Side:梓
トコヨノオウを打ち倒して、オオマガドキを防いだと言う事で、宴を開きたくなる気持ちは分からんでもないが、何故私の家が会場
になっているんだ?
こう言っては何だが、この家にモノノフが7人も入ると少し窮屈だろう!!
「堅い事言うな梓。
オオマガドキを防ぐ事が出来たんだ――多少狭くても、テメェの家以外での宴会は考えられねぇだろ?オオマガドキを防いだ英
雄の家で宴会なんてのは、早々できるモンじゃねぇからな。」
「尤もらしい事を言ってるが、実はただ宴会をしたかっただけだよな?」
「ま、其れは否定しないぜ梓。」
……少しは否定するそぶりを見せてくれ息吹――ま、トコヨノオウを倒してオオマガドキを防ぐ事が出来たのは目出度いから、今
宵は宴に興じるのもまた一興か。
「オオマガドキを防げたのは君のお陰だ梓――改めて礼を言おう。」
「礼なんて……よしてくれ桜花。私は私のやるべき事をしただけで礼を言われる程の物じゃないさ。
其れよりも、今宵は一緒に飲もうじゃないか。友と酌み交わす酒と言うのは、格別の旨さだからね。」
「……分かった。ならば、その誘いは受けさせて貰うよ。」
よろず屋さんから購入した、最高級の純米吟醸だ、味わってくれ。
「オオマガドキを防ぐ事を出来た事を祝って、乾杯だな。」
「あぁ、そうだな。」
うん、旨い!矢張り、気心が知れた友と飲む酒の味わいは、格別だね。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務41
『単独任務:常夜王~力を示せ~』
とは言え、流石に飲み過ぎたらしく、いい加減飲んだ所で寝落ちしてしまったらしい……尤も、そのお陰でお前達と話す事が出来
るのだけれどな……今度は何用だ、我がミタマ達よ。
『やりましたね。』(天草四郎)
『あぁ、やったぞ。』(源頼光)
『此れでもう、安心ね。』(卑弥呼)
『あぁ、安心じゃ。』(武田信玄)
『いえいえ、戦は此れからも続きます。』(安倍晴明)
『『鬼』は、またやって来る。』(平将門)
『だからまた力を貸そう。』(徳川家康)
『えぇ、貸すわ。何度でも。』(卑弥呼)
『人の世に『鬼』がある限り。』(平清盛)
『僕達もまた、戦い続けましょう。』(聖徳太子)
『ぬしと共に。』(弁慶)
『何処までも往くぜよ。』(坂本龍馬)
『『鬼』を討つ鬼となって。』(土方歳三)
『第六天魔王が、力を貸してやる。金眼四ツ目の討ち手の戦、楽しませて貰おう。』(織田信長)
矢張りオオマガドキを防いだと言っても、『鬼』との戦いが終わる事はないか……8年前のオオマガドキで溢れ出した『鬼』がどれ
だけ居るのかは想像もつかないからね。
だが、来る端から狩っていけば、何れは『鬼』だって居なくなるだろうからね……『鬼』を全て駆逐する為に、お前達の力を此れか
らも頼りにしているぞ、我が身に宿ったミタマ達よ。
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ん……もう朝か。
もう何度も体験した事だが、『夢』の内容をハッキリと覚えていると言うのも妙な話だな?これも『ムスヒの君』とやらの能力の1つ
なのだろうか?……後で秋水に聞いてみよう。
さてと、取り敢えず……桜花達を起こすか。
結局昨日は遅くまで宴会をしていて、全員盛大に飲んで最後は寝潰れたんだったな……以外にも那木が結構飲めるクチだった
のは驚いたが……
「ほら起きろ、朝だぞ!!いつまで人の家で寝腐れてる心算だ?」
「「「「「「Zzz……」」」」」」
「オオマガドキを防いでも、まだ『鬼』との戦いが終わった訳じゃないんだ、今日も御役目が出ているぞきっと!!」
「「「「「「すぴ~~~~……」」」」」」
「……起きないと六爪流の峰打ちで物理的に起こしちゃうぞ?」
「「「「「「!?」」」」」」
――ガバッ!!
「な、何だか物凄く恐ろしい気配を感じたぞ!?」
「まさか、『鬼』の襲撃か!?」
あ、起きた。
流石はモノノフだな?熟睡していても殺気や闘気には敏感に反応すると言う訳か。……約一名、なはとを抱き枕にしてる阿呆だ
けは目を覚まさないようだがな……フン!!
