決勝戦翌日の朝。

 「…やっぱりこうなったか。」

 「飲みすぎは良くないよ…」

 「未成年のアルコールはダメだと…」

 「後先考えずに飲みまくればこうなりますやろな…」

 稼津斗とアキラと高音と千草の前には狂乱の宴の成れの果てが…
 ネギはコピーエヴァに、小太郎は夏美に、刹那は木乃香に夫々抱き枕状態。
 美空とココネと愛衣はがっつり飲まされてKO!

 酔った勢いで脱いだのだろうか?裕奈と和美とハルナは何でか上半身下着姿。
 リインフォースは亜子と桜子に枕にされてるし、アスナはラカンを枕に。

 其のラカンは大イビキで、のどかと楓はソファーでぐっすり。
 古菲と超は日課なのかとっくに目覚めて太極拳の真っ最中。

 「酒量が増えた辺りで、一口も飲んでない大河内と高音を避難させたのは正解だったな。」

 「うん、あのままだったら絶対飲まされて偉い事になってたと思う…」

 「私の言うことなど聞いていませんでしたよねこの人達は…」

 尤も稼津斗は稼津斗で、アキラと高音を避難させつつ、自分は千草と一緒に結構な量の酒を煽っていた訳なのだが…
 それでもマッタク酔って無い上に、二日酔いにもならないのだから見事なチートっぷりである。(千草も同様である)

 「取り合えず、今後の行動指針は全員が目を覚ましてからか…」

 それから凡そ30分後には全員が目を覚ましたが、リインフォースとラカンにコピーエヴァを除いて全員が見事に二日酔い。
 亜子の魔法薬でも完全には回復せず、結局全員が回復したのはそれから更に1時間後である。
 『酒は飲んでも飲まれるな』の良い教訓だっただろう。











 ネギま Story Of XX 87時間目
 『行動指針決めましょう』











 さて、全員が回復した所で場所はハルナ所有の『グレートパル様号』の内部。
 ネギと小太郎は久々に本来の『子供の姿』に戻っている。

 「さてと、それじゃあ全員が回復した所で現状の確認と今後の行動指針と行こうか?」

 兎も角、これからのことだ。
 目下最大の目的であった『奴隷身分の3人の解放』はなされた。

 ならばその次――最大の目的である『麻帆良に帰還』が来るわけだが、此れが中々一筋縄では行かない。

 其処で、和美や千雨達が収集した情報が必要になる訳だ。


 「大会期間中に集めたデータなんだけど…結構いろんな事が分ったよ?」

 その和美がアーティファクトを展開し、あっという間にブリッジは情報管制室状態に。
 光学映像でオスティア周辺の航空地図が映し出され、其の地図自体にも色々書き込みが。

 其の書き込みこそが得られた情報云々なのだろう。

 「先ず、私等が帰還するのに絶対必要になるゲートポートだが…其の位置を特定する事が出来たぜ?」

 「「「「おぉ!!」」」」

 もたらされた情報は初っ端から一番欲しいものだった。
 麻帆良に帰還するには絶対必要となるゲートポート、其の位置が特定できたと言うだけでも大きな収穫だろう。

 「場所は地図の左上、かつての空中王宮の略中央――多分王宮内部に有ると思われるね。」

 場所は現在地から其れ程遠い場所では無い。
 この飛空挺なら数時間あれば到着できるだろう。

 それ自体は問題ない。
 問題ないが、其れが存在している場所には問題があるようで…

 「よりにもよって此処か……20年前の大戦の最終決戦地じゃねぇか…」

 そう、其の場所は20年前の大戦の最終決戦地。
 ラカン達『紅き翼』のメンバーが乗り込み、そしてナギが敵方の大将を討ち取った場所だ。

 「此処が…」

 「おうよ。しかも――少なくとも10年前までは『完全な世界』の残党共が根城にして居やがった場所だ。
  つーか、アーウェルンクスの類が現れたとなると、又連中の根城の可能性ってのも否定できねぇなこりゃ。」

 しかも敵の根城と来た。

 「ラカンさん正解。
  でも、其処だけじゃなくてその下の部分ね?此処も廃墟が有るんだけど、どうやら其処も連中の根城の一つっぽいんだよね。
  私のスパイゴーレムが、前に街でやりあったフェイトの部下2人が此処の建物に入っていくのを確認してるしね。」

