ある日の午後、ネギは何時も通り、エヴァンジェリンのダイオラマ内部で『ハードトレーニング』等と言う言葉が生温くなる位の、超ハードトレーニングを行っていた。
普通に考えれば、成長期である10歳の少年に、ハードトレーニングを科すのは禁忌だが、ネギと小太郎に限ってはその限りではないのである。


「せいやぁぁぁぁぁあぁ!!!」

「どぉぉらぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁ!!」


――ドゴォォォォォォォォォォォォン!!


普通なら、疲労困憊で動けなくなるような『準備運動』の後であっても、ネギと小太郎は疲れなど微塵も感じさせずに模擬戦では、殆どガチンコのバトル状態だ。



否、ある意味ではガチンコなのだ。



ネギも小太郎も、互いに互いの事を親友と思って居ながらも、同時に其れはライバルでもあると言う事を分かっている――故に、何方かから降参する事はない。


「ちぃ……やるやないかネギ!!大凡、魔法使いとは思えん動きや………相当に、自分を追い込んどるな?――其れでこそ、俺のライバルやでネギ!!」

「其れはこっちのセリフだよ小太郎君。
 君の方こそ、相当に闘気を高めたみたいじゃないか?……まさか、短期間でアキラさん並の気を身に付けて来たのは驚きだよ……僕の親友なら簡単だった?」

「ま、其れなりにな――ほな行くで、ネギィ!!」

「受けて立つよ、小太郎君!!」


そして再び肉薄!!
親友兼好敵手な関係である2人の模擬戦(と言う名の全力バトル)は、まだ終わりは見えないが、この2人ならば模擬戦であっても最高のバトルだっただろう。

得てして、ライバル対決はそんなモノだと相場が決まっているのだから。











ネギま Story Of XX 195時間目
『史上最強の親子対決…か?』











一方で、この限りなくガチンコバトルに近い模擬戦を観戦しているのは――


「コイツはスゲェな?……流石は俺様の息子って言うか、正直大したモンだぜ、あそこまで成長してるたぁな……あのガキンチョが、デカくなったもんだぜ。」

「何じゃナギ、少しばかりナーバスになったか?」

「からかうなよ姫さん、只少しだけ、アイツがドレだけ強くなったのかってのは興味があるけどよ?」

「まぁ、つまり要約すれば、お主はネギと戦いたい、そう言う事であろう?
 マッタク持って、10年以上経って尚、血の気が多いのは変わらぬのじゃなお主は……まぁ、父としては息子がドレだけ強くなったか、その身で確かめたいと言う
 のも分からんでもないのじゃがな……」


ナギとアリカの夫婦だった。
ナギもアリカもネギの修業を見て見たいとの事だったので案内したのだが、ナギもアリカも、予想以上の息子の成長ぶりに思うところが有ったようだ。

特にナギは、実の息子と模擬戦をしたいと言う位に『バトル遺伝子』が活性化してしまった状態なのかも知れない。



つまりは、大戦期の英雄をして『戦ってみたい』を言わしめるだけの力がネギの中にはあると言う事なのだろう。



「しっかし、ネギは勿論として、あの黒髪の犬耳坊主も相当なモンだなありゃ?
 スピードや切れるカードはネギの方に分があるみたいだが、身体の頑丈さとパワーはアイツの方が上って感じだから、総じて戦えば五分五分って感じか?
 つーかよ、今のネギは間違いなくガキの頃の俺を軽く凌駕してやがるよな?……」

「その頃のお主の事は知らんが、妾の知る限りでは11歳であそこまでの力を有していた魔法使いと言う者は知らぬな。
 其れについては、小太郎と言うのも同様じゃ。――果たして、齢11歳であそこまでやれる拳闘士が存在するかどうか………マッタク末恐ろしい子達じゃ。」


其れでも、この模擬戦を見る限り、ナギとアリカの目にも、ネギと小太郎は『年齢以上の力を持っている』と映るようだ。


「其れはそうだろう、ネギは私の、小太郎は稼津斗の弟子なのだからな?」

「まぁ、2人とも才能にあふれる天才タイプだが、其れに胡坐をかかずに精進を重ねているんだから、何処までも伸びて当然だろうな。」

「エヴァと、其れに兄ちゃんか。」

「うむ……確かにそう言われると、納得してしまうモノじゃな。」


更に、エヴァと稼津斗が其れを肯定し、まだまだ伸びるとまで言ってくれたのだから、此れはもうトンでもない事だろう。
半妖の小太郎は極端に寿命が長いし、闇の魔法の副作用で真祖化したネギにはそもそも寿命が存在しない――つまり、何処までその力は伸びるのである。


「マジかよ……なら、尚の事戦ってみたいぜ俺は!!」

「……ってな事を言ってるが如何するマクダウェル?インターバルを挟んでの3本目は、ナギにネギの相手をして貰うか?」

「其れは其れで面白いが、そうなると小太郎の相手が居なくなってしまうのではないか?貴様が相手をしたら即終わってしまうだろうしなぁ?

