拳闘大会決勝戦当日、既に会場は超満員札止め状態だ。

 無理も無い。
 今大会のダークホースとして注目を集めてきた人気トップ2による決勝戦なのだ、期待するなと言う方が無理だ。

 会場は、指定席、自由席、立見席ともに満杯!
 モニターが設置してあるレストランも多くの客で賑わっている。


 そんな熱気に包まれた闘技場では、稼津斗&リインフォース組とネギ&小太郎組が会場入りを済ませている。
 開始の合図があれば今すぐにでも飛び出さん勢いだ。


 お待たせしました!此れより拳闘大会、ナギ・スプリングフィールド杯、決勝戦を開催しま〜〜す!!

 「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」


 そして実況のアナウンスで熱気は更に加熱する。
 稼津斗達もこの熱気は感じて居るだろう。


 大会史上初のルーキー同士の決勝戦!しかもこの2チームはどちらも実力は超一流!
  勝つのは伝説の英雄を打ち負かしたナギ&コジローペアか!?
  それとも瞬殺・秒殺の山を築き、準決勝では謎の融合魔法まで見せてくれたエックス&ルインペアか!?
  兎に角この一戦が今大会最後の試合!準備は良いか〜〜!?


 「「「「「「「「「「おぉ〜〜〜〜〜〜!!」」」」」」」」」」

 それじゃあ、決勝戦――試合開始ぃ!!

 戦いの火蓋が切って落とされた。











 ネギま Story Of XX 85時間目
 『全力全壊決勝戦!』











 だが、開始の合図を受けても双方動こうとはしない。

 開始合図が聞こえていないのか?
 否、そうでは無い。

 良く見れば、闘技場の略中央で軽く火花放電が起きている――そう、此れは気組み。
 稼津斗とリインフォースの発する気と魔力、ネギと小太郎の発する気と魔力がぶつかってスパークを起こしているのだ。

 「…いい感じの気と魔力だな。」

 「ああ、マッタク淀みがなく澄んでいる。あの子達の努力が良く分る。」


 「っか〜〜…さっすがにあの2人の気と魔力はゴッツイな!」

 「うん。でも僕達だって負けない!」

 暫く其の状態が続き、火花放電は次第に強くなる。
 そうなってくると、観客もこの睨み合いが只の睨み合いでは無いと分かるだろう。

 高まった其れは、遂に弾けて軽く土煙があがる。
 ウォーミングアップは完了といった所だろう。


 「行くよ、エックス!」

 「行くでルイン!魔帆良祭のときみたいに勝たせてもらったんや無くて、今度はキッカリ勝たせてもらうからな!」

 気組みが終って、先に飛び出したのはネギと小太郎。
 凄まじいスピードで稼津斗達を強襲!

 ネギは雷天双壮、小太郎は人狼黒影装を夫々展開し全力全開!

 初っ端から出し惜しみしないで突っ込む気だろう。


 まぁ、悪い手では無い。
 ネギも小太郎も歳を考えれば圧倒的に強いと言えるが、稼津斗とリインフォースにはマダマダ及ばない。

 ならば小手先の技を忘れて、己の全力を打ち込む方が遥かに有効だ。


 ネギは稼津斗、小太郎はリインフォースに突撃!
 奇しくもこの組み合わせは、麻帆良武道大会で戦った者同士だ。

 麻帆良武道大会での結果で言うならネギとリインフォースにとって、此れはリベンジマッチ。

 「勝たせてもらうよ!」

 「来い、ナギ!」


 「負けへんでルイン!」

 「いや、魔帆良祭で勝ったのはお前だろう?」

 「枷取っ払ってもらって、しかも拳砕けた事理由に降参……治せたはずの怪我を治さないで降参やったんやろ?
  そんなん殆ど『勝ちを譲ってもらった』様なモンや無いか!今度はキッチリ勝つ!」

 「そうか……ならば砕かれた拳の礼をキッチリ返さないといけないな!」

 が、小太郎にとってもある種のリベンジマッチと呼べるものだった。


 そして始まったこのバトル。

 稼津斗とネギ、リインフォースと小太郎のどちら組み合わせも先ずは近距離の格闘戦だ。

 千磐破雷!

