「さてと、大丈夫か裕奈?」
「大丈夫ですか裕奈さん?」
「ん、まぁ大丈夫だよ。
ちょ〜〜〜〜〜っとばかしピンチに陥ったけど、稼津君とネギ君のおかげで助かった訳だから、この際遅刻は不問とするべきだよね♪」
裕奈の窮地を救ったのは稼津斗とネギ。
今の世に於いて、最強と称されるこの2人が来た以上、変態の命運は決まったような物であろう。
「まぁ、ギリギリ間に合ったって事で納得してくれ。
しかし、またお前かパイオ・ツゥ?……魔法世界で散々ブッ飛ばして懲りたかと思ったが、今度は地球で猥褻行為か?……ドレだけ神経腐ってるんだお前は?」
「流石に、此れは見過ごせませんよ……」
して、この2人には犯人に覚えがあるらしい。
と言うか、パイオ・ツゥと言えば、7年前の魔法世界での大冒険の際に、トレジャーハンター達と行動を共にしていたのどかを剥いてくれた、ある意味で超悪名高い
セクハラ猥褻上等の変態である。その脳内はおっぱいで埋め尽くされて腐っていると言っても過言ではないだろう。
「にょほほ、流石に気付いたね。
だが、私の目的は至高のおっぱいを揉みしだくこと……其れが出来れば、他は何も言う事は無いよ。」
「「なお悪いわ。」」
そして、パイオ・ツゥは、本気で世の女性の敵であった。
まぁ、彼女の基礎能力の高さは目を見張るものがあるのだが、其れを己が欲望を満たすためだけに使ったのでは、碌な結果は産まない事は明白である。
事実、パイオ・ツゥは、1分後に駆けつけた魔法警察によって逮捕され、塀の中に一直線だったのだから。
因みに、連行される際に、パイオ・ツゥは負け惜しみとも呪詛とも取れる事を叫んでいたが、稼津斗とネギは、見事なまでに其れをスルーして完全無視であった。
ネギま Story Of XX 200時間目
『ネギま!Story Of XX』
取り敢えずパイオ・ツゥは逮捕され、一連の猥褻事件には決着がついたのだが、この場に稼津斗とネギが現れたと言う事で、現場には別の騒ぎが広がっていた。
だが、其れもまた無理のない事だろう。
氷薙稼津斗とネギ・スプリングフィールドと言えば、地球と魔法世界を繋いだ最大の功労者であるが故に、その名は何方の世界でも知られているのだ、そんな有
名人が現れたとなっては、場が騒然となるのも致し方ないだろう。
「本物だ、本物の稼津斗さんとネギさんだ!!」
「スイマセンサインください!」
「握手して下さい!!」
「其れ位なら構わないが……」
「僕達のプライベートの邪魔はしないで下さいね?」
が、其れでも稼津斗とネギは、群がるギャラリーを的確にあしらいつつ、下手に混乱が起きない様に適度にファンサービスを行っているようだ。
で、稼津斗とネギが此処にいるのは偶々ではない。
ネギが言っていたように、プライベートでの用事がこの麻帆良にあるから要るのである。そして、その用事と言うのは――
「でもまぁ、取り敢えず同窓会前に終わったのは良かったかな?勿論終わらせる予定ではあったんだけど、予想外の反撃喰らっちゃったからね〜〜〜♪
あのまま揉まれたとしても、其処に唯一動く頭で本気のパチキかましてやろうとは思ったんだけどさ〜〜♪」
そう、同窓会。
と言っても、旧3−A全員ではなく『蒼き翼』の同窓会で、しかも『参加できる人だけ参加』すると言うモノではあるのだが。
それでも、夫々が夫々の道を進んでいるが故に、蒼き翼の仲間であっても、成人後は顔を合わせる事は決して多いとは言えない故に、こう言った集まりは嬉しい
ものであり、そして楽しみなのは事実だろう。(稼津斗組の面々は割と普通に顔を合わせているからアレなのだが。)
「おーい、ゆーなーーーー!」
「ネギ先生、稼津斗先生ーー!」
「のどかーーー!」
そして其処に、タイミングよく『同窓会』の参加メンバーが到着。
稼津斗の契約者からは、つい先ほど帰国したアキラと和美(と和美の背後霊的存在のさよ)、そしてその2人を空港まで迎えに行っていた亜子。
ネギの契約者からは、夕映とまき絵、刹那と木乃香、ハルナと古菲と茶々丸、そして千雨。
更に、小太郎と夏美の姿もある――まぁ、其れなりに人数が集まったと言って良いだろう。
「いやっほ〜〜〜!ネギ君久しぶり〜〜〜!大きくなったね〜〜!」
「しかもカッコ良くなってるし!!」
「カッちゃんはあんまり変わらへんなぁ?」
「……まぁ、オリハルコンの影響で未来永劫この姿な訳だから、髪型でも大胆に変えない限りは、そう見てくれは変わらんと思うぞ近衛嬢?」
此れもまた、お決まり的に再会を楽しんでいる。
特にネギ組の面々は、数年ぶりの再会となる面子も多いため、相当に懐かしいようだ。
「また腕上げたみたいやなネギ?……やけど、今年の麻帆良武闘会のエキシビションは俺が勝たせて貰うで?」
「其れは楽しみだね?……去年は大会では負けたけど、それ以外の総合成績での星は未だ僕の方が上だって言う事を忘れないでよ小太郎?