「小太郎の相手なら、アキラにでも頼んでみるさ。
 丁度、屋内プールの設備チェックやら何やらで、今日の部活は無いらしいからな?タイプは違うが、同じパワー型だから互いに得るモノもあるかも知れないし。」

「……何と言うか、貴様は本当に己の従者について良く知っているなオイ!?」

「此れ位基本だろ?」


其れを聞いたナギは、余計に戦いたくなったらしいが、其処は稼津斗の思い付きで模擬戦の3本目でネギvsナギの親子対決は実現しそうである。
まぁ相手から外された小太郎の相手に、己のパートナーの中で『筋力』に関しては1番であるアキラを抜擢するのが、実に稼津斗らしいと言えるかも知れないが。


ともあれ、此れを聞いたナギは大喜びである。


「マジで!?次は俺にやらせてくれんの!?ネギと戦わせてくれるのか!?」

「まぁ、如何にもそう言う流れになってしまったからな。
 だが、くれぐれもダイオラマを壊してくれるなよ?――此れは割と凝って作ってあるのだからな?」

「わ〜ってるって、俺を信用しろやエヴァ♪」

「約束破りのスットコドッコイを信用できるかアホンダラ!!!」




「……腐れ縁的な関係とは言え、仲良いのお主らは……」

「漫才コンビとしてデビューしたら、ある意味大ヒットするかもな。マクダウェルがストレスマッハで発狂する事が確定だけど。」

「何じゃ其れは……」(汗)


大喜びである。
其れこそ、エヴァンジェリンが思わずヒートする程に大喜びである。稼津斗とアリカが突っ込みにならない突っ込みを入れるほどにハイになって居るらしい。


兎も角、恐らくは『史上最強の親子対決』と称しても過言ではないバトルは、如何やら行われる事が確定したらしい。





「でやぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ……雷華崩拳!!

「どりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ……狗音爆砕拳!!



――ドガバァァァァァッァァァァァッァァァァアン!!!



因みに、ネギと小太郎の模擬戦は、互いに必殺技を炸裂させた末のダブルKO。
此れにて戦績はネギの45勝44敗50引き分け――大きく星が離れていないところ見る限り、ネギと小太郎は実力伯仲の『良い好敵手』な関係でもあるようだ。








――――――








んでもって、10分間のインターバルを置いての模擬戦3本目は、ネギの相手にはナギが出て来ていた。
まぁ、出て来る事は確定していたが、インターバルではそんな事は一言も言って居なかったので、ネギも少しばかり驚いたようである。


「次は父さんが相手ですか……!」

「応よ!――お前の全てを、俺にぶつけてみな!!」

「無論その心算ですよ!!」


だが、気遅れる事などなく、速攻で魔力を解放し、雷天双壮状態に変身する。
未だ全快でないとは言え、ナギは嘗ての大戦の英雄だけに、出し惜しみが出来る相手ではないと踏んだのだろう――ある意味で慧眼だと言えるだろう。

如何に全快でないとは言え、ナギはそもそもの能力が爆裂に高い『バグキャラ』状態なのだから。


「行き成り全力か?……そう来なくちゃ面白くないぜネギ!!全力で来な!!」

「行きますよ父さん!!」


其れを合図に、ネギは突進し――


「うりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


――バキィィィィィィィィィィィ!!


「ぶべら!?」


挨拶代わりに、ナギの横っ面を打ん殴る。
無論其れでは終わらず、その拳打を合図に中国拳法式の拳打、裏拳、膝蹴り、肘打ちが文字通りの『雷速』でナギに炸裂していく。

いや、或はナギであっても如何する事も出来ないのかも知れない――ネギの雷天双壮は、あのジャック・ラカンですら攻略する事は出来なかったのだから。


しかし乍ら、ナギとて伊達に英雄と呼ばれているわけではない。


「取ったぜ……!!」

「!!!」


何回目かの攻撃時に、自身を殴りつけたネギの腕を掴むと、そのまま逃がさぬように頭突きをブチかます!!
『避ける事も、捉える事も出来ないのならば殴られた瞬間に拳を掴め』を実践したのだろうが、其れをぶっつけ本番で成功させるのは、流石ナギと言う所だろう。


「お前の魔法は大したモンだと思うが、まだまだ俺の壁は超えさせてやらねぇ!!」

「なら、今日この場で超えますよ!!
 何よりも、父さんと互角以上に戦えないのなら、僕はエヴァの隣に立つ資格なんてないんだ!!」


その頭突きを喰らったネギが、今度はカウンター気味にアッパーカットを一閃!!
其れは、見事にナギの顎を撃ち抜き、強制的に掴まれていた腕を解放する。


「テンメェ、今思いっきり殴りやっがたな?実の親に向かって!!」

「本気でって言ったのは父さんでしょ?……って言うか、麻帆良では何気ない一言が、嬉しくない事態を呼び込むから、あんまり派手な事は出来ないからね。
 其れでも、今のは効いたよね?完璧に下顎がにヒットさせたから、結構脳が揺れてるんじゃないかな?」

「何を……!!」

「だから次の攻撃も避けられない!!」


――バキィィィィ!!


