9月1日、分かり易く言うならば、学生にとっては2学期の始まりであり、教師にとっては忙しい日々の再開を告げる日である。
其れは勿論、此の麻帆良学園都市も御多分には漏れないのだが――


「此れから先の事を考えると、魔法世界の魔法学校と交換留学生とか考えた方が良いと思うんだが、学園長としてその辺如何考える爺さん?」

「良いんじゃないかの?てか、やって損はないじゃろ?
 少なくとも、あと10年以内に地球と魔法世界が本格的に繋がって、自由に行き来できるようになるのは殆ど確定しとる事じゃから、其れに向けて世界に魔法の
 存在を明らかにする準備もしなくてはならん。
 ならば、その先駆けとして、此の麻帆良学園都市と魔法世界の魔法学校が交換留学生を行って、互いに文化交流をするのは必須じゃろ。」

「じゃあ、その方向でおじいちゃんにも連絡しておきますね♪」


その日の職員会議にて、稼津斗とネギはトンでもない事を言ってくれた。
よもや魔法学校との交換留学生の話を持ち出してくるとは、誰も思わなかっただろう。――いや、学園長とタカミチだけは、予想していたようだが。

しかも、其れは完全に魔法ばれを前提としているモノ故に、何時も喰って掛かって来るガンドルフィーニが黙ってる筈はないのだが……


「…………」(あんぐり)


あまりの事態に突っかかる事も出来ないようだ。まぁ、学園都市のトップである近右衛門が、一切咎める事なく、寧ろ『やっちゃっていいよ、ワシが許可する』的な
態度であるのに、相当な衝撃を受けたらしい。(だからと言って、近右衛門に突っ込む事は無いのだが。)

因みに、この提案に対し、刀子、瀬流彦、シャークティなんかは概ね賛成らしく『まぁ、別にやっても良いんじゃない?』的な感じであり、反対に魔法世界の規律を
重んじる連中は、一様に鋭い視線を稼津斗とネギに向けていた。

だが、反対意見が有ったとしてもどうしようも無いだろう――其れを提案したのは、他でもない魔法世界を救った者達なのだから。
魔法世界を救い、更に発展させようとしている者達に対して、古よりの仕来りや決まり事を持ち出したところで、其れは何の意味も成さないだろう――加えて、そ
の決まり事が、現代においては半ば形骸化しているならば尚更だ。

結果として、交換留学生の話は学園長の了承の下に採用され、地球と魔法世界は、急速にその距離を縮めて行く事に成るのだった。











ネギま Story Of XX 193時間目
『麻帆良の体育祭は普通じゃない』











さて、それはさておき、2学期と言えば外す事の出来ない学校行事が存在する――そう『体育祭』だ。
1学期の麻帆良祭ほどの派手さは無いが、体育祭当日は飛行部の小型ジェット機が、飛行機雲を利用して空にロゴを描き、出店も出る位の盛り上がりは有る。


そんな体育祭の最中に――


「まぁ、大体予想はしてたが、今年もやっぱりこのパターンか。」

「魔法禁止弾を喰らってないから、去年よりはかなり楽だけどね。」


1−Aの担任と副担任は、絶賛逃走中であった。
理由は至極簡単で、去年一大盛り上がりを見せた『借り物競争』が、今年は何でか午前の部の最終競技として取り入れられたからだ。

ルールは、去年とほぼ同じだが、今年は一般客も参加可能になり、その代り各チームへの加点は無い方式となって居る――まぁ、そんな事は些細な事だが。


「ターゲット発見!!者ども、出逢え出逢え!!子供先生と、最強先生を確保するのだ〜〜〜!!」

「ネギ先生、ネクタイを貸してください〜〜〜〜!!」

「稼津斗先生、そのジャケットを自分に!!」


ノリが全ての麻帆良生徒にとっては、自軍への加点よりも、この競技を如何に楽しく行うかと言う方が万倍大事なのだ!誰が何と言おうとも、万倍大事なのだ!
だから、加点はされないにもかかわらず、我先にと稼津斗とネギに『借り物』を頼んで行く。

まぁ、借り物をくれてやっても良いのだが、教師2人はそうも行かないのである――何故か?

