Side:梓


さてと、息吹と共に『雅の領域』にやって来た訳だが、いつも以上に小型の鬼が多いな?タケイクサが待ち伏せていただけではなく、こ
ちらの救援に対しての戦力も整えていたと言う所か。

まぁ、悪い手ではない――救援を足止めする事が出来れば、撤退行動を取っている相手を纏めて撃滅する事は可能なのだからね。
だがしかし、今回に限っては、そんな小細工など通用しない!!

「闇に沈め!!」

「逝っちまいな!!」



ドレだけ数を揃えた所で、ガキやオンモラキ程度では、私と息吹にとっては準備運動にすらなないぞ?私達を倒したいのならば、最低
でも、カゼキリを10体用意してこいと言う所だろう?
何か間違っているか息吹?



「いいや、何も間違っていないぜ隊長様。
 ま、俺に言わせて貰うなら、アンタみたいな極上の美人に葬られた鬼は、さぞかし散り際に良い夢見ただろうさ…行先は地獄だが。」

「鬼は地獄の方が有っているだろう息吹?」

「違いない。
 なら、此奴らを纏めて地獄に送り返しながら桜花を救出と行こうぜ隊長!――俺達なら出来る。そうだろ?」



ふふ、その通りだ。
私の力は言うまでもないが、再起したお前が一緒ならば、余程の相手ではない限り負ける事は無いと断言できる――故に、この任務
は始まる前から成功決定だ。

待っていろ桜花、今行くぞ!!












討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務25
『過去の清算・タケイクサを討て』











倒しても倒して、次から次へと現れて、鬱陶しい事この上ないなガキとオンモラキは……取り敢えず邪魔だから、其処を退け!!!
退かないのならば斬り殺す!三枚におろして干物にしてやる――そうなりたい奴からかかって来るが良い。



『『『『『『『『『『ギシャァァァァァァァ!!!』』』』』』』』』



大凡、人間の言葉が分かるとは思えないが、其れでも馬鹿にされたと言う事は本能的に感じる事が出来たらしい――が、其処は既に
私の手によってキルゾーンと化している場所だ。


ナイトメアハウル!

吹き飛びな!



――ズガァァァァァン!

――ドドドドド!!



ふ、息吹も連昇を使っていたか。
ナイトメア十字砲と、足元から吹き上がる魂の力の前では、ドレだけの大群であっても一網打尽と言うやつだ。取り敢えず、今のは良
いタイミングだったぞ息吹。



「そいつはどうも。アンタに褒められるとは光栄だな。
 しかし何だい今アンタが使ったのは?多分魔法って物なんだろうけど、どうやって四方から飛ばしたんだい?」

「1発は私自身が放ち、残る3発は戦いながら設置した『ハウリングスフィア』と言う魔力球体から発射したんだ。スフィアからは、私の
 意志で好きな方向に砲撃を放つ事が出来るからね。
 因みに破壊しようとしても、触れた瞬間に大爆発を起こして大ダメージを喰らうから、敵の周囲に此れを大量に配置するだけでも割と
 強力なんだが……」

「止めてくれ、間違って触れて大火傷なんて洒落にならないからな。」



勿論やらないさ。
さて、鬼域の封印が解けて次の場所へ移動できるようになった――次は『ニ』の所だな。

っと、此処もうじゃうじゃと鬼が居るが……アレは、桜花達だ!良かった、間に合ったか――無事か桜花、助けに来たぞ!!


「まだ生きてるな!」

「梓!それに……息吹!!」

「行け!此処は俺達が喰い止める!振り返らずに、真っすぐ逃げろ!!」

「舐めるなよ息吹、私も殿を務める!
 仲間達の撤退を援護する。1匹たりとも鬼を通すな!」



如何やらまだまだ元気は残ってるみたいだな桜花?ならば、お前もこちら側に加わってくれ。仲間達の撤退を援護しつつ鬼域を制圧し
て、更に現れたタケイクサを討つ!
奴は、この先の鬼域に居るんだろう?



