Side:梓
ダイマエンを打ち倒し、同時に富嶽がホオズキの仇として追い求めていた鬼を倒す事が出来た。
そして、其れだけではなく『神君』……徳川家康公のミタマを手に入れる事が出来たのだから成果の程は上々と言っても過言じゃない
だろうね。……尤も、手に入れた家康公が世間一般に知られてる『タヌキ親父』ではなく『渋系イケメン』だったと言うのは驚いたがね。
そして、此れはミタマとの夢を通じた意思疎通か。
『ふむ……お主が、ワシを解放した武者だな?中々見事な技の冴え――力を貸すに足る使い手と見た。』
「貴方にそう言って貰えるとは光栄だな、300年続く武家政治の基礎を作り上げた天下人……徳川家康殿。」
『ワシを知っていたか。
ふむ……鬼門封じは万全と思っていたが、綻びがあったようだ――何処から現れた『鬼』に、一呑みにされてしまってな、人魂に身を
やつしている始末――この上は、お主と共に復讐戦を挑む決意。江戸を護った四神の加護、お主にも授けてやるとしよう。』
四神……青龍、朱雀、白虎、玄武か。其れは頼もしい力だ、有り難く頂戴するとしよう。
『そうだ、お主たちの探していた『鬼』だがな…………ワシの中を探ってみろ。奴の思念が残っている筈だ。其れを探れば、居場所も
知れよう。
ではな。鬼退治に励めよ、若武者。』
お前を探れば指揮官の鬼に至ると、そう言う事か?
此れは、橘花に家康公のミタマを千里眼で探って貰う以外に方法はないが、巧く行けば鬼の指揮官を割り出せるし、其れを倒す事が
出来れば鬼の動きを抑制する事も出来るからな?…如何やら、鬼が動き出す前に、此方から攻め込む事が出来るかも知れないな。
人に仇なす鬼は討つ――其れが、私達モノノフの使命だからね。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務29
『鬼の指揮官を討ち果たせ』
……何ともまた奇妙な夢を見たものだが、夢の詳細を覚えている時点で割と普通じゃないんだが、この夢は鬼の指揮官に関する情報
も教えてくれたから、無視する事は出来ない。――取り敢えず、大和に夢の事を話してみるか。
との思いで本部に来たんだが……既に桜花と橘花も居たか。此れは、ある意味では都合がいいかな。
ウタカタのお頭にモノノフのエース、そしてウタカタの巫女がそろい踏みと言うのは、中々に豪華な組み合わせと言えるかも知れない。
大和、桜花、橘花、何かあったか?
「お前か。」
「如何した、何かあったのか梓?」
「梓さん、若しかして新たなミタマを宿したのでは?」
大正解だ橘花。
其れも今回のミタマは大当たりだ。
ダイマエンから手に入れたミタマ――徳川家康公は、凄いヒントを残して行ってくれたからね?――なんでも、自分のミタマを探れば、
指揮官の鬼の存在を見つける事が出来ると言う事らしい。
「神君家康公が……?見つかると、確かに言ったんだな?」
「あぁ、確かに言っていた。
ただ、不思議なのは、如何して鬼の指揮官の思念が宿っているのにダイマエンの中に居たのかだがな。」
まぁ、其れはこの際無視するとして、ミタマの中の鬼の思念を探るとなると、お前の力が必要だ。
負担をかけてしまうが、頼めるか橘花?
「はい。今、私が探ります。――宜しいですか、梓さん?」
「橘花、無理はするなよ?」
「分かっています、姉さま。」
神垣ノ巫女の千里眼は強力だが、しかし同時に消耗も大きい――特に指揮官級の『鬼』を探るとなったら、身体への負担は半端な物
ではないだろう。桜花も言っていたが、くれぐれも無理だけはするなよ?
では、頼む。
「お任せ下さい。
科戸のかぜの 天の八重雲を吹き放つ事の如く 朝の御霧 夕の御霧を 朝風 夕風の吹き払ふ事の如く 祓え給ひ 清め給へ!」
家康公は、探れば鬼の指揮官の思念が残っていると言っていたが、其れが何なのかまでは言っていなかった。
鬼の指揮官の容姿なのか、それとも居場所なのか。――一番良いのは両方分かる事だが、片方分かっただけでも御の字だ。物見が
指揮官を探すのが楽になるからね。
橘花、何が見える?
「これは……なんて強力な思念の残り香……此れなら辿れる……眼を奪える……」
「眼を奪う……と言う事は、鬼の指揮官の見て居る景色を見る事が出来ると言う訳か?……ガンコンのゲームをやってる様な視点に
なるのかもしれないな。」
「……ガンコン?」
「いや、独り言だ。忘れてくれ。」
「……君は、時々不思議な事を言うな。橘花、無理は良くないが如何だ?眼は奪えたか?」
「……………………!
