「まさかヘラス帝国の第三皇女様が直々にお見えになるとは思わなかったな。」

 「ふふ、中々のサプライズであったろう?」

 稼津斗達の前に現れたヘラス帝国の第三皇女・テオドラ。
 如何にも『悪戯が成功した』と言わんばかりの笑みは、皇女様ということを忘れそうな位に人懐っこい。

 「テオドラ…様?」

 「テオでよいぞネギ。妾はナギやアリカとは友人であった。」

 流石に一国の皇女様の登場にネギは驚いているが、そんなネギにもテオドラは気さくに話しかける。
 其れどころか『愛称で呼んで良い』と言うくらいだ。

 どうやらナギとは付き合いがあったようだ。

 「しかし見れば見るほどナギと違って聡明そうな顔をしておる…この辺は母親似か?」

 「はぁ…?」

 「ふふ………じゃが、妾はアリカには何もしてやれなんだな…許せ…」

 「え…?」

 なにやら思いがけない事が…アリカとは一体誰だろうか?
 少なくともネギは知らない――が、テオドラの態度からはネギに関係有る人物のようだ。

 「え?あの…何の話ですか?それにアリカさんて…?」

 「ウヌ?…なっ…若しかして何も聞かされておらなんだか?いや、何でもない忘れるのじゃ!!」

 其れを問うネギに、今度はテオドラが驚く…どうにも予想外であったようだ。
 だが、『忘れろ!』と言われて『ハイ、分りました!』とは行くまい。

 ネギはテオドラに何事かを聞こうとするが…

 「ワーッハッハッハッハ!!!」

 酷く暑苦しそうな笑い声が色々とぶち壊しながら其れを遮ってくれた……なんだかなぁ…











 ネギま Story Of XX 81時間目
 『鍛錬・特訓・猛修行!』











 「…又妙なのが出て来たな…」

 「暑苦しそうなオッサンだなオイ!」

 稼津斗が妙なのと言い、千雨はお約束どおりに突っ込む。
 オールバックで5箇所重力に逆らって伸びてる部分があれば当然だろう。
 序でに乗ってるマシンは一人乗り様……魔法世界の単車みたいなものだろう。

 「いよう〜〜!お前がネギか!?がっはっはこりゃマジでガキだな!」

 「あ、あの彼方は?」

 「おうおうおう!俺様はケチな政治家やってる『リカード』ってもんよ!ハッハァー!!!」

 笑い声が暑苦しければ、素の喋り方も思い切り暑苦しい親父であった。
 だが、少なくとも悪い人間では無いだろう。

 余りのキャラの『濃さ』にのどかや千雨はガン引き状態ではあるが…


 「フフ、その男の暑苦しさは昔からね。」

 「今度は誰や!?」

 更に今度は箒に乗った妙齢の女性が登場。
 今しがた現れたリカードと比べると、年齢は大差ないだろうが上品で落ち着いた感じのする『大人の女性』だ。

 「セラスよ。ヨロシク。

 自己紹介も簡潔に女性はその場に降り立つ。


 「しっかし凄い光景だね此れ…」

 「へ?何がですかまき絵さん?」

 この光景に別の意味で驚いているのは、実はまき絵だ。
 何でって?…この3人の素性を知っているからに他ならない。

 「何がって本屋ちゃん、テオ様はヘラス帝国の皇女様で、リカードさんはメガロメセンブリアの元老院議員。
  セラスさんはアリアドネー魔法騎士団の総長さん!魔法世界の主要各国代表さん!その揃い踏みなんだよ!?」

 「オイ超…バカピンクは熱ねぇよな…?」

 「ウム、正常だヨ。平熱そのものネ。」

 「熱なんてないったら!」

 この世界で覚えた政治的な知識を簡潔に披露して、何時ぞや裕奈と千草にされたのとおんなじ事を千雨と超にされていた。



 「主要国の代表が勢揃いは、確かに凄い光景だが――そのお偉いさん方が何故ネギの修行の手伝いに?」

 弄られてるまき絵は放っておくとして、そのVIP3人を前にしても、矢張りと言うか稼津斗は平然。
 この揃い踏みに驚くよりもテオドラの言っていた『ネギの修行の手伝い』の方が気になっていた。

