っても、穢れが溜まったら、流石に大変だと思いますから。」
「うん、分かって居るよ木綿――尤も、禊よりもお前のマッサージの方が穢れが落ちる気がするがな~~」
あ~~……そこそこ、その肩のところ。どうしても肩が凝るのは避けられないから、此のマッサージは有り難い。――此れだけの
腕が有れば、私が元いた世界で柔道整復師の資格を取る事が出来たかもしれないな木綿は。
しかし、何だってこんなに肩が凝るのか……
「六爪流と……その胸部装甲のせいだと思います。」
「寧ろ比重は、胸部装甲の方が大きいか?」
「比率にして7:3で胸部装甲です。」
矢張りか。
初穂なんかは『羨ましい』と言っていたが、大きいのは大きいので問題だな……なんて事を言ったら、初穂は烈火のごとく怒るだ
ろうけれどね。
取り敢えず、木綿のマッサージはよく効いたし、禊も気持ちよかった。
次の任務も、ベストコンディションで臨めそうだな。
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