佐々木影久少年から依頼を受けた裕奈は、現場にて一連の事件の犯人である変態の何かと対峙していた。
実力的な事を言えば、圧倒的に裕奈の方が上なのは間違いないだろうが、そうであってもXXを発動している辺り、裕奈は如何あってもこの犯人に対して手加減、
或は手心を加える心算などないのだろう。


「覚悟は良いね変態野郎?
 御祈りは済んだ?トイレは大丈夫?――事が済んだ暁に、部屋の隅でガタガタ震える覚悟はOK?……出来てなくても、問答無用でぶっ潰すけどね!!!」


銀のオーラをと蒼雷を纏う裕奈の姿は迫力満点!
新たに火を点けた、煙草が『大人の女性』を演出し、仕事人としての強さと、ある種の妖艶さを併せ持ったミステリアスかつ力強い魅力を絶妙に醸し出している。

だが、そうであっても裕奈の目には本気の炎が宿っている。
『問答無用でぶっ潰す』と言うのは、決して誇張や脅しではなく、事と次第によっては本気でそうする心算なのだろう。


「むほほほ、威勢の良いお嬢さんね?此れはやりがいもある。
 よくよく見れば、素晴らしいおっぱいをお持ちの様だし、此れは脱がせて揉む価値は充分にありそうよ……そのおっぱい、貰い受ける!!」


しかし、真正の変態にはその覇気もまた通じないらしい。
すっかり大人の女性となった裕奈の身体は、更に女性らしいラインが見事な物になり、モデル顔負けのプロポーションとなっている(其れは、稼津斗組全員に言え
る事ではあるのだが……)、其れがかえってこの変態の魂に火を点けてしまったらしい。


「誰がやるかタコ。
 つーか、そんなに胸が揉みたいんなら、地獄に落ちて赤鬼の屈強な胸筋でも揉みしだいてろ、この弩変態が。」

「むほほほ、其れは無理。
 揉むならば、矢張り柔らかい女子のおっぱいでなくては満足出来ないよ――と言う訳で、やらせてもらうよ!!」

「OK……如何あってもダメって事ねアンタは。
 なら、私もガチで手加減しねーよ――本気で撃滅してやるわ、この女性の敵の見本みたいな弩変態が!!腕の一本位は、覚悟しときな……本気で行くから!」


だが、裕奈は退かない。
寧ろこの弩変態を撃滅する為に、エンジンはフルスロットル!!――いざ、戦闘開始だ!!!










ネギま Story Of XX 199時間目
『魔法便利屋・明石裕奈!』











「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



――ズバァ!!バシュ!!!



そしてその戦闘もまた、のっけから裕奈が圧倒していた。
変態が呼び出す蟲も、マッタク意に介さずに、現れた先からアーティファクト『キアーストレイト』のブレードで、切り裂く、突き刺す、叩き斬る!!


『『『『『キョイィィィィィィィィィ!!!』』』』』

「うざってぇって言ってんでしょうが!!――ミミズはミミズらしく、地面の中で落ち葉を分解してろってのよ!!
 其れ以前に、幾ら呼び出されたとは言え、この変態の言う事を、大人しく聞いてるんじゃないっての!!吹き飛べ、スクリーンディバイド!!!!



――ドガァァァァァン!!!



その姿たるや、正に一騎当千!!
新たに現れた蟲も、マッタク脅威ではなく、文字通りの鎧袖一触!!稼津斗組ナンバー3(トップが稼津斗、ナンバー2がイクサ、ナンバー3が裕奈、楓、真名)の
実力は伊達ではないようだ。



「むほほ〜!?僅か3分で、60匹の蟲と魔獣が戦闘不能!?――そ、そんな馬鹿な!!
 私の使役する蟲と魔獣は、メガロメセンブリアの一個小隊とだって互角に渡り合えるのに(自称)、其れをたった3分で略全滅させるとは、一体何者だお前は?」

「とある便利屋の所長の明石裕奈――ま、覚えて頂かなくて結構だけどね!」


逆に驚いたのは、変態の方だ。
己の事を最強だ等と思って居た訳ではないが、それでも全能力を駆使すれば1人で一個小隊位は相手に出来ると思っていた。(と言うか実際にした事がある。)