其れは『1−Aの生徒以外から借り物をされたら、稼津兄とネギ君はマイナス100点で、そのマイナス合計分の点数が1−Aの総合得点から引かれるから』と言う
、傍迷惑なペナルティがあるからだ。
恐らくは、イベントを盛り上げるためなのだろうが、其れを言ったのが和美である辺りが、マッタク持って冗談に聞こえないのである。

故に、もしも借りものをされたら自分の担当するクラスが一気に窮地に陥りかねない……だからこそ――


「お断りだ馬鹿野郎共……羅刹葬爪!!

「すみません、其れは無理です!!魔法の射手・風の111矢!!


稼津斗もネギも手加減なし!!

当然だ、自分達のせいで1−Aが総合優勝を逃したなどと言う事態に成れば、1−Aの面子に顔向けできない。彼女達なら気にしないだろうが、此れはもう教師と
して、そして『男』としてのプライドと言うか、意地である。

とは言え、1−Aの面々からの借り物で有れば、応じてもペナルティにはならないのが救いなのだが――


「1−A以外から借りられたらペナルティとは言え、俺等のクラスの面々の『借り物』も、中々如何して普通じゃないからな?
 と言うかだな、さっき裕奈が持って来た『第一夫人の座』ってなんだ?其れは俺が決める物なのか!?……いっそ、契約者達でバトルロイヤルでもやって決めろよ。

「其れはある意味で平和的だよカヅト?……僕なんて、フェイトから『真剣勝負』だよ?
 こんな状況じゃなかったら受けるのも悪くはないけど、僕とフェイトが本気で戦ったら麻帆良半壊しちゃうって!!」

「なら、俺とジャックが本気で戦えば、文字通り麻帆良は跡形もなく吹っ飛ぶだろうなぁ?……まぁ、少なくとも結界張ってない場所じゃやらないけど。」

「何その、バグキャラ対決!?」


1−Aの面々からの借り物は普通ではないのだ。
今し方、稼津斗の言った『第一夫人の座』の他にも、『戦闘力データ』『仮契約』『同性婚法可決』等々、意味の分からない物のオンパレードのカオス状態!!
果ては、どこぞのバカレンジャーから『単位』なんか出てくる始末なのだ。

此れを見ると、エヴァンジェリンがネギに対して提示した『一日デート権』は、極めて常識的で可愛い物だと言えるだろう。と言うか、真祖の姫も大概乙女である。


「まぁ、何にしても制限時間は残り10分!!命懸けで逃げ切るぞネギィ!!!」

「言われなくてもその心算!!って言うか、逃げ切らないと物凄く怖い事になりそうだからね!!」


ともあれ、倒せど倒せど、初等部から大学部までの全てを合わせると10万では利かない麻帆良の全生徒を相手にしている以上、追手を少しばかり退けても、直
ぐに追加の戦力が現れるのだから、此処はもう迎撃をしながら逃げる以外の選択肢はないだろう。


余りにも強い稼津斗とネギだけに、手加減を間違えたら大怪我をさせてしまう可能性が有るので、基本は逃げるが勝ち!強過ぎるのも、時としては問題らしい。


「しかし、こんなのを見るたびに思うんだが……和美は本当に、俺の事が好きなんだろうか?」

「其れは、間違いないと思うよ?……此れはアレだよカヅト、過剰な愛情表現?」

「愛情表現か……其れなら仕方ない――訳が有るかボケェ!!何ぼ俺が、無敵にして最強に限りなく近いとは言っても、限度を知れ限度を!!
 こう言っちゃなんだが、一般人相手に手加減するってのは、思った以上に神経使うんだからなぁ!?」

