倒すには至らなかったが、終始フェイト達を圧倒して退けた蒼き翼の面々はハルナ所有の飛行艇に集合。
 のどかが得た情報整理などをこれから行うところだ。

 行うところなのだが…


 「稼津君久しぶり〜〜!会いたかったよ〜〜♪」

 「マッタク…相変わらず元気だな裕奈。無事で安心したぞ。」

 ついさっき再会を果たしたばかりの稼津斗に裕奈が抱きついていた。
 亜子達とは再会した裕奈だが、試合時間云々で稼津斗には会えず、更にフェイトの襲撃も有って本当にさっき会ったばかりなのだ。

 お互いに無事は信じていたが、実際に会えると矢張り感極まるものだ。


 「…で、ハルナは何をしてるのかなぁ?」

 「え?い、いやぁ稼津先生とゆーなで冬コミに向けての新しい本が作れるかなぁって…」

 「へ〜……ハルナ、少し頭冷やそうか?

 「へ?ちょ、のどかアンタ其れ洒落にならないあ〜〜〜〜〜!!」

 …まぁ、取り合えず平和だろう。
 多分、きっと。











 ネギま Story Of XX 78時間目
 『真の名・目的・正体』











 一行は飛行艇のブリッジに勢揃い。
 飛行艇の持ち主であるハルナが妙に『良い色』に焼けているのは多分気のせいだろう…気のせいな筈だ。

 「良い感じに小麦色だな早乙女?」

 「あはは…取り合えず人の恋路はネタにしちゃダメだって文字通り痛いほど良く解ったわ…」

 取り合えずのどかによってきっつ〜〜〜いお仕置きがなされたのは間違いないだろう。
 人の恋路を邪魔する奴は馬にけられて何とやら…至言である。

 「と、まぁ冗談は此れくらいにしてと…先生方宜しく!」

 「はい、今回の襲撃はマッタク持って予想外でしたが皆さん良くやってくれました。
  フェイト達を倒すには至りませんでしたが退ける事は出来ました。
  結果で言うなら僕達の優勢勝ち……少なくとも彼等が大会中に再度襲撃をかけてくる確率は低いと思います。」

 「逃げおおせたとは言え、奴等にとっては完敗だ――策を色々弄したにも拘らずにな。
  此れで又襲撃をかけてくるようなら其れはただの阿呆に過ぎない。」

 気持ちを切り替え、今回の件に話は移る。
 態々出向いてきたフェイト達だが結果は火を見るまでも無く完敗。

 稼津斗がセクスドゥムを圧倒し、ネギは圧倒とは行かなくともフェイトと互角以上の戦いを展開。
 フェイトの配下の少女達も、稼津斗とネギのパートナー&ラカン、小太郎、千草の前に敗走。

 ネギは優勢勝ちと言うが其れは『限りなく完勝に近い優勢勝ち』と言って良いだろう。


 「尤も、俺達が現実世界に――麻帆良に戻る前に連中と事を構える事は間違いない。
  其れを踏まえて、少し得られた状況を整理したいと思う…のどか。」

 「はい。
  今回の一件の最後の最後、彼等が逃走する際に私のアーティファクトを駆使してリーダー格と思われるフェイトの考えを読んでみました。
  結果、色んな事が分かったんです。」

 稼津斗に言われて、のどかは自身のアーティファクトを展開し得た情報を呼び出す。
 同時に和美と千雨もアーティファクトを展開し、夫々リンクさせてのどかが得た情報を光学ディスプレイに映し出す。

 この辺の連携は麻帆良での修行の賜物と言えるだろう。


 「先ず、あの少年フェイトの本当の名前は『テルティウム』――ラテン語で『3番』を意味する名前ですね。
  彼が所属する組織は『完全なる世界』…20年前の大戦の現況でありネギせんせーのお父さん達の最大の敵でした。
  そして彼等の目的ですが……『破壊による再生』…この世界を一度破壊しその上で造り直そうとしています。」

 そしてのどかが得た情報はとんでもないことだった。
 フェイトの真名…其れは良い。

 だが連中の目的――この魔法世界を一度破壊して造り直すとは随分な計画だ。

 確かに新たに何かを造る時に、既存の物を一度壊してからと言うのは良くある方法だ。
 しかし、其れはあくまで人の生命財産を脅かさない規模でのみの話。
 世界全体を一度破壊した後に再構成するなど正気の沙汰ではない。

 其れこそ自らが神になったとでも言うような傲慢かつ極端な思考だ。
 尤もフェイト達は心底本気なのだろうが…


 「破壊による再生カ……成程な、100年後の世界で争いが起きたのは彼等の計画が元凶だったのカ。」

 それに静かに呟いたのは超。
 彼女もまたフェイト達が襲撃してきた時オスティア市民や重要施設に被害が及ばないように奔走していたのだ。


 「如何言う事ですか超さん?」

 「うむ、私は未来人だろうネギ坊主?私の世界はそれはそれは荒廃が進んでいたのヨ。
  原因は一切不明だが、後輩の原因の1つに『マナの急速な減少』が挙げら得ていたネ。
  そのマナ減少も原因不明だったガ、今ののどかさんの話を聞いて合点したネ、彼等の計画が影響していたのカ…」

