Side:梓


ホロウが助けに来てくれて、ホロウを追って来たウロカバネを撃破した訳だが……如何やら、私達に休む暇はない様だ――大型
の『鬼』が此処を崩そうとしているようだからね。
何がドレだけ居るかは知らんが、総攻撃を受けたら長くは持たん……打って出るしか道はないか。



「行きましょう、梓。勝利しか、状況を打破する手はありません。――里に帰ったら、お腹いっぱい食べましょう。」

「……状況打破の手は同意するが、里に帰ったら腹一杯と言うのは違うと思うぞホロウ?……否、私も暦も腹一杯食べたい気分
 ではあるがな?」

「流石に、先輩が用意してくれた食料だけでは、限度があったからな……」



なので、ウタカタに帰る為にも、この洞窟を崩そうとしている『鬼』を叩きのめす!!
序に、其れを呼び寄せたであろうオラビもぶっ倒す!!……私に一撃を加えたオラビを倒せば、私の不具合もなくなって魔法を使
う事が出来るようになるだろうからね……取り敢えず、現れた『鬼』は1匹残らず滅殺の方向で行こう。

異論は?



「いえ、有りません。ブチかましましょう。」

「行こう、先輩!!」



反対意見が無いのならば、突っ込むだけだな……行くぞ、ウタカタに帰る為に!!――道を開けて貰うぞ『鬼』達よ!!











討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務57
『仲間達の到着、鳥と蛇を滅せよ!』











と言う訳で外に出たのだが……洞窟を崩そうとしていたのはコイツだったか……確かイテナミと言ったかな?
蛇龍の身体と強大な爪を備えた、『死』の氷姫……相手にとって不足はない!
貴様を呼び寄せた、オラビ諸共葬ってやる!!



「一戦して勝利するしか、状況を打破する方法はありません、勝利するのみです。」

「無論、勝利以外には有り得んさ!!」

「先輩、ホロウ殿……貴女の背中、私がお守りする!!」



故に、貴様は此処で我等が帰還する為のコストとなって貰おうか?――我が六爪流が、貴様の蛇腹を切り裂いてくれる!!



『ギシャァァァァァァァァァァァァァ!!』

「見た目とは違い、聞くに堪えん声だな?……尤も、貴様が次のその声をあげるのは、断末魔の瞬間だがな。」

精々散るが良い――氷の大地に、緋色の華を咲かせた上でな!!


――ガキィィィン!!


お前の巨大な爪の攻撃は、相当に強いのだろうが、私もまた巨大な爪を装備しているのと同じ状態だから、其れを捌くのは容易
だぞ?
刀1本では、少々厳しいかも知れないが、片手につき3本、両手で6本の刀ならばお前の力を分散させるのも楽だしな。
更に、こうして手首に捻りを加えると……



『!?』

「案外、簡単に投げる事が出来たりするしな?」

「いや、そんな事が出来るのは先輩だけだと思うが……」

「流石は梓、見事なモノです。
 そして、此れは好機であると認めます。ガンガン攻めましょう、そうしましょう。」



富嶽なら、渾身使って攻撃力を上げれば大型の『鬼』を投げる位は出来そうだがなぁ?
兎に角、ダウンを奪えばチャンスタイムだ!暦と共に虚空ノ顎でダメージを与えながら、更に破敵ノ法を発動し、渾身、鎧割、軍神
招来を発動した上で、六爪流での滅多切りだ!!



「お命頂戴する!」

「くたばりやがれです。」



暦も繚乱で攻撃し、ホロウは榴弾射撃でダメージを……与えるのは良いが、大量の榴弾を投擲して誘爆を誘うって言うのは如何
なんだ?
対『鬼』用の榴弾はモノノフには効果がない故、近くで爆発しても平気だが……若しかしなくても、さっきのウロカバネ戦での榴弾
喰わしがヒントになったのかな?……まぁ、効果はあるようだから問題はないか。



『シャァァァァァァァァァァァァァァ!!』



とは言っても、そう簡単に倒されてはくれないか。
猛攻撃で、腕と羽根みたいのを部位破壊してやったが、マガツヒ状態となって反撃して来たな?……此れは、絶対零度のブレス
攻撃と言った所か……
ミタマの力の一つである『氷結無効』を装備しているから凍る事は無いが、流石にちょっと寒いな?――が、闇の書の闇を海面諸
共凍り付かせた、若き執務官の氷結攻撃と比べれば、此れはクーラーの風みたいな物だな。私にとってはだが。
とは言え、あまり時間を掛けるのも面倒だ……私は兎も角、暦は病み上がりだからな――角を折ってスタンさせて、一気に勝負を
決めるとするか!

