「ラス・テル マ・スキル マギステル!契約に従い我に従え高殿の王!!」

 準決勝第1試合、試合開始と同時にテオドラとの仮契約で得たアーティファクトを展開したネギだが、其れを使わずに狙ったのは魔法攻撃。
 どうやら呼び出したものの、直ぐには使わず『挨拶代わり』の一撃をお見舞いするつもりのようだ。

 「む…アレは雷系最大呪文。完成させやがったか――カゲちゃん!」

 「委細承知、詠唱はさせん。」

 其れを見たラカンは即座にカゲタロウに指示し、カゲタロウも詠唱を止めようと影魔法でネギを強襲!
 悪い手では無いだろう、魔法使いは詠唱中が最大の弱点――最も隙が出来るのだ。

 だが、其れは織り込み済み。
 其れを防ぐ為にこの男が居るのだ。

 「させへんわ!!見せたる…兄ちゃん直伝、絶気障!!

 カゲタロウの攻撃を吹き飛ばす様に、小太郎が稼津斗直伝の『絶気障』でその攻撃を完全シャットアウト。
 その一方でラカンも力を高めている。
 如何やらネギのアーティファクトの大体の性能を看破し『力比べ』と行くらしい。


 「ほう…だが此れは防御できまい?」

 試合は止まらず、カゲタロウは今度は防がせまいと影を集約して一本の巨大な『槍』として撃ち出す。
 確かにこれならば障壁は貫けるだろう。

 「ふぅぅ……覇ぁぁぁ、波導掌!!!


 ――バガァァァン!!


 だが、小太郎は有ろう事か、其れを気を籠めた掌打一発で粉砕したのだった。











 ネギま Story Of XX 82時間目
 『手加減等不要だぜ』











 「馬鹿な、気を籠めた掌打の一撃で粉砕だと!?」

 其れに驚いたのは誰よりも術者本人のカゲタロウだろう。
 今の一撃は少なくとも『準々決勝』までの小太郎では防げるはずのない一撃だった。

 落ちないようにする為に避けるしかない。
 しかし避ければネギの呪文詠唱を中断させる結果になる。
 其れを見込んでの一撃だったのだが、放って吃驚、掌打一撃で粉砕されてしまった。

 力量が恐ろしいまでに上がっているのは明白だった。


 「ナギの前衛、小次郎様を舐めんなや。
  大体俺のお師匠様を誰やおもてんねん?俺のお師匠様は『宇宙最強』の稼津斗兄ちゃんやで!?
  ぶっちゃけ言うて、お前の攻撃なんぞ兄ちゃんの攻撃に比べたら『屁』みたいなモンや!
  今度はこっちから行くでぇ!?オォォォォォ……消し飛べや、金剛裂爪斬!!!」

 驚くカゲタロウを尻目に小太郎は吠え、反撃に又も稼津斗直伝技をぶっ放す。
 気を籠めた拳を地面に叩きつけ、極大の衝撃波を発生させる大技。
 正に全力全開、力の温存など考えない大盤振る舞いの一撃だ!


 「っと…流石に避けられたか…来るでナギ!!」

 「うん!コジロー君は一端僕の後ろに!!」

 「おうよ!!」

 その一撃もラカンとカゲタロウという一流の闘士には紙一重とは言え避けられ、ラカンは上空で力を集中。
 自身のアーティファクトで呼び出した槍に凄まじいまでの気を集中させている。


 「いいねぇ…最高だぜ坊主。
  良いだろう――俺様も久々に『全力』ってやつを出してみる事にする……ぜ!!!」

 究極的に練りこまれた気を装填した槍を力任せに全力投擲!
 一直線にネギと小太郎に向かうが、2人とも其れを避ける気配は無い。
 いや、避けるどころか正面から受ける気らしい。

 槍はそのまま着弾し、先ず地面が割れる。
 続いて爆発、然る後に噴煙が立ち昇るがそれだけでは終らない。

 有り余るエネルギーは『対テロ用』に用意されていた闘技場の防衛システムまで発動させ観客席と闘技場を隔てている結界の強度が最高クラスに。
 それでも尚勢いは死なず、挙句の果てには爆炎が闘技場全体を包み込むほどの火柱に…!
 ジャック・ラカン……この男も真に常識を果て無き宇宙に蹴り飛ばしているようだ。


