Side:アインス
二つ目の遺跡で、神器には英雄の力を増幅させる力がある事が判明した――尤も、其の力を使うには、条件か代価が必要なのだ
ろう……残念ながら、其れを知る事は出来なかったがね。
だが、その謎も、三つ目の遺跡で明らかになる筈だ……だから、速攻で遺跡を攻略してやろうじゃないか!!
「勿論その心算だアインスさん――貴女が居れば、誰が相手でも負ける気がしないからな。」
「その認識は間違いではないよ――私は、数多の世界を滅ぼした破壊神にして、今は其の力を守る為に揮うウタカタの守護神だか
らね。」
今の私を言うならば、守護の破壊神と言う所だな――守護の破壊神と言うのは、物凄い矛盾を感じてしまうけれどね。
何にしても、これが最後の遺跡だから、攻略難易度は可成り高くなってる筈だから、気を引き締めて行かないとだな――だが、なの
は、お前はヴィヴィオと趙雲と一緒にお留守番だ。
「えぇ、何で~~?」
「其れは、自分が一番分かってるだろう?
お前、昔と違って全力で戦える時間が短くなっている上に、消費した魔力の回復が昔よりも遅くなっている――巧く誤魔化して戦っ
ていたが、私には分かる。
恐らくだが、砕け得ぬ闇事件の後で、身体に致命的なダメージを受け、しかし奇跡的に助かったが、その代償として全力を出せる
時間が短くなり、回復力も落ちた、そんな所か?」
「……流石に、アインスさんには分かっちゃいますか。」
分からいでか。
ゼロ距離でお前の砲撃を受けた身としては、今のお前の砲撃は充分強力だが、其れでも物足りないレベルだ。当然だ、セーブして
いるのだからな。
そして今も未だ、前回の戦闘で消費した魔力が回復しきっていない。だからお留守番だ。
夜見との最終決戦の時に、お前が全力で戦えないのは困るのでね。
「分かりました。……じゃあ、ヴィヴィオと趙雲さんを誘って、ランチでも楽しんでますね♪」
「まぁ、其処は好きにしろ。」
何と言うか……我が主よ、なのはが其方に帰還したその時は、三国志の英雄が一緒に付いて行くかも知れませんので、その場合
は、何卒よろしくお願いします。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務121
『遺跡~悲しき真実~』
最後の遺跡、又しても大阪城が再現されているみたいだが、この間と違って、此れは崩壊した大阪城か?って言うか、本当に大阪
が再現されているのか此処は!?
だとしたら何で、あちこちで溶岩が流れてるんだ?しかも、近付いても全然暑くないくせに、小枝を投げ入れてやったら一瞬で燃え尽
きたとか、訳が分からん。
刹那、異界が再現されるって言うのはドレ位のレベルなんだ?
「其れは分からないが、恐らくだが再現された異界と関りを持つ英雄が其処に居るかどうかで決まるんじゃないかな?」
「関係する英雄が居れば再現度は高くなり、逆に居ないと低くなると言う事か。」
まぁ、今回のチームは私、あやね、アーナス、刹那、ハヤブサ、有馬、のぶニャがだから大阪城とは縁が薄いからね……だからと言っ
て此処まで変わる事も無いと思うんだがな。
其れは言っても仕方のない事か――刹那、神器は反応しているか?
「あぁ、バッチリ光ってる……志貴と環が行った遺跡同様、ここにも何か秘密があるみたいだな。」
「最後の秘密か……一体何が隠されているんだろうね?」
「アーナスよ、其れは事を成せば明らかとなる。今は、すべき事をするのみ。」
「リュウ様の言う通りよ。さっさとやる事やっちゃいましょう。」
あやね、お前ハヤブサにだけは従順なんだな……逆に、どんな理由があるのかは知らないが、かすみには辛辣なんだよなぁ?
かすみに聞いたら、異母姉妹だと言っていたが、半分しか血は繋がって無くとも姉妹なのだから、もう少し仲良くした方が良いと思う
んだがな……
「かすみは里を抜けた抜け忍で、私は其れの抹殺を命じられているの。仲良くなんかできる訳ないでしょう?」
「掟と言う奴か。
分からなくもないが、そんな使命などはこの世界では関係ないだろう?……普通に触れ合える機会に、其れをしなかったら何時か
必ず後悔する。
1000年も生きて来た年寄りの忠告だ、聞いておいた方が良い。」
「……考えておくわ。
だけど、年寄りって言うのは止めなさい?貴女が言っても説得力がないわ。」
「若者の意見として聞いておく事にするよ。」
さてと、この遺跡にも魔物が多数存在しているようだが、此れまでの2つの遺跡に倣うのなら、この遺跡にも何らかの『試練』が用意
されている筈だ。
上等だ、どんな試練でも超えてやろうじゃないか!!