 思わず苦虫を噛み潰したような顔になるのは仕方ないだろう。
 彼女が未来を変えようと決意するほどの事態を引き起こしたであろう原因が分かったのだから。

 「あんにゃろ、超りんが無茶する原因まで?私を殺しかけたりやりたい放題じゃん!」

 「ウム、此れは朋友として見過ごす訳に行かないアルな。」

 裕奈と古菲もフェイト一味の行いに怒りを顕にする。
 それは全員同じだろう。

 其れは其れとして説明は続く。

 「それからもう1つ……ネギせんせーのお父さん、ナギさんの事なんですが…」

 「のどかさん?」

 何故かのどかは言いよどむ。
 ナギに関して得た情報はどうやら『重い』モノのようだ。


 「言ってやってくれのどか――大丈夫だ、ネギは其れで落ち込んだりはしない。」

 「稼津斗さん…分かりました。
  ネギせんせーのお父さん、ナギさんは10年前に……『完全なる世界』の首領と相討ちになったそうです…」

 「「「「「!!!」」」」」

 予想通りの重いものだった。
 10年前となるとネギの存在が其れを否定すると思うだろうが否。
 『ネギの母親が身篭った直後』ならば10年前の戦死も十二分にありえるのだ。

 尤もその場合は6年前にネギが出会ったナギは誰だと言う話しなるのだが…


 「そんな…父さんは…」

 が、ショックを受けたのは矢張りネギ。
 父親が死んだと改めて聞くと思う所が…


 「く、これじゃあ探し出した後で僕とエヴァンジェリンさんでフルボッコにする計画が台無しじゃないですか!!」


 ――ドガシャァァン!!


 あったようだが可也ベクトルがぶっ飛んでいた。
 余りの理由にその場の全員が、其れこそラカンまでもがずっこけた位だ。

 「待てやネギ!お前自分のオトン見つけたらエヴァと一緒にボコる心算だったんかい!!」

 「此れは此れは、なかなか坊ちゃんも過激おすなぁ…」

 「つーか坊主、その目的には流石の俺様も吃驚だぜ?」

 小太郎、千草、ラカンから突っ込みが入るがなんのその!
 ネギの心は既に決まっているのだ。

 「当然ブッ飛ばしますよ!エヴァンジェリンさんとの約束破ってほっつき歩いて子作りまでして!
  しかもそうやって出来た僕の事は育児放棄で放置ですよ?フルボッコにする理由は充分です!
  寧ろ半殺しなんて生温いですよ、死なない程度の8割殺しです!!」

 如何やらネギは確りと『闇の大魔王』の影響を受けまくっているらしい。
 と言うか今の今まで気付かなかったが、エヴァに貰った魔力発動体の指輪を『左の薬指』にしてる辺り、もうマジだろう。

 「そ、そうか…だが安心しろ坊主、少なくともアイツは死んじゃあいねぇ――この俺様が保障してやるぜ。
  白髪坊主の言う10年前の戦いは俺もアルも詠春も一緒だったからな。
  その戦いであの馬鹿は生き残りやがったのを俺はこの目で見てるからな…間違いねぇ。」

 で、ラカンがナギの生存を言う。
 フェイトの考えよりも此方の方がよほど信憑性はあるだろう。

 「本当ですか、ラカンさん!」

 「おうよ。大体アイツはそう簡単に死にやしねぇ。
  まぁ、なんだ…探し出したらエヴァの奴と一緒に精々ボッコボコにしてやれや。」

 「勿論です!!」

 ラカンもエヴァに負けず劣らずである。
 取り合えずナギ・スプリングフィールドは最強の悪の魔法使いと自分の息子にボコされるのは決定事項だ…合掌。


 「さてと、ナギの事は良いとして…桜咲、お前何か拾っていなかったか?」

 ナギフルボッコ計画は兎も角として、話は戻る。
 稼津斗が刹那に話を振る。

 刹那は頷くと胸元から何かを取り出す。
 鷹のような鳥の装飾を頂く調度品のような何か。
 あの戦闘現場で偶然拾ったものらしいが…

 「ネギ先生がフェイトを吹き飛ばす直前に奴が落としたものです。
  何らかのマジックアイテムであると思って回収しておいたのですが…此れが何かまでは…」

 詳細は不明だった。
 少なくともマトモなものでは無いだろう。

 とは言え其れが何かは分からない。
 稼津斗が『同調』で探っても『超強力な魔導具』と言う事しか分からない。

 が、その答えをもたらしたのは以外にも千草だった。

 「ふむ…此れは中々どうして強力な拘束系呪術の類と同じ力がありますなぁ?」

 「分かるんですか師匠?」

 「当然や刹那。まぁ、ウチは西洋魔術にはあかるくありまへんけどな。
  やけど、術式の系統くらいは陰陽道の類似呪術と比較すれば容易く目星はつく。
  此れはアレやな、『契約した者の言葉を絶対遵守させる』って感じの行動制限術式おすな。」