 「何と言うか実に凄まじいなジャックの攻撃は…これで余波?常識とか物理法則って何だろうな…

 「其れを平然と防いでるアンタが言うなよ稼津斗先生よぉ…」

 なお、客席でも稼津斗の半径3mは全くの安全地帯で有った事は言うまでもない。


 さてその闘技場では噴煙が立ち込めていて状況が良く分らない。
 もしも今の一撃を、本当に正面から受けたのだとしたら無事で済んではいないだろう。

 確かに『デカイ一撃』を正面から受けて、その上で破るのは『漢』と言えるかもしれない。
 だが、ラカンの一撃を正面から受けようなど其れは勇気を通り越しての無謀、蛮勇だ。


 そして何よりも一番焦っていたのは実は攻撃を放ったラカン自身だった。
 観客の声援に余裕たっぷりに応えているが…


 ――アイツ…反撃も回避の素振りも見せなかったな…力比べじゃなかったの…?
    やっべー…オイオイ、今の一撃で消し飛んだりしてねぇだろうな?やだよ俺エヴァにシバかれんの…


 内心結構テンパっている様子。
 『力比べ』と思って放った一撃に反撃も回避もしようとせずに正面から立ち向かい、そしてこの惨状だ、無理もない。

 実況も『今の一撃で消し飛んだか!?』と言っているが…否だ。

 噴煙が晴れ、視界が開けると其処にはネギと小太郎が全くの『無傷』で立っていた。
 しかも、攻撃を受けたのと同じ位置で。

 違いを挙げるとすれば、精々立っている地面が攻撃の余波で隆起している事。
 そして――ネギの右手に身の丈以上の大剣が握られている事くらいだ。

 だが、ネギがその剣の腹の部分を正面に向けているという事は、今の攻撃はこの剣で受けたということだろう。

 「無傷だと、馬鹿な!!」

 「オイオイ無傷たあ、流石に驚きだぜ坊主。どうやった?」

 これにはカゲタロウ共々ラカンも驚く。
 少なくとも己の一撃は飛竜をも撃墜するだけの威力があるのは間違いない。
 其れを大剣一本で防いだなど悪い冗談にも程が有るだろう。


 ――む…アレは…!『天魔の剣』?アレが坊主のアーティファクト?…いや、アレは姫子ちゃん専用のはず――どう言うこった?


 其れでも其処は歴戦の闘士ジャック・ラカン。
 すぐさま其のカラクリを見抜くが、疑問は残る。
 もしアレが『本当に天魔の剣』であるなら、其れはアスナ専用のアーティファクトであるはずだ。
 其れにそもそもネギが最初に出した『手帳型のアーティファクト』と形状も一致しないのだ。

 だが、今は戦いの真っ最中。
 余計な思考をしている暇は無い。

 ラカンの一撃を防いだネギと小太郎は、夫々がラカンとカゲタロウに向かって行く。

 「来るか!」

 「フン…アデアット『千の顔を持つ英雄』!」

 なればラカンとカゲタロウも迎撃体勢。
 アーティファクトと影繰術で迎え撃つ。

 だが…


 「覇ぁ!!」

 「オラァァ!!」


 ネギの大検一閃と小太郎の拳の一振りで影の槍と投げられた無数の刀剣が消滅!
 特にネギの一閃は文字通り『消し去った』と言うのが適当なほどだ。

 その勢いのまま、ネギは切りかかりラカンも新たに長剣を呼び出して対抗する。
 ネギの一撃は其れに阻まれるが、すぐさま剣を持ち直して逆袈裟に切り上げ――ラカンの剣を根元から切り飛ばした。
 其れこそまるで豆腐を切るかのようにアッサリと。


 「くはは…俺様の伝説のアーティファクトがまるでバターだな――本物じゃねぇか、どう言うこった?」

 「アベアット。」

 ラカンの疑問には答えずに天魔の剣を消し、最初に出した手帳を取り出す。
 其の手帳には今現在ネギが仮契約しているパートナーとのカードがビッシリ!
 其処から今度は『桜咲刹那』のカードを取り出してホルダーにセット。