 「そうですよ、少なくとも僕は皆さんの事を知らない……何故ですか?」

 其れはネギも思っていたらしい。
 修行の手伝いをしてくれると言うのは正直にありがたい部分がある。
 この3人が悪い人で無いと言う事は見れば分るし、政治社会の上役でも自分の指名手配には無関係だろう。

 だが、矢張り修行を手伝ってくれる理由が分らない。

 「ネギ君、私達は彼方のお父さん達には嘗てとてもお世話になったのよ。」

 「ヌァッハッハ!ナギの馬鹿もラカンの阿呆も腐れ縁の飲み仲間よ!」

 …理由は何とも簡単だった。
 嘗て世話になった人の息子の力になりたい、そう言う事だろう。

 「だが、まぁ理由なんざ如何でもいい!
  …坊主よ本気でやるつもりか、あの生けるバグキャラジャック・ラカンとよ?勝ち目は百パー無いぜ?

 「勝ち目…そんなもの必要有りませんよ。勝率とか勝ち目とかじゃなくて…勝つんです、僕が――僕達が!」
 「やる前から勝率云々考えて話になるかい。大体ネギが勝つ気なら俺かて同じや!」

 それでも、念を押すように聞いてくるリカードに対し、しかしネギにも小太郎にも迷いなど無かった。
 確かに相手は『伝説の傭兵』『千の刃』の異名を持つ最強の英雄、ジャック・ラカンだ。
 普通に考えれば、どうやっても勝てる筈が無いと思う相手だろう。



 あくまで普通ならば。



 ネギと小太郎、この2人は普通では無い。
 ネギはエヴァ、小太郎には稼津斗と言う目下最強の『師』が居るし、普段の修行仲間の少女達も飛びぬけた強さなのだ。
 普段の修行が=強者との戦いの日々――伝説の英雄が相手だろうと退く理由等何処にも有りはしない。


 「ワッハッハ良い返事だぜ坊主共!…気に入った!!俺達が修行を見てやる、見事ラカンを倒して見せな!」

 其れが実に気に入ったらしい。
 『ラカンを倒して見せろ』とは、この3人も本腰を入れてくることだろう。

 「体術なら俺に任せな。こう見えても近衛軍団じゃ白兵戦の鬼と言われてんだ!」

 「私は戦闘魔法専門の教師よ。『千の雷』の仕上げなら任せておきなさい。」

 「妾は教えるのは得意では無いが…まぁ、色々サポートはしてやるぞ?」

 しかもリカードとヘラスの2人は、夫々が体術と攻撃魔法のエキスパート。
 テオドラのサポートも期待できるレベルだろう。

 「此れは何とも……ここまでされたら、如何有っても勝たないといけないな――ネギ、小太郎!」

 「うん!」
 「勿論勝ったるで!」

 稼津斗に言われれば、ネギと小太郎も気合充分。
 この勢いなら、或いは本当に勝ってしまう事もあるかもしれない。


 「よき気合じゃ…では早速。」

 「其れは…」

 とは言え、準決勝までは3日――時間は如何有っても足りない。
 其処でテオドラが取り出したのは、毎度お馴染み『ダイオラマ球』。

 「ご明察。ラカンとの試合は3日後じゃが、流石にたった3日間ではどうしようも無い。
  じゃが――此処で修行をすれば3日間を30日間に延ばす事が可能じゃ。」

 時間が足りないなら、使える時間を延ばすまで。
 約1ヶ月の修行が出来れば実力だって相当に上がるはずだ。

 無論修行の合間を縫ってトーナメントの試合を消化する必要が有るがそんなものは些細な問題、無問題だ。
 此処で修行を積む=強くなった状態で望むトーナメントなど準決勝までは文字通り『消化試合』に他ならないのだから。


 「よし!んじゃまぁ、打倒ラカンを目指して…修行開始だ!!」

 「ハイ!!」
 「おう!!」

 休む間などない。
 即刻ダイオラマに入って修行開始!







