ナギコジvsラカンカゲの試合は闘技場のレストランでも大盛り上がりだった。
ナギ組の勝利が決まった瞬間なんかはレストランが壊れるんじゃないかと思うほどの大歓声だった。
「いやはやあのジャック・ラカンに勝つなんて何て子達だい。」
「ナギ君凄いなぁ…」
くままチーフも亜子も驚いていた。
コレで少なくとも奴隷身分解放は可也現実を帯びてきた。
次の第2試合で稼津斗組が勝てば其れは確定する。
「だけど、亜子…次はアンタの旦那の試合だけど…」
「チーフ、未だ旦那やないですから!!」
『未だ』という辺りアレだが、チーフは何か気になる様子。
「エックスさんが負けるとは思えないんですが…相手が何か?」
ちょっと沸騰してる亜子に代わってアキラが問えばくままチーフも顔を歪める。
「あの子達が負けるとは私も思わないさ……けど胸騒ぎがするんだよ。
何せ相手の2人…ルガールとヒメーネはこの準決勝までの試合――対戦相手を全て殺しているんだからね…」
「「!!」」
稼津斗達の相手はどうやらトンでもない連中であるらしい…
ネギま Story Of XX 84時間目
『A Violent Emotion』
『さぁ、闘技場の修繕も終り、お次は準決勝第2試合!!』
其の闘技場では、第1試合で破損した闘技場の修繕が終り、これから第2試合というところ。
稼津斗とリインフォースは既に闘技場入りを済ませている。
2人ともコレまでの試合と同様に、稼津斗は山吹色の胴衣、リインフォースはダークブルーのレザースーツだ。
『準決勝まで秒殺、瞬殺の山を築いて此処まで勝ち上がってきたサイ・ダブルエックス&ルイン・エクザミア組!
其れに対するは…コレまでの試合全てで相手の命を奪って来たオメガ・ルガール&ヒメーネ組…』
実況のアナウンスと共に相手であるルガールとヒメーネが現れる。
ルガールは2m近い大男、ヒメーネも女性にしては大きい…170位はあるだろう。
殺気と闘気を迸らせ、稼津斗達を睨みつけている。
「…こぉれまでの試合ぃ、じぃつに見事だったぁ…」
唐突に、ルガールは稼津斗達に向かって話しかけてきた。
以外にも、稼津斗達の試合を評価はしていたらしい。
「其の強さ、実に見事どぅあが……君にはそぐわないぬぁ?」
「ほう?…だとしたら如何する?」
「知れたことぅお…すぉの力を貰い受ける。
其の力ぁ、真に纏うべきはこの私ぃ――全ての生命の頂点に立つわぁたしこそが宿すべき力どぅあぁ!」
試合開始前ながら、既に闘気のぶつかり合い……『気組み』が行われいてる。
試合開始と同時に仕掛けるのは間違いないだろう。
『準決勝でもエックス組の秒殺・瞬殺はなるのか!?
それともルガール組がまたしても殺戮の限りを尽くすのか……緊張の準決勝第2試合……始めぇ!!!』
其れは当たりで、開始の合図と同時に4人が飛び出す。
稼津斗はルガール、リインフォースはヒメーネと言うぶつかり合いだ。
先制したのは稼津斗だ。
圧倒的スピードでルガールの懐に潜り込み、挨拶代わりのアッパーを一閃!
意表を衝かれた一撃に対応できず、其れはルガールに見事にヒット。
「ぐぬ…甘い!!」
それでも倒れずに踏ん張って巨大な気弾を一発!
余りにも巨大な一撃だが、
「甘いのはお前だ。」
有ろう事か其れを素手で掴んで――投げ返した。
此れは初撃のアッパー以上に予想外。
反射弾を側転で避けるが、既に其処には稼津斗がいる。
スピードも速く、瞬間移動も出来る稼津斗にとってこんな事は造作も無い。
「何処を見ている。」
其処から裏拳、横蹴り、アッパー掌打の連続攻撃。
試合開始から30秒でコレである。
同時に飛び出したリインフォースも、ヒメーネはまるで敵ではなかった。
飛び出した直後、間合いが詰まった所で、飛び後ろ回し蹴りを繰り出す。
尤もそれは余りにも打点が高過ぎた為に空を切る。
明らかな隙。
其れに付け入ろうとしたヒメーネに…
「ぶは!!」
膝が炸裂した!