――スパーン!!
「!?……なんと、もう朝か……貴殿の目覚ましは、刺激的なのだな……」
「つか、テメェどっからそのハリセン出しやがった?」
魔力で作ったんだ。
ともあれ、此れで全員目を覚ましたな?取り敢えず、外の井戸で顔を洗ってから、其れから本部に来るようにな?オオマガドキ
は防いだモノの、『鬼』はまだ存在しているのだから、モノノフとしての仕事を頑張ろう。
「りょーかい!今日も一日頑張りますか!」
「勝って兜の緒を締めよ、でございますね♪」
ふふ、そう言う事だ那木。私は先に行っているよ……お前達も一緒に来るかなはと、りひと?
『『♪』』
良い子達だな本当に。
オオマガドキを防いだとは言え、本部の方は変わりないか。まぁ、当然と言えば当然だがな……此れから先、オオマガドキ以上
の事が起きないとも限らないから、本部は常に通常運転が基本なのだろうね。
「おはよう大和。」
「うむ、よく眠れたようだな?
……ご苦労だった。よく戻ったな、梓。――信じていたぞ、お前達ならば必ず生きて戻ると。」
「そう、約束したからね。」
「そうだったな……が、オオマガドキを防いでも、人と『鬼』の戦は続く。本当の戦いは、まだまだこれからだ……少し、北の方が
騒がしくてな……また、大きな戦になるかも知れん。
来たる戦いに備えて、もっと強くなれ、梓。お前なら、最強の討ち手にもなれる――頼りにしているぞ、これからもな。」
その期待には応えられるように精進するよ。
しかし北の方が騒がしいとは……北と言えば霊山がある方角であると同時に、8年間のオオマガドキで見捨てられた里が存在し
ていた場所でもある。
そんな北の方が騒がしいとは、確かに何か起きそうな気配ではあるな。
まぁ、何か起きたらその時に対処すればいいだけの事だ……大和の言うようにもっと強くならなければならないからな。……息
吹辺りには『アンタそれ以上強くなる必要あるのか?』って言われそうだが。
「梓さん、昨日はお疲れ様でした。梓さんのお陰で、今日の朝日を拝む事が出来ました♪」
「私だけの力じゃないよ木綿。里の皆の力があってこそさ。」
「それでも、一番活躍したのは梓さんだって桜花さんから聞きましたから。」
桜花が?……マッタク、私は英雄と言うガラじゃないのだがな。
それよりも、新たな御役目は出ていないかい木綿?
「ちょっと待ってください……あれ?こんな任務あったかな?」
「如何した?」
「さっき目を通した時には無かった御役目が混じり込んでいて……それに内容も良く分からなくて……」
「ドレドレ?……何だ此れは?」
『……己の力で……大いなる……闇を討て……王なる『鬼』を……再び……討て。』
「如何言う事でしょうか?」
……恐らくだが、要約すると『お前一人の力でトコヨノオウをぶっ殺してこいや』って事なんじゃないかな?己の力で討てと言うの
だから、仲間の力は借りるなと言う事だろうからね?
何とも、無茶な要求だが、トコヨノオウが本当にまた現れたのならば見過ごせないからな……ちょっと、退治して来るよ。
「そんな、小型の鬼の集団を倒しに行く気軽さで言わないで下さい……」
「だって、負ける気がしないからね。」
『『♪』』
やれやれ、お前達も一緒に行くのか?
そう言えば、天狐にもミタマを装備する事が出来たよな?……ならばハネキツネにも装備する事は可能な筈だ。なはとには『衣
通姫』を、りひとには『静御前』を装備しておこう。
では行こうか!
「……天狐は連れて行っても良いのでしょうか?モノノフじゃないから、多分大丈夫ですね。」
仲間であってモノノフじゃないから。うん、間違いなく屁理屈だな此れは。
と言うか、ハネキツネもこの世界では天狐扱いか……まぁ、天狐の変異種と言われても、あながち否定は出来ないけれどね。
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と言う訳で、再びやって来たぞ、最終決戦だった地に。
塔は崩壊して無くなったが、此処に本当にトコヨノオウが……?
『ガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』
「現れたな……」
お前はオオマガドキを齎す『鬼』だと思っていたが、其れが門が閉じた後で現れるとは――或は、門が開いた時に此方に現れた
個体は、私達が先日倒したのだけではなかったと言う事なのか……
何れにしても、お前を見過ごす事は出来ないのだ……故に――
――ジャキン!!