見えました……こんなにハッキリと……。
……周囲は森……。腕に……炎を纏っています……。」
周囲に森か……この時点で領域は『雅』と『武』の2つに絞られたが、しかし腕に炎を纏った鬼とは、此方の世界に来る前に見た映像を
思い出してしまうが、まさか……な。
橘花、何か目印になる物は見えないか?手掛かりになりさえすればいい。
「広大な森の中に横たわる仁王像……炎の中に……倒れ込んで……」
「炎の中に仁王像……?」
「…………!『武』の領域だ!
炎の中に沈んだ仁王――金剛力士・阿形が有るのはあそこしかない!」
「っ……姉さま、梓様、場所が分かりますか?」
「あぁ、間違いない。敵は『武』の領域に居るぞ!」
「落ち着け。物見を送り、確認させる――が、確認出来たら打って出る。
梓、お前は戦の準備をしろ。此れまで後手後手に回っていたが、今度は此方から攻勢をかける。鬼の指揮官を討つ!」
了解だ。
ならば、先ずはオヤッさんに刀を鍛錬して貰うか。打ち直し出来るほど新たな素材がある訳ではないが、鍛えて強くする事は出来るか
らね?其れから樒にミタマの力を引き出して貰うとしよう。
相手は鬼の指揮官――此れまで戦って来た大型鬼とは一線を画す相手だろうからね。
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で、待つ事20分、全員に招集が掛かったと言う事は、見つけたんだな大和?私達が討つべき相手を!!
「あぁ、物見隊が情報を持ち帰った。……見つけたぞ、奴を!」
「奴って……!」
「あぁ、炎を纏った『鬼』だ。此れより、総力を上げて、奴を討つ!
オオマガドキを防げるかは分からん。だが、『鬼』の攻勢に終止符は打てる筈だ――勝つぞ、この戦!!」
言われるまでもない――元より、全ての戦で負ける心算は毛頭ないぞ?
何より、私自身は無敵にして、共に戦う仲間は最強だ、負ける要素が何処にもないさ。――其れが例え、強大な力を持った鬼の指揮
官であってもだ。
「決戦の時ってやつだな。」
「はっ、盛り上がって来たじゃねぇか!」
「里は私にお任せを。どうか、心置きなく戦って下さい。」
「ありがたい。」
「さぁ、いざ『鬼』退治よ!」
鬼退治ね?鬼退治と言うとどうしても桃太郎を思い浮かべてしまうな?……そうなると、初穂はすばしっこく敵を攻撃するから雉か?
「猿の間違いじゃねぇのか?」
「犬に言われたくないわ。」
「では、私は桃太郎だ。」
「其処でサラッと主役を持っていく桜花に驚愕。
だがしかし、お前は女性だから桃太郎ではなく桃子さんだな。――桃子……桜花、喜べ。今お前は世界最強の名を手に入れた。」
「……は?」
桃子は強いぞ?何て言っても、星を破壊する必殺技を持つ女の子の母君だからな。
彼女自身の戦闘力は皆無に等しいのだが、彼女の言葉と笑顔には歴戦の戦士ですら無条件で屈服してしまう程の凄まじい力が秘め
られているんだ。鬼が相手でも負けない位のな!
「何だか良く分からないが、分かった。ならばその名に恥じないように頑張ろう!」
「ふ……役者は揃った――行け、そして奴を討て!
汝らに、英雄の導きがあらん事を!!」
あぁ、行ってくる。
だがその前に橘花、お前に私の魔力を少し分けておく。相手は鬼の指揮官だから、ドレだけの配下を引き連れて来るか分からない。
無論全ての鬼を討てればそれでいいが、指揮官相手では雑魚の討ち漏らしが出てしまうだろうからね?そうなると、結界を張るお前
には負担がかかるだろう――だが、私の魔力を分けておけば、その負担も軽くなるからね。
「ですが、私に力を分け与えては梓様が……」
「問題ない。今渡した魔力量ですら、私の全体の魔力量の1割にも満たないからまるで問題にはならないさ。
そして、逆に言うならお前に渡せる魔力は其れが限界なんだ橘花。これ以上渡してしまったら、与えられた魔力の大きさにお前の身
体が耐える事が出来ないからね。」
「……1割未満の力で其れとは、君は本当に底が知れないな梓。
1割未満で橘花の負担を軽減できるとしたら、君が10割の力を使ったら一体どうなってしまうのだろうな?少しばかり、興味があるの
だけれど……」
「私が本気を出せば、この世界を1時間で完全に滅ぼす事が出来るぞ?いや、絶対にやらないけどな?」
「……テメェが言うと冗談に聞こえねぇから性質が悪いぜ。
だが、そんだけの力があんなら、鬼の指揮官だって楽勝だろ?――叩きのめすぜ!!!」
そうだな……世界を破壊する力を、今は『鬼』を討つ為に使うさ。
何よりも『鬼』は、存在しているだけでこの世界を滅びに導く存在だからね?――ならば、私は鬼を専門に滅する破壊神となるだけだ。
行くぞ皆、鬼の指揮官を討つ!!そして、鬼の攻勢を終わらせる!!