「あぁ、何とか此処まで撤退したが、野放しにしておけばまた物見が襲われかねない――だが、梓と息吹が一緒ならばアレを討つ事も
 出来る筈だ。」

「なら、さっさと此処を片付けて行きますか!」


そう言う訳だから、押し通る!
今度はヌエの黄泉体やノヅチなんかも居る様だが、ハッキリ言って私達の敵ではない。大人しくやられて、素材とハクになると良い。

「消え失せろ!」

「花と散れ!!」

「これでも喰らいな!」


私の疾走居合、桜花の斬心開放、息吹の烈塵突が炸裂して、群がる鬼を鎧袖一触だ。
私が色々チートなのは今更かもしれないが、息吹と桜花――と言うか、ウタカタのモノノフ達も大概だと思うなぁ?矢張り、日々『鬼』と
の戦いに明け暮れていると、人外級の強さになると言う事か。
だが、此れで此処の鬼域も制圧した。残るはあと一つ『ロ』の場所だけ。
仲間達は如何やら全員無事に撤退したようだから、最後の大仕事と行くか桜花、息吹!タケイクサを討つ!!


「あぁ、行こう!」

「さっさと終わらせようぜ!!」



速攻で終わらせてやろうじゃないか!
さて、此処が最後の鬼域だ――覚悟は良いなタケイクサ!!



『ガァァァァァァァ!!!』



「行くぞ、一気呵成に攻める!」

「アンタとならやれる。誰も死なせやしない。絶対にな!!――力を貸してくれ梓!!」



言われるまでもないさ息吹!
タケイクサ自体は風が弱点だが、両の腕は夫々火と水が弱点だから露払いと鬼焔を魔力で操作して腕を攻撃し、嵐迅で本体を攻撃
するのが上策だな。
前に戦ったタケイクサと比べると、多少は強い個体のようだが私達の敵ではないな?そもそもにしてタケイクサとの戦闘経験が豊富な
息吹が居る時点で、お前との戦いは攻略本片手にゲームをやる様なモノさ。



「こいつは両手から異なる属性の攻撃を使ってくるから気をつけろ。
 只力が強いだけじゃなくて、それなりに知恵もあるから、こっちの足元を氷漬けにした上で火炎弾を撃って来るなんて事もしてくる。
 更に、周囲に毒を巻き散らす爆発攻撃も使ってくるから、兎に角攻めて攻撃の機会を与えるな!」

「了解だ息吹!
 だが、危険な攻撃を使ってくると言うのならば、此れで如何だ!!」


――ギュン!!



此れは、防のタマフリの『天岩戸』か!
一定時間相手の攻撃を完全に無効化できるバリアで、しかも一度張ってしまえば維持の為の態勢を取る必要もないから攻撃も出来る
便利な物だ。
だが、此れで一定時間タケイクサの攻撃を気にする事なく一方的に攻撃出来る訳だな?

では、始めるとしようか?鬼退治と言う名の、一方的なフルボッコタイムと言う物を。先ずは、その邪魔な両腕、4本纏めて頂くぞ!!
喰らえ、断祓効果を発動した露払いと鬼焔による、魔力操作鬼千切り!!


――ズバァ!!!


『ウガァァァァァァァァァァァ!!!』



断祓を使っていたから腕は直ぐに浄化されて、もう再生は出来ない。
内部生命力は残っているから腕での攻撃も可能だが、外部生命力を失った状態では些か威力が落ちるから問題なしだな。そもそも、
天岩戸の効果がある以上、どんな攻撃も効かないからね。


「そらよ!逝っちまいな!!」

「魂を込める!橘花繚乱!!」


そして息吹が鷹襲突で角を圧し折り、桜花が真空斬で腰(?)の周りの鎧装を破壊し、此れでタケイクサは丸裸だな!……と言うか、
タマハミ前から腰の辺りには目が有ったのか、今気づいたよ。
此れだけの攻撃を喰らってまだタマハミになっていないと言うのは大したモノだが、そろそろタマハミになっても良いんじゃないか?