――ジャキィィィン!!
さぁ、来い化け物共……我が六爪流に細切れにされたいのならばな!!
『ようこそ、王の一族に連なる者よ。試練を受ける覚悟はおありですか?』
「この声は……叔母上?」
『刻限までに、全ての地を奪いなさい。』
矢張り夜見の思念体が存在していたか。
刻限までに全ての地を奪えと言う事は、制限時間内に全ての拠点を制圧しろと言う事か……ヤレヤレ、この広い異界内では可成
りの難易度だ――其れこそ最初の3000体以上撃破しろよりも難しいかも知れないな。……普通なら。
その程度の難易度ならば、私が居る時点でイージー・モードだ!!
「刹那、私達ならやれる。大丈夫だ!」
「刹那、俺も協力しよう。必ず、試練を乗り越えるんだ。」
「刹那、必ず試練を乗り越えるぞ。こののぶニャがが付いてるにゃ。」
「アインスさん、有馬さん、のぶニャがさん……あぁ、必ずこの試練を乗り越えてやる!!」
ふ、その意気だ刹那。
ならば、景気付けの一発をかますとしよう……おぉぉぉぉぉ!!六爪流究極奥義……超・幻影奇襲!!
――ババババババババ!!!
其のまま、闇に眠れ。
「流石ねアインス。
と言いたい所だけれど、『鬼』を討つモノノフの力、この程度じゃないんでしょう?」
「ふ、勿論だあやね。」
しかし、今回も英雄の幻影が相手だが、これまでに出て来たのはマリー、直虎、環と、前回とは逆に女性ばかりだな?
「敵は女性ばかりか……やりにくいな。」
「お前はそうだろうな有馬……お前のような生真面目な人間には、この試練はやり辛いだろうよ。」
「ふん、こののぶニャがを阻んだのだ、例え女子と言えど容赦せぬ。」
ハハ、有馬とのぶニャがでは対応が異なるが、相手は幻影だから容赦は不要だ……其れが例え仲間の姿をしていても、幻影なら
ば、容赦なく滅する事が出来るからね。
何よりも、英雄の幻影を召喚してくれたと言うのならば逆に有り難い――その気配を探れば、拠点への瞬間移動が出来るからね。
――そんな訳で、瞬間移動を利用して拠点を移動しながら制圧中だから少し待っていてくれ。
――まぁ、説明するまでもないと思うが、私とナイトメアアーナスが無双だ。
そんなこんなで、最後の拠点だが……
『私の前に立つか……覚悟は出来ているのだろうな?』
「私の幻影か……妙な気分だな。」
まさか、私の幻影が現れるとは思っていなかったから、少し驚いたよ。
他の幻影とは違って、紫色のオーラは纏ってないが、暴走状態の私を模しているのか、腕や顔に文様が浮かび上がり、足と腕には
ベルトか……此れで左腕にナハトヴァールを装備していたら完璧だよ。
だが、其れは最強最悪の存在であった過去の私に過ぎない――ならば、私が負ける道理は何処にもない!!
私が破壊神だった過去を変える事は出来ないが、今はその破壊の力を守る為に使っている――ナハトの呪いを、只受け容れてい
たお前とは違うんだ!!
だから消えろ、私の過去よ……せめてもの手向けに、私に思い付く最高の技で逝かせてやる!
咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを貫く光となれ!貫け極光!スターライト……ブレイカァァァァァァァァァ!!!
――キィィィィン……バガァァァァァァン!!!
僅か9歳の身で、私に挑んで来た勇者が編み出した最強最高の集束砲だ……如何に私を模したとは言え幻影如きが耐える事の
出来る攻撃ではない。
だから、大人しく闇に沈め……私と対峙した時点で、貴様の運命は終わっていたんだ。
『ぐぅぅぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
「ふ……燃えたろ?」
私自身が相手とは言え、幻影では話にならん――が、私が居なかったら、この試練を超える事は出来なかっただろうなぁ……自分
で言うのも如何かと思うが、幻影の私であっても、ゴウエンマを余裕で上回っていたからね。
ともあれ、此れで全ての拠点は制圧したんだが……
「よくぞ試練を乗り越えました、勇気ある王の末裔よ。
私は夜見――正確には、その心の欠片。」
矢張り現れたか、夜見……その心の欠片よ。
「貴女が夜見……?