 其れはトンでもない物。
 絶対遵守とは厄介極まりない。

 「フェイトとか言うガキンチョの取引は蹴って正解おしたな。
  もしも受け入れてたら、坊ちゃん、アンタは生涯連中の提示した条件に縛られて、二度と連中と戦えない身体になってましたえ?」

 「つまり、蹴ったのは正解だったって事ですね…」

 聞けば聞くほどに恐ろしい。
 更に恐ろしいのは其れを履行させようとしたフェイト達だが…

 尤も結果で言うなら其れは無かったのだから良しとすべきだろう。


 「さて、これらを踏まえた上で…ジャック、お前連中を知っているな?」

 一通り情報が出たところで稼津斗はラカンに問う。
 尤も其れはほとんど確認なのだが…

 「おう…如何やら間違いねぇみたいだ――坊主から名前聞いたときは半信半疑だったんだがな。
  のどか嬢ちゃんが読み取ったアイツの真名を聞いて確信したぜ…間違いねぇ、奴は遠い昔に会った事がある相手だ。」

 肯定。
 と言うか、ラカン自身たった今確信したのだが。

 「ヤローがガチでアイツなら厄介極まりねぇ相手だ。
  坊主…本気でやりあうならお前さんの『闇の魔法』を早いとこ完全にしねぇとな…」

 「ラカンさん?」

 「この際だ…奴等の事だけでも教えておいてやる。
  アーウェルンクスってのは奴の型番みてぇなモンだ…『アーウェルンクスシリーズ』ってところか?
  3番てことは野郎は地属性か?…兄ちゃんが戦って言う6番は水属性だったか?」

 「あぁ、俺が戦ったセクスドゥムは水の魔法を使っていた。」

 余裕の表情を引き締め、ラカンはフェイト達の正体を尽く暴いてく。

 「やっぱりそうか…」

 同時にラカンは何かを決意したような表情になる。

 「おし、決めたぜ!兄ちゃん、坊主、たった今から俺様をお前等『蒼き翼』の末席に加えてもらうぜ!」

 其れは予想外の提案だった。
 少なくとも積極的に関わる気は無かった筈だ。
 其れがどういう心境の変化だろうか?

 「ジャック?」

 「ラカンさん?」

 「本当なら坊主を鍛えるだけ鍛えて、あとは知らぬ存ぜぬを貫くつもりだったんだが気が変わった。
  あのイケスカねぇスカした白坊主が出てくるなら俺が出るには理由は充分だぜ。
  テメェのケツの拭き残しを全部任せちまうなんざカッコワリィにも程があるからな。」

 如何やらフェイトの正体を聞いて気が変わったらしい。
 理由は如何あれ、此れは嬉しい戦力増強だ。

 「ふ…矢張り本物の『英雄』は違うなジャック。
  俺とネギが断る理由は無いが……皆は良いか?」

 一応稼津斗が全員に是非を問うが、答えは決まっている。


 「「「「「「「「「「「「「異議無し!」」」」」」」」」」」」」

 戦力増強に異議など無い。
 目出度く『英雄』ジャック・ラカンは『蒼き翼』の一時メンバーに加入だ。

 「おう、ほんじゃよろしく頼むぜ!」

 ラカンもヤル気は充分。
 更なる戦力増強を果たした一行に敵は居るのかどうか甚だ疑問である。

 いずれにせよ、全員で麻帆良に帰る確率は大幅上昇した事は間違いない。


 「ジャックの加入は有っても俺達のやる事に変わりは無い。
  亜子たちを奴隷から解放し、残るメンバーと合流して麻帆良に帰る。
  その過程で出てきた邪魔者は誰であろうとも倒して前に進む…異論は無いな?」

 「「「「「「「「「「「「「「「無い!!」」」」」」」」」」」」」」

 やる事も変わりは無い。
 目的達成に向かって邁進するだけだ。

 「ではハルナさん、闘技場にお願いします!」

 「OK!グレートパル様号、闘技場に向かって驀進ーーー!!」

 その目的の1つである『奴隷身分の3人の解放』の重要拠点である闘技場目指してまっしぐら!
 日が変われば又試合の毎日――参加選手の稼津斗、リインフォース、ネギ、小太郎は全然平気だが。


 兎に角、今は目の前の事から片付けるが最上策だろう。


 程なく一行は闘技場に到着。
 お祭好きのこの面子によって、ラカンが蒼き翼に加入した事を理由にしたドンちゃん騒ぎが起きたのは必然と言えるだろう。









 因みに…


 「此処で戦っていたのはナギ様ですってぇ!?」

 「い、委員長落ち着くです!!」

 乱闘騒ぎを聞きつけた『アリアドネー乙女騎士団』のユエ達は現場の聞き込みを行い…

 「ぬぎぃぃ!不覚ですわ!ナギ様の生バトルを見逃すなんてぇ!!」

 「お嬢様お気を鎮めて…」

 リーダー格であるエイミィが暴走してた。
 熱狂的『拳闘士ナギ』のファンである彼女としては、違法野試合とは言え見られなかったのは残念極まりないのだろう。


 取り合えず、襲撃後の街は特に混乱も無く平和な様だ。














  To Be Continued…