「「「「「「応!!!」」」」」」
今度は此方から攻める時だ!――その首貰うぞ、鬼の指揮官よ!
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そしてやって来たぞ『武』の領域!
橘花の千里眼で見通した場所は『ロ』の場所だろうが、鬼が同じところに留まっているとは限らないから、此処は私の瞬間移動で『鬼』
の居る場所に転移する。
「皆、私につかまってくれ。」
「瞬間移動か?頼りになる力だな。」
「りょーかい!」
全員つかまったな?……で息吹、お前は何で私に抱き付いてるんだ?
「そりゃあ、アンタみたいな美人さんに『つかまってくれ』って言われたからなぁ?
アンタほどの極上の美人さんにそう言われたら、応えなきゃ男が廃るぜ――だから、つかまるだけじゃなくて抱き付いてみた。…思っ
たよりも柔らかい身体してんだなアンタ――アンだけの力があるから筋肉質だと思ってたけど。」
「息吹……今は決戦前だから何も言わないが、里に帰ったら覚悟を決めておけよ?
百合折り→立弱キック→夢弾き→八稚女→彩華の極悪コンボを喰らわせてやるからな――今の内にハイクを詠む準備をしておけ。」
「あれ?俺、死確定?」
里の戦力が下がるのは容認できんから殺しはしないが、半殺し位は覚悟しておけよ?
と言うか、私だから半殺しで済んでるんだ――これがもし将だったら、お前は跡形もなく全身消し炭にされているからな?……まぁ、息
吹がこの調子なのは絶好調の証でもあるから、其れは其れで良いのかもしれないけどね。
さてと、改めて鬼の指揮官の気配を……見つけた!
このバカでかい力は並の大型鬼の其れじゃないし、此れを感知したのは『ロ』の場所――橘花が『炎の中の仁王像』を見た場所だ!
と言う事は、移動していなかったと言う事だが、ならば好都合だ――『ロ』の場所に留まっている内に、鬼の指揮官を討つ!行くぞ!!
――バシュン!!
で、目的地到着!――そして目の前に現れたのは巨大な火の玉。
この火の玉からは途轍もない力を感じるから、此処に指揮官級の鬼が居るのだろうね?……出てこい、鬼の指揮官よ!我等はお前
を討つ為に馳せ参じた!
我等はお前に仇なす者――其れを打ち砕きたくば、その姿を現すが良い!!
――ゴォォォォォォォォォォオォォォォォォッォ!!!!
『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』
「此れは!此奴が鬼の指揮官か!!」
「コイツは、此れまで戦って来た鬼とは比べ物にならないな……ガラじゃないが、覚悟を決めますか!!」
「覚悟なさい!アンタなんて、私達がコテンパンにやっつけてやるんだから――って、如何かした梓?」
此れは、まさかお前が『鬼』の指揮官だとは思っても居なかったよ!
橘花の千里眼から可能性として考えてはいたが、本当にお前だとはな――だが、お前が指揮官だと言うのならば納得だ。あの夢の中
で、お前は私ではない私と互角に戦っていたのだからね。だから、此処で決着をつけてやる!!
「君は……知っているのか梓、この『鬼』の事を。」
「ウタカタに到着する前に妙な夢を見てね――その夢で、私は此の鬼と戦っていたんだ。数多のミタマの加護を受けながらね。」
尤も、その戦いがどうなったかは分からないが、夢のみならず、現実でも私の前に立ち塞がると言うのならば、其れは砕くだけの事!
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
――バチィ!!
「んな、梓が銀髪紅眼になっただと!?」
「其れにこの力は……此れが梓様の本気!!」
力を完全開放した事で、薄茶色になっていた髪と目の色が本来の色に戻ったか――此れについては後で要説明だな。
だが、この姿ならばお前が相手でも負ける事はないのでな……地獄に舞い戻る準備は出来ているのだろうな、鬼の指揮官『ゴウエン
マ』よ!
幻想の世界では決着がつかなかったが、この現実ではそうは行かない。
私の……私達の全能力を持ってして貴様を滅する!!
そして、私が滅すると言った以上、貴様の消滅は絶対だ――精々お祈りでもしていろ!人の世を取り戻す為に、貴様を滅殺する!!
覚悟は良いな、ゴウエンマ!!
To Be Continued… 
おまけ:本日の禊場
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