リインフォースの強烈な膝蹴りだ。
「がは…まさか、最初の蹴りは…!」
「無論フェイントだ。…が、初撃の振りが大きければ大きいほど2撃目の膝の威力が増す。
私の仲間達なら、避けるか防ぐかしたろうが――お前は攻撃の本質を見抜く目は無いようだね。」
着地と同時に水面蹴りで足を払い、体制を崩したところに貫手を突き刺しダメージ追加。
「轟天爆砕――ハンマーシュラーク!」
連続攻撃の〆は威力抜群の重爆拳打。
其の余りの威力にヒメーネは吹き飛ばされる――稼津斗に吹き飛ばされたルガールと同じ場所に。
闘技場の略中央に飛ばされたルガールとヒメーネ。
そして、コレが稼津斗とリインフォースの狙い。
ダウン復帰しようとした所に一気に近づき…
「覇ぁ!!」
「沈め!!」
「「!!!」」
シャイニングウィザード一閃!
見事に側頭部を打ち抜き、コレだけでもKOは必至。
が、相手はコレまでの対戦相手を全て殺してきたような輩だ、正直何をしてくるか分らない。
普通ならKOの一撃を入れても油断は出来ない。
ならば徹頭徹尾叩くのみ!
「「波導掌!!」」
間髪いれずに気を籠めた掌打で、今度は闘技場の端まで吹き飛ばす。
「終りだ…覇王翔哮拳!!」
「響け終焉の笛…ラグナロク!」
止めの一撃は極大気功波と直射砲!
寸分違わず、其れはルガールとヒメーネを飲み込み、やがて飽和エネルギーが爆発!
その余波で闘技場の床が割れ、セキュリティの為の障壁にも皹が!
威力の程は押して知るべきだろう。
『なんじゃこりゃーーー!!決まった決まった特大の一撃!!
試合開始から45秒!エックス&ルインペア、準決勝も秒殺決着かーーー!?』
巻き上がった粉塵のせいでどうなったかは分らない。
少なくとも今の一撃を見る限り、普通は『決まった』と思うだろう。
「…防いだなルガールは。」
「あぁ――其れも最低な方法でな。」
が、其の攻撃を放った稼津斗とリインフォースはルガールは無事だと『気配の感知』で分っていた。
アレを受けて尚、ルガールの気は健在、気絶した人間特有の『極端に小さくなった気』を感じないのだ。
同じ理由で、観客席の和美や楓もルガールの無事は感じ取っているだろう。
「ふっふっふ…さぁすがは此処まで勝ち上げって来た拳闘士と、ほぉめてやろう。」
其の予想通りルガールは無事だった。
粉塵が晴れて其の姿が確認できるが、殆ど無傷。
防いだのだアノ攻撃を――パートナーであるヒメーネを盾にして。
リインフォースの言った『最低の方法』とは正にこの事だった。
『なんとルガールは無事!奇しくもコレでエックス組の秒殺記録は準決勝で途絶えた〜〜!!
し、しかしパートナーを盾にするとは、何と言う人の道を外れた行為…!!』
勿論ヒメーネは無事ではない。
生きてはいるが四肢はだらんと垂れ下がり、意識は完全に飛んでいるだろう。
あれだけの攻撃を一身に受けたのだ、寧ろ生きているのが不思議と言う所だ。
「心底禄でもない奴だなお前…」
「自分が生き残るなら仲間をも盾にするか?…外道め。」
余りの事に怒りが募る。
尤も当のルガールはそんな事など何処吹く風。
「仲間ぁ?ふん、そこそこ使えるから使っていたにすぎぃん。
所詮はクズが、わぁたしの盾となれたのだから光栄に思っても良い位どぅあ。
最も…更に役立ってもらうがぬぁ!!」
――ドス!
「「!!!」」
更に、盾にしたのみならず、あろう事か身体を貫いたのだ。
意識を飛ばしていた故に痛みも感じなかっただろうが、恐らくは即死…
余りの光景に会場も静まっている。
しかも…
「ハッハッハァ!中々のパワーどぅあぁ!」
ルガールの腕が脈打ち、同時にヒメーネの身体がドンドン萎れて行く。
吸収しているのだ、ルガールが其の身に!
遂には着ていた服だけを残してヒメーネは完全消滅。
同時に、ルガールから溢れ出る気が先程とは比べ物にならないほどに上昇。
肌と髪の色まで変わっている。
「ルガール…お前は…!」
「人の命を何だと思っているんだ…!」
「人の命?……ふはははは!全ての命は私のもぬおぉ!
