Side:アインス


一つ目の遺跡で、夜見は最初から魔物だった訳では無く、この世界を愛していた女神だったと言う事が明らかになった……つまり
夜見を浄化する事が出来れば、最強最悪の魔物が転じて女神に戻る訳なんだが、恐らくそう簡単に行く物では無いのだろうね。
と言うか、其れで何とかなるならとっくの昔にこの世界は滅びへの道を回避していただろうからね。

残る遺跡はあと2つ……其処で何かが分かると良いんだがな。



「何かが分かれば良いが、何も分からなかったとしても、君ならば何とかしてしまうんじゃないかアインス?」

「うん、その可能性は否定しないよ桜花。」

私は生まれながらのチートキャラだから大概の相手を一方的に潰す事が出来るが、其処に更になのはが加わったとなったら間違
いなく誰も勝てないだろうね――多分だが、私となのはが手を組んで本気を出したら、イズチカナタ3体を相手にしても、5分あれば
撃滅できると思う。



「……其れは恐ろしいな。」

「ふ、歩く核弾頭でも呼んでくれ。」

実際に、私となのはが力を合わせれば倒せない敵は居ないからな――此方の攻撃が効く相手ならばね。
そして、夜見には絶対に此方の攻撃を通す方法がある筈だ……その方法が分かったその時に、魔物としての夜見は世界から居
なくなり、本来の女神がもどる、か。
ドレだけ長い間『魔物』で居たのかは知らんが、そろそろ解放されても良いだろう――解放こそが、一番の救いだからね。









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務120
『遺跡~女神の祝福~』










と言う訳で2つ目の遺跡なんだが、今度は大阪城か!!……何とも因果なモノだが、懐かしいんじゃないか幸村?
大阪城と言えば、お前が……



「アインス殿、私が何か?」

「いや、何でもない。只の戯言だ、忘れてくれ。」

これ以上は言ったら駄目だな――私が幸村を語る上で外せない、大阪城の戦での家康を狙った単騎駆けを知らせたら歴史が変
わってしまうかもだからね。
其れよりも、環……



「神器が……光っている……?
 やはり、此処には何か隠されている様ですね――何が起こるか分かりません……皆様、どうぞお気をつけて。」

「だな。
 どうせ敵が出てくるんだろうが、気をつけてりゃ不意を打たれる事もねぇってな。」

「左様ですね時継殿。
 警戒を怠らず、しかし慎重になり過ぎずに進むと致しましょう。」



幸村も真面目だな。
趙雲にしろ幸村にしろ、同じ槍使いでありながらどうして息吹とこうも違うのか……こう言ったら何だが、息吹だって顔はイケメンの
部類なんだから、軽薄さがなくなればモテると思うんだがな?
伊達男と軽薄男は違うと言う事を、みっちりと教えてやる必要があるかも知れないね。

しかし、前回の遺跡では10分間に3000体倒せと言う可成りの無茶振りな試練が待ち受けていた事を考えると、今回の遺跡もま
た、何らかの『試練』が待ち受けていると考えた方が良いかも知れないな。
因みに今回のメンバーは、私、紅月、時継、幸村、ソフィー、かすみ、環だ。
其れじゃあ行くか!



『ようこそ、王の一族に連なる者達よ……試練を受ける覚悟はおありですか?』

「この声は……お母様……!?」

『知恵と勇気で全ての敵に打ち勝つのです。
 但し、時が過ぎれば、敵は強まりましょう。』


「分かりました。この試練、必ず乗り越えて見せます。」



今の声は……此の遺跡にも夜見の残留思念と言うか、女神だった頃の夜見の意識があるようだな?
そして予想通りに試練か……英雄達の幻影が現れたのを見る限り、其れをすべて倒せと言う事か――そして、制限時間内に全て
倒す事が出来なければ幻影が強化される、そんな所だろうな。



「敵は……みんな男の人みたい。気をつけて戦いましょう。」

「気をつけて、ね?
 相手が全員男だと言うのならば好都合だ……時継以外の幻影は、最悪の場合股間を思い切り蹴り上げてやれば即死だろうか
 らな――あそこは鍛えても鍛えきれん。」

「オイこらアインス、恐ろしい事言ってんじゃねぇ!
 お前の力で蹴り上げられたら確実に潰れるだろうが!!」


「幻影相手なら問題ないだろう?」

「野郎にとっちゃ視覚的に痛いんだよ!!」



そうなのか?其れじゃあ仕方ない、精神的ダメージを受けて士気が下がっては大問題だからな。
大問題だから……ジェノサイドカッター!!