「せぇの!!ふんす!!」

「のわ!?タケイクサの髪の毛(?)を掴んで、そんでもって飛んで持ち上げただってぇ!?」

「もう良い。私は梓が何をしようとももう驚かない。あぁ、驚かないとも!
 だから、手加減も遠慮もいらないぞ梓!君の力を余す事無く発揮してくれ!そして、鬼に思い知らせてやれ、ウタカタには途轍もない
 力を持ったモノノフが居るのだと言う事を!!」



うん、そうするよ桜花。
さぁ、パラシュートなしのスカイダイビングだタケイクサ!喰らえ、必殺『犬神家の刑』!!!



――ドゴォォォォォォン!!



「桜花、地面から鬼が生えたぜ?」

「生えた?突き刺さったの間違いだろう息吹。」



うん、我ながら見事な一撃だったな今のは。
頭が埋まればいいやと思ってたのだが、まさか腹のあたりまで深々と突き刺さるとは、本来の力を取り戻した事に付け加えて、モノノフ
として鬼と戦っている内に何時の間にか前よりも強くなっていたようだな?

だが、此れでもくたばってないと言う事は……



『グガァァァァァァァッァァァァァ!!!』



地面から抜け出してタマハミ状態になったか!
4本の腕を足のようにした天地逆転状態のタマハミ……この状態になって一番気をつけるべき攻撃は何かな息吹?



「頭から放たれる氷と炎の吐息攻撃だな。
 喰らったら凍傷と火傷の二重攻撃で、下手したら患部を切断なんて事に成り兼ねない――実際に其れを喰らって腕や足を失ったモ
 ノノフは少なくないからな。」

「天岩戸の効果もそろそろ切れるから、充分注意して行こう。
 だが、どれほど危険な攻撃を備えていようとも、私達が負ける事だけはあり得ないし、タマハミになったと言う事はタケイクサも後がな
 いと言う事の表れだ。
 このまま一気に押し切ろう!!」



そうだな。
天岩戸の効果も、あと1分は持つだろうから、その間にケリを付ける!たった1分でも、攻撃を完全に無効化できるのならば、意識を攻
撃にだけ向ける事が出来るからね。



『ゴアァァァァァァァァァァァァァァ……!』



と、此処で息吹が警戒していた氷と炎のブレス攻撃か。
うん、確かに此れを真面に喰らったらヤバかったかも知れないが、天岩戸のおかげで全くもって効か~ぬ!効かぬわ~~~~!!
まぁ、私に限って言えば、この身体は恐ろしく頑丈な上に、ありとあらゆる状態異常を受け付けないのでそもそも効かないのだが、そ
れでも無敵ではないから効果が無いだけでダメージは蓄積してしまうから、完全無効の天岩戸は有り難いね。

だが、そろそろ終いだタケイクサ。
息吹の心にトラウマを植え付け、そして今度は私の一番の友である桜花に襲い掛かってくれたのだから、相応の報いは受けて貰う!
吹き飛べ!!


――バキィ!!!


……手加減なしで蹴り飛ばしてみたら、思ったよりも吹っ飛んだな?
まさか『ロ』の鬼域の中央から、入り口の鳥居付近まで吹き飛ぶとは思わなかったよ。――だが、此れは好機だ!やれ、息吹!!
お前の因縁の相手に、お前自身の手で止めを刺せ!!


「その為に御膳立てしてくれたってのかい?なら、応えないと男が廃るってもんだ!
 俺はもう迷わない……アイツの為にも、そして今を共に戦う仲間の為にもな!こいつで終いだ、此れでも喰らいな!!!」


――ドシュゥゥゥゥゥ!!



ふ、良い一撃だな息吹。
渾身の力を込めた鬼千切りは、タケイクサを貫いた所か、逆立ち状態の頭を完全に吹き飛ばしてしまった……こうなっては、如何にも
ならないだろうし、如何に鬼とは言えメインコンピュータである脳が搭載されている頭を吹き飛ばされては何も出来ないだろうさ。