進化の権利を行使できるのも選ばれた存在である私だけどぅあ!貴様等は精々糧となるぇ下等生物ぐぁ。」
あまりの事に、稼津斗とリインフォースも未変身状態ながら、今大会で初めて力を解放する。
潰すつもりだ…完全に。
「ほう…素晴らしい力どぅあ…ならば此方も全力を持ってぇ貴様等を殺す!
さぁみぃるが良い、わぁが力ぁ!!カイッザー……ウェイブ!!!」
戦闘開始の合図はルガールの巨大な気弾。
圧倒的な質量とスピードで打ち出された其れも、避けられない速さでは無い。
直ぐに左右に飛んで回避する。
が、リインフォースの方にはルガールが回り込んでいた。
「!速い…!」
「遅い!死ねい!ルガールエクスキュージョン!!」
其のまま掴んで、其のまま気弾を打ち込んで行く。
「ぐ…あぁぁぁぁぁ!!!」
如何にリインフォースと言えど、ゼロ距離での気弾を何発も打ち込まれては堪らない。
「それ以上はやらせん。」
即刻稼津斗がカットに入るが、其れは予想の範疇だろう。
手にしたリインフォースを投げ捨て、其のまま気弾を放って攻撃を阻止。
放たれた気弾は稼津斗に弾かれるが、又してもルガールは背後に。
流石に二度同じ手は通じず、超反応で反撃の裏拳を放つが少しばかりルガールの方が速かった。
「動きが止まって見えるずうぉ?ジェノサ〜イドカットゥァ!!」
切り裂くような二段蹴りで反撃を潰し、其のまま首っ玉を掴んで高速前進開始!!
闘技場の略中央から一直線に障壁展開部まで突進し、稼津斗を壁に叩きつける。
「ぐ…!!!」
「ほう…まぁだ意識を保つかぁ?だが、さっきまでの威勢はどぅおぉしたぁ?ん〜〜?」
首を掴んだ手に力を込め締め上げて行く。
「くっくっく…死ぬぇ、愚かなる弱者よ!ギガンテェェック・プレッシャーーー!!」
膨大な気を浴びせ更に締め上げる。
たっぷり10秒。
やっとこ手を離すと稼津斗は其のまま崩れ落ちてしまった。
リインフォースの方もダウン復帰はなって居ない。
ダウンカウントが開始され、20秒以内に立てなければ負けだ。
だが、ルガールは既に勝ちを確信しているのか、10カウントも数えていないうちに右手を高々と上げて勝利ポーズだ。
「クックック…わぁれは神!いや、かぁみをも凌駕した存在なのだぁ!!」
トンでもない思い上がりだ。
トンでもないが、其の強さは確かに凄まじい。
会場の観客も『決まったか?』と思っている――一部を除いては。
「神…ね…」
「!!!」
カウントも13位まで進んだ所で、稼津斗が行き成り仰向けになり其のまま立ち上がった。
ルガールは信じられないような顔だが、稼津斗の強さを知るものからすれば『当然』だろう。
「下らないにも程があるな…」
「な…貴様も!!」
更にリインフォースも空中から稼津斗の隣に降り立つ。
此方も知る人からすれば『当然』の事だ。
よくよく見れば、稼津斗もリインフォースも服は派手に壊れているが、ダメージそのものは大した事は無さそうだ。
まぁ…リインフォースの方は非常にセクシーな状態なため、多くの男性客が記憶媒体に其の姿を記録しているが…
其れはそれとして、ヒメーネを喰らったルガールの攻撃も決定打にはならなかった。
「神だのなんだの…下らなすぎる。お前の其のちっぽけな力…俺の闘気と、」
「私の魔力と比べてみろ!」
――轟!!
それどころかクールな2人の怒りを臨界点突破させただけだ。
気と魔力が溢れ、銀髪蒼眼の闘士と、翠髪金眼の戦乙女が降臨。
最強戦士XXの登場だ。
コレだけでも既にルガールは大きく上回っているが、今回はそれだけではない。
「お前が吸収合体なら、俺達は融合合体――ルイン。」
「あぁ、行こう。ユニゾン、イン!!」
リインフォースが自身の奥義とも言える『ユニゾン』を発動して稼津斗と融合したのだ。
融合と同時に稼津斗の髪は銀色を帯びた翡翠色、瞳は右が蒼で左が金。
背に3対6枚の黒い翼が現れ、気と魔力が暴力的なまでに逆巻いている。
『融合完了、祝福の闘士、今此処に…』
「覚悟はいいな、ルガール!」
驚く暇など与えない。
ルガールはもとより、実況が何か言う間も無く振り抜かれた拳がルガールの巨体を吹き飛ばす。
『翔けよ隼…!』
「シュツルムフォルケン!」
追撃の気弾…否、気と魔力の混合弾は炎の隼となって突撃!
