「火星!!そして魔法世界!!
  つまり!!、我々が魔法世界だと思い込んでいたこの場所は、実は火星だったんだよ!」

 「「「「「「な、なんだってぇ!?」」」」」」

 『ババーン!』と効果音でも付きそうなハルナの一言に一部を除き一同驚愕!
 まぁ、今自分達がいる場所が太陽系の惑星の1つとなればそりゃ驚くだろう。

 だが、普通に考えればそんな事はありえない。
 一般的に知られている火星と言えば、水はなく大地は岩と砂漠で覆われた荒涼とした場所なのだ。

 こんだけ発展した場所が火星だと言われて、はいそうですかと信じろという方に無理がある。

 「一般魔法理論によると『異界』とは現実世界に重なり合うように存在しているとされています。
  妖精や死者達の住まうこの世ならざる場所――異界。
  日本では竜宮城や高天原が有名ですが、問題は広大な異界にはソレに見合った場所が必要なんです。
  ならばこの広大な魔法世界に対応する場所は現実世界の空間は何処でしょう?」

 「その答えが此れ――火星の大地を触媒に、その上に重なるように存在する幻想世界――それが『魔法世界』さね。」

 案の定暴走した面子は、のどかと和美が適切な説明で鎮める。
 まぁ、鎮めたら鎮めたで今度は『火星だからなんじゃ〜い!』と言った騒ぎが起きているのだが…


 だが、その騒ぎとは別にネギと超は魔法世界地図に見入っていた。

 「造られた世界…!その可能性は極めて高かった…なんで今まで…『文明発祥の地』『神代の力』『黄昏の姫巫女』『始まりの魔法使い』…全てが符合する。
  『人造異界の存在限界・崩壊の不可避について』論文1908年…でも作られたのは何時?ソレによって全てが…
  当然麻帆良を含めた魔法組織上層部は此れを知って…けど情報が足りない…でもあと幾つかでピースが…


 「そう言う事か…確かにテラフォーミングで火星を居住可能にしたのだとしたらあの荒廃は有り得ない…幾らなんでも酷すぎるネ。
  だが、此処が造られた世界で、ソレの維持には膨大なエネルギー必要だとしたら如何だ?有言の力は何時か枯渇し…
  いや、だがならば何故アレだけの事が?何故私達は地球に資源を求めたんダ…まだ情報が足りないネ。


 天才2人はなにやらぶつぶつ。
 何かを掴みかけているようだが決定打が無いと言うところだろう。

 そしてもう1人、稼津斗もまたこの地図を見入っていた。


 ――人造異界…造られた世界に人あらざる亜人……この世界の秘密とは、まさか…


 こっちもこっちで何か掴んでいるようだった。











 ネギま Story Of XX 93時間目
 『世界の秘密とは…?』











 「あの、稼津斗先生、ネギ先生、超?」

 「3人ともドナイした〜〜?ネギ君と超りんはぶつぶつ言ってて怖いえ〜〜?」


 その3人を思考の海から呼び戻したのは刹那と木乃香。
 まぁ、地図を見たままぶつぶつ何かを言ったり、或いは無言だったら気にもなる。

 「いや…少し考え事をな…」

 「うむ…どうやら魔法世界、引いては私がいた火星の荒廃の秘密に辿り着いたかも知れないヨ。」

 「超さんもですか…僕もです。とは言え未だパズルを完成させるためのピースが足りない。
  ですが、全ては『繋がっている』…父さんの事も超さんのことも…そして僕の事も全てが。」