――ズゥゥン……


そう言う訳で、タケイクサは沈黙。精々、地獄で閻魔の裁きを受けるがいいさ。
そして息吹、今度は守れたな。



「俺は……ハハ……出来たじゃないか、カナデ……」

「任務完了だ。さぁ、里に戻ろう。」

「あぁ、そうだな。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



と言う訳で、無事ウタカタに帰還だ。死者が一人も出なくて良かったよ。
彼方此方で、無事に帰還した事を喜ぶ姿が見られたからね?特に、家族が居るモノノフは更にだ――妻や娘と抱き合う姿も見られた
からね。


「……8年前、俺は惚れた女を守れなかった。
 それ以来、心の中ではずっと冷たい風が吹いていた――怒っていても、笑っていても、ずっと心は凍えていたんだ……
 でも今は、心から嬉しいと感じている。きっと、アンタのおかげだ。……ありがとな。」

「息吹……」

「あ~~~……クソ、ガラにもない事喋っちまった。」



ふふ、かも知れないが、この分だと、もう大丈夫みたいだな?



「随分、格好の悪い姿を見せちまったが……大丈夫だ、もう迷わない。」

「ったく、やる気が有んのか無いのか、分かんねぇ野郎だぜ。」



はは、そう言ってやるな富嶽。あの腑抜けた状態から立ち直ったんだ――きっと今の息吹は前の息吹の倍は強いぞ?今の息吹が本
当の息吹なんだ。きっとな。



「んなこたぁ分かってら。……テメェは良くやった。」

「確か、前も同じセリフを聞いたな?……今度はちゃんと受け取れそうだ。……ありがとうよ。」



ふむ、此れが俗に言う『男の友情』と言う物なのかな?我が主が、某少年漫画雑誌を読みながら『男の友情キタコレー!』とか絶叫し
ていた事があったが、実際に目にすると、成程確かに此れは燃えて来るな。



「『漢』と書いて『おとこ』と読む……漢の友情、美しきなり。」

「るせぇ!テメェら、簀巻きにしちまうぞ!!」

「富嶽様は、照れ屋でございますね♪」


追撃するな速鳥。そして追い打ちを入れるな那木――だが、お前が立ち直ってくれてよかったよ息吹。ブッ飛ばした甲斐が有ったさ。


「はは……やってみるさ。全力で生きるってやつを――ま、適当に息を抜きながらな。」


結局は其処に行きつくのがお前らしいが、だが今のお前は軽薄な伊達男じゃなくて、確りと芯の通った本当の伊達男だ――これから
も、頼りにさせて貰うぞ。


――カッ!!……ギュゥゥゥゥン!!


『さぁ、共に傾奇ましょう。』


――ミタマ『出雲阿国』を手に入れた。



息吹の中から何か……此れは、分霊か!



「……此れが分霊って奴か……?
 其れは、俺の心だ。……アンタに持っててほしい――よろしくな、隊長。」

「あぁ、お前の魂の半身、確かに受け取ったぞ息吹。」

息吹の再起だけでなく、思わぬ力が手に入ったのは嬉しい誤算と言う物なのだろうな――これで、息吹はもう絶対に大丈夫だろう。
ならば今度は本命のミズチメの討伐だ!
夢患いの元凶の鬼、必ず討ち果たして、初穂を含めた夢患いに捕らわれた里の皆を助け出して見せる!甘美な夢と言う猛毒を巻き散
らす『鬼』には、そろそろ退場して貰わないとだからな。

だから、決して甘美な誘惑に負けるなよ初穂?お前は、決して1人ではないのだからな――!












 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場



取り敢えず、任務で疲れたのでリフレッシュの為に禊に来たのだが……樒が居た。
いや、其れは良いんだが……


『キュイ~~~♪』

『♪』



なはとにりひと、何故いるし。


「2人……もとい、2匹とも貴女を待っていた……だから、かまってあげて?」

「そうか、待っていてくれたのか……なら、一緒に禊をしような。
 因みに、この場に居たのがお前ではなく速鳥だったとしたら、一体どうなったのだろうか?……どうなったと思う樒?」

「……モフモフしているな。」

「矢張りそうなるか。」

如何やら速鳥の天狐と言うか、小動物好きは里に知れ渡っているらしい――そんなこんなで、樒と禊をした。
次の任務、ハクを多めに入手できるかも知れないな。