Side:アインス
何とか小夜を取り戻した訳だが、だからと言って今すぐ夜見を討つって訳には行かないな――件の遺跡に、どんな重要な事が隠さ
れているか分からないからね。
この世界の事を第一に考えるなら、即刻夜見を討つべきなのだろうが、夜見を討ってハイ終わりとは行かないからな――故に、夜
見を攻略する為の手掛かりがあるなら、多少の危険には目をつぶって其れを手にしなくてはだ。
まずは、遺跡を攻略――其れからだな。
「うふふ、全力全壊だね?」
「なのは殿、無理はしないでくれ……少しでも辛いと感じたその時は、私の後ろに控えていてくれ。」
「うん!了解だよ、趙雲さん♪」
「私も頑張りますよ趙雲さん!」
……そして高町母子と趙雲には最早突っ込みは不要だな。――前回も言ったが、さっさと家族になってしまえお前等。
ヴィヴィオだって、シングルマザーと言うのもいろいろ問題がありそうだしね?
「フェイトママも居るからシングルマザーじゃない気がするんですが……」
「いや、母親が2人って、其れは其れでオカシイだろ絶対……」
なんかもう今更だが、色々と無茶苦茶だったんだなあの世界も……まぁ、私のような存在を作り出してしまう様な世界だから今更
だな――一体何を如何やったら、私の様なバグキャラを作り出せるのか知りたいモノだね。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務119
『遺跡~いにしえの願い~』
さて、そんなこんなで遺跡探索なんだが、此れが少々厄介なモノみたいだね?
志貴が言うには、神器を持って遺跡に行けば何かが起こるとの事だったが、志貴が見つけた文献の黒塗りの部分を魔法でスキャ
ンした結果、どうやら神器の所持者が何れかの遺跡に入った場合は、他の遺跡は結界が張られて入る事が出来なくなるらしい。
しかも、1つの遺跡につき入れる神器は1つと来た……此れでは戦力を3つに分けて同時に攻略するのは不可能だな。
まぁ、そう言う事なら仕方ないから1つずつ探索して行くしかない――まぁ、移動が便利って事で私だけは強制メンバーな訳だが。
そして、毎度便利な瞬間移動で訪れたのは……此れ、戦場だよな志貴?
「うむ、如何やら遺跡も英雄達の影響を受けているようだ。――此れもまた、英雄の記憶が再現された場所なのだろう。」
「この景色、見覚えがある……私の記憶が再現されているのか。」
如何やらここは、趙雲の記憶が再現されたらしいね?
遺跡すらも変質させるとは、英雄の持つ影響力はどれほどなのだろうな?
取り敢えず、最初の遺跡は志貴と一緒にで、メンバーは私、桜花、趙雲、なのは、ヴィヴィオ、紅月、時継、直虎だ。
「ふむ、神器が反応しているな……矢張り、ここには秘密が隠されているようだ。
何が起きるか分からない……皆、気をつけてくれ。」
「そうだな……最大限の用心を――」
「ようこそ、王の一族に連なる者達よ……試練を受ける覚悟はおありですか?
刻限までに多くの敵を倒すのです。私に力を示しなさい。」
此れは、何処からか声が?
しかも試練だと……成程、神器を持ちし者が遺跡に入ると、試練とやらが発動する仕組みになっている訳か……良いだろう、その
試練とやら、受けてやる!
刻限までに多くの敵と言う事は、制限時間内に規定数の敵を撃破しろと言う事か――だが、具体的にはドレだけの間にドレだけの
敵を倒せば良いのか……
――【10分間に3000体撃破せよ】
待てやコラ。何だその無茶苦茶な条件は!
幾ら私となのはが一緒だからって、10分間で3000体って無茶振りにも程があるだろ!!――まぁ、言っても仕方ない事だ、なら
ばその無茶振りに応えてやる!!
「母上に似た声……夜見の罠か?
だが、其れにしては気配が穏やかだ――澄み切って優しい……嘗ての母上のように。」
「確かに言われてみれば小夜の声にそっくりだ。
だが、小夜は取り戻したんだから夜見の罠とも考え辛いだろう――なんにせよ、今は試練とやらを超えるだけの事だ!!」
「ふ、そうだったなアインス殿。」
この試練を超えない事には遺跡の秘密とやらも分からないからね。
と言う訳で、取り敢えずぶっ放すぞなのは……魔力の集束は充分か?
『Starlight Breaker.』
「準備完了!何時でも行けるよアインスさん!!」
「ならば殲滅する!!遠き地にて深き闇に沈め!!」
「全力全壊!!」
「デアボリックエミッション!!」
「スターライト……ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
――キュゴォォォォォォォォォォォ……ドガバァァァァァァァァァァァァァン!!
私のデアボリックエミッションと、なのはのスターライトブレイカーの合わせ技によって、試練とやらの敵として現れたプニやら玩具の
兵隊やら、分かり易い幽霊やらが纏めて吹っ飛んだな。
序にそいつ等だけじゃなくて、山もフッ飛ばして更地にしてしまったね……うん、この合体技はとっても強力だけど基本的に使用禁
止の方向だね。
「見事な攻撃だアインス殿、なのは殿!!」
「ったくどんな攻撃だってんだ。
今ので一気に試練の規定数の半分を満たしちまったぜ。」
「つまり、今の攻撃で1500体もの敵を葬ってしまったと言う事か……アインス、なのは、君達が味方で本当に良かったと、心の底
から思っているよ。」
「貴女の様なモノノフが居るのならば、ウタカタの里は安泰ですね。」
まぁ、私は存在その物が色々とアレだからね。
取り敢えずこの攻撃での教訓――主人公とラスボスは混ぜるべからず。混ぜたら危険、混ぜすぎカオスと言う事だな冗談抜きで。
だが、開始1分程度で半分減らす事が出来たのは大きいな?