 「わはははは、やるじゃねぇかガキ共!基礎は問題ないみてぇだが……ちと出力が弱いぜぇ!」

 「く…!」

 「このオッサンマジで強ぇ……」

 「戦いの場で、相手の力量に驚いている暇など無いぞ?」

 「「!!」」

 その修行は極めてハード。
 体術修行では、稼津斗とリカードの2人とのスパーリングをメインに、リインフォースとコピーエヴァが戦術を指南。







 「矢張り飲み込みが良いわね。」

 「そ、そうですか?」


 「お前は精密射撃はあまり得意じゃないからな…体術でペースを掴んで全力の気功波を打ち込むのがベストだな。」

 「成程…気功波も奥が深いで…」

 魔法と気は、ヘラスと、これまた稼津斗が夫々ネギと小太郎を指導。
 何気に木乃香も魔法を習っているのはご愛嬌だろう。







 「ほれ、もっと確りせぬか!気を抜けばプチッと行くぞ!あと少しじゃ!」

 基礎体力の向上はテオドラが筋力の強化、柔軟性や瞬発力はコピーエヴァと稼津斗が担当してコーチ。


 この修行の間の炊事その他を担当してるのはのどかと超だ。








 勿論拳闘大会の試合だって忘れてはいけない。


 「ぐ…速い!」

 「捕らえきれぬ…!」


 「今だよコジロー君!」

 「任せとけや!喰らえ、兄ちゃん直伝…覇王翔哮拳!!」


 ――ドッガアァァン!!



 決まったーーー!!大人気のナギコジペア快勝〜〜!!
  ナギがスピードで相手を撹乱し、其処にコジローがドデカイ一発をぶち込んでの見事な勝利だ〜〜!!








 「撃ち貫け…ブルーティガードルヒ!」

 「逃げ場は無いぞ…羅刹葬爪!」


 「く…迎え撃て、スターガスト・ドヲゴソ!」

 「頼むぞエキゾチックヒーロー・スネオ!」


 「「小賢しい!!」」


 ――ガガガガガガガガガガ……ドゴォオォォン!!


 「「うわぁぁぁ!!」」
 流星&四十代:LP4000→0


 決着〜〜!!謎の魔物を使役した召喚術士2人を、呼び出した魔物共々無数の魔力弾と気弾で大粉滅!
  召喚術士2人の謎の数値も0になって完全KO!エックスルインペアの恐るべき強さは本戦でも健在だ〜〜!



 尤も2組とも此れは余裕。
 当然ながらラカンも圧倒的強さで勝ち抜いている。




 厳しい修行と拳闘大会。
 この2つをこなす日々は、ダイオラマでの時間をあっという間に消化して行く。

 ハードな事この上ない日々だが、其れは確実にネギと小太郎を強化しているだろう。







 そして――準決勝前日。
 ダイオラマの中では後10日ほどという所だろう。


 「「2997…2998…2999…3000!!」」

 今日も今日とて修行は続く。
 身体の基礎能力強化の為の腕立て3000回を、たった今終えたところだ。

 「「ふ〜〜〜〜…」」

 流石に3000回は結構きつい――が、修行を始めたばかりの頃と比べれば格段に楽にこなせるようになっている。
 2人とも自分の実力が上がっている事を肌で感じている事だろう。


 「精が出るな。」

 「如何じゃ2人とも?」

 「テオ様…」

 「兄ちゃん。」

 丁度其処に稼津斗とテオドラが登場。
 2700回を越えたあたりから姿が見えなかったが、如何やら飲み物を取りに言ってたらしい。

 「取り合えず休憩だ。筋力トレーニングの後は充分な休息をとって筋肉を休める事が大事だ。
  そうしないと筋肉は弾力を失って、ただ堅くて重いだけの邪魔者になるからな。」

 「おう、分ってる!」

 「ならば良し。」

 ただ我武者羅に鍛えるだけではなく、休むべき時には確りと休む。
 其処はちゃんと分かっているようだ。

 「しかし、正直驚きじゃ。そなた等の実力は、皆が目を見張るほどメキメキ上がっておる。
  ダイオラマで稼げるのは今日を入れて後10日…この成長速度ならば行けるやも知れぬが……決め手を欠くか?」

 「はい…」

 「正直言うとちょっとな…」

 だが、その成長とは別に、ラカンを相手にするには少しばかり決め手に欠けるらしい。
 ネギは『千の雷』を完全に習得し、闇の魔法での術式兵装への応用も略完成形が見えている。
 小太郎も、稼津斗の放出系気功波は殆ど習得し、獣化形態も強化に成功している。
 それでもラカンを相手にするとなると、もう一つ強烈な『何か』が欲しいと言った所だろう。