寧ろ、今年は僕が勝って、星の差を大きくさせて貰うよ?――大体にして、エヴァの前で二年連続敗北なんてのは、流石にカッコ悪すぎるからね。」
「其れは俺も同じやアホ。夏美の前で、負けられるか!」
ネギと小太郎もまた、相変わらずの良いライバル関係であるらしい。
因みに、数年前からネギは小太郎の事を『君』付けしないで呼ぶようになった――大人になって、思うところがあったのかどうか、其れは分からない事だが。
「やれやれ、大体予想はしていたが、賑やかだな貴様等?
と言うか、集まったのならばさっさと来い、予約した席で1人で待っていると言うのは、案外しんどい物があるのだからな?」
更に更に、今度はエヴァンジェリンが登場!
どうやら、今回の同窓会の為に会場を予約し、席を確保してくれていたらしいのだ。
「あぁ、御免なさいエヴァ!直ぐに行きます!!」
「悪い、直ぐに行く。」
エヴァの声を聞いた一行は、急いで同窓会の会場である、麻帆良を一望できるカフェラウンジに移動を開始。
桜舞い散る春先の、此の同窓会は中々に有意義な物になるのかも知れない――いや、間違いなくなるであろう。そもそもならない筈がないのだ、この面子で。
――――――
さて、時を未来に進めて、嘗ての3−Aの面々がどんな未来を歩んで行ったのかを、少しだけ見て行くとしよう。
・出席番号1番:相坂さよ
半実体化と幽霊化が自在に出来ると言う特技(?)を生かして、稼津斗やネギ達(と言うか和美)に付いて行く感じで、あらゆる世界を巡り、そのせいかは分からな
いが、麻帆良の地縛霊から解放され、和美の背後霊兼守護霊のポジションに落ち着いている。
因みに、麻帆良で起こる不可思議現象は、大抵の場合幽霊状態のさよが引き起こした『何か』である場合が多い。
・出席番号2番:明石裕奈
大学卒業後に稼津斗と結婚し、数年の後に男女の双子を出産。
魔法萬屋の経営者として、様々な依頼を熟しつつ、主婦業にも精を出している。仕事柄、依頼を熟す中で、嘗ての仲間達と再会する機会は多い。
主婦業と萬屋の経営者と言う二足の草鞋だが、忙しくも充実した日々を楽しんでいる。
・出席番号3番:朝倉和美
大学卒業後に稼津斗と結婚し、後に3人の男児を出産。
フリーのジャーナリストとして世界中を駆け回る傍ら、魔法萬屋の裏方としても其れなりに活躍している。
自費出版した『二代目英雄と銀の戦士』が大ベストセラーとなり、地球と魔法世界の両方で、その名が知られるフリージャーナリストとなった。
・出席番号5番:和泉亜子
大学卒業後に稼津斗と結婚。数年の後に、男女の五つ子を主産し、大きな話題を呼ぶ事になる。
高校3年時に、女子サッカーの大会で全国制覇を成し遂げ、その能力の高さを買われてプロからスカウトされ、大学卒業後に女子プロサッカーに。
女子サッカーのワールドカップで、日本を優勝に導いたストライカーであり、予選から決勝までの全試合で5得点を上げると言う不倒の記録を打ち立てた。
・出席番号6番:大河内アキラ
大学卒業後に稼津斗と結婚。稼津斗組では最も遅いが、結婚7年後に女児の双子を出産する。
大学卒業後に、当時新設されたばかりの軌道エレベーターの公社に入社し、宇宙飛行士並の厳しい訓練をパスして、記念すべき軌道エレベーターガールの一期
生となり活躍中。
また、入社した公社の水泳部に所属し、水泳の世界大会やオリンピックに日本代表として出場していたりする。
・出席番号18番:龍宮真名
大学卒業後に稼津斗と結婚し、契約者内で最大の10人の子宝に恵まれる事になる。
平時は龍宮神社の巫女として暮らしているが、有事の際には傭兵として動く事も少なくない。
龍宮神社の近くでいざこざが起きた際には、巫女装束のまま鎮圧に乗り出してしまい、『戦う巫女さん』としてネットに動画が上げられ、一躍有名になった事も。
・出席番号20番:長瀬楓
大学卒業後に稼津斗と結婚し、数年の後に男児二子と、女児一子を授かる。
日々これ修業の生活を送って居た結果、オリハルコンの補助も有って宇宙空間を生身で飛び回れるようになってしまった。
魔法と忍術を組み合わせた『魔導甲賀忍術』を編み出し、その開祖となって居る。
・出席番号27番:宮崎のどか
大学卒業後に稼津斗と結婚し、後に女児三子を出産する。
トレジャーハンターとして魔法世界を、クレイグ達と共に転々とし、歴史的に貴重な遺跡を多数発見する事になり、意図せずに魔法世界での考古学の権威となる。