残る1500も少ない数ではないが、特別強力な敵は居ないようなので、この面子ならば残り時間で撃滅は可能だろうね。
「せい!とぉりゃぁぁ!!アクセルスマッシュ……クアドラプル!!」
「えっと、すみません、倒させてください!!」
「この程度、打ち破るのみ!!」
「さて、少々痛い目に遭って頂きましょう。」
「へへ、勇者の力を思い知りな!」
「花と散れ!」
現実にヴィヴィオと直虎は格闘能力の高さを生かして敵をブッ飛ばし、趙雲と紅月は獲物のリーチの長さを生かして広範囲の敵を
蹴散らし、桜花と時継は即興ではあるが前衛後衛のコンビネーションで隙なし。
志貴は神器である月光玉を巧みに操り、私はブラッディダガーで、なのはは誘導弾――アクセルシューターで現れた先から、敵を
撃滅!!
10分間で3000体撃破と言うのは無茶振りかと思ったが、私となのはが組んだこのチームの前では大した試練ではなかったみた
いだね。
そんな訳で敵を撃破しまくって、残るはあと1体だけなんだが……
『ゴアァァァァァァァァァァァァァ!!!』
最後の最後で、まさかお前が来るとは予想外だったよ……ゴウエンマ!!
大型の『鬼』の中でも特に強い力を持った指揮官級の存在――熟練のモノノフですら苦戦必須の難敵……と、普通ならそう思うん
だろうな。
生憎と私は普通じゃないから、普通の常識など通じないさ。
何よりも、ゴウエンマなどこれまで何匹も狩ってるから大した敵ではない。――故に負けん。
「散り逝くは叢雲…咲き乱れるは桜花…今宵、散華する武士が為、せめてもの手向けをさせてもらおう!
はぁぁっ…!せいやっ!秘技!桜花残月!!」
一刀流の超高速抜刀術からの連斬……恐らくは斬られた事にすら気付いてはいまい――せめてもの手向けだ、痛みすら感じるこ
となく逝くがいい。
で、納刀の鍔鳴りがしたと同時にゴウエンマは光となって消えた……此れで試練達成かな?
「よくぞ試練を乗り越えました……勇気ある、王の末裔よ。」
如何やら試練を達成したようだが、其処に現れたのは、全身の毛の色が金色になった小夜?
「よくぞ試練を超えましたね。
私は夜見……いえ、その心の欠片とでも呼ぶべき物。」
「貴女が夜見……?
その姿……母上によく似ている――本当に、私達の祖先なのだな。」
「貴方こそ……初代の王によく似ていますね。本当に、生き写しのよう。」
「そうか……ならば、顔も見たくあるまい。
貴女を利用するだけ利用して封じた事は謝る……私達は、恨まれても仕方ない。」
「いいえ……そんな事は有りません。
今の私が人を恨んでいるのは、長い年月、穢れを受け続けたせいです。穢れは、負の感情を呼び覚まします。
――余りにも多くの穢れを受けたせいで、記憶や感情が塗り替えられてしまったのでしょう。
私は、人も世界も愛していた。だから自ら封印を選んだのに……そんな事さえ、今の私は忘れてしまっている――利用され、汚
名を着せられて、捨てられたと思い込んでいる。
お願いです、どうか私を殺してください。
愛しい世界を、この手で滅ぼしてしまう前に。」
この世界を滅ぼさせはしない――だが、お前の事も殺さない。
世界の厄災になるからと言って、倒せば良いと言うモノではない……実際に、私も其れで救われた存在だからな。――志貴もそう
思っている筈だ。
「え……?」
「貴方を浄化し、元の女神に戻す……其れが、初代の王の願いだ。
英雄達の力があれば、其れも叶う。貴女を、魔物のまま終わらせはしない。」
「……ありがとう。
彼方達も、王も、英雄様方も……本当に優しいのね。
出来れば、手を貸したかったけれど……私はただの残留思念――もう、話せるだけの力すらないみたい。
――さようなら……どうか……貴方方に、幸あらん事を……」
消えた、か。
しかし残留思念と言う事は、残る2つの遺跡にも夜見(善)が存在してると考えた方が良いだろうね――そして、この遺跡を踏破し
た先に夜見を救う方法があるのは間違いないだろうな。
To Be Continued… 
おまけ:本日の浴場
と言う訳で温泉だ。誰が何と言おうと温泉だ!!
なんだが、如何している時継?
「お前が時間を間違っただけだろうが!!」
「あれ、そうだったか?……其れは失礼をしたな――目の毒だったか?」
「俺様を甘く見るなよアインス?
俺は遂に悟りを開いたぜ……お前の色香に惑わされたりは――するわ!!!」
うん、悟りの道は長そうだね。取り敢えず頑張ってくれ時継。
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