Side:梓


オオマガドキを防いだからと言って、この世から『鬼』が居なくなる訳じゃないと言うのは理解していたが、未だに里周辺に大型の
『鬼』が出て来ると言うのは如何なものかと思うな?
それも、ミフチやクエヤマレベルではなく、ミズチメ以上の強力『鬼』が出て来ると言うのは……幾ら私でも、少し大変だぞ?
ダイマエンの変異種だと言う、このインカルラは中々の強さだしな。



「インカルラの拳を片手で防いでる状態でそう言われても説得力ないぜ隊長?てか、本気でアンタドレだけのモノノフなんだ?」

「そんなモンは今更だろ伊達男?
 梓は俺達の常識では計れねぇ規格外のモノノフだ。梓が味方である限りは、ウタカタの里は無事だって事で納得しようぜ。」

「其れが得策だな。」



規格外のモノノフと言う事は否定しないよ。そもそもにして私は、普通なら存在その物が認められていないチート無限のバグキャ
ラだからね?私単体でトコヨノオウを倒したのが良い証だ。

なので、お前は此処で終わりだインカルラ!
掴んだ腕を離さずに、其のまま強引に引き摺って倒し、其処から間髪入れずにジャイアント・スウィング!其れでは皆さん、回転
数のカウントをお願いします!!


「1、2、3……9、10、11……まだ回るのか梓!!」

「まだまだぁ!!……此れで20回転!そして、遠いお空に飛んで行け!!そして、此れを喰らえ!!」



――ドォォォォォォン!!



投げ飛ばしたインカルラに不可視の魔力砲を放ってゲームエンド……ふん、マッタク汚い花火だったな。うん、ベジータ王子の名
言は、色んな所でアレンジして使えそうだな。












討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務42
『緊急任務~コガネムジナ~』











そんなこんなでインカルラ撃破!!変異種であるせいか、ダイマエンよりも手強かったが、其れでも私達の敵ではないな?私自
身はとても頑丈だから、滅多な事では壊れないし、桜花をはじめとした仲間達にも恵まれているからね。

とは言え、当分は御役目を熟して行くしかなさそうだが、其れは其れで悪い物ではない――私達が御役目を果たせば、それだけ
里の人々の平和が長続きするって言う事だからな。
取り敢えず、里の周辺をうろついていたインカルラを討伐して来たぞ!――って、アレは一体何事だ?



「だ、だからそんなに一度に言われても分かりませんよぉ……」

『キュイ!』

『キュキュッキュ!』

『キュイーキュ……』


木綿の周りに天狐が沢山?なはとまで居るじゃないか?と言うかなはとはなぜにへばっているのか……何がどうなってるんだ?



「え、ええと……。左の天狐さんはお腹が減った?
 右の天狐さんは、『鬼』に仕返しをしたい。真ん中の天狐さんは、新しい帽子が欲しい……?」

『キュイーッキュッキュ!』

『キュルッキュ!』

『キュイキュイ!』


「よ、よかった!合ってましたか!」

「木綿、お前、天狐が何を言ってるか理解出来るのか?……そうだとしたら、速鳥が羨ましがりそうな特技だな。」

「あ、梓さん!今、天狐さん達の依頼を聞いていたんです。
 私は、天狐さん達の言葉が、ハッキリと分からないので……何時も何となくで、推測してるんですが……今日は、バッチリ的中
 してよかったです!」



何となくでも、其処まで察する事が出来るのは凄いと思うぞ?
『お腹が減った』『遊んで』程度の要求ならば、私でも分かるが、『鬼に仕返ししたい』とか『新しい帽子が欲しい』とか言われたとし
ても、私には絶対分からないからね。



「凄いって、そ、そんな事ないですよ。
 モノノフさんの中には、天狐と完璧にお話しできる人も居るそうです。是非色々教えて欲しいです!」

「もし、そう言うモノノフと会う事が有ったら速鳥に紹介してやってくれ。きっと速鳥が喜ぶだろうからな。」

「あはは……速鳥さん天狐好きですからねぇ……」



アイツは、腕は確かなんだが天狐が絡むと途端にポンコツになるからな。
さてと木綿、インカルラを討伐して来たばかりだが、まだまだ体力が有り余って居てね、この分だともう一つ位なら、軽く御役目を
熟せそうなんだ。
手頃な任務は何かないかな?



「今は特に……いえ、待ってください。
 里周辺の物見から狼煙が……此れは、緊急任務!」

「緊急任務?」

「領域じゃない、里の周辺に大型の『鬼』が現れたんです!
 領域ではない場所に現れたために、里に乗り込んでくる可能性が極めて高い危険な『鬼』で、早急な討伐が必要です!!」



まるで狙ったようなタイミングだな?
だが、丁度良い――インカルラ1匹では、少々運動が足りなかったのでね?どんな『鬼』が現れたか知らないが、此処で討ち果た
してウタカタへの進行を阻止するとしようか。
速鳥と富嶽と息吹は、さっき一緒に行ったばかりだから、今度はお前達に一緒に来てもらおうか、桜花、那木、初穂。



「里の周囲に大型の『鬼』が現れたとあっては見過ごせないからな……行こうか!」

「其れでは参りましょう。」

「どんな相手でも、君が一緒ならやれるわ梓!!」

「ふふ、お前達ならそう言ってくれると思ったよ。では、行こう!!」

と、其れからなはと、お腹が減って居るなら、10000ハクあげるからよろず屋で『絢爛天狐膳』でも買って食べておいてくれ。
りひとも腹を空かしている様だったら、ちゃんと誘うんだぞ?