 剛爆拳!!

 其の格闘も出し惜しみ無しの真っ向勝負!
 行き成り『千磐破雷』と『剛爆拳』の大盤振る舞い!

 稼津斗は自ら後ろに飛ぶ形でダメージを逃がすが、ネギは雷速瞬動で追撃。
 リインフォースは側転で避けるが、小太郎は今度は音速拳で反撃を許さない。


 「此れは…実際に喰らってみると相当な速さだな?
  しかもこの力……お前、試合前に小次郎の力を敵弾吸収陣で自分に取り込んだな?」

 「ばれちゃった…うん、ちょっと反則かもだけどこうでもしなきゃ届かない。
  それに、一度見ている以上は極大気功波は撃って来ないだろうし、僕に魔法陣を描かせてもくれないでしょ?」

 「当然だ。」

 攻めるネギと防ぐ稼津斗の構図だが、流石に稼津斗はクリーンヒットは許さない。
 だが、ネギも攻撃の手を緩めず稼津斗に反撃させない。
 闘技場を飛び回りながらの超高速肉弾戦に観客も盛り上がる。


 そしてリインフォースと小太郎は地上で激しい攻防を展開。
 此方も攻める小太郎と防ぐリインフォースの構図だ。

 「凄い速さだ、直撃を受けないようにするのが精一杯とは…」

 「其れを的確に捌いてるお前が言うか?」

 矢張りクリーンヒットは許さないリインフォースと反撃させない小太郎だ。




 「ナギ君スゲェ…」

 「未変身とは言えあの2人に反撃を許さないほどの攻撃とは…末恐ろしいでござるよ。」

 其れに誰よりも驚いているのは観客席――ではなく貴賓席で観戦している蒼き翼&巻き込まれ3−Aの面々だ。
 何故彼女達が貴賓席に居るのか?……ラカンが『嬢ちゃん達も特等席で見ろや、ハッハッハ』と連れてきたからである。

 ぶっちゃけ稼津斗とリインフォースの一種異常なまでの実力は3−Aの面子なら誰もが知っている。
 更に稼津斗の従者連中は、リインフォースが従者の中でも抜きん出て高い実力を持っていることも分っている。
 其の2人に反撃を許さないほどの猛攻をかましていると成れば驚くのは当然だろう。

 「そんだけ頑張ったって事さね、あの2人もさ…」

 「そう、ですね…」

 「まぁ、兄ちゃんと嬢ちゃんはまだ本気じゃねぇ……本気になってからが本番だろうよ。」

 誰もが食い入るように試合を見る中、ラカンは流石に試合が何処で動くかを見抜いているようだった。







 再び闘技場では攻防のバランスが少し崩れ始めていた。

 「ふ、は!破ぁぁ……鶴打頂肘!」

 「く…おわ!!」


 「せい!どりゃぁぁぁ!!おぉぉぉぉ…狼牙双掌打!!」

 「な…うわぁ!!」

 超高速の連続攻撃が其の速さを増し、稼津斗とリインフォースの捌きが少しばかり追いつかなくなったのだ。
 此れは絶好の好機故、其れを逃すネギと小太郎では無い。

 ネギが稼津斗を地面に殴り落すと、其処から申し合わせたように攻撃を打ち込みダメージを与える。

 「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」

 止まらない連撃、止まらない拳!
 後先考えずの出力全開、全力全壊!

 「覇ぁぁぁ…雷華崩拳!!」

 「うおりゃぁぁ!!狗音爆砕拳!!」

 其の連激の締めとして、夫々の必殺技をぶちかまし吹き飛ばす。
 無論其れで終りではない。

 「右腕解放(デクストラー・エーミッサ)雷の暴風!!

 覇王……翔哮拳!!!

 ダメ押しとばかりに極大魔法と気功波で大追撃!!
 其の2つの最大攻撃は寸分違わず命中し、大爆発!!

