Side:アインス


おぉぉぉぉ……道を開けろ雑魚共!遊びは終わりだ!泣け、叫べ、もがき苦しめ、そして死ねぇぇぇぇ!!!!!



――バガァァァァァァァン!!



私達の世界の『鬼』と、異世界のモンスターを召喚してくれたみたいだが、この程度の相手では準備運動にもならんな……マッタクも
って、ウォーミングアップの足しにもならないとは、雑魚極まりないな。



「アインス、君が強過ぎるだけじゃないのか?」

「その可能性は否定しないが、コイツ等が弱いのも事実だろう桜花?
 こう言っては何だが、この程度の雑魚を倒すのは、ミフチを20秒以内に撃破する事よりも楽な事だからな……速攻で叩きのめす
 だけさ。」

「君の力は兎も角として、相手が弱すぎたか……其れは否定できないな。」



寧ろ否定できるなら、否定してみろこの野郎だからね。

だが、お陰様で最深部に到達するまでに余計なエネルギーを使わずに済んだ……最深部での夜見との決戦時にエネルギー切れを
起こしたなんて言うのは洒落にもならないからな。











討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務123
『封じられし闇~世界への祝福~』










しかし、本当に不思議な場所だ中此処は……地下であるにも関わらず、周囲の岩や植物なんかが発光しているおかげで、問題なく
周りを見る事が出来るとはね。
何とも幻想的な場所だから、只此処に居るだけならばこの景色を楽しみたい所なのだが……今回に限ってはそうも行くまい。

「辿り着いたぞ、夜見!!」

「うふふ、待っていたわよ……お陰で力を全て取り戻せたわ。
 だから、この前よりも楽しませてあげられるの。」



――ギュルン……



英雄達の幻影を作り出したか……相変わらず厄介な能力だが、生憎と私達は前とは違う――もう、お前は無敵の存在でも、世界を
終わらせる最悪の魔物でもない。
穿て、ブラッディダガー!!



「あら?私の身体に触れられるの?
 ふふ……倒し方が分かったと言う訳ね?」」

「そうだ。
 だから、今度は退かない……今この場でお前を倒し、魔物としての夜見を永遠にこの世界から消滅させる!」

「見せてやろう、私達の絆の力を!」

「絡繰人形の大冒険、最終章ってな。」

「英雄と呼ばれた身、ならば其れに値する働きをして見せましょう。」

「この世界を救うため、仲間を守る為……趙子龍、此の槍で夜見を打ち倒さん!」

「この戦い、必ず勝たなくては……世界と、仲間を守る為に。」

「滅ぼして良い世界なんてねぇ!そこんとこ、嫌ってほど分からせてやるぜ!」

「世界は貴女を中心に回ってる訳じゃないんだよ……夜見、少し頭冷やそうか?」

「高町ヴィヴィオ、世界を救うために全力全壊頑張ります!!」

「悪いけど、本気を出させて貰うよ……ヨルド!!」



ふふ、全員がやる気十分だな?
桜花は太刀を抜刀し、時継は撃鉄を起こし、紅月は薙刀をかまえ、趙雲は槍を夜見に向け、元姫は両手にびっしりと鋲を持ち、周倉
は馬鹿デカい剣を担ぎ直し、なのははレイジングハートをエクセリオンモードにし、ヴィヴィオは拳をかち合わせ、アーナスは己の武
器を最強モードのヨルドに変形させたか。
他の皆も己の得物をかまえて戦闘準備は万端だ……最終章を始めるぞ夜見!!



「ふふ、いいわね。
 だけど、其れでも力の差は圧倒的なのよ?」

「……其れは如何かな?」

力の差が圧倒的だと言うのならば、なぜお前が作り出した幻影の中に、私となのはとアーナスが居ないんだ?――自分で言うのも
なんだが、此方の戦力のトップ3は間違い無くこの3人だ。
私とアーナスはそもそも人ではないし、なのはに至っては人外の存在である私と、僅か9歳で互角に戦った、本当に人間なのかとっ
ても疑わしい存在だからな……私達の幻影を召喚出来れば、圧倒出来るだろうに。
だが、私には分かる――お前は私となのはとアーナスの幻影を召喚しないんじゃない、出来ないんだ。

確かに此処に来る前には私の幻影は現れたが、あの時点ではまだ私はお前からしたら格下の存在でしかなかった――が、此処で
私はお前に掠らせた程度とは言えダメージを与えた。
その瞬間に、私はお前にとっての格下ではなく、同格の存在となったんだ――同時に、私と互角レベルにあるアーナスとなのはも。
夜見、お前は自分と同格以上の存在は幻影を作り出す事が出来ないんだろう!



「……其れを見抜くとはね……でも、其れでも私を倒すのは不可能よ……充分に楽しんだら、この世界を壊してあげる。」

「ち……流石は魔物だな。
 お前の中には、憎悪と破壊衝動しかないのかよ!」

「王は、人間は私を利用するだけ利用して封じたの……憎むのは当然でしょう?
 私は全てを滅ぼしたいのよ……全てを消し去りたいのよ……」

「憎悪に憑かれているのですね……貴女は可愛そうな方です。」

「……哀れな魔物だ……その憎しみ、直ぐに消し去ってやろう。」



あぁ、そうだな!!
私、なのは、ヴィヴィオ、趙雲、アーナスと環、刹那、志貴が夜見に向かい、残るは幻影の対処だ……最初から全力で行くぞ!!