 この3人も夫々の形でこの世界の事を考えていたのだ。
 特にネギは、事こう言う事になると視野が爆発的に広くなる。

 稼津斗と超以上にこの世界の核心に触れたのかもしれない。

 情報は足りない。
 だが、あと1つの重要情報を得ることが出来れば、一気に答えは導き出されるはずだ。

 「夏美さん、僕は貴女に最大級の感謝をしなくちゃいけません。」

 「へ?」

 「夏美さんが最も重要な鍵を見つけてくれたのかもしれません。
  父さんや僕の母が挑み戦ったと思われる――魔法世界の謎の鍵をね。」

 「えっ?あ、うん…どういたしまして?」

 イキナリ感謝されても何が何だがではあるが、少なくとも自分が言った事に関係している事は分ったのだろう。
 戸惑いながらも夏美は返事をする。

 まぁ、自分が言った事が大きなヒントになったと礼を言われれば訳は良く分らなくとも嬉しいものだろう。


 「和美、可能な範囲で舞踏会開催時間までにこの世界の秘密に関係ありそうな情報の収集を頼む。」

 「お任せさね。千雨ちゃんも手を貸してね?」

 「わーった。ハッキングなんかは私のアーティファクトの方が向いてるからな。」

 稼津斗も和美に指示を出し、ネギの言う『足りないピース』を見つけんとする。
 和美も千雨に協力を仰ぎ、これなら可也の情報が期待できる。

 ともあれ、夏美の何気ない一言が事態を進展させた――ソレは間違いないだろう。








 ――――――








 
――メガロメセンブリア信託統治領・新オスティア総督府


 日は落ち、街灯が灯り、更には夜空に幾千もの花火が打ちあがり、華やかな雰囲気があふれ出している。
 そして、その場に居るのは上流階級と思われる着飾った紳士淑女が沢山。

 「うひゃ〜〜…」

 「な〜〜んかセレブって感じだね〜。」

 容姿では一切負けていない蒼き翼+αの面々も、体験した事のない上流階級の社交場にやや緊張気味。
 とは言え比率で言えば『楽しみ7:緊張3』程度。

 序でに言うなら彼女達とて周囲のセレブからちょっと注目されている。
 何故ならタイプは違えど全員が飛びっきりの美少女であるし、なにより――

 「如何した?」

 「早く来いや。」

 「行きましょうか、皆さん?」

 大会優勝者に準優勝者、更に英雄殿が一緒なのだ、ソレは目を引く。
 尤も、此処で騒ぎ立てたりしないのは上流社会だというところか。


 「あ、髪下ろしたんですかアスナさん。イイですね、似合ってますよ?」

 「こんな服着たのも、最後は何時だったかな?」

 自然とこんな会話も……女性は先ず褒める――流石は英国紳士である。


 「ホンマに似合ってるでアスナ〜♪本物のお姫様見たいや。」

 「木乃香の方が良く似合ってるわ……って、刹那は何を着ているのよ?」

 「は?」

 だが、着飾った美少女達の中で、何故か刹那スーツ姿。
 刹那の凛とした雰囲気ゆえ良く似合っているが年頃の少女としてこのチョイスは如何なものか…

 「お前は何か?舞踏会の出席者じゃなくてボディガードか何かか?」

 「いやまぁ、私はお嬢様のボディガードみたいなものですし…」

 「拙者ですらドレスだと言うのに、ソレは如何なものでござろうか…」

 確かに。
 楓も他の少女達と比べれば地味ではあるがワンピースタイプのドレス(黒)を着用。
 まぁ、動き易さを重視してのチョイスだろうが、シンプルなデザインは楓によく似合っている。

 だがしかし!
 刹那のスーツは如何なものか?
 確かに木乃香と一緒だと、お嬢様と護衛の剣士の様で実に絵にはなる。

 絵にはなるが此処は矢張りドレスを着てくるべきだろう、舞踏会だし何より刹那だって美少女なのだから。
 隣の木乃香もちょっぴり苦笑いだ。


 「因みにそのスーツにOK出したのコイツやで?動きやすそうで良いですね〜とか言って。

 「「なん…だと?」」

 そしてスーツの決め手となったのはネギだった。
 嗚呼英国紳士、女性は何でアレ先ず褒めるが此処で最大級の仇となってしまった。

 刹那も刹那である。
 もし感想を聞いたのがネギでなく稼津斗や他の女子だったらスーツは却下されていただろう。

 が、ネギに感想を聞いたことにより即刻採用!
 これはもう仕方ないのかもしれない。

 尤もだからといってソレで終わるかと言うとそうでは無い。

 「コタロー君!告げ口は男らしくない…!」

 「あぁ?人のせいにすな、このボケネギーー!!」

 「先ず褒める…ソレは良いが褒める所を考えような英国紳士。」

 「というか先ずは女性の正装云々を頭に叩き込みなさい…」

 「カヅトとアスナさんまで!?」

 小太郎、稼津斗、あすなの突込みを受けネギに味方はいない。
 なお、本名で呼んでしまっているが、招待を受ける旨をクルトに伝えた際に手配は解除されているので無問題だ。

 そして、このちょっとした喧騒をラカンは何処か懐かしそうに見ていた。
 もしかしたら嘗ての『紅き翼』での賑やかな日々を稼津斗達に重ねているのかもしれない。


 「なぁ先生、ちっと良いか?」

 「千雨さん?」

 その喧騒に割って入ったのは千雨。
 彼女もまたシンプルな白のドレスで確りと着飾っている。

 「朝倉と調べてたこの世界の『秘密』って奴なんだが…あれは如何にもイヤな感じがする、イヤなニオイだぜ?
  未だ何も分っちゃ居ないが、此れだけは予想とは言えハッキリ言える。
  此処で一歩踏み出しちまったら、アンタはもうあのバカバカしくも平和な麻帆良の日常には戻れなくなる…そんな気がする。
  『後戻り不能地点(ポイント・オブ・ノーリターン)』てやつだ――もう一度聞いておくぜネギ先生…」