 もしも、今日の闘技場のセーフティ障壁が昨日と同じ強度だったら、この一撃で闘技場は吹き飛んでいたかもしれない。


 ぶちかましたーーー!!!見るもド派手な魔法と気の極大攻撃!!此れは決まったか〜〜!!?


 恐らくはこの瞬間、観客の略全てがナギコジペアの勝利を確信しただろう。

 だが、当の攻撃を行ったネギと小太郎、そして貴賓席で観戦している面々はそうは思っていない。
 其のマッタク逆…『本番はこれから』と思っているのだ。


 ――バガァァァン!!!


 其れを示すように気と魔力が弾け、稼津斗とリインフォースが粉塵の中から其の姿を現す。
 気と魔力を迸らせた『全力』状態でだ。


 エックスとルインは健在!迸る魔力と気が凄まじいぞ〜〜!!


 此れは此れで会場は盛り上がる。
 まだ決着では無いのだから。

 「…今の一撃、申し分ない。絶気障の展開があとコンマ1秒遅かったら結構ダメージを受けていたな。」

 「マッタク大したものだ…無変身とは言え私達に全力を出させたのだからね。」

 僅かに着衣が破損したとは言え略無傷。
 其の2人の顔に浮かぶのは笑顔――正直に嬉しかったのだ。

 新たな世代を担うべきネギと小太郎が間違いなく成長しているのが嬉しかった。
 無変身とは言え、本気を出せるのが嬉しかったのだ。


 「やっぱ倒せへんかったか…」

 「壁は大きいね…」

 逆にネギと小太郎は壁の大きさを実感。
 だが、実感しても止まる心算などないだろう。
 大きな壁ならば、努力に努力を重ねて越えればいいだけの事だから。


 「壁か……だが、少なくともお前達は無変身の俺達の全力の域には達したんだ、これからの精進次第では…」

 「私達を超えるというのもあながち夢物語では無いかもしれないな。」

 それだけ言って今度は稼津斗達の方から攻勢をかける。
 さっきまでとは違う無変身の100%の猛攻。

 ネギと小太郎も全力で対抗し、今度は完全に拮抗状態。

 互いに攻防一体の猛ラッシュを掛けクリーンヒットは許さない。
 闘技場の中央でかち合う拳と拳、蹴りと蹴り!
 炸裂する至近距離での気と魔力!

 翻身伏虎!

 波導掌!!


 シュバルツェヴィルグング!

 爆閃衝!!


 一進一退どちらも退かない。


 うおぉぉぉぉ、此れは燃える!燃えてくるぅ!!両チーム一歩も退かない気と魔力と拳のぶつかり合い!
  ぶつかる力は臨界点突破!迸る闘気は全力全壊の証し!果たしてどっちが勝つのか〜〜!!!



 打撃がかち合うたびに、気と魔力がぶつかるたびに起こるスパーク。
 どちらも止まらない、止められない!


 「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」


 裂帛の気合と共に放った一撃がぶつかり、そして弾け威力の余波で互いに吹き飛び間合いが広がる。
 闘技場の端と端と言う状況になり、今度は互いに力を高め遠距離攻撃のぶつかり合いだ。

 「覇ぁぁぁぁぁ…!」

 「咎人達に滅びの光を。星よ集え全てを貫く光となれ。撃ち抜け閃光!」


 「右腕解放(デクストラー・エーミッサ)巨神ころし(ティタノクトノン)』&加算小太郎力(プラスコタローパワー)!」

 「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 高まる気と魔力。
 手加減て何?と言わんばかりに強化された純粋なまでの力。


 覇王翔哮拳!!

 スターライトブレイカー!!


 超千雷招来!!

 覇王翔哮拳!!!