「暦、肩を借りるぞ!」

「先輩?……のわ!?」



暦の肩を踏み台にしての……喰らえ、シャイニングウィザード!



――バキィ!!



『ガァァァァァァァァ!!』



見事に角を蹴り折ってやったぞ!角は『鬼』の最大の弱点だから、折られると必ずスタンするからね……此処がチャンスだ!
喰らえ、六爪流奥義、八稚女!泣け、叫べ、もがけ苦しめ、そして……死ね!!


――ギュイィィィィィン!!



と、今ので危機的状況に陥ったのか、タマハミとなったか!
身体が大きく前につんのめった形になり、角だった部分がまるで牙……そうか、其れがお前の本当の姿と言う訳だな?通常状態
の女性の顔と体は、擬態だったと言う訳か。



「タマハミか……しかし、先輩の攻撃をアレだけ受けてまだ生きているとは、何と言う頑丈な……」

「ですが、タマハミ状態になったのならば、それは『鬼』も追い詰められている証拠です。此のまま一気に倒してしまいましょう。」

「そうだな、後はゴリ押しして勝てるだろうし――」


『ピギャァァァァァァァァァァァ!!』


「「「!!!」」」


此の鳴き声は、オラビ!
何処に雲隠れしていると思ったが、イテナミの危機を見て加勢に来たか?……丁度いい、お前も一緒に葬ってやる!!丁度、鳥
の唐揚げを食べたいと思っていた所だから――


――ドクン


「が!?……な、何だこれは?」

紋様が疼く?……まさか、オラビが近くに来た事で、奴から受けた呪いが活性化していると言うのか?……この状況で、こんな事
が起こるなんて……!!



「上空より接近する『鬼』を確認。警戒してください、梓、暦。」

「く……又しても!先輩、上だ!!」

『ギャァァァァァァァ!!!』


――ドガァァァァ!!


がはっ!……く、如何に頑丈な身体とは言え、アレだけの質量を持つ相手からの急降下攻撃を真面に喰らうと、結構キツイな?
とは言え、今の一撃で紋様の疼きは逆に落ち着いたが……打ち所が悪かったのか、少しふらつくぞ……



「これ以上はやらせません。」

「先輩は、私が護る!!」



暦、ホロウ!ダメだ、逃げろ!!
そいつの翼の一撃は、可成りヤバそうだ……流転で受け流しきれるかどうか分からないぞ!病み上がりならば尚更だ!!



――ガキィィィン!



って、オラビの攻撃が止まっただと?……如何して……



「ったく、世話が焼けるぜ……よう、元気だったか、テメェ等?」



富嶽!……来てくれたのか!!



――ドドドドド!!



更に此れは、弓の専心?と言う事は、那木も来ているんだな!!


「今です、息吹様!!」

「はいよ……喰らいな!!」


息吹まで!!
鬼千切りで、オラビの翼を消し飛ばすとは、中々派手な登場をしてくれるじゃないか!……いや、富嶽と那木と息吹だけじゃない。



「生きていてくれると信じていたぞ、梓!暦も、よく頑張ってくれたな!」

「貴殿達を救うため、自分は飛ぼう。」

「思ってたよりも元気そうで、安心したわよ梓、暦!」



桜花、速鳥、初穂……ウタカタのモノノフ全員が来てくれたと言うのか……私は、よい仲間に恵まれたな本当に。



「如何やら間に合ったようだな?
 俺の可愛い後輩を、よくもいたぶってくれたものだな……覚悟しろ、一匹残らず地獄行きだ!!」



相馬まで!……ふふ……はははははは!!
まさか、相馬まで来るとは思って居なかったが、此れだけの戦力が揃っているのならば負ける事など有り得ん……先程は不覚を
取ったが、貴様等の反撃は此処までだ!