だが、多数の蟲や魔獣を使役しての攻撃がまるで通じないのだ裕奈には。
数の差を物ともせずに、ブレードの振り抜き、身体の展開、回避のタイミングと言った動作を全て的確に最小限の動きで無駄なく、そして最速で行い、その結果と
して、キアーストレイトの一振りで数体の蟲や魔獣が斬り伏せられ、或は同士討ちなどの誤爆を誘発していたのである。


「明石裕奈……そうか、お前は『あの』氷薙稼津斗のパートナーの1人だったか!其れならその強さも納得ね。
 だが、そうと知ったら尚の事、揉まねば気が済まないよ!数年前に、私の楽しみを途中で邪魔してくれた恨み、お前を揉む事で晴らしてくれるね!!」

「ぬわ〜〜〜〜に、クソ下らない恨みつらみを口にしてんのアンタは……つーか、其れ以前に何度も言うけど揉ませないから!」


応酬される言葉からは、果てしなく下らない内容であると言う印象しか受けないだろうが、こんなやり取りをしてる間にも蟲や魔獣は絶えず召喚され、現れた端か
ら、裕奈が斬り捨てて行く。

そして此処で裕奈が動いた。


「召喚される連中は敵にもならないけど、数が凄いからアンタに攻撃を届かせるのは簡単じゃないってか……だったら、ギアを上げればいいだけの事よね!!」


――剛!!


負けはしないが、此のままだと長くなりそうだと判断したのか、XX2ndを発動し、その衝撃波だけで召喚された連中を吹き飛ばす。
無論、相手は驚くが、その驚愕した一瞬が裕奈にとっては絶好の好機!!

僅かに緩んだ召喚の隙を狙い、一気に変態に肉薄し、其のままクロスレンジの戦闘に(半ば強引に)移行する。
こうなってしまえば、否が応でもクロスレンジでの攻撃に対処しなくてはならない為に、蟲や魔獣を召喚する事は略不可能になると言っても過言ではないが故、相
手は何とか裕奈の間合いから外れない限り、再び召喚を行う事は出来ないのである。

だが、キアーストレイトのブレードを使っての近接戦闘は、裕奈の最も得意とする戦闘だ。
銃の機能も備わっているキアーストレイトだが、その最大の武器は矢張り大型の近接用ブレードであり、裕奈も自身の武器を最大に生かす為に近接戦闘の技術
を徹底的に鍛えていたのだ。


「意外と避けるわね?……だけど、避けてるだけじゃ勝てないぜ!!」

「き〜〜〜!良く言うよ、こっちは避けるので精一杯だって言うのに……一体、ドレだけの力を持っているんだお前は……」

「さぁね?ソイツは、私にぶっ倒された後で、己の経験から推測しなさいってね!!」


どうやら、決着が付くのはもう少しであるようだ。








――――――








で、裕奈が大立ち回りをしている頃、同行したのどかはと言うと――


「すげ……姉ちゃんの友達としか聞いてなかったけど、裕奈さんてあんなに強いんだ!」

「しかも、凄くカッコイイです……!」

「裕奈さんは、私達の仲間の中でも戦闘力に関してはトップクラスですからね。元々運動能力も高いみたいだったので、其れが鍛えられればアレ位は当然ですよ?
 ……流石に、楓さんや真名さんと肩を並べるようになるとは思いませんでしたけれども。
 まぁ、其れは其れとして、決して私の前には出ない様にして下さい?防御陣は、私より前に出てしまうと効果が無くなってしまいますからね。」

「う、ウッス!」


影久と真琴の2人を、キッチリと防御陣で護っていた。
裕奈の方に加勢しても良かったのだが、依頼人はあくまで一般人ゆえに、いざと言う時の為に2人の護衛を行っていたのだ。


そして、現実に其れは大正解。
魔獣や蟲が直接襲って来る事は無いが、それらが攻撃のために放った魔力弾やら何やらが、流れ弾的に飛んで来ているので、のどかの防御陣がなかったら、影
久と真琴の2名は、今頃流れ弾が直撃して洒落では済まない大怪我をしていた事だろう。