 「アデアット!匕首十六串呂!!」

 今度は刹那のアーティファクトだ。
 16本の短刀が飛び交い、ラカンの頭の周りに展開される。
 僅かでも動こうモノなら『プスッ』とイクくらいの距離で…

 「ほう…自分の従者のアーティファクトを自在に使えるアーティファクトか、コイツは激レアだな。」

 それでもラカンはこの状態でカラクリを見抜いたようだ。

 そう、此れこそがネギのアーティファクトなのだ。
 自らの従者のアーティファクトを自由に、しかも完全な形での行使が可能と言うレア中の極レアアーティファクトだ。


 同時に会場は大盛り上がり。
 ラカンのトンでも一撃炸裂から一転して、今度はナギコジペアが優勢な状況だ。

 本より大人気ルーキーコンビvs伝説の傭兵の戦いだ、盛り上がらないはずは無い。


 尤も実際に戦いを演じている当人達にそんな事は関係ない。

 「成程悪かねぇ。『女の子の力を借りて』なんて無粋なこたぁ言わないぜ坊主、寧ろ俺様を相手にするってんだから『良く準備した』と褒めてやるくらいだ。」

 「ラカンさん程の人を相手にするなら策は弄しすぎるという事は有りませんよ……寧ろ幾ら考えても足りないくらいです。
  けど考えるよりも生むが易し、思いついた手を全部試していけば何れ道は開けますからね。
  其の証拠に……このアーティファクトのおかげでラカンさんの気弾系攻撃とアーティファクトは最早僕には通じません。」

 互いに言葉を交わすが其の視線は相手から外れない。

 「本番は此処からです……拳と拳で行きましょう!」

 「は♪良いねぇ…いや、良いのかい?俺は素手の方が万倍強いぜ?」

 そしてネギのトンでも発言。
 これがモニター通じて流れたから大変だ――観客は一気にヒートアップ、会場の熱気も急上昇だ。

 如何に強いと言えども、ルーキーが伝説の傭兵に接近戦を挑発したとなれば誰しもが期待してしまう。

 そして其の期待は最大の形で現れる。


 「解放・固定『千の雷』!………掌握!!!」

 先程詠唱した『千の雷』を術式兵装として装填し――ネギの姿が変わった。

 「術式兵装…雷天大壮!」

 全身が薄っすらと白く発光し、稲妻を纏った様は稼津斗の『XX』に近いものがあるが……全くの別物だ。



 「喰らえや、爆閃衝!!!

 「むぅぅ!?」

 闘技場の一画で激しい攻防を繰り広げる小太郎とカゲタロウとは別に、ネギとラカンは距離をとりながら睨み合い…


 ――メキィ!!


 かと思われた瞬間にネギの拳が突き刺さった――ラカンの顔面に。

 「ぬお!?」

 其れはあまりも速く、ラカンもまるで反応が出来なかった。
 殴り飛ばされたラカンを逃がすまいとさらに拳が迫るが、それにカウンターを繰り出す…が当たらない。

 それどころか全くの反対側から肘が刺さる。
 反応してからの反撃などまるで不可能な程のスピードだ。

 其の速さたるやトンでもない、ネギの残像はおろか纏った魔力が光の軌跡として幾何学模様を描くくらいだ。

 上下左右前後、休む間も無く矢継ぎ早に攻撃が繰り出されていく。


 これはぁぁ!!滅多打ち滅多打ち、伝説の傭兵剣士が闘技場中央でフルボッコだーーー!!
  何が起こっているのか良く分りませんが兎に角速い!!光の奔流に飲まれてラカン棒立ちーーー!!


 実況も大興奮!
 滅多にお目に掛かれないハイレベルバトル故にそれは仕方ない。



 「雷化…成程考えたなナギ…」

 「サイ君?」

 一方で、観客席の稼津斗にはネギがどんな状態にあるのかは理解できていた。
 恐らく闘いって居るラカンもだろうが。

 「雷化って…術者自らが雷にと言う事にござるか?」

 「可能なのかよそんなの…」

 「恐らくは巻物の中で『アレ』を開発していたんだ……雷化はホンの一瞬だし未だ完全じゃあないがな。
  だが此れは凄い事だぞ、雷は何と言っても速さが違う、秒速150kmは自然界の中でも最速だ。
  幾らジャックでも早々見切れるものじゃない。」

 とは言え、稼津斗の考えも予想の範疇でしかない。
 だが、それでも技の特性は大凡それで合っている。

 自らを雷と化して、其の圧倒的なスピードで相手に反撃すら許さない近接戦こそがネギの狙いだった。


 其れを示すように、闘技場中央では相変わらずラカンが攻撃を喰らい続けている。
 当然ネギは休まずに攻撃攻撃又攻撃!


 そして其の一発が遂にラカンを地上から引き剥がし大空を舞わせる。
 さらに其処にネギが轟追!

 休む間も無く地面に叩きつける。

 大ダメージ必須の一撃だが相手はラカンだ、殆ど無傷で居る確率の方が高い。

 だからネギも休まずに追撃!