『キュ♪』

「よしよし、良い子だな。」

それじゃあ、改めて緊急任務開始だ!では、例によって……見つけた!瞬間移動!!






――バシュン!!






と言う訳で、一瞬で目的地に到着!



『キョアァァァァァァァァァァァァァ!!』



そして、目の前には今回のターゲットである『鬼』が。
だが、コイツは初めて見る『鬼』だな?巨大なヒレのような両手と、頑丈そうな甲羅はツチカヅキと共通しているが、顔は全然違う
し、そもそもコイツは全身が眩いばかりの黄金色だ。
なんなんだ、この『鬼』は?



「此れはまさか『コガネムジナ』か……!
 大型の『鬼』だが、その素材には稀少な鉱石が数多く含まれている為に、武器の素材確保の為に最優先で討伐され、めっきり
 数が減ってしまったと聞いていたが……まさか、そんな貴重な『鬼』が現れるとは……」

「……何だ、その人間の手によって乱獲された事が原因で絶滅の危機に瀕している動物のような『鬼』は?」

と言うか、鬼も個体数が決まってるのか?乱獲……ではないが、集中的に討伐されて数が減ると言う事は、兎に角狩って狩って
狩りまくって行けば、何れは『鬼』は全滅するんじゃないのか?



「いや、何故かコガネムジナだけが数を減らしてしまったらしい。
 若しかしたら、身体を稀少鉱石で構成しているために、狩られ過ぎると数を回復する事が出来ないのかも知れないな……」

「とは言っても、『鬼』は『鬼』なんだから、さっさと討っちゃいましょう!」

「取り逃がせば、ウタカタが危険に曝されてしまいますから。」



其の通りなんだが、稀少な鉱石を宿していると言うのを聞くと、倒さずに適当に素材だけ手に入れて追い返した方が良いんじゃな
いかと思ってしまうな。
其れに、此のコガネムジナと言う『鬼』は、他の『鬼』と違って見ようによっては可愛い顔をしているから、ちょっとペットとして飼っ
てみたい気もするんだが……連れて帰っちゃダメか桜花?



「いや、普通に駄目だろう?『鬼』を里に連れてくなど言語道断だ。」

「私の魔法で天狐サイズまで縮小してもダメか?」

「小さくなった所で、『鬼』の本質が変わる訳じゃないだろう?寧ろ、小さい事で逆に里の子供達が近寄って被害が出るかもだ。」

「じゃあ、この場で戦って、私の方が上だと認識させた上で、絶対服従させる!其れならば、文句はないだろう桜花!
 私の言う事を聞かなかったら即討伐と言う事を覚えさせれば、里で問題を起こす事もない筈だ!!って言うか、私はアレを飼い
 たいんだよ!!」

「無茶を言うな!飼える筈がないだろう!!」

「『鬼』を飼うのは流石に無理じゃない?幾ら梓でも……」

「其れは流石に無理があるかと……」



ダメか……なら仕方ないな。
モノノフの役目として、お前を討つしかないみたいだコガネムジナよ。――恨むなら、鬼が跋扈する様になってしまったしまった此
の世界を恨んでくれ。








――そんな訳で戦闘中だ。ちょっと待っててくれ。








稀少な鬼である上に、ツチカヅキと同じ特性を備えていたから、多少は苦戦したが……やはり私達の敵ではなかったな。
地面に潜ったのは面倒だったが、其れも鬼千切り・極を喰らわせてやればあっさりと引き摺り出す事が出来たからね……そこか
らは一方的な蹂躙だ。其れこそ、何方が悪者なのか分からなくなる位にな。

「此れで決まりだ!」

「花と散れ!」

「天の破魔矢!」

「喰らいなさい!!」



そしてトドメは鬼千切りの一斉掃射だ。此れにて、任務完了だな。




と言う訳で、緊急任務を熟して来たぞ大和。



「うむ、ご苦労だった。
 だが、幾らお前でも流石に疲れただろう?『鬼』との戦いはまだ続く……此れからに備えて体を休めておけ。」

「分かった。そうさせてもらうよ。」

『鬼』はまだまだ存在する……此れからも戦いの日々は続くだろうからな。――願わくば、1日でも早く『鬼』との戦いに終止符が
打たれる事をだな――








――――――








No Side


オオマガドキが防がれて少しした後の『乱』の領域にて、1人の女性が巨大な銃を背負って歩いていた。
武器を携え『金が四つ目の鬼の面の紋様』を衣服に付けている事から、モノノフであるのは間違いないだろう。

その女性の背後からは2体のヌエが襲い掛かるが、女性はその攻撃をいとも簡単に避けると、跳躍して弾丸を放ち、ヌエを見事
に撃ち貫く。
其れだけなら、女性の勝利なのだが、直後に現れた猫のような姿の『鬼』の一撃を喰らい谷に落とされそうになる。

辛うじて、崖を掴んで落下は免れたが、その直後にダメ押しと言わんばかりに、牛の頭をもった強大な『鬼』が現れてその場を瘴
気で浸食し始めたのだ。

浸食された地面では、如何にモノノフと言えどもずっと掴んでいる事は不可能であり、女性も限界が来て手を放してしまう。
そして、女性は崖の下に真っ逆さまに転落!

其れを見た牛頭の『鬼』は、雄叫びを上げて勝ち誇る。

一見すれば、1人のモノノフが鬼に負けたと言う構図だが、この一件が、新たなる戦いの序章なのであった……












 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場