 「まぁその辺は残った時間で何とかなる。と言うか、俺と皇女様が何とかする。」

 「テオでよいと言うのに…まぁ、そう言う事じゃ。心配は要らぬ。」

 尤も、コーチ組はその辺も看破して対策はとってあるようだが。

 「ホンマか!」

 「稼津斗とテオ様……うん、分りました!」

 其れを聞いてネギと小太郎も一先ず顔が晴れる。
 自分で思いつかないなら、他の誰かからのアイディアを貰う、或いは技を伝授してもらうのは悪い事では無い。
 寧ろ、成長したいのならば積極的に取り込んで、自身の中で研磨・昇華すべきだろう。

 少年2人はちゃんと分っているようだ。


 「時にネギよ…アリカの事、お仲間に頼んで調べてもらったのじゃろ?」

 ……唐突に、テオドラはアリカの話題を振ってきた。
 初対面の日に、ウッカリ口を滑らした事が気になっているらしい。

 ネギもネギで其れが誰なのか気にはなったので、和美と千雨に頼んで仲間を探す合間に調べてもらっていたのだ。

 「はい…大戦期に『呪われた姫』の汚名を着せられたオスティアの王族で…父さん達と行動を共にしていたと。
  ですが、ハッキリした事は……公の場に姿を見せたのは大戦終了の記念式典が最後――その後の足取りは不明。
  分ったのはこれくらいです…」

 「そうか……妾も大戦後のアリカについては詳しく知らぬ…」

 だが、あの2人が調べても分ったのはこれだけ。
 兎に角情報が無いらしい。

 「………」

 「如何したネギ?」

 「稼津斗……うん、あくまで予想――勝手な予測なんだけど…アリカ姫は――僕のお母さんかもしれない。」

 少しばかり考え込んだかと思ったら爆弾投下!
 小太郎なんかは『そら大胆な予想やな?となるとネギはお姫様のガキで、世が世ならオスティアの王子様か?』等と言ってる。
 が、テオドラは目に見えて驚いている――『何で其れを』と言わんばかりに。

 しかし…

 「けどあくまで予想だよ……本当かどうかはラカンさんに勝てば分るしね。」

 「…其れでよいのか、ネギ?」

 「良いも何も、そういう約束ですから。テオ様は知ってるみたいですけど…此処で聞いたら無粋ですから。」

 「…成程…本当に強い子じゃ…」

 てっきりそのまま聞いてくると思ったが、そうではなかった。
 あくまで予想に留め、詳細はラカンに勝ってからと言うネギに、改めてテオドラは感心する。


 「まぁ、その話は此処までだ。もう30分休んだら修行を再開だ……が、今日は此処から別メニューだ。」

 「「え?」」

 「小太郎は俺と、ネギは皇女様とだ。」

 「尤も、妾はきっかけじゃ。その後はヘラスが指導してくれるがな♪」


 アリカ姫の話題は切り上げ、修行にシフト。
 残り時間は、如何やら個別強化に当てるらしい。

 小太郎は稼津斗、ネギはテオドラとヘラス――完全に役割分担強化だろう。


 「ネギはネギで巧くやるだろうが…小太郎、お前には2種類の拳打を教えてやる。」

 「拳打って…正拳突きか!?」

 「あぁ。天地覇王拳は俺にしか使えないから教えられないが……究極の『光速の拳』と究極の『破壊の拳』を教えてやる。
  どちらも習得難易度はS級だが、お前なら残りの時間で習得できる筈だ。」

 小太郎の方は、如何やら近接戦の『切り札』となる2つの拳打を教わるらしい。
 今までは見て盗んできたが、マンツーマンで教えてもらうとなれば又違うだろう。



 「それで、如何ですかテオドラ様?

 「アクア!」

 「うむ…立場上は問題あるが、大会期間中限定とすれば何とかなるであろう。」

 ネギの方は、何時の間にか使い魔のアクアが現れ、テオドラに何かを確認。
 何か特殊な事をするのだろうが、ネギが理解する間も無く魔法陣展開。
 此れは『契約魔法陣』――詠唱する事も無く仮契約完了だ。

 「あの、テオ様?」

 「期間限定仮契約――勝利の布石その1じゃ♪」

 悪戯っぽく笑いながら、カードを渡す。
 このアーティファクトは、きっとラカン戦で役に立ってくれる事だろう。

 尚、仮契約を打診したアクアは『ありがとう』とネギから褒められていた。


 その後は残った時間をフルに使って猛修行!