「ぐ…カイザーフェニクスィ!!」
ギリギリで5連続の極大気弾を放って其れを相殺するが、1発に対して5発で相殺…威力が馬鹿げすぎているだろう。
だが、休む間など与えない。
「遅いな…」
「なぬぃ!?」
速攻で接近し首相撲からの膝蹴り数発!
連続蹴りの〆は側頭部へのハイキック――だけでは終らず強引に掴んでの合気投げで中空に投げ飛ばし自身も飛び上がる。
「ぐ…みぃとめんぞぉ!わぁたしが貴様等の様な下等生物ぬぃ!!」
それでも体勢を立て直して反撃を試みるが其れも無駄。
「所詮は過ぎた力を持った二流か…」
『憐れだな…』
あっさり対処され逆に拳を叩き込まれていく。
「お前の拳は所詮殺すことしか出来ない、誰かを護る事はできない情けない拳だ…」
『そんな拳では私達は倒せない。』
的確にダメージを叩き込み、哀れルガールはボロ雑巾状態だ。
『奈落に落ちろ…!』
「無闇神楽!!」
更に最強技の1つである無闇神楽で今度は地面に叩き落す。
最早完全フルボッコ。
が、コレで終わりでは無い。
「縛れ。」
『封縛。』
拘束魔法で地面に縫いつけ身動きを取れなくする。
膨大な気と魔力で拘束されては、もう逃げることは無理だろう。
そして…
――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
稼津斗の右手に魔力、左手に気が集中。
最大級の一撃を放つために力を溜めているのだ。
銀の気と闇色の魔力――其れがドンドン強くなる。
「人の命を軽んじているような奴に、俺達は負けないさ。」
『我等に仇成す者よ、深き永遠の闇に沈め…』
其れを合成!
「『デアボリック覇王翔哮拳!!』」
そして放たれた気と魔力の混合砲!
銀色と闇色の混じった光の奔流はルガールを飲み込み、更に着弾点で周囲に威力が拡散し闘技場の障壁内部を荒れ狂う。
余りにも強い其の力に障壁が耐えられる筈も無く…
――バガリィィィィン!!!
粉砕!!
障壁を破壊した力は、其のまま光の柱を形成して空に。
光が収束し、消えると其処には真っ白になったルガールが…
一応生きているようだが、白目を剥いて意識は宇宙の彼方に手放している。
寧ろ生きている方が不思議だろう。
「…もう少し、威力の調整が必要だな。」
「施設では出来るだけ使わないようにした方が良さそうだ。」
稼津斗とリインフォースも融合状態を解除して上空からゆっくり着地。
既に闘技場が原型を留めていないのは言うまでも無い。
観客もしばし呆然。
平気なのは稼津斗のパートナー達とネギ、小太郎、ラカン位のものだ。
『け…決着〜〜〜〜!!!勝者エックスチーーーム!!!
秒殺記録こそ途絶えたものの、終ってみれば文句無しの完・全・勝・利ーーーー!!!』
実況の勝利宣言が入ると、漸く会場はスイッチが入ったかのように大歓声!
コレまで対戦相手を全て殺してきた闘士をこうも見事に倒せば、この歓声も頷ける。
『さぁ、さぁコレで今大会も残すは明日の決勝のみ!!
本日の準決勝よりも激しい戦いが予想される明日の決勝戦!!
皆様、明日のご来場も、是非是非お待ちしていま〜〜〜す!!!』
そして明日は決勝戦。
稼津斗とリインフォースが客席のネギと小太郎に向かって拳を突き出せば、ネギと小太郎も其れに応えて拳を突き出す。
明日の決勝戦も、どうやら相当激しい闘いになる事は先ず間違いないようだ。
「…つーかよ、明日の決勝戦会場ぶっ壊れねえよな?」
「如何だろうな?下手したらぶっ壊れんじゃねぇ?
ハッハッハ、まぁぶっ壊れたときゃぶっ壊れたときだぜ〜〜ワッハッハッハ!!!」
「いや、笑い事じゃねえだろオッサン!!」
果たして千雨の心配は杞憂に終るのか、それとも現実になるのか…
To Be Continued… 