Side:シグナム


ゴウエンマを打ち倒し、主かぐやがカラクリ結界子の力で増幅された結界でマホロバ全体を……外様の居住区をも覆って一件落着かと思った
矢先に現れた謎の集団――戦闘を歩く単眼鏡の男が胡散臭い事この上ない。



「き、貴様等は……」

「よう、近衛の坊主、元気そうじゃねぇか?」

「野郎は……雷蔵……!?」

「んだ、コイツ等は?」

「……禁軍!モノノフを取り締まる、霊山の特務部隊よ!」



モノノフを取り締まる特務部隊、だと?……何とも穏やかではないが――取り敢えず、其処から移動する事をお勧めするぞ、禁軍の者達よ。
多分、其処に降ってくるだろうからな。



「降ってくる?何がだ?」

「最強のモノノフと言う事になるのか?」

そう言った次の瞬間――



――ドッゴォォォォォォォォォン!!



空から何かが降って来て、禁軍の一団の前に、クレーターを作り上げた……突然の事に禁軍の者達も驚いている様だな?まぁ、突然目の前
に何かが降って来て驚くなと言うのが無理な話ではあると思うが。
が、降って来た張本人は無事なのだろうか?――大丈夫かアインス?怪我は……



「突入角度と速度を間違ってしまったが、大丈夫だよ将。傷一つ付いてはいないさ。」

「……呆れる程に頑丈だな。」

「この頑丈さが取り柄でね、ゴウエンマにぶっ飛ばされても傷一つ付かんさ……其れだけに、私に瀕死の重傷を負わせた、あのツチカヅキが
 何だったんだと言う話になるのだがな。
 其れで将、見慣れない連中だがコイツ等は何者だ?少なくともマホロバの人間ではないよな?」

「モノノフを取り締まる霊山の特務部隊。名を禁軍と言うらしい。」

「胡散臭いな。」

「其れには同感だ。」

だが、何故モノノフを取り締まる特務部隊が此処に居るのだ?鬼内と外様の対立を取り締まりに来たとでも言うのだろうか……そうであるの
ならば今更感が否めないのだが。
しかし、この単眼鏡の男には心当たりがある……名前も思い出せないが、確かに私はコイツと出会った事が有る筈だ……一体何者なのか
は覚えていないがな。

其れは兎も角、里に侵入した全ての『鬼』を掃討し、カラクリ結界子によって里の結界が強化され、鬼内と外様が団結しようと決めた矢先に現
れた禁軍……此れは、間違いなく新たな厄介事の予感しかしないな。










討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務174
禁軍参上?新たな火種の予感』










さて、禁軍とやらが何用かと思ったら、禁軍指揮官の雷蔵と名乗った男が『内乱の罪で捕縛する』と言って来た……細かい事は別の人間に
丸投げするのは如何かと思うがな。



「あの男は……」

「博士、知り合いか?」

「いや……何処かで見た事が有る様な……」



雷蔵に『識』と呼ばれた単眼鏡の男は博士と面識がある輩かも知れないか……他人の空似の可能性もあるのだろうが、若しも面識があった
のならば一体どんな関係だったのだろうな。
でだ、その識は九葉と同じく霊山の軍師で、マホロバでの内乱鎮圧の任を受けて来たとの事……近衛の隊長である八雲と、サムライの隊長
である刀也に『大人しく縛に付け』と言っただけでなく、『関与した者は尽く拘禁する』とまで言って来た……少しばかり乱暴すぎないか?
紅月も、『禁軍が動いた?こんな短期間でどうやって』と困惑しているしな。



「……こんな前線で妙な人物と出会うモノだ。軍師・識、こんな所で何をしている?」

「……此れは軍師・九葉。生きていたか。内乱に巻き込まれて死んだかと思ったぞ。」

「生憎、その程度で死ぬほど老い耄れてはおらんのでな……其れより此れは何の真似だ?」

「見れば分かるだろう?内乱の鎮圧だ。聞けば、外様と鬼内が激突し、殺し合いになっていると言うではないか。
 霊山君より鎮圧命令が下った。即刻首謀者を捕らえて処罰せよとな。」