 おまけにネギは残り1日になったら、今度はコピーエヴァの巻物まで使って修行時間を延長!



 そして…








 ――準決勝戦当日


 修行開始を決めた浮遊小島には、あの時のメンバーが集まっていた。
 試合ギリギリまで修行をしているネギ達を迎えに来たのだ。


 試合開始までは残り5分。
 瞬間移動で会場入りするとは言えそろそろ時間だ。


 「…来たようでござるな。」

 楓の呟きと同時に巻物が解かれ、ダイオラマからは魔法陣が。

 「お待たせしました!」

 「待たせたな!」

 夫々からネギと小太郎が堂々の登場!
 特にネギは体が白色に発光している。

 尤も其れはすぐに治まり、代わりに自信に満ち溢れた顔が現れる。
 其れは小太郎も同様――相当に腕を上げたらしい。

 「首尾は如何やネギ?」

 「やれる事は全部やった。…正直負ける気がしないよ。」

 「よっしゃ、なら!」

 「うん!!」

 「「打倒、ジャック・ラカン!!」」

 自信満々闘気充実!
 拳をあわせ必勝宣誓!

 「なら行くぞ、一気に会場まで移動する。リインフォース。」

 「分っている。準備は完了だ。」

 そして会場までは稼津斗とリインフォースの瞬間移動。
 この場の全員を対象にし…

 「「無影月詠!」」

 一瞬でこの場から消えたのだった。








 ――――――








 一方で、試合会場ではネギ達が所属する拳闘団は大いに慌てていた。

 当然だろう、試合開始真で5分を切っているのにお抱えの拳闘士2組が未だに会場入りしていないのだから。

 「だぁぁぁ!!来ねぇ!!何やってんだぁ!!!」

 「遅刻して棄権なんて事になったら俺達の拳闘団は干されちまうぞ!」

 トサカもバルガスも慌てに慌てる。
 仕事が干されたら死活問題なのだ。

 「悪いな、ギリギリで!」

 其処に、瞬間移動で稼津斗達が登場!
 試合開始までは5分を切っている、急いで準備しなければだろう。

 「おっせぇぇえぇ!!何してやがったんだ!寿命が縮まったじゃねぇか!」

 「スイマセン…ラカンさんに勝つために色々とやってたものでギリギリに…」

 「勝つって…マジかオイ…。まぁ良い、さっさと着替えて行って来い!観客は既に大入りなんだ!」

 「おう!言われるまでもないわ!」

 トサカに急かされる様にしてネギと小太郎……否、ナギと小次郎は試合着に着替えて拳闘場にまっしぐら。


 「ナギ、小次郎――全力でぶつかって来い。頑張れよ。」

 「…うん!大丈夫だよエックス!」

 「ばっちり見ててや!」

 最後に稼津斗からのエールを受け、既に歓声が沸いている会場へと足を踏み入れたのだった。








 ――――――








 会場はトサカの言う通り、既に超満員札止め状態。
 モニターにはトーナメント表と準決勝の組み合わせが映し出されている。











 その拳闘場で、ナギは反対側にいるラカンを見据えていた。

 ラカンも同様にナギを見据えている。


 試合開始は告げられていないが、それでも空気は緊迫している。


 「ほう…良い面構えだなナギ。こりゃ楽しめそうだ。」

 「やるべき事は全てやってきました…この試合、勝たせてもらいますよラカンさん!」

 不敵に告げるラカンに、ナギも吠える。
 このやりとりもモニター通じて客席に流れているので、此れが又観客を盛り上げる。


 「言いやがったな?…いいぜ、そう来なくちゃよ!」


 それでは準決勝第1試合、ナギ&コジロー組vsラカン&カゲタロウ組…試合開始!


 闘気が高まった所で試合開始の合図。

 同時にネギも動く。

 「行きますよラカンさん!全力全壊、どんな手を使っても勝たせてもらいます!」

 腰のポーチからテオドラとの仮契約で出現したカードを取り出し掲げる。

 「アデアット!!」


 準決勝第1試合――試合開始!














  To Be Continued…