――ズバァ!!



襲い掛かって来た三成の幻影を、奥義:自爆、趣味:復活なラスボスの代名詞的必殺技で葬ってみたが如何だろう?
因みに使ったのは、左で蹴り上げた後に、更に右足で追撃する98年バージョン……でもダメージは密着状態パワーマックスで即
死の94だったりする!



「何の事かはよく分かりませんが、蹴りが刃物になるとは驚きですアインス。
 六爪流に限らず、体術ですら全てが一撃必殺……まるで、存在その物が武器であるのではないかと思ってしまいます。」

「其れは褒め言葉と受け取っておくよ紅月。」

実際に私は、存在その物が世界を滅ぼす兵器に等しかったからね。
私が居る以上、幻影の英雄達に後れを取る事は無いだろうが、制限時間を超えて強化されるのも面倒だから、最短で終わらせる
に越した事は無い……だから、少し本気を出す!!



――ゴォォォォォォォ!!!



「アインスさんが銀髪で紅目になった!此れはもう余裕だね!」

「身体に変化を齎す程の強化……凄まじいわね。」

「アインス様、凄いです!
 此れが、『鬼』を討つモノノフの力なのですね。」



まぁ、こんな事が出来るのは私だけだけれどね。
しかしまぁ、男の英雄ばかり再現したモノだな……総勢14人、否、三成は倒したから残りは13人か――数を考えると、英雄だけで
なく、志貴か刹那の何方かが再現されている可能性があるな。

其れだけの人数を、散らばった城内から探し出して各個撃破すると言うのは効率が悪いにも程があるな?
ふむ……ならば、効率的に行くとしようかな。



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……



「ちょ、待てやアインス!お前一体何をする心算だ!?」

「何、少しばかり試練を達成しやすくするだけだ……喰らえ、オベリスク・ゴッドハンドクラッシャー!!



――ドガァァァァァン!!



良し、天守閣から何から吹き飛ばして更地にしてやった。
此れで、英雄の幻影を探して城内を動き回る必要もなくなったな……探さずとも、幻影は全て目視できるのだからな。



「一撃で城を吹き飛ばすとは……アインス殿が戦国の世に居たのならば、さぞかし高名な武将として名を馳せた事でしょう。
 仮にもしもアインス殿が、かの織田信長公の家臣であったら……」

「本能寺の変は起きずに、天下人は信長になっていただろうね。」

ま、其れは兎も角、此れで敵は丸見えなんだから後は撃滅するだけだ。
数は幻影の方が圧倒的に多いが、質で言うなら此方の方が圧倒的に上だからね……幾ら上質な幻影であろうとも、本物には遠く
及ばないと言う事を思い知らせてやれば良いだけだ。
喰らえ、六爪流……狂獣裂破!!



――ババババババババ!!



オヤッさんが鍛えてくれたこの六刀に切れぬ物はない――例えそれがダイヤモンドであっても両断するからね。
そしてやはり幻影では本物の英雄に勝つ事は出来ないな?
紅月は複数の英雄の攻撃を流転で受け流しつつ、繚乱で纏めて蹴散らし、時継は魂のタマフリと銃を使って幻影を打ち倒し、幸村
は十字槍を使っての炎の連撃で幻影を撃滅し、ソフィーは……毎度謎だが、幻影の頭上から巨大なウニを落下させて撃破。
かすみも忍術を駆使して立ち回って幻影を困惑させているみたいだね。

此れで残る幻影は、趙雲、幸村、有馬……男性英雄のトップ3か。



『刻限は近い……急ぎなさい。』



っと、此処で先程の声か。
刻限が近いと言う事はそろそろタイムリミットか――ならば、この一撃で終わらせる!かすみ!!



「分かったわアインスさん。無限天心流……烈風陣風殺!」

「響け終焉の笛……10倍ラグナロク!!」



――ヒィィィィン……ドガァァァァァァァァァァァン!!