 根城も1つでは無いらしい。
 尤も、此れだけの情報を短期間で掴むと言うのは相当なことなのだが…

 「分り切っていた事だが、帰還までに連中と事を構えるのは確実か……他には?」

 「有るんだけど…吉報なのか凶報なのか微妙だぜ?
  連中の根城――地図で言うと下の方の建物から、茶々丸が『蒼き翼』のバッジ反応を2つキャッチした。」

 「「!!!」」

 続いての情報には流石に驚きだ。
 敵のアジトからバッジ反応という事は、つまり其のバッジの持ち主は捕らわれの身と見て先ず間違いないだろう。

 「となると、アンナ、綾瀬、雪広のうち2人が人質状態と言う訳か…
  真名とクスハなら、仮に捕まったとしても自力で脱出するだろうからな。」

 「まぁ、たつみー隊長とクスハならそうやろな。」

 で、捕らえられてるのが誰なのかも速攻で目星がつく。
 稼津斗の従者2人だけはありえないと誰もが思っている辺り矢張り稼津斗組はチートである。

 「取り敢えずは行方不明者2名の居場所が判明したと言う事で良しとしましょう。
  奴等が又僕達に仕掛けてくるのは略間違いありません――仮に隠密作戦を決行して2人を助け出したとしても同じ事。
  僕たちが委棄されたゲートポートを使おうとすれば奴等は必ず仕掛けてくるはずですから。」

 「だが、こっちとて手を拱いて見ているわけじゃない――こっちから仕掛けるぞ。」

 其れは其れとしても、仲間が捕らえられているなら救出は必須。
 更にどんな賽の目が出てもフェイト達との戦闘は不可避――と言うならばやるだけだ。

 自分達から仕掛けた上でフェイト達を正面から鎮圧して、捕らえられている2人を救出。
 後は其の外のメンバーを探し出して委棄ゲートポートを起動して麻帆良に帰還するだけだ。

 無論簡単に行くことではない。
 フェイト達だってどんな手を使ってくるか分らない。

 だが、何が来ようと正面からブチ砕いて進むのがこの面子だ。

 「こっちから仕掛けるでござるか……よい案でござるな。
  ゲートポートの襲撃以来、負けないとは言えこちらは常に後手に回っていたでござるからな。」

 「敵の場所が判明した今、今度はこっちから先手を打つ――良い手だと思います。」

 誰も反対意見は無い。
 やるとなったらとことんやるのが3−A!

 高音と愛衣も異論は無い。
 こうも分りやすい敵役を(少なくとも高音が)放っておく筈がない。


 「作戦開始は30時間後、其れまで全員身体を休めて、身体から完全にアルコールを抜いておけ。」

 「「「「「「「「「おい〜〜っす…」」」」」」」」」」

 そして、最後に作戦結構時刻と休養+酔い覚ましを稼津斗が言い渡して作戦会議は終了。
 これからは各々休養と言うなの自由時間だが…


 「んじゃあまぁ、時間が有る訳だし坊主には約束通り母親の事教えてやるとすっか!」

 「へ?」

 「名に呆けた声だしてやがる?約束したろうが?」

 其の時間を利用してラカンがネギに母親の事を教えるらしい。
 まぁ、此れは約束であるから当然だし、今を逃せば或いは何時になるか分らないだろう。

 「つってもそんな難しい事じゃねぇ。
  坊主、お前の母親は此処オスティアの皇女様――アリカ・アナルキア・エンテオフュシアだ。」

 「え?」

 「テメェの国と民を護るために自ら戦場に出たんだ、俺達と一緒によ…
  一部の馬鹿ヤロー共は本質見ねぇで『厄災の女王』なんて呼びやがるがそんな事はねぇ。
  お前の母親は誰よりも――それこそ俺達『紅き翼』の面々の誰よりも『英雄』って呼ぶに相応しい、いい女だったぜ。
  アイツはお前さんの事を心の底から愛してただろうが…自分とナギの子供ともなれば何処の誰が狙うか分らねえ。
  だから生まれたばかりのお前をウェールズとか言う旧世界の片田舎の魔法使い村に託したんだ――お前を護るためによ。
  本当は母親としてお前の事を育てたかったろうが……悲しいよな。」

 自らの母親の正体に驚くネギだが、ラカンは知っている事をドンドン話して行く。
 あくまでラカンの主観だが、恐らく嘘は無い。

 「ナギのバカヤローが10年前に行方を眩まして、アリカもお前をウェールズに預けてからの消息はわからねぇ。
  けどな、ナギが生きてんならアリカも生きてるはずだぜ――あの2人は見ててムカつく位に仲良かったからな。」