俺が知ってる奴と全然違う……寧ろ、叔母上にそっくりだ。」
「穢れを受け、魔物に堕ちた事で、私の外見は大きく変わってしまいましたから。
いえ、外見だけでなく心も大きく歪んでしまったのでしょう――まさか、愛しい彼方たちを傷つける日が来るなんて……」
「環と志貴から話は聞いている……だが、貴女は封印された事を恨んではいないのか?」
「いいえ、そんな事は有りません――封印を望んだのは、私の方なのですから……私は、この世界の穢れを受けすぎたせいで魔物
になりました。
此のままでは、私が私でなくなる……そう気づいた時、自分から王に頼んだのです。
神器の力を使い、私を泉の奥に封じて欲しいと――勿論、王は反対しました。あの人は、優しい人でしたから。
でも……私は譲りませんでした。
心から愛するものを、何時か自分の手で壊すなんて、我慢ならなかった。――あの人には、辛い思いをさせてしまいました。
私の事など、いっそ忘れてくれればよかったのに……」
「そんな事、出来る訳がないだろう!
王は、ずっと貴女を思っていた……だから、碑にあんな文を紛れ込ませたんだ――俺達は、貴女を救いたい。
王の願い通り、必ず浄化して見せる!!」
「ふふ……熱くて、そしてとても優しい子ね。昔の王に、よく似ている……神器は英雄の力を増幅してあらゆる闇を浄化する。
だけどその力を十分に発揮するには、神器の所有者と英雄の絆が重要になって来る――神器の所有者と英雄の絆が弱ければ、
英雄という大きな力に呑み込まれ、闇を浄化するどころか逆に神器に取り込まれて私以上の魔物になってしまうの。」
此れは、最後の最後で重要な情報が得られたな。
神器の力を最大限に発揮するには、異世界から召喚された英雄と神器所有者の絆が大事と来たか……だが、其れならば何の問
題も無いな。
最初は対立していたが、夜見と言う共通の敵が現れた事で、3つに分かれていた勢力は1つとなり、魔物と化した夜見が仕掛けて
来た彼是を乗り越える事で、私達の絆は強固なものとなっている――其れこそ、次元の壁を越えてな。
「そう。其れならば安心ね。
もう少しお話ししたかったけれど、もう、時間切れのようね。――さようなら、刹那……如何か、幸せに……」
「夜見……さようならじゃない、まだそれは早い。
本当のさようならは、俺達が貴女を浄化して、貴女の魂を解放した時だ――でも、その時まではもうすぐだ……だから、あと少しだ
け待っていてくれ。」
そうだな、さよならはまだ早い。
だが、此れで全ての遺跡の試練を超え、夜見を倒す方法は明らかになった――ならば、準備が整い次第最終決戦に向かうとしよう
じゃないか?
何時までも、夜見を魔物のままで居させる事は出来ないからね!
To Be Continued… 
おまけ:本日の浴場
ふぅ、一仕事終えた後の温泉は格別だ……其れが露天の温泉で、更に御銚子までついていると言うのならば尚更だ。
最高の温泉で、紅葉を楽しみながら、美味い酒を嗜む……此れは、この上ない贅沢だと思うんだが、如何だろう桜花?
「確かに最高の贅沢かもしれないな。
少なくとも、ウタカタでは絶対に味わう事の出来ない事だからね。」
「ウタカタでも、こんな事が出来るよう、『鬼』を討たねばだ――其れは其れとして、一献如何だ?」
「頂こう。酒は嫌いではないからね。
……アインス、次こそは夜見との最終決戦だ――必ず勝とう。そして、勝ってウタカタに戻ろう。」
「言われなくともその心算だよ桜花。」
この世界は居心地がいいが、私達が居るべき世界ではないからね。
何よりも、何時までも此のままでは、ウタカタが『鬼』に撃滅されてしまうかもだからな――最終決戦が間近だが、最終決戦で貴様の
事は、必ず浄化してやるぞ夜見。
お前をあるべき姿に戻してこそ、私達は本当の役目を果たす事が出来るのだからね。
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