私の魔力砲と、かすみの気功波が炸裂し、残る幻影を完全撃滅!!――如何に英雄と言えども、幻影では話にならないな。
真なる英雄の力、夜天の空を見るたびに思い出せ。



「よくぞ試練を乗り越えました、勇気ある王の末裔よ。」



如何やら、此れで試練とやらは終わりのようだな……そして、矢張りお前だったか。



「よく此処まで辿り着きましたね。
 私は夜見……いえ、その心の欠片とでも呼ぶべきもの。」

「貴女が夜見……?
 お母様に、とてもよく似ていらっしゃいます……。」

「小夜も、過去を遡れば王族の一人……おそらく、私の血が色濃く出たのでしょう。
 だから、占いや術に優れているのですよ。」



む?私が居ると言うのに、まるで初めて会った様な対応だな?
もしかして、遺跡に宿る夜見の欠片は夫々が独立した存在であって、意識は共有されていないのか?……だとしたら、前の遺跡
の夜見とは違う情報が得られるかもしれないな。



「ということは……矢張り貴女は、本当に創世の女神で、初代王の妻だったのですね。
 教えてください、貴女は、何故魔物になってしまったのですか?」

「其れは私も知りたいな。
 別の遺跡のお前は、長い間穢れに晒されたからだと言っていたが、其れだけではどうにも魔物になった理由としては弱すぎる。
 穢れをその身に受け続けた結果、魔物になると言うのは分からなくもないが、そうであるのならばその魔物は思考などなく、只只
 管に破壊を行う存在である筈なんだ。
 だが、今の夜見には明確な自我がある……其れを考えると、穢れを一身に受けて魔物になったと言うのは、些か解せん。」

「この世界は元々、魔物が巣食い、穢れに満ちていました。とても人が暮らせる場所ではなかったのです。
 でも……王と民は、元いた場所を追われ、漸くこの地に辿り着いたばかりでした……他に行くところなど、ありはしなかった……
 私は彼等を哀れに思いました。
 だから共に魔物と戦い、穢れを浄化し、大地に恵みを与える泉を創ったのです。
 そうするうちに、私の身体は徐々に闇に蝕まれて行きました……多くの穢れに触れすぎたのでしょう――其処で引き返せば、間
 に合ったのかもしれない。
 ですが、その時、浄化はまだ一部しか済んでいませんでした。
 何時か、闇に堕ちる事は分かっていました……でも、やめられなかった。
 私は……王や皆を、とても愛していたから……」



成程……多量の穢れを一気にその身に受けたのではなく、少しずつ、だが確実に穢れを蓄積させた結果、自我を保ったまま魔物
になったと言う訳か。
お前は、皆の為に、魔物になったのだな……



「其れなのに、私達は彼方の存在を忘れて、悪い魔物として扱って……本当にごめんなさい……」

「謝らないで、愛しい子……私は、彼方達が幸せになってくれれば、其れで充分なのだから……
 如何やら、時間切れみたい……最後に此れだけは忘れないで環――神器は英雄の力を増幅し、あらゆる闇を浄化する力を秘め
 ている。
 でもその力は……」



――シュゥゥゥン……



消えてしまったか。
肝心な部分を聞く事が出来なかったが、神器に英雄の力を増幅する力があり、あらゆる闇を浄化する力があると分かっただけでも
僥倖だ。
問題は、其の力を使うには、何かあるらしい事だが、其れは最後の遺跡で明らかになるだろうから大した問題じゃない。
未だ全容は明らかではないが、夜見攻略の糸口が、少しだけ見えたな。










 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



ふぅ……一試合終えた後は温泉だな……この温泉には癒される。
正直、ウタカタに持って帰りたいぐらいだ――お前も、自分の時代に持って帰りたいとは思わないか元姫?



「其れはそう思う……こんなに気持ちの良い物が有れば、皆の士気も上がると思うから。」

「だよな。温泉は癒しだけでなく、癒しによる士気の高揚も期待できるからな。」

「そう言う事……時にアインス殿、貴女は本気を出すと髪と目の色が変わるけれど、アレは一体如何やっているの?」



アレか……説明するのは難しいな。
分かり易く言うのならば超サイヤ人みたいなものだと言うのが一番なんだが、元姫には超サイヤ人って言っても通じないだろうか
らね……まぁ、アレだ、アレは私だけが使える力――1000年に1度生まれる、伝説のモノノフの力だ。
伝説のモノノフは、其の力を解放すれば、この世の全てを凌駕する力を持つ存在として語り継がれているんだよ元姫。



「そして、貴女がその伝説の存在……凄いわね、アインス。」

「まぁ、私は非常識な存在だからね。」

しかし、私が伝説のモノノフだとしたら、なのはは伝説の局員だろうな――やろうと思えば、なのはも魔力の集中で髪の色を変える
事位は出来るだろうからね。
金髪碧眼のなのは……うん、勝てる気がしないな。