Side:シグナム


異界送りから得た情報を基に、結界跳石を探したのだが、此れは予想よりも簡単に見つかったが、其処にはヒダルが住み着いて
いたな。成程、コイツを倒して結界跳石を浄化しないと、此れの力は発揮できないと言う訳か。
だが、ヒダル如き中型、数多の大型『鬼』を倒してきた私からすれば、恐れる相手でもない。

「消え去れ……火竜一閃!!」



――バガァァァァァン!!



抜刀と同時に十束を分割し、居合の速度で鞭のようにしなる刃をヒダルに叩き付けてやったが、如何やら相当に効いた様だな?
本気で行われた鞭打ちは、規定回数を満たす前にやられた方が死ぬ――苦痛に耐えきれずに身体が死を選ぶ程のモノだと言う
が、其れと同じ攻撃に身体を切り刻む刃が追加されたとなっては、流石の『鬼』でも堪ったモノでは無かろう。

「そして此れでトドメだ。紅月!!」

「お任せを!」



火竜一閃を喰らってひっくり返ったヒダルに対し、鬼の手を発動し、私は頭を、紅月は腹を掴んで夫々思い切り引っ張る……次の
瞬間、ヒダルの身体は首と胴体がさようならだ。
如何に『鬼』と言えども、完全に首を刎ねられては生きて行く事は出来まい。



「あ~~……有効な攻撃手段だとは思うが、あんまりやらねぇ方が良いぞ其れ?幾ら何でも残酷すぎらぁな。」

「だな。思わず夕飯が食えなくなるかと思ったぜ。」



……手っ取り早いと思うんだがな。
まぁ、大型の『鬼』には多分使えないだろう手だ――部位を引き千切る事は可能だろうが、頭を捥ぎ取る事は出来ないだろうから
ね?……タケイクサとかは、本当の頭はどっちだと言う感じだからな。
取り敢えず結界跳石は解放したから、残る結界跳石を解放しながら、近衛の部隊を探索するとしようか。









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務135
『鬼の目で、消えた部隊を探し出せ』










そんなこんなで探索をしつつ、結界跳石を解放しながら異界を進んで居るのだが……少しばかり瘴気が薄くなった気がするな?
3つ目の結界跳石を解放した後からだと思うのだが、私の気のせいだろうか?



「いや、気のせいじゃねぇな。
 確かに瘴気がさっきよりも薄くなってやがる……若しかしたら、結界跳石を解放した影響かも知れねぇな?
 結界跳石の瘴気を遮る機能、そいつが結界跳石の結界の外にまで影響を及ぼして、瘴気が薄くなったのかも知れねぇ――な
 んにしても、俺達にとっちゃ有り難い事だ。
 瘴気が薄くなれば其れだけ活動できる時間が長くなるし、近衛の連中が生きてる可能性も高まるからな。」

「確かに其の通りだな。
 しかし、近衛の部隊は一体何処にいるのだろうか?」

「さぁな。
 其れよりも、見えてるか新入り?あの馬鹿デケェ塔が遺跡らしいぜ?
 しっかし、あんなモン誰が作ったんだ?オオマガドキの前はなかったんだろ?」

「結界で隠されていたようです。
 其れがオオマガドキで解けたと聞きます。」



結界で隠されていた遺跡か……今回の目的地だが、誰が何の為に作ったのか確かは気になるな――だが、如何やら、其れを
気にしてる暇はなさそうだ。



『キシャァァァァァァァァァ!!』



如何やら、探索している中で、ミフチの住処に入り込んでしまったようだな?……周囲には『鬼』との戦闘状態に入った事を示す
赤い結界が張られてしまったから逃げる事は出来んか。
まぁいい、ミフチ程度ならば近衛救出前の準備運動には持って来いだ……来るが良い。



「皆、気を引き締めて行きましょう!」

「だりぃな……遅れを取んなよオッサン。」

「へっ、お前こそ下手を打つんじゃねぇぞヒヨッコ!」



そうしてミフチとの戦闘状態に入った訳だが、思った通り大した相手ではなかったな――時継以外の全員が、ミフチが苦手とする
『斬』属性の武器だったと言う事も有るが、渾身と軍神招来を発動して、防のアラタマフリを発動して陣風を喰らわせ、其れと合わ
せて紅月が繚乱を、焔が神楽を喰らわせたら次から次へと足が吹っ飛ぶって……骨のない外骨格生物は関節が弱点だと、人伝
に聞いた事があるが、如何やらそれは『鬼』にも当て嵌まる事だったようだ。



「ダルマになっちゃ様ねぇな……『鬼』は地獄で眠ってな。」



――バァァァァァァァァァン!!



そして最後は、時継がミフチの額に散弾を至近距離から叩き込んで、頭をザクロにして終了と……おや?