「カヅト、微妙にキャラ崩壊起こしてる!?」


と、こんな会話をしながらも稼津斗とネギは逃げ切り、大盛り上がりの内に体育祭の午前中の競技は幕を下ろしたのだった。








――――――








で、昼休み。

稼津斗とネギは、夫々のパートナー達を集めての昼食会。パートナー達が夫々持ち寄った、お手製の弁当が並んだその様は、其れだけで豪華絢爛其の物だ。
しかも、稼津斗のパートナー達は稼津斗の好みに合わせ、ネギのパートナー達はネギの好みに合わせたメニューなのが素晴らしいと言える。

特に特出すべきはエヴァンジェリンのだ。

此れまで、家事全般は自分の僕に一任して来た彼女だが、ネギと恋仲になった時から、猛烈に家事(特に料理)を猛特訓し、五月に師事してまで、そのスキルを
高めて来た――その集大成が、此処に披露されていた。


「これ、全部エヴァが作ったの!?凄く美味しそう!!」

「うむ……まぁ、口に合うかは分からんが、取り敢えず食せ。」

「うん、いただきます!」

「ど、如何だ?」

「………此れは――美味しい!美味しいよエヴァ!
 味付けも僕好みだし、何よりも僕の大好きな『ネギま串』を入れてくれるんなんて……此れはもう、最高のお弁当だよ♪」

「そ、そうか?ならば良かった。」


その結果は良好どころか最高だった。
此れだけ喜んでもらえれば、エヴァンジェリンだって頑張った甲斐も有ったと言うモノだろう。――英雄の息子と、闇の福音のカップルは如何にも良い感じらしい。


一方の稼津斗組だが……


「稼津兄は、午後のウルティマホラには?」

「出ない。俺が出たら絶対に優勝するからな。
 そもそも、今回のウルティマホラの覇者と、去年の麻帆良武道会の優勝者のエキシビションが組まれてるんだ、無理に出る必要もないだろ?
 俺は、エキシビションが始まるまでは、観客として古菲の三連覇を見届けさせて貰うさ。」


此方も此方で、其れなりな昼休みを楽しんでいるようだ。

話題は、午後の目玉イベントである『ウルティマホラ』だが、稼津斗はエキシヴィションの件も有って出場は考えていないようだ。

尤も、出たら出たで『優勝確定』のバグキャラなので、出場しないのは色んな意味で『正解』であったと言えるだろう。――と言うか、バグキャラは出張っちゃダメ。

まぁ、当然であろう。バグキャラが本戦に出場したら、只のバランスブレイカー以外の何物でもないのだから。


「だけど稼津斗にぃが本気を出したら、古菲と言えど瞬殺だろう?――其処は如何するんだい?」

「其処は魅せる戦いに持って行くさ。
 制限時間は15分だから、その間だけ魅せる戦いをする事は造作もない事だ――相手が、古菲クラスの達人だからこそできる事だがな。」


だが、稼津斗の意識はエキシヴィションに集中!
ウルティマホラの覇者との戦いと言うモノは、心が躍る事なのだろう!!


午後の部の一番で設定されている、ウルティマホラ――その特別エキシビションは、如何にも凄い事に成るのは、先ず間違いない様である。








――――――








で、あっという間に時は過ぎて、体育祭は午後の部。


「てい!!」

「たわらばぁ!?」



――ドゴバガァァァァァァッァァァァァァァァァッァァァァン!!!




『KO!Winnner is Ku-fei!
 此れは何とも、実に見事!!麻帆良学園女子高等部1−Aの古菲選手、1ラウンドKOで、見事ウルティマホラ3連覇を達成だーーーーー!!!!』



午後の部の最大の目玉であるウルティマホラも、蓋を開けてみれば、古菲の全試合1ラウンドKO勝ちで、余裕の3連覇を見事に達成!!
と言うか、最大限ぶっちゃけると、稼津斗やネギ、或はそのパートナー達がエントリーしない限り、ウルティマホラは古菲の独壇場だろう――格が違い過ぎる。


尤も、其れでは古菲も手加減しての優勝故に、不