「……何か勘違いをしている様だな識よ。」

「……勘違い?」

「内乱など起こってはいない。少々小競り合いはあったが、お頭選儀ではよくある事だ。
 誰がお頭になるかを巡っての派閥争い……其れを内乱などとは片腹痛い。里は変わらず統制下にあり、お頭選儀は継続中だ。
 私は霊山君から全権を与えられた代理人。何人も此れを侵す事は適わん。此処は私の管轄下だ、手を出すな!」



此処で九葉が相馬と初穂を従えて登場したが、如何やらこの二人は顔見知りの仲らしい……共に霊山の軍師なのだから、互いに相手の事
を知っていても不思議ではないが、少なくとも仲は良くなさそうだな。
だが、此処は九葉の方が識よりも上手だった様だ……識は『霊山君の命である』と言っていたが、九葉はその霊山君の代理としてマホロバ
に来ている訳だからな。
霊山君の命を受けたに過ぎない識と、霊山君の代理である九葉……マホロバに於いてどちらの方が上かは明らかだ――現に話を振られた
雷蔵とやらも『そう言うなら下手に手出しできない』と言っているしな。
そもそもにして、『お頭選儀への介入は重罪』であり、『禁軍であっても其れは変わらない』らしいからな……『少し様子を見た方が良い』と判
断したのは、間違ってはいないだろう。……其れを聞いた識とやらは、忌々し気に『狸め』と呟いていたが、九葉が狸ならお前は狐だな。



『誰がチビタヌ隊長やねん!!』



……何だ?狸と言う単語を聞いたら、脳裏に茶髪を短めに揃えた女性の顔が思い浮かんだのだが……彼女もまた私の記憶に関係があると
言うのだろうか?



「如何した将?」

「いや……狸と言う単語を聞いたら、茶色の髪を短めに揃えた女性が脳裏に浮かんでな……」

「あぁ……其れは私達の嘗ての主だ。
 良き主だったのだが、少しばかり性癖に難があってな……なんと言うかその、私やお前の様な大きな胸が大好物らしくてね……私もお前
 も随分と揉まれたモノだ。
 正直主じゃなかったらブッ飛ばしてたと思う。」

「……知りたくなかった事実だな。」

嘗ての私の主とは一体どんな人物だったのか……少なくとも、主かぐやとは全然異なる人物なのだろうな。



「……此れは失礼した、軍師・九葉。貴公の権限を侵す気はない。
 だが、此方も霊山君の命で動いている。職務上の責務がある以上、しばし里に留まって状況を確認したい。許可してもらえような?」

「……好きにしろ。だが、私の権限への介入は許さん。その点弁えておけ、軍師・識。」

「承知した、軍師・九葉。」



結局この場は識の方が折れ、しばし里に滞在すると言う事で落ち着いた……宿舎が必要になるので、八雲が禁軍の者達を近衛の宿舎に案
内する事になったがな――と言うか、雷蔵とやらは八雲の師だったのか。八雲が『師匠だからと……』と言っていたからな。
此れで一先ずは混乱は落ち着いたが……何だ、識が私を見ている?



「貴様は……何処かで会ったか?」

「……少しばかり心当たりがある、と言ったところか。」

「ほう……私を知っているか?何処で会ったか……思い出せんな。」



お互い、その程度の間柄だったと言う事かもしれん……霊山に居る人間は少なくない故に、全員の顔をはっきりと覚えている事など出来ない
からな。
識は雷蔵と共に近衛の宿舎に移動し、主かぐやが九葉に礼を言っていたが、『お前達の為にやった訳ではない』とは、素直ではないな九葉
も……朧気に残っている横浜での戦いの時、九葉は此処まで冷徹な人間ではなかったと思うのだが、時は人を変えると言う事か。