「鳥野郎の相手は俺等がやる!テメェ等は、その蛇野郎をキッチリ仕留めな!」

「そう言う事!きっちりやるわよ!!」

「本当に来てくれた……助けが……!」

「梓、暦、よく生きていてくれた……でかしたぞホロウ。」

「お役に立てて何よりですが、依然窮地である事に変わりはありません。」

「其れに付いては心配無用だ……俺が来たからには勝利は絶対だ。
 鳥野郎は、桜花達に任せた。俺達はコイツを叩きのめす――来い、蛇擬き!叩き潰してやる!!」



桜花、那木、富嶽、息吹、速鳥、初穂はオラビの、私と暦とホロウと相馬はイテナミの相手か。
まぁ、妥当だな?私の攻撃で生命力が削られたイテナミならば、4人居れば十分倒せるし、現れたばかりで体力が有り余っている
オラビであっても、ウタカタの精鋭6人が力を合わせれば苦戦する事はないだろうからね。



「良く生きていてくれた。信じていたよ梓。」

「隊長達が世話になった、その礼はさせてもらう。」

「お、良いねぇ?なら、今夜は鳥鍋だな。」

「えぇ!?『鬼』って食べられるの!?」

「んな訳有るか!!」

「比喩でございますよ初穂様。」



いや、食べられるぞ『鬼』は?



「「「「「「「え?」」」」」」」

「其れは、どんな味であったのか興味が湧きますね?」



他に食べる物もなかったのでな、マフウとかヒノマガトリとか、その辺の鬼を倒して、骸を浄化せずに焚き火で焼いて緊急食糧とし
ていたんだよ。
ドリュウは最悪に不味かったが、マフウやヒノマガトリは、普通に食べられる味だったな。



「成程。であるのならば、この『鬼』達も倒したら持ち帰って食べてみましょう、そうしましょう。」

「いや、それはご勘弁願いたい……と言うか、ウタカタに帰ったら普通の食事がしたい……」

「その意見には同感だよ暦……」

千から分けて貰った食糧は、あの状況では御馳走だったが、矢張り非常食と言うのは生の物と比べると味が幾分落ちるからね。
生の魚や野菜を食べたいものだよ。
何にしても助けは来たんだ……其れを無駄にする事は出来ん――必ず、生きてウタカタに戻るぞ!!
此れでも、喰らえ!!



「領域内に生えている木を引っこ抜いて、其れを投げつけるとは……相変わらずのトンデモなさだな梓?だが、其れが良い!!
 序に此れも喰らっておけ!!」



巨木ミサイルがヒットした後は、相馬が力のこもった振り下ろしでイテナミの尾を殴り壊したか!見事なモノだな。
オラビの方も、桜花が要所要所で、斬心開放を使って怯ませて反撃を許さず、速鳥が不動金縛りで動きを封じた所で富嶽の百裂
拳と、息吹の連昇が炸裂し、初穂が縦横無尽に飛び回って鎌で斬り付け、那木の専心がダメージを与えるか……此れは、オラビ
も相当にキツイだろうな?
その証拠に、タマハミ状態になった訳だから――


――シュゥゥゥゥ……


って、オラビがタマハミ状態になったのと同時に、私の魔法を封じていた紋様が消えた?――危機的状況に陥った事で、オラビか
ら受けた呪いが、その効力を失ったのか!!

感じる……感じるぞ、私の魔力を!戻った……戻ったぞーーーー!!!


――轟!!!


「先輩!?……銀髪紅眼に姿が変わった……!!」

「ふふふ……オラビが弱まった事で、私の呪いは解かれ、魔力を取り戻した……此処からの私は、此れまでよりも少し強いぞ?」

と言うか、此れで終わりにしてやる!!遠き地にて、深き闇に沈め……朽ち果てろ、デアボリックエミッション!!



――キィィィィン……ドガァァァァァァァァァァァン!!!



『『ギヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』』



「……相変わらず、君の魔法とやらはすさまじいな梓?……君の手にかかれば、大型の『鬼』であっても赤子同然のようだ。
 まさか、大型の『鬼』を2体同時に葬ってしまうとはな……本当に、頼りになるよ君は。」

「勝った?……やった、やったぞ先輩!!」

「ハハハ!見たか、圧倒的大勝利だ!!」



あぁ、間違いなく圧倒的大勝利だ……だが、これで漸く帰る事が出来るな、ウタカタの里に……今の私が、生きるべき場所に。


――バシュン!

『俺が、この時代に風を呼ぶ。』

――ミタマ『岩倉具視』を手に入れた。



更に、イテナミから新たなミタマを得る事も出来たからね……だが、そんな事よりも、今はウタカタに帰ってゆっくり休みたい気分だ
よ……流石の私も、極寒の地での生活と言うのは、可成り堪えたからな……










 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場