「んの……舐めんなよ?雷の暴風!!


更に、追撃のアックスパンチで、ナギを攻撃!!
破壊力抜群の一撃は、ナギを地面に吹き飛ばすが、ナギも負けじと無詠唱で『雷の暴風』を発動しネギにダメージを叩き込んで行く。


並の魔法使いならば、此れでKOされていただろうが、生憎とネギは普通ではない。
雷の暴風を、ギリギリで点をずらしてダメージを最小限に留めつつ、距離が離れない様に再びナギと殴り合いのバトルを展開していく。


「せいやぁぁっぁあ!!」

「舐めんなオラァ!!!」



――バキィ!!!!!



最早そこに、技術や才能と言う物は存在して居ない……ただ、己の気持ちの思うままに眼前の相手を倒す――在るのは、その純粋な闘争本能のみである。


故に、殴り合い。力の続く限り殴り合い。男はパンチだから殴り合い。誰が何と言おうと殴り合い!!殴り合い以外は認めないと言った感じですらあるのだ。



「あはは……やっぱり父さんは強いや……」

「そう言うなよ……俺と互角以上にやり合うとは、お前こそ大したモンだぜネギ――だからよ、時間の許す限りは楽しもうじゃねぇか!!そうだろ!?」

「異論……在りません!!――行きますよ、父さん!!!!」

「こいや、ネギ!!!!」



更には、互いに『負けず嫌い』だけに、自ら退く事など絶対にあり得ない。



こうして、互いに決定打を欠いたまま、模擬戦はタイムリミットが訪れるその時まで続いたのだった。



因みに、この模擬戦が密かに和美の手で撮影されており、『此れがガチの最強親子喧嘩』のタイトルでレンタルDVDになると言う事は、誰も予期して居なかった。








――――――








「うむ……こう言っては何だが、ナギ相手にドローとは大したモノじゃネギ。」

「結果は引き分けでも、試合内容ではお前の方が勝って居た……言うなれば、本当に僅かだけ経験の差がナギに味方したのだろうが、この結果は上々だ。」

「はい!!ありがとうございます。」



結果だけ言うのならば、模擬戦は引き分けに終わった。
まぁ、英雄相手に引き分けたのならば大したものだと言えるだろう。



「エヴァは兎も角、姫さんまであっちかよ〜〜!?
 こう言っちゃんだが、俺の手当てをしてくれる人ってのはいないのかねぇ?……何つ〜か、模擬戦はドローでも、滅茶苦茶負けた気分だぜ……」

「まぁ、そう思うのも無理はないだろうな。」


だが、ドローの結果が齎したのは、エヴァが恋人として、アリカが母としてネギを介抱する光景。

ダメージレベルから言えば、ネギの方が重いので此れも仕方ないのかも知れないが、如何にもナギには納得できないらしい……されたらされたで困るのだが。


「しかしまぁ、此れだけの力を持ってるのには驚いたが――此れからデカい事をしようってんだから、此れ位の力を持ってねぇと大凡出来る筈もねぇか。」


其れでも、ガチンコの殴り合いの中で、ネギが何を思っているかを感じ取った辺りは、矢張り『父親』なのだろう。




「そんでネギ、お前は一体何をしようとしてるんだ?」




だからこそ、敢えて言葉に威圧感と殺気を込めて問う。
其れこそ、一般人ならば此れを受けただけで失神する事は必至!!――しかし、其れを受けて尚、ネギは平常心その物だった。



「今更それを聞きますか父さん?
 僕の――僕とカヅト達の目的は、この地球と魔法世界を本当の意味で繋げる事です――その第一歩の計画は、既に最終段階です。
 地球と魔法世界を、ゲートを使わずに行き来できる方法の究極の答えである『軌道エレベーター』の建設計画は出来ているので、後は着工するだけです!!」



何故なら、計画は水面下で着々と進行し、軌道エレベータの建設計画まで略確定していたのだから。



「その計画書が出来たと言う事は――いよいよだな?」

「うん。計画段階だから、此れを通す為に必要な事は未だあるけど、軌道エレベーターの着工が始まると同時に、超さんの力も借りて全世界に魔法を認識させる。
 ――勿論、其の後に色々とヤル事はあるだろうけど、此れが、僕達の目指す未来への第一歩だからね!!」



かくして、稼津斗とネギの計画は明らかになった。



そして、この時より『革命』に向けて、1−A及び協力者達は、夫々の得意分野で、その力を大いに奮い、各方面で多大なる活躍をするのであった。













 To Be Continued…