――轟!!



「ヨルドの力、格の違いを知るが良い。」



私は力を解放しただけでなく、イズチカナタを倒した時の姿――身勝手の極意を解放し、アーナスも最強のナイトメアモードを解放。
こうなった以上、私達に負けはない!!



――ガキィィィン!!



「く……何ですって?」

「辛くも防いだか……だが、夜の王の力はこんな物ではないぞ。」

「今世のムスヒの君の力、味わって貰おうか!!」

殆ど刃物と化したアーナスの爪と、私の六爪流を植物の蔦を盾にして防いだ夜見だが、私とアーナスの同時攻撃を完全に防げると
思うなよ?
今の私達は、環達の持つ神器によって力を増幅させているから、お前が最強最悪の魔物であっても負けはしない!!
何よりも、此方には三国志屈指の英雄と、聖王の移し身である少女もいるのでな!!



「趙雲さん!」

「うむ、了解だヴィヴィオ殿!!」



ヴィヴィオが踏み込みからのストレートとアッパーのコンボで夜見のガードをこじ開け、其処に趙雲の超高速突きが炸裂だ……普通
ならば此れで戦闘不能だが、夜見は未だ健在だな。
流石は最強最悪の魔物と言った所か。



「フフフ、やるじゃない……では、こんなのは如何かしら?」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



「「「「「!!」」」」」


此れは、幻影達が凶暴化しただと!?
ただ幻影を召喚するだけでなく、凶暴化させる事が出来るとは驚いたな……凶暴化した幻影は、数倍の力になっているから、本物
が相手でも下手をしたら負けるかも知れないレベルだ。

だが、お前は自己強化は出来ないようだな夜見?



「だから何だと言うの?
 私はこの世界の全てを破壊するまで止まらない……だから、そろそろ貴女達も消えなさいな。」

「悪いが消えるのはお前の方だ。」

蔦を槍状にして攻撃してきたが、身勝手の極意を発動している私には通じない――考えるよりも先に、身体が動いて回避するのだ
からね。
アーナスも其れを難なく交わし、趙雲は槍で突き刺し、ヴィヴィオは殴り飛ばす……そして――



「ウォォォォォォォォォ!!!」

「天鑑よ!!」

「月光玉よ!!」



刹那の拘束の咆哮と、環の天鏡を使った戒めの光、志貴の月光玉による連続攻撃で夜見の動きを完全に止める事が出来た。
今だ、なのは!!



「全力全壊!!」

『Starlight Breaker.』

スターライトォォォ……ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!



闇の書の闇すら砕いた、なのはの不敗の究極奥義『スターライトブレイカー』が炸裂だ。
如何に夜見と言えど、此れを真面に喰らったとなっては只では済まないだろうさ――と言うか、1000年の呪いすら砕いた一撃に砕
けぬモノなどないだろう。



「そんな……私が――」

「夜見が倒れた……今です!」

「今だ!!」



夜見が倒れたのを好機と見て、環達が神器を掲げ、其処に私達の力が光となって集まって行く……此れが、神器の真の力か!!
此れならば夜見を……



「させないわ!!」

「!!」

く……悪足掻きだが、夜見が攻撃を――!



「やらせはしない!!」

「お母様!」



したが、其処に小夜が割って入って己を盾としたか!



「良いから……続けなさい……」



小夜にもダメージが有る筈だが、其れでも続けろと……如何やら、環達も其れを理解したらしく、神器の力を更に高めて行く……な
んと言うか、神器からの光が温かく感じられるよ。
其の力が更に強くなるにつれ、夜見が苦しんでいるが――


光が収まった時には、もう魔物としての夜見は其処には居なかった。



「どうして……忘れていたの……?私は……人を愛していた。
 だから泉を創って、この世界を祝福した……」



居たのは、遺跡で出会った夜見の残留思念と同じ姿をした、魔物ではない真の夜見だった。



「この手で、愛するものを滅ぼす所だったのね……止めてくれてありがとう。
 この世界に、最後の祝福を与えるわ。」



そして、そう言った瞬間、夜見の身体が光の粒となって弾け、その多くは小夜に吸収され、残るはこの空間の真上にあるであろう泉
に吸収されて行った……お前は、最後の最後で魔物ではなくなり、女神としての祝福をこの世界に与えたのか夜見。
これで、泉は本来の力を取り戻し、もう二度とこの世界が危機に陥る事は無いだろうな。