夕映やハルナとは、今も親しい友人関係が続いている。
・出席番号32番:リインフォース・イクサ
大学卒業後に稼津斗と結婚し、数年の後に、男児の三つ子を出産する。
此れと言った職には就いていないが、萬屋の手伝いや、麻帆良及び魔法世界で、様々な事を手伝っており、其れなりに収入もあるらしい。
因みに、圧倒的な力を武器に『誰が稼津斗の第一夫人になるか』と言う争いでは他を文字通り撃滅して、見事第一夫人の座を獲得して居たりする。
・出席番号8番:神楽坂アスナ
魔法世界最古の王族として、アスナは両世界融和の象徴として活躍。
数百年の後に、力を蓄えるために永き眠りに付くが、永遠を生きる弟のネギと、親友のエヴァンジェリンの存在により、その眠りは此れまでとは異なる物になった。
・出席番号19番:超鈴音
高校卒業後に、時間移動の技術を生かして企業。
時を限定的に巻き戻す装置を開発し、多くの人々からその発明に対する賛辞を送られ、数年の後にノーベル賞を総なめする事になる。
・出席番号25番:長谷川千雨
大学卒業を期に、ネットアイドルを卒業し、此れまで培ったIT技術と能力と、アーティファクトの性能を生かしてサイバーセキュリティの会社を企業。
決して大きな会社ではないが、そのサイバーセキュリティには定評があり、アメリカ国防総省や軌道エレベーター等の重要なコンピュータにも採用されると言う、凄
まじいまでのセキュリティ性能を生み出した。
生涯独身を貫き、子は設けなかったが、ネギの良いアドバイザーとして生涯を過ごしていった。
・出席番号26:エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル
ネギが18歳になったと同時に結婚し、『英雄の息子と、闇の福音が結婚』と言う事で、魔法世界を大いに賑わせた。
ネギの伴侶として多くの事件に携わり、其れを解決して来た事で、自然と悪評は成りを潜め『正しき闇の福音』と呼ばれるようになる。
後に『雪姫』を名乗って麻帆良の教師となるが、其処で彼女が何を成したかはまた別の話である。
・出席番号29番:雪広あやか
雪広コンツェルンの代表として、魔法世界開発に大きく尽力する。
アスナとは親友であり、そして同時に口喧嘩仲間(と言うか、アスナの愚痴やら苦労を聞く役目?)だが、王族として活動するアスナを公私に渡って支え続けた。
113歳で大往生するその前日まで、精力的に動いていたとはアスナの弁である。
・出席番号28番:村上夏美
数年間の大恋愛の末、2015年に小太郎と結ばれる。
其の2年後に妊娠するが、半妖である刹那から『人間が妖怪の子を産む場合、その凄まじい激痛に耐えられずに死ぬ事もある』と言う事を聞き、古代からの儀式
を受けて、自ら妖怪となり、無事に子供を出産するに至る。
普通の人間とは比べ物にならない寿命を手に入れはしたが、生涯小太郎とはラブラブであった。
――――――
そして時は再び現代に戻る。
同窓会は、まぁ何というか予想通りの展開になって居る。
和美が鳴滝姉妹……の子供の写真をネギに見せ、其処から途轍もなく大盛り上がりとなり、更には全員強制参加の同窓会にしちまおうなんて言う案も出る位だ。
何とも騒がしく、そして賑やかな事だが、此れこそが彼女達が中学高校をA組として過ごしてきた証なのだろう。
そんな中、稼津斗はカフェラウンジのテラスから麻帆良の地を見つめ、物思いに浸っていた。
――人ではなくなり、化け物相手に戦い続けてきたが、800有余年を経て、漸く俺は俺が生きるべき場所を見つけたのかも知れないな。
だから見ていてくれよ、親父、爺さん……俺はこの世界で、同じく不死の道を選んでくれた仲間達と共に生きて行くからさ。
誰にも知られる事は無いが、其れは稼津斗の誓い。
不死の己を受け入れ、そして永劫の未来を選んでくれたパートナー達と歩むと言う覚悟――其れの表れだった。
「稼津君〜〜!なんか、美味しそうなお酒が来たよ〜〜?なんか、一等米使用の大吟醸って事みたいだけど?」
「何だと!?
其れだけの酒と聞いちゃ、酒豪の俺が黙ってないぜ?……一升瓶ごと持ってこいや!!」
ともあれ世界は平穏無事。
麻帆良を一望できるカフェには、騒がしくも楽しく、聞いているだけで笑みがこぼれてしまうようなやり取りが、店内に響いていた。
Fin
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