――キィィィン……バシュン!


『遠慮はいらねぇ!俺を頼んな!』


――ミタマ『遠山金四郎』を獲得した。




期せずして新たなミタマを入手したか。
それも、あの『遠山の金さん』のミタマとなれば、頼りになりそうだ……はて?何で、私は『遠山の金さん』を知っていたのだろう?
失われた記憶の一部が断片的に蘇ったのだろうか?……まぁ、其れは今は如何でも良い事だな。
新たに獲得したミタマは『魂』か……ニギタマフリとアラタマフリは夫々武器と防具にミタマを装着せねば使えないが、通常のタマフ
リは武器や防具に装着しなくても使う事が出来るから、此れでまた戦いの幅が広がったな。

さて、そろそろ遺跡に到着するが……



『……此方博士。
 如何だ、そろそろ遺跡に着くか?』


「ドンピシャだな博士。そろそろ到着する。」

『よし。
 入口に到着次第、鬼の目を使って周囲を確認しろ。』



鬼の目?
目に見えない朧『鬼』をはじめとした、肉眼では見えない物を見る、モノノフの異形の力だが、其れで何が見えると言うのだ?



『フ……見てのお楽しみだ。』

「勿体ぶってくれるな。」

ならば、鬼の目発動!
……っと、何か見えるぞ?湯気が上がったように見える此れは、足跡か?



『……よし、機能しているようだな。』

「おい、コイツは一体何なんだ?」

『思念の残り香だ。先刻まで、其処に居た『鬼』のな。
 鬼の手を介して其れを実体化している――その痕跡を追えば辿り着ける筈だ。行方不明の部隊と、大型『鬼』の居場所にな。』




成程な……確かに此れは革新的な機能だ。『鬼』の動きが丸見えだからな。
此れならば、探すのもだいぶ楽になりそうだ。



「此れは、急いで痕跡を追いましょうシグナム。」

「無論だ紅月。」

痕跡を辿れば良いと言うのならば、これ程簡単な事も無いからな。
そう言う訳で、適当に道中の『鬼』を倒しながら痕跡を辿って来たのだが……目の前には樹木が絡まって出来た壁があるな?此
処まで来て行き止まりか?
さて、如何した物か……



『鬼の手を使ってみろ。
 伸び縮みする紐と同じだと思え。』


「ふむ……鬼の手で木を掴んで、其れに身体を引き寄せる感じか?よし、巧く行ったな。」

鬼の手は、『鬼』を攻撃するだけでなく、色んな使い方が出来るようだ……此れが普及すれば、『鬼』との戦いだけでなく異界の探
索も、此れまで以上の事が出来るかも知れんな。
其れで、『鬼』の痕跡を追ってやってきたのだが……痕跡は此処で途絶えているか――となると、恐らくは……



「おい、そいつは……!」



倒れているモノノフを発見。
八雲と略同じ装束……消息を絶った近衛の部隊のモノノフと見て間違い無さそうだが……運が良かったな、まだ生きている。瘴
気が薄くなった事で、活動限界を超える事は無かったみたいだ。



「良かった……」

「だが、全く意識がねぇ。
 活動限界が近いのかもしれねぇ……直ぐにでも異界から連れ出すぞ。」

「消えたのは4人なんだろ?他の連中は如何した?」

「……分からんが、構ってる暇は無かろうな。
 兎に角、コイツを異界の外に――って、今何か動かなかったか?」

「あぁ?別に何もいねぇじゃねぇか?」



確かに姿は見えないかも知れないが、確かに何かが動く気配を感じたぞ?決して、私の気のせいなどではない筈だ――確実に
何かが居る。
そう、近衛の部隊を撃破した何かが!!



「……シグナム、時継、焔、戦いに備えて下さい――敵です。」

「矢張り、私の気のせいではなかったか!!」



――ゴゴゴゴゴゴゴ……



『ギシャァァァァァァァァァァ!!!』




瘴気の塊の中から現れたのは、両腕が鋭い鉤爪になって、下半身は複数の足を持った蟲の様な出で立ちの大型の『鬼』……ま
さかこれほど近くにいるとは思わなかったぞ。
だが、痕跡が途絶えたこの場に現れたと言う事は、貴様が近衛の部隊を襲った『鬼』だと言う事か……恐らくだが、此処で見つけ
た奴以外の3人は既にお前に葬られてしまったのだろう。
ならば、せめてもの手向けに、貴様を打ち倒させて貰うぞ――せめてそれくらいしなくては、烈火の将の名折れだからな。
10年前には見た事のない『鬼』だが、私の前に立ち塞がると言うのならば、叩き伏せるのみだ……精々地獄への切符を楽しみ
にしていろ!!












 
To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場