 其処で一旦言葉を切り真剣な眼差しでネギを見る。
 いや、いっそ『射抜く』と言う方が的確かもしれない真剣で鋭い視線だ。

 凡そ女子中学生のできる眼差しでは無い。
 一般人なら萎縮するくらいの鋭さがその視線にはある――ソレだけ千雨も真剣ということだ。

 勿論ネギもそれから逃げはしない。
 此方も真剣な眼差しで千雨を見る。

 「…アンタ本当にあの親父さんの事を知らなきゃダメなんだな?
  麻帆良に戻って私達と楽しくバカやってるだけじゃ……やっぱダメなんだな?」

 発された一言に誰も何も言わないし言えない。
 ネギの過去はこの場の略全員が知っている――理由は如何アレ父親を探している事も。

 「…ありがとうございます千雨さん、闇の魔法体得の時と言い気を遣ってもらってばかりですね…」

 だからネギも答える。
 止まれないと…

 「でも千雨さん、僕は麻帆良に戻るために進むんです……折角皆の協力もあって此処まで来たんですし。
  この世界に父さんや母さんが戦い挑んだ秘密があるなら僕はソレを知らなきゃいけない。
  両親が何を思い、何に悩み、そして何を目指したのか――その答えが目の前にあるんです。
  此処で引き返してしまったら僕は一生後悔する、無事に麻帆良に戻ったとしてもきっと。
  だから、此処は進ませてください――僕が僕であるために!」

 言いきったその顔に迷いは無い。
 大人モードとは言え、ソレは間違いなく『一人前の男』の顔であった。

 「ソレに…ソレを知らなかったら――本気でぶん殴っても多分スッキリしないと思いますしね。」

 そして本音。
 何が如何有ってもナギをぶん殴るのは決定事項であるらしい。


 全員思わず笑ってしまう。
 如何にもネギの決意は固い、まるでダイヤモンドだ。

 「親父を殴るために親父を探す……まぁ世界的に見ても類を見ない親探しの理由だな。」

 「ったく…まぁ其処まで言われちゃ…「フフ…フハハハハハハハハハ!!!」!?」

 何故か突然の笑い声。
 出所は言うまでも無くラカンだ。

 「ワ〜〜ッハッハッハッハ!!」

 「なう〜〜!?」

 そして何を思ったか踏み込みからの鋭い横蹴り一閃!
 紙一重でネギはそれを避けるが、ラカンの眼光は本気のソレ。
 本気と書いて『マジ』と読む感じだ。

 続いて繰り出された拳を、中国拳法式の防御で点をずらし直撃を回避。


 したのは良いが、拳圧がそのまま飛び道具になって宮殿の一角を粉砕。
 まぁ、明りも灯っていないから誰も居ないのだろうが、改めてこの男常識外である。

 「うむ!」

 「『ウム!』じゃないですよ!何してるんですか〜〜!!」

 マッタクである。
 が、当のラカンは涼しい顔。

 と言うよりも感心した感じだ。

 「ふ…術式装填無しで俺の蹴りと拳を避けたじゃねぇか……自分でスゲェと思わないか?」

 「あ…」

 言われて気付く。
 確かにとっさの事で闇の魔法の術式装填は使っていなかった。


 にも拘らずラカンの鋭い蹴りと拳を無傷で避けられたのだ――此れは凄い事だ。

 「どれ、見せてみ?……ハハッ、いい感じに成長してんな?ドンだけ相性良いんだテメーは?
  引き出す力も加速度的に大きくなってるが負担もでかいだろ?」

 袖を捲ってみれば、ネギの腕には闇の魔法特有の紋様が。
 以前よりも強くハッキリと浮かび上がっているのを見ると、相当に身体に馴染んできているのは間違い無さそうだ。

 「まぁ、全力戦闘もあと3回くらいなら大丈夫だろ?帰ったらエヴァに診て貰えよ?