 解き放たれた暴力ですら生温い力の奔流。
 其れは闘技場の中央でぶつかり、略互角。


 だが、此処は地力の強さと経験が完全に出てしまった。
 略互角だったのは勝ちあった瞬間だけで、徐々に稼津斗とリインフォースが圧し始めたのだ。

 ネギと小太郎も負けじと力を加えるが、状況をひっくり返すには至らない。

 「やっぱ、兄ちゃんとルインはスゲェなナギ…」

 「うん、マダマダ届かないよ…」

 2人とも如何足掻いても今は勝てそうに無いと実感していた。
 だからと言って力を弱めたりしないが。

 「やったらせめて俺等の全力全部注ぎ込んだろうや!!」

 「勿論其のつもりだよ!」

 持てる全ての力を振り絞り、ネギと小太郎は大抵抗!
 其れの効果は大きく、再び拮抗!


 だが、其れまでだった。

 「此処までやるとはな……見事だ、ナギ、小次郎!」

 「流石は次代を担う者達だ…お前達の一撃に籠められた魂、しかと見せてもらった。」


 ――轟!


 稼津斗とリインフォースはXXに変身し、一気に力を籠める。
 こうなってはもうどうしようもない。

 ネギと小太郎の攻撃は難なく押し返され攻撃者本人に向かう。

 ネギと小太郎はもう押し返せない。
 だが、それでも攻撃は止めない、その場から逃げることもしない。
 最後の最後まで抵抗を続ける。


 そして…



 ――ドゴォォォォン!!



 遂に稼津斗とリインフォースの攻撃がネギと小太郎の攻撃を押し切り2人を飲み込み爆発!
 この攻撃の余りの凄まじさに、強化した障壁も結局は消し飛んでしまった。


 「「…………」」

 粉塵が晴れるとネギと小太郎は立っていた。
 だが、立っているだけだ――完全に気を失っている。
 それでも2人の顔に浮かんでいたのは笑顔だ――全力を尽くして満足したのだろう。

 「気絶してもなおか……試合に勝ったのは俺達だが、勝負に勝ったのはお前達か…」

 「XXの力を持ってしてもお前達の闘志を奪う事は出来なかったか…」

 近づいて触れればそのまま崩れ落ちる。
 其れがつまり試合終了の合図だ。


 決着ーーーー!!勝者エックス&ルインペア!!
  素晴らしい!正に素晴らしい至高のバトル!ナギ&コジローペアも最後の最後まで戦い抜いた〜〜!!
  観客の皆様、究極至極のバトルを見せてくれた両チームに盛大な拍手を!!



 実況が態々言うまでもなく客席からは拍手喝采の嵐。
 どちらが勝ったとかでは無い、魂震えるバトルに皆が興奮した結果だ。


 「「……ん…」」

 其の拍手に呼応するようにネギと小太郎も目を覚ます。
 状況は、嫌でも理解できただろう。


 「そっか…」

 「俺等は負けてもうたんやな…」

 悔しくないと言えば嘘だろうし実際負けたのは悔しい。
 しかし、ネギも小太郎も心底満ち足りた表情だ……最後の最後で稼津斗とリインフォースをXXに変身させて満足と言ったとこだろう。

 尤も其れを一々指摘したりはしない。
 只頷いて、稼津斗はネギの、リインフォースは小太郎の腕をとる。

 「試合に勝ったのは俺達だが勝負に勝ったのはお前達だ…大した者だマッタク…」

 「胸を張ってくれ、お前達は既に超一流の闘士なのだからな。」

 そして腕を高々と上げ、又も会場からは拍手の嵐。

 「2人とも麻帆良武道会の時とは比べ物にならないほど強くなっている。
  今の強さに満足しないで日々精進しろ……そしたら或いは俺を超えられるかもしれないぞ。」

 「力試しの模擬戦なら何時でも相手になる、遠慮せずに言ってくれ。」

 「はい!」
 「おうよ!!」


 戦い終われば、又同じ高みを目指すもの同士だ。
 又修行の日々が始まるのだろう。







 そして会場を渦巻く拍手は留まる所を知らない。

 最高のバトルに送られる賛辞の拍手と歓声は何時までも鳴り響いていた。




 此度の拳闘大会は、後に『伝説の拳闘大会』として後世に語り継がれる事になるのだった…
















  To Be Continued…