 「術式解放!!完全雷化!!!」

 全身に魔力を迸らせ、一気に落下したアカンを目指す。

 「行きます、必殺…千磐破雷ィィィィィィ!!!」

 落雷そのままに地面に突貫したネギの一撃は、闘技場にクレーターを造る。


 「む…馬鹿な、ラカン殿!!」

 「余所見すんなやカゲ野郎!!」

 「!!」

 「狗族獣化!…お前には俺の一発をかましたる!兄ちゃん直伝の気を籠めた掌打を俺なりにアレンジしたオリジナル!」

 同時に小太郎もカゲタロウに最大級の一撃をお見舞いせんとする。


 更にネギ……此れはもうラカンが凄いのだが、千磐破雷を受けて尚ダウンはしていなかった。

 「ぐぅぅ…コイツは効いたぜ。並の魔法使いならジ・エンドだ…」

 「いえ、未だです。」

 だからこそネギも油断せずに背後に回り、最後の1発を解放する。

 「解放!」

 「マジで!?」

 「ゼロ距離…雷の暴風!!!」

 「ぬおぉぉぉ!?」


 小太郎もまた…

 「ブッとべやカゲ!おぉぉぉぉぉぉぉ…滅殺剛波導ぉぉぉぉ!」

 「むおぉぉぉ!」

 全開の『気を籠めた打撃』を叩き込みカゲタロウを吹き飛ばす。

 同時に小太郎も最大級の『気を籠めた打撃』をカゲタロウに打ち込む。


 激しい爆音、破裂音が響き、気と魔力のスパークが会場を包み込む。
 そして……


 ――ドサ…

 ――ズシャァァ…



 ダダダダウ〜〜〜ン!!!

 遂にラカンとカゲタロウはダウン。
 同時に起こる大歓声、如何なんでも予想外の展開だっただろう。

 「ほう…やりますなぁあの坊ちゃんと小太郎…もとい小次郎も。」

 「やは〜〜…凄いよカッコイイ!!」

 千草や3−Aの面々も大盛り上がりだ。


 だが其の中で…

 「未だ終りじゃない…」

 「あぁ、これで終るなら誰も『無敵』とは誰も言わないさ。」

 リインフォースと稼津斗は『決まっていない』と思っていた。

 「えぇ!?決まってないの!?」

 「残念ながらな…ラカンもカゲタロウも最後の一撃を『点』をずらしてダメージを逃がしていた。
  大ダメージは間違いないだろうが、試合を決するには至らない。」

 「其の証拠に……闘技場を見てみろ。」

 決まっていないと言う稼津斗に驚いて聞けば、今の一撃は止めになりえなかったという。
 更にリインフォースが闘技場を見るように言うと…


 「ふふふ…ふはははは…ハァッハッハッハッハッハッハッハ!!!」

 KOまで残り2カウントでラカン復活!
 同時にカゲタロウも立ち上がり……力が溢れる。


 「此れは…拙いな…」

 「へ?拙いって何が…」

 「恐らくラカンに、ナギの技はもう通用しな…『バキィィィ!!!』…か、矢張り!」

 稼津斗が言い切る前に、闘技場では復活したラカンがネギを殴り飛ばしていた。
 其れも『雷天大壮』を発動したネギをだ。

 更に其の速さに驚いた小太郎をカゲタロウの影が腹と足を貫く。

 其れを気にする暇も与えず、密着。

 「!!」

 「羅漢破裏拳掌!」

 そのまま純粋物理攻撃でブッ飛ばす。
 さっきまでの光速がまるで通じてないのだ。


 「ななな、何でだよ!幾らあのオッサンでも先生の速度にはついていけねぇ筈だろ!」

 其の光景に千雨が思わず声を荒げる。
 『闇の魔法習得』の時の状態を知っている千雨にとって、実際に見なくともネギがあれを開発するのにトンでもない努力をしたであろう事は想像できる。
 其れをいとも簡単に破るなど到底信じられない。

 「いや、実際ついていけてなかった…なかったが、如何やらジャックも弱点を見つけたか…」

 「「「「弱点?」」」」

 頷き説明する。
 稼津斗もネギの技の弱点は見抜いていたようだ。

 「アレだけの物を短期間で作り上げたのは大したものだが…其処は新術ゆえにまだ弱点が残る。
  其の1、雷化と言っても其れは発動の一瞬でネギの思考速度も上がらない、技の出がかりを潰せば如何にかなる。」

 説明中も戦闘は続き、ネギは再び超光速でラカンの周りを飛び回る。

 「更に其の2、恐らくナギは自分が『落ちる』場所を風系魔法の操作による電位差で決めてるんだろうが…
  歴戦の猛者であるジャックは其れを冷静に見極めて落ちる場所を予測している。
  そしてこれが最大の弱点……攻撃の前に本物の雷よろしく『先攻放電』が発生している…これじゃあ攻撃場所を教えているようなものだ。」


 ――バキィィィ!!