だが、のどかの展開した防御魔法は、そんなモノでは小動もしない。
防御陣に着弾した瞬間に、攻撃は霧散してしまうのだから、恐るべき防御性能を有しているとしか言いようがないのである。


「だけど、勝てるんですか裕奈さん?」

「愚問ですよ真琴ちゃん?……裕奈さんが、あの程度の相手に後れを取る事だけは、絶対に在り得ませんから。」


同時に、仲間への信頼も強い。


圧倒的な物量差を見せられた真琴が不安そうに言うが、其れは問題ないと諭して安心させるのは、実に見事な物だろう。

取り敢えず、のどかが居る限り、依頼人の2人に危害が及ぶ事だけは無いだろう。








――――――








一方で、裕奈無双と言っても過言ではない戦いを行っていた、裕奈と変態の戦いも、そろそろフィナーレが近づいていた。


「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!打っ飛びやがれぇ!!!」

「にょほわぁぁぁぁぁぁっぁ!?」



力任せに振り抜いた裕奈の一撃が、変態の脇腹を捉え、強烈無比な一閃が炸裂!!
そして、この一撃の重さに耐える事は出来ずに、変態はまるでジャストミートされた野球ボールの様にカッ飛んで、ブロック塀に激突して漸く止まるに至ったのだ。

だが、背中から、其れも半ば力任せにブロック塀に叩き付けられた変態の方は堪った物ではない。
余りの衝撃に、一瞬息が詰まって、思考に乱れが生じてしまう――と言うよりも、とっさの判断が出来なくなってしまうのだ。


そして其れを見逃す裕奈ではない!!!


「コイツで終わらせる!!――喰らえや……天地覇王拳!!!


碌に動けないであろう相手との間合いを詰め、稼津斗直伝の最強正拳突きを発動してブチかます!!
此れが決まった以上は、変態は万事休す!!死んではいないだろうが、最低でも半年間の入院生活は余儀なくされる筈だ――が!


「……偽物?空蝉か!!」


其処にあったのは服を着た切り株……早い話が裕奈の拳が着弾する刹那に、身代わりを使ったと言う事なのだろう。


ならば本体は何処に?




――ビシィ!!




「!?此れは……拘束魔法!?」


そう思った瞬間に、裕奈の四肢が、魔力で構築された鎖で拘束された。
恐らくは、変態が逃げる際に、身代わりとしたものに仕込んでいたのだろう――マッタク抜かりがないモノである。


「くっそ、外れねえ!!」

「にょほほ、形勢逆転だね?
 その魔力の鎖は、捕らえた者の力を奪い、そしてドンドン強度を増していく――其れでは、当初の目的を果たさせて貰うね。」


そしてその鎖は、裕奈の力を吸い取って巨大化し、強烈に裕奈を締めあげて行く。

何よりも堪らないのは裕奈だ。
捕らえた者の力を奪う鎖に拘束されては、XXも強制的に解除されてしまうのである。


「其れでは、その豊満なおっぱいを堪能させて貰おうかな?」

「!!!」


更に、こうなっては相手の思うつぼ!
鎖に捕らわれた裕奈は動けないし、のどかもまた新たに現れた蟲と魔獣の攻撃から影久と真琴を護らねばならない故に、助太刀に行く事も出来ない。


「其れでは、いただきます。」

「!!!」


万事休す!!

誰もがそう思ったその瞬間に――



「マッタク、少しばかりやり過ぎですよ?」

「と言うか、俺の裕奈に何してやがるんだテメェは……死に曝せ変態が!!!!」


――ドガバァァァァァァァァァァァァァァアァッァァァァアン!!!!


金色の雷と、蒼銀の炎が、変態を直撃!!



「へ?あ……今のって………マッタク、遅いよ!!」

「すみません、ゲートポートで少しばかりトラブルがあったモノですから。」

「だが、間に合ったんだから結果オーライだろ?」



そして其れを放ったのは、この世界で暫定的にではあるが『最強』と称される黒髪の武道家と、赤髪の魔法使いであった。












 To Be Continued…