 「あ、はい…」

 馴染んできてるとは言え負担はある。
 ソレを注意した上で、だがラカンは何処か嬉しそうでもある。

 「ウム、マジで俺が教える事はもうねぇな――免許皆伝だ。
  …折角だからラカン3級をやろう。ひょ〜しょ〜じょ〜〜〜〜。

 「いりません。」

 だが矢張りラカンだと何処かでギャグになってしまう。
 まぁ、ソレが人柄と言えばそうなのだろうが。

 「まぁ何だ、何にせよお前はもう――――――力を手にした一人前の男だ。
  男だったら仲間を護れ。ダチを護れ。テメェの惚れた女を護れ。そしてそいつ等が居る世界を護れ。
  自分のためじゃなくな――ソレが男の力の使い方ってもんだ…これ豆知識な。

 其処から一転、真面目な表情で放った一言は、実に響いた。
 嘗て力を持ちながらも真に護るべきものを護り通せなかった男の言葉ゆえに重みが違う。

 そしてソレに何よりも共感しているのは稼津斗だ。
 稼津斗もまた最強の力を持ちながらも世界を護り救う事は出来なかったのだから…


 「まぁ、お前等なら俺が態々言わずとも分っちゃいるだろうがな。――!…つー訳で俺トイレ!」

 「「「「「「「は?」」」」」」」

 一瞬、何かを感じ取ったかに見えたラカンだが、何故かトイレ宣言。
 シリアスどっ白けである。

 「あ――――ソレとだ、今から会う総督相当頑丈だから気に入らなきゃ2、3発分殴ってやれや。」

 「はい!?」

 「あぁ、ブッ飛ばしても問題なしか。まぁ、瞬獄殺喰らっても生きたたからな。

 そしてトンでも発言。
 まあ本よりその心算だったから問題は無い。

 「けどまぁ、ボコるなら聞くこと全部聞いてからにしろよ?
  それとお前等先行って良いぜ――何しろ小じゃなくてだから。俺のはなげえぞ?

 もうどうしようもない、ラカンとはこういう人なのだ。


 「まぁ、先に行くか。綾瀬達との待ち合わせもあるしな。」

 と言う訳で一行は舞踏会会場へ。
 尚、稼津斗の腕に大会でパートナーを務めたリインフォースが抱き付いていた事を追記しておこう。








 ――――――








 ――スゥ…



 華やかな総督府の塔の1つ。
 『始祖アマテル』の石像を頂く塔に、2人の人物が降り立った。


 スーツを着込んだフェイトと、ドレス姿のセクスドゥム。
 どちらも変身魔法でも使っているのか大人の姿だ。

 「―――何も知らない、哀れで儚い木偶人形達…」

 「人の自我なんて、錯覚による幻想に過ぎないといってもこの場合…慰めにもなりはしないわね。」

 相変わらずの冷めた目で眼下の人々を見下ろす。
 まるで作り物その物の目だ。

 「まぁ僕達も大差は無いかな?だけど今の僕には、ネギ君、君が――

 「氷薙稼津斗…お前こそが私には――



 「ヤレヤレ、頭の良い馬鹿の言う事ぁ、敵でも味方でも一切訳がわからねぇな。」

 其処に静かに響く声――ラカンだ。

 トイレは嘘方便、この2人を感じ取ったのだろう。
 だからこそ他の面子を先に行かせたのだ。

 「懐かしい姿じゃねぇか…ネギに合わせたか?」

 「貴方が出てくるとは意外だな…」

 「世界の事なんて如何でも良い人だと思ってたけど?」

 語気は強くない…だが、其処に込められた威圧感は半端では無い。
 特にラカンからあふれ出しているソレは、一歩間違えば総督府が潰れかねない。


 「ケッ、よく言うぜ――俺『だけ』に分る様に出て来たくせによ…そんだけ気配を変えられちゃ、兄ちゃんでも分りゃしねぇ。
  20年前の1人目、10年前の2人目…その2人を相手にしてなきゃ大凡テメェ等とは気付けねぇだろうよ。
  まぁ、ソレはともかくだ…確かに世界なんざ如何でも良いぜ?…万民が平和を謳歌できる世界だってんならな。
  だが、テメェ等はソレをぶっ壊す心算でいんだろ?だったら流石に無視はできねぇ…」

 瞬間、闘気が膨れ上がる。
 舞踏会の高揚した気に紛れて稼津斗にも気付かれないだろうが、相当に強いレベルだ。

 「ソレにだ…次代を担うガキ共がアンだけ頑張ってるってのに、オジサンがテメェのケツの拭き残しそのままってのはカッコワリィからなぁ!」

 最強の英雄、千雨曰く『チート無限のバグキャラ』――ジャック・ラカン。
 全力モードで、いざ出陣―――!!














  To Be Continued…