 説明に合わせる様にラカンのカウンターがネギを打ち、上空に吹き飛ばす。
 奇しくも其れは稼津斗の言った事が正しい事の証明になってした。


 「エターナル…ネギフィーバー!!」

 「!!」

 吹き飛んだネギに追撃の全身光線!
 其れは流石に天魔の剣で防ぐが、そんなものは織り込み済み。

 「良く防いだが…残念だったな♪」

 「なっ!!」

 「オラァァァ!!!」


 ――ドゴォォォン!!!


 一瞬でネギの正面に移動し、大砲宛らの右ストレートをボディーに炸裂!
 さっきとはまるで逆、今度はネギが地面に叩きつけられ………そのままダウンしてしまった。
 小太郎もまた同様に……


 一瞬。


 正に一瞬の出来事だった。
 ラカンが復活して僅か10秒で、今度はネギと小太郎がダウン。

 しかも、ラカンがダウンした時とは違う。
 2人とも明らかに『致命傷』を受けてのダウンだ。


 会場内からも『流石に無理だったか…』『いや、でもラカン相手に凄くね?』と言った声も聞こえてくる。

 「ナギ君…」

 「ナギ先生…」

 「ご主人…」

 3−Aの面々にも『此処までか』と言う思いが出てきている。

 はっきり言ってこの試合どちらが勝っても問題は無い。
 第2試合で稼津斗とリインフォースが勝利すれば、亜子達の解放は決定されるのだ。

 だが其処は其処、ネギに勝って欲しいと思うのは今まで一緒に過ごした者の情だ。


 「…満身創痍、疲労困憊、おまけに用意した切り札まで破られたか…終りだな――普通なら。」

 「「「「へ?」」」」

 「状況はナギ達には最悪だが未だ終ってない…終る筈がない。」

 「エックス殿?」

 だが又も稼津斗は今度はネギ達も終りでは無いと言う。
 尤も理由はラカンの時とは別だ。

 「あの2人は天武の才が有って尚努力家だが……其れとは別に凄まじいまでの『負けず嫌い』だ。
  其の2人がこのまま終る筈がない。何より小次郎は、まだ俺が教えてやった『切り札』を切っていないんだからな。」

 其れはネギと小太郎の性格故だ。
 2人とも子供ながら、否子供ゆえに物凄く負けず嫌いなのだ。

 心が折れないと言えばいいのか?
 兎に角意識が有り、戦う事ができる以上は負けを認めない頑固な部分がある。

 「如何やらサイ兄の言う通りだね。」

 和美の呟きと同時に、闘技場ではネギと小太郎が立ち上がっていた。
 だが、其の身体は満身創痍だ。



 「ようナギ…随分こっぴどくやられたな?あのオッサンの拳マトモに喰らって…ヤバイやろ?」

 「まぁね…木乃香さんのアーティファクトでも応急処置が良いところだよ…まぁ、後は自分で何とかするさ。
  其れより…君こそ大丈夫?足は兎も角、腹の傷は応急処置しても命に関わるよ?」

 「ハッ、狗族の再生力なめんなよ?獣化すりゃ問題ない。」

 だが其の目の闘志は消えない。
 消えないどころか、逆境に有って尚強くなっているくらいだ。

 「…コジロー君、状況は絶体絶命だ…けどラカンさんも僕達が立つなんて思ってなかった。
  彼等は僕らを侮った、此処らへんが限界だと見誤ったんだ。
  …僥倖だ、この勝負、僕等が勝つ!いや、僕等が勝った!!」

 「ハッ、そうこないとな!!ナギ、やっぱお前は俺の最高のダチや!
  上等や、最強のルーキーとして伝説の傭兵から大金星奪ったろうやないか!!」

 折れない、退かない、挫けない。
 実年齢は僅かに10歳――だが今この時の2人の佇まいは、間違いなく『一流の闘士』の其れであった…














  To Be Continued…