「……救う事が出来ず、不本意ながら斬り捨てた命が人を変えると言うのは珍しい事ではない……九葉は九葉で、私達には計り知れない壮
 絶な戦いをして来た、そう言う事だ。」

「アインス……お前は九葉に何があったのか知っているのか?」

「知っているが……生憎と九葉に『誰にも言うな』と五寸釘を全身に刺されているのでね、例え将でも言う事は出来ん……隠し事などはしたく
 無いのだが、此れは九葉との約束なのでね。
 ……だが其れよりも、あの識と言う男には気を付けろ――アイツからは、夜天の魔導書を闇の書へと変えてしまった人物と同じ波動を感じ
 る……己の目的の為ならば、如何なる犠牲をも厭わない人間の波動だ、あれは。」

「……つまり、トンデモない奴と言う事か。」

「その認識で良い。」



とは言え、流石に色々あり過ぎて頭が追い付かんが、取り敢えず私達は混乱の収拾にあたるとするか……九葉が巧く誤魔化してくれたが、
マホロバが内乱状態にあったのは事実だからな。
アインスと桜花は、九葉達の後を追って行ったが、彼女達はウタカタから来た客人だからな……マホロバの彼是に巻き込むのはお門違いと
言うモノだな。








――――――








Side:アインス


突如マホロバに現れた禁軍だったが、九葉が見事に抑え付けて見せてくれた……尤も、あの識と言う男が此のまま大人しくしていると言うと
事はないだろうがな。
さて、如何したモノかな九葉よ?



「アインス、瞬間移動で行き成り現れるのは止めろ。心臓に悪い。」

「この程度で止まる柔な心臓でもないだろうお前は……まぁ、其れは良い――九葉よ、此処から霊山までは馬を使っても三日は掛かる距離
 だよな?
 内乱が発生してから経過した日数は二日……いかに急いだとしても、まだ霊山には情報すら届いていないはずだが……?」

「そう、内乱が起こってから霊山を発ったのでは、今到着するのは不可能。――奴等は内乱が起こる前に霊山を発して居たとしか考えられな
 い。」

「この内乱自体が仕組まれていた――そう考えるのが妥当だろうな。」

「誰がそんな事を!」

「さてな……だが、一つだけ分かった事が有る――我々が追っていた敵が、姿を現した。」



九葉が追っていた『敵』が現れたか……其れは禁軍か、其れとも識か――何れにせよ、マホロバでの動乱は未だ終わりでは無いみたいだ。
此れは、最悪の場合を考えて、ウタカタからアーナスを連れてきた方が良いかも知れないな……瞬間移動を使えば秒で連れて来れるしな。
……まぁ、私とナイトメアアーナスが組んだら、其れこそ『鬼』の方が涙目だけどね。
祝福の風と悪夢が組むと敵なしとは、最強のプラスとマイナスが組んだようだな……だが、冗談抜きでアーナスは連れて来るべきなのかもし
れんな。








――――――








Side:シグナム


識達が近衛の宿舎に移動した後は、博士の研究所の前で神無と少しばかり話をしていたのだが、其処に真鶴も加わり、姉弟から感謝される
事になった……私は、己のやるべき事をやっただけなのだがな。
其れに、私がやったのは只の手助けだ、お前を助けるための薬草を手に入れたのは神無だよ。



「……弟に友がいて良かった。」

「副長、お前に頼みがある。」

「何だ、藪から棒に?」

「……俺はサムライ部隊を抜ける。一緒に行きたい奴等が居る。馬鹿の集まりだが腕は立つ。――そいつ等といれば近付ける気がする。
 本当の『最強』に……その言葉に託された本当の願いに。……副長、許可を。」

「……仕方のない弟だな。だが、許可を求める相手が違うのではないか?」

「刀也に聞けって事か?」

「違うな。お前の隣に居るだろう?真っ先に聞くべき相手が。」



其れは、つまり私の事だよな真鶴よ……ここで私に全権を委ねるとは、中々の鬼畜プレイだと思わざるを得ん――神無はバトルジャンキーだ
が、真鶴は弩Sの可能性が否めんな。