 「ラカンさん…」

 「ナギを見つけたらブッ飛ばすのは結構だが、アリカと会うことができたら…甘えてやんな、思いっきりな。」

 「……はい…!」

 初めて聞いた自分の母のことに、思わず胸が熱くなる。
 無理も無い…如何に強くとも未だ10歳の子供が母親が恋しくない筈は無い。
 一度も会った事がない母親の事が聞けただけでも嬉しかっただろう。


 だが其れとは別に気になる事も有った。

 「…ジャック、エンテオフュシアってまさか…」

 「お?流石は兄ちゃんだな、気付いたか。おうよ、姫子ちゃんと同名だ。
  まぁ、アレだな姫子ちゃんも歳は離れてるがアリカの娘と言えるかもな存在だからなぁ?
  つまりなんだ、坊主と姫子ちゃんは姉弟って事になるなこりゃ!!」

 「はい!?」

 「…やっぱり。」

 更にトンでも事実発覚!
 ネギの母親が誰かよりも、寧ろこっちのほうが3−Aの面子的には吃驚仰天だ。
 アスナは『アスナ』としての記憶を取り戻した頃からある程度予想していたようだが…


 「ネギ君とアスナが…」

 「姉弟?」

 「うっそ〜〜ん…」

 「マジすか…」

 そうでない連中は皆『ポカーン』状態。
 母親の情報が、思わぬ事実を曝け出す結果になってしまったようである。








 ――――――








 さて、方針は決まったとは言えそれ以外にもやる事はある。
 捕らわれた2人を助け出した後は、他の行方不明者の探索が待っている。

 其れがすぐ見つかるとは限らない故に当面の食料や船の燃料は確保しておかねばならない。

 なので、稼津斗とネギ、そして夫々のパートナーからのどかとアスナがオスティアの市街地で只今買い物中。
 なお、街中なのでネギは大人モードでアスナは認識障害効果のある眼鏡とネコ耳+尻尾で亜人に変装中である。


 「ナギよ、魔法世界ってのは米無いのか?パンも悪くないがいい加減米が食いたくなってきたぞ…日本人として。」

 「確かに、そろそろ白いご飯とお味噌汁が恋しくなってきましたね…」

 買い物は平和そのもの。
 稼津斗とのどかはそろそろ和食が恋しくなっているらしい。

 材料さえあれば裕奈と木乃香で見事に料理してくれるだろうが如何せん材料が無い。
 魚はあれど米は無い、塩は有っても味噌と醤油は売ってないのだ。


 「魔法世界は現実世界と違って水田が出来る気候じゃないのよ。
  長時間確保できるほどの水道設備がなされてないのも有るけど、どちらかと言うと種的に強い麦が主流なのよ。」

 「そうなのか?なら諦めるしかないか…」

 無い物ねだりをしても仕方ない。
 あるもので賄うしかないだろう。


 とは言え買い物そのものは困る事は無い。
 大会の優勝賞金こそ亜子達の解放に使ったが、其れまでのファイトマネーはガッツリ有るのだ。
 多少買いすぎたとて何の問題も無い。

 寧ろ『買えるだけ買え』の勢いだ。


 「できるだけ日持ちのする物がいいですね……」

 「ドラゴンの缶詰?此れって美味しいんでしょうか?」

 「まぁ、少なくともドラゴンの肉は美味だったから缶詰もいけるんじゃないか?」

 「ドラゴンの缶詰はオスティアの名物品よ?」

 次々と必要なものを購入して行く。
 店の方も店の方で、大会優勝者と準優勝者が女性を連れての来店と言う事で大サービス。

 当面の食料と燃料は一切不安の無いレベルで揃える事が出来たのは嬉しい誤算だろう。






 後は購入したものを飛空挺に持ち帰れば街でやる事はお終い。
 作戦決行までゆっくりと休んで英気を養えばいい。



 だが、そう言う時に限って予想だにしない事が起こるもので…


 「ホラ、もう…アイスが頬っぺたについてますよユエさん!」

 「あ、これは失礼なのです…」


 マッタクの偶然。
 本当に偶然。

 ともすれば神の悪戯としか思えないようなタイミング。


 「えっ…?」

 飛空挺に戻る途中にばったりと遭遇したのは或いは親友同士の運命だったのか…?


 「ユエ?」

 「夕映さん!?」

 「綾瀬?」

 「ゆ……え…?」


 稼津斗達の前に偶然ばったりと行方不明者の1人である『綾瀬夕映』が。


 期せずしての再会。
 此れは大きな収穫だろう。







 只一つ、夕映が今現在『記憶を失っている』と言う事を除けば――
















  To Be Continued…