「六爪流で地獄へ送り返す。」
人が生きている縄張りに、勝手に入り込んで来たのは貴様等『鬼』の方なのだから、討たれた所で文句は言えないがな?自然
界では、縄張りに侵入して来た者は、縄張りの持ち主に倒される物であり、縄張りの主が強者であれば陥落する事は先ず無い。
そもそも前提として、終焉の王では、破壊神に勝つ事は出来ん!
――ズバァ!!!
『!?』
「……なんだ、意外と脆いな?
オオマガドキの時に現れたのは、もっと歯応えが有ったが……お前は同種の『鬼』の中では余り強い個体ではなさそうだ。
精々ゴウエンマの強めの個体程度と言った所か?――ならば、私に勝つ事など絶対に出来ん!!」
私1人でも勝てるが、なはとが『癒』のタマフリでサポートしてくれるし、りひとが『魂』のタマフリで援護攻撃をしてくれてるからな。
そもそも、最初の一撃で最大の武器である左手を失ったお前には、最早何一つなす術はない!
喰らえ!六爪流極意バーサーカーバレッジX!!
――ズバズバズバズバズバァ!!!
此れで、尻尾を残して部位破壊完了!!
『『きゅ?』』
え?何で尻尾を残しておいたのかって?
其れはだな……こうする為、だ!!
――むんず!
――グオングオングオン!!
尻尾を持ってのジャイアントスウィング!!
回して回して回して、充分回した所で、遠いお空へ飛んで行け!!
そして此れで止めだ!響け、ナイトメアハウル!!
――ドォォォォォォォォン!!
「タマハミすらさせずに爆発四散。こんな時は、こう言うのだったかな?……ふん、汚い花火だ。」
『きゅい~~♪』
『♪』
少しは苦戦するかと思ったが、そんな事は全然無かったな。
――カッ!バシュン!!
『兄様に負けてられない!』
――ミタマ『お市』を手に入れました。
だが、期せずして新たなミタマゲットか。
オオマガドキを防いだ時はトコヨノオウから『織田信長』のミタマを手に入れたが、今度はトコヨノオウから『お市』をゲットするとは
思わなかったよ……まさか、兄妹揃って同種の『鬼』に食われていたとはね。
まぁ私の中で兄妹の再会でもしていてくれ。
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と言う訳で、トコヨノオウを倒してきました!どうだ、驚いたか?
「驚いたが、君ならば出来るだろうなと思ってる私は、既に感覚がおかしいのだろうか梓?」
「いや、正常だと思うぞ?
こんな事言ったら身も蓋もないが、私の存在自体がおかしいんだから、気にしない方が良いぞ桜花?寧ろ気にしたら負けだ。」
「そうか……って、そうじゃないだろう!!」
「だが、現実に倒しちゃいました。」(超ドヤ顔)
「もう良い……君は私の理解が及ばない規格外を通り越したモノノフだと思う事にするよ。」
そう言う事にしておいてくれ。そっちの方が色々面倒もないからね。――さて、トコヨノオウを討ったばかりだが、もう一頑張りと行
こうか!『鬼』は、1匹たりとも生かしておけないからな!!
To Be Continued… 
おまけ:本日の禊場
任務が終わったら禊は基本だこの身の穢れを落としておかないとだからね……それで、何故いるし秋水?
「貴女が時間を間違っただけでしょう梓さん。
と言うか、向こうを向いていて下さい……流石に、目のやり場に困ります。」
「何で?」
「禊の衣は薄いので、その……透けてるんですよ。」
透けてる?……言われてみれば確かにそうだな。バッチリ透けている。
だが、こんな事で恥ずかしがることもないだろう秋水?……原始の世界では、男も女も一糸纏わぬ姿で過ごしていたのだから。
「其処で極論を持ち出さないでいただけますか?」
「だが断る!」
此の程度が恥ずかしくて禊が出来るか!!
それに、私は曝して恥ずかしいようなスタイルはしていない!寧ろヴィータから『ワガママボディ』とまで言われたんだ!そう評さ
れた身体の何処に、恥じる所があろうか!!
「開き直らないで下さい!」
「開き直りではない、此れは悟りの境地だ!」
色々有ったが、秋水と禊をした。……しかし、あれ程までに初心だと、将来大丈夫なのか心配になってしまうな。
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