「シグナム……俺をお前の仲間にしてくれるか?」

「何を馬鹿な事を言っている……私達はとっくに仲間だ、そうだろう?」

「……そうだな。」

「……行ってこい神無。
 姉は遠くから見守っている。自慢の弟が、自分の道を歩むのを。」



真鶴……行ってしまったか。――だが、此れで神無も晴れてカラクリ部隊の一員と言う訳だ。――改めて、宜しく頼むぞ神無。



「其れは此方のセリフだ……真鶴が笑った顔など何年ぶりに見たか――お前のおかげだ、シグナム。」



――カッ!

――シュゥゥゥゥゥン……



「「!!」」


と、此れは分霊か?



『よし来た!俺の出番だな!』


――ミタマ『永倉新八』を手に入れた。


よもや、此処で新たなミタマを手に入れるとはな……



「何だ此れは、俺のミタマが……まぁ良い。俺のミタマは強いぞシグナム。大事に使え。」

「あぁ、お前の魂の半身、大事に使わせてもらうさ。」

で、その後はサムライと近衛の陣営を視察したのだが、双方とも特に問題はなかったな――サムライの方は、真鶴を撃った奴だけでもと息ま
いてる奴もいたが、隊長である刀也が其れを見事に抑えていたな。
近衛の方は、真鶴を撃った者への尋問をしているようだが詳細は分からないようだ……此方も『サムライが刀を抜かなければ』と言っている
者が居たが、八雲がきっちりと抑えていた。
サムライに近衛、双方から礼を言われる事になるとは思わなかったよ……まぁ、八雲には『かぐや様を攫うなど言語道断!』と言われてしまっ
たけれどな。
だが、刀也と八雲の協力を取り付けた上で鬼の手を渡す事も出来たから上々の成果だろう――相応の実力者が鬼の手を装備したら、『鬼に
金棒』と言ったところだからな。

さて、以上の事を報告に博士の所まで来たのだが……入るぞ博士?



「お前か……今回もお手柄だったな。よくカラクリ石を持ち帰った。里を守る大結界は完成した。此れで簡単には死人が出なくなる。
 其れと、さっき神無が来てな。今後はお前に協力すると聞いた。……また仲間が増えたな。お前は人を惹き付けるらしい。
 兎にも角にも内乱は終結した――だが、逆に『鬼』の行動は活発化している。殆どの者が浮足立っている今、真面に動けるのは我々だけ
 だ。暫くはモノノフの活動に専念しろ。」

「そうだな……暫くは我等カラクリ部隊が任務に専念した方が良さそうだ。……流石に、何度もアインス達に頼る訳にも行かんしな。」

「……アインスならば、嬉々として任務に同行してくれそうではあるが……なんと言うか、アイツの戦いぶりを見ていると最早暇潰しで『鬼』と
 戦っているようにすら感じるぞ?」

「否定出来んな……」

果たして『鬼』とは暇潰しで戦う相手だっただろうか……アインスを見ているとモノノフの常識と言うモノが音を立てて崩れて行く気がするな。



「其れよりもシグナム、あの識と言う男、一応警戒しておけ。私の直感が告げている、あの男は危険だと。」

「あぁ、アインスも同じ様な事を言っていた……何時何が起きても良いように戦いの備えだけはしておこう。」

常在戦場の心構えで、万全の備えをしておけばどんな事が起きても盤石の対応が出来る訳だからな……まぁ、ガチガチに備えすぎると逆に
動き辛くなる事もあるので、その辺は匙加減が必要ではあるが。
さて、取り敢えずは御役目所で任務を受けるとするか。



「あれ……シグナム。早速任務?あんまり無理しちゃダメよ。アレだけの戦いがあったばかりなんだから。
 でも、助かるわ。皆、浮足立ってて、『鬼』の討伐が全然進んでないの。貴女の協力が得られるなら、此れ以上嬉しい事はないわ。
 宜しく頼むわ、里を守った英雄・カラクリ使い。」

「……何だそれは?」

「八雲も刀也も貴女の事をカラクリ使いって呼んでるでしょ?其れが里の人達にも伝わってたみたいで、今回の件で……二つ名って感じ?」

「……正直、微妙な感じだ。」

「そうよね……英雄は兎も角、カラクリ使いってのは少しダサいわ。」

「ならば、烈火の将と言うのは如何だ?」

「「!!」」


あ、アインス!?お前、行き成り現れるな!驚くだろう!!