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・・・



そして、戦いが終わり、聖域へ戻って来たのだが……其れは同時に、別れの時が来た事を告げていた――この世界を救った以上、
私達がこの世界に居る意味はないからね。



「ありがとうございました。こうして、平和を取り戻せたのは、皆様のおかげです。」

「夜見が消えた今、泉から力を奪う者は居ない。
 此れから先の王は、きっと長く生きられるだろう。」

「私達は、力を合わせてこの世界を治めて行く。
 この穏やかな景色を、必ず守り抜くと約束しよう。」



神器が光り、空から光の柱が下りて来たか……いよいよお別れだな。



「あなた方なら、きっと出来る。」



趙雲……そうだな。
支え合って、素晴らしい世界にしてくれ。



「私……皆の事、絶対忘れない!」

「手を携えし3人よ……進みなさい、新世界へ。」

「奇想天外で、面白き夢幻であった……」

「困った事が有れば、俺達を思い出して。」

「呼ばれたら、何時でも力を貸すからさ。」

「今まで……ありがとう。」

「如何か……何時までも、お健やかに。」



ふふ、僅かな間だったが楽しかったよ。
機会が有れば、また会おう――元気でな。








――――――








Side:なのは


ふぅ、何とか戻って来たみたいだね……ヴィヴィオ、無事?



「うん、大丈夫だよママ。」

「うむ……此処は、一体?」

「あ、趙雲さんも一緒?」

一緒にミッドに戻れたらいいなぁとは思ってたけど、本当にこっちに来るとは予想外だったかな?
三国志の歴史がどうなっちゃったのか若干気になるんだけど……って言うか、何でこっちに来ちゃったんですかね趙雲さん?



「私に聞かれても困るのだが……私自身が、元の世界への帰還を望むのと同じ位、なのは殿やヴィヴィオ殿ともっと一緒に居たいと
 思った事が原因なのかも知れない。
 私が、此処に来た事で何か問題が起きてなければ良いのだが……」

「其れは早速調べてみますね。」

と言う訳で、速攻でユーノ君に連絡して、無限書庫で三国志の歴史が変わってないか調べて貰った――その際に、私とヴィヴィオ
はこの世界では1週間ほど行方が分からなくなってたみたいだから、驚かれたけど、そんな事は如何でも良いからね。

その結果、歴史は変わって無くて、如何やら趙雲さんは、帰還の際に三国志の世界に戻った趙雲さんと、こっちの世界に来た趙雲
さんに分裂した可能性が高くなったんだけど……歴史が改変されてないなら、こっちに来た趙雲さんはこのまま此処に居ても良いっ
て事だよね。
そう言う事なので、此れからよろしくね、趙雲さん♪



「あぁ、私としても宜しく頼む、なのは殿、ヴィヴィオ殿。」

「よろしくお願いしまーす♪」



この後、はやてちゃんに呼び出されて色々とお説教を喰らったんだけど、異世界に行ってたって事と、其処でリインフォースさんと再
会した事、リインフォースさんが別の世界で生きてる事を教えてあげたら凄く喜んでた。
色々と大変な世界みたいですけど、頑張って生きて下さいね、リインフォースさん。









――――――








Side:アインス


戻って来たみたいだな――此処は、里周辺の空き地か。
私と桜花があの世界に飛ばされたのは任務中だったので、雅の領域に居た筈だが……此れも、異世界から帰還した故の事かな。
で、戻って来たのは良いんだが、なんで居る元姫、ソフィー、アーナス!!



「何でと言われても困るアインス殿……私にだって分からないのだから。」

「此れは、若しかしたら私達は存在が分裂したのかな?――こっちに来た私達と、元の世界に戻った私達って感じで。」

「ほえ?そんな事が有るんですか!?」



知らないよ……だが、その可能性は否定出来そうにない――アーナスとソフィーは兎も角、元姫に関してはそうでないと三国志の
歴史が変わってしまうからな。
桜花、期せずしてウタカタの戦力が増えたみたいだ。



「其れは喜ばしい事だが、如何するかはお頭に相談してからだ。
 だが、其れを行う前に――帰還早々、モノノフとしての仕事をしなくてはならないみたいだアインス。」

「如何やらその様だな、桜花。」


『ガオォォォォォォォォォォ!!!』



現れたのはゴウエンマ……帰還早々、大盤振る舞いだな。
だが、長らくモノノフとしての仕事をしていなかったから、お前を相手に復帰戦とさせて貰う――10分で片付けるぞ!!



「10分だと?馬鹿を言うな、君とアーナスが居れば5分だろう?」

「そう来たか……楽勝だ!!」

さぁ、久々の本業と行こうか!!








――――――









――十数年前



Side:???


此処は何処だ?私は何故こんな所に居るんだ……分からない。何故……



「こんな所に人が居るとは驚きだ……迷い込んでしまったのか?」

「お前……は?」

「私は霊山軍師の九葉と言う者だ。
 おまえは何故こんな所に居る?何処からやって来たのだ?」



私は何でこんな所に居る?何処からやって来た……ダメだ、分からない――私は、どうしてこんな所に居るのか、何処から此処ま
で来たのかが全く分からない。
どうして私は、こんな場所に居るのだろうか?



「記憶を失っているのか……厄介だな。
 せめて名前くらいは覚えてはいないのか?」

「名前……私の名前……」

名前、其れだけは覚えている。――私の名前は……シグナムだ。









 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場