「そうよ!口から心臓が飛び出るかと思ったじゃない!」

「其れは悪かった……矢張り瞬間移動でイキナリ人の前に現れるのは止めた方が良いのだろうか?私的には便利だし、ウタカタでは最早誰
 も驚かなくなっているのだがな。
 まぁ、ウタカタも色々とおかしいからな……モノノフを始めとして里の住人は多種多様なのはこの前も言ったが、最大の謎は私の家だよ。
 裏口を開けたら本部に直行って一体どんな構造になってるのか未だに分からん。家から本部までは結構な距離があると言うのにな。」

「何それ?」

「確かに如何なっているのか謎だな。
 其れよりもアインス、烈火の将とは?」

「矢張り覚えていないか……嘗てのお前の二つ名だよ将。
 そして、今のお前にもピッタリだ……炎こそ使えないが、お前の戦いは嘗てと変わらん――鋭く、苛烈な剣技で『鬼』を撃つその姿は燃え盛
 る烈火の如しだからな。」

「確かに良いんじゃない!里を守った英雄・烈火の将!こっちの方が断然カッコいいわ!!」



烈火の将か……悪くないな。
ならばその大層な二つ名に恥じぬように、『鬼』と討伐せねばなるまい――椿に頼んで、今出ている任務を見てみると、それ程大変そうな物
は無かったな?
一番難易度が高く、緊急性があるのはヒダルの討伐か……確かにヒダルは放置しておくと大量のガキを呼び寄せるから見過ごす事は出来
ん。ならば、先ずはこの任務を行うとしよう。



「シグナム、任務か?ならば俺も同行しよう。」

「私も任務を受けようと思っていたのだが、良ければ同行しても良いだろうか?」

「『鬼』をぶっ殺しに行くんだろ?俺も混ぜろや。」

「神無、グウェン、焔……願ってもない。一緒に行こう。」

そんな訳で、神無、グウェン、焔と共にヒダルの討伐に向かったのだが、それ程苦戦する事はなく討伐する事が出来た……のは良いとして、
私達が戻って来て別の任務を受けようと思ったら、他の任務はアインスが全て消化してしまっていた。
私達がヒダルを討伐する間に、他の任務を全て消化してしまうとは、恐るべしだな……『アイツ一人で何とかなるんじゃないか?』と思った私
は決して悪くないと思うな、うん。













 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場


博士に報告に行く前に、任務後の禊だな。『鬼』との戦いでこの身に受けた穢れは浄化せねばだ。
と、そう思って来たのだが……

「何故居るのですか主かぐや?」

「お主が任務に行ったと椿に聞いてな、任務が終われば禊に来るだろうと思って待っていたのだ。
 禊をしながら、お主の話を聞きたい。お主が覚えている限りのオオマガドキの戦いの事をな。」

「そう言う事ですか……ならば、その希望に応えましょう。」

主かぐやが居たのには驚いたが、主の望みに応えるのもまた騎士の役目……ならば語りましょう、私が覚えている限りのオオマガドキの戦
いを――命を賭して『鬼』と戦った英雄の事を。
私の話を主かぐやは真剣に聞き入り、禊を終えたのだが……脱衣所に戻ると焔が居たので問答無用でブッ飛ばしておいた。――前に紅月
に〆られたと言うのに、女性の時間に堂々と入ってくるとか、本気で馬鹿かアイツは?
『少し馬鹿』と言う認識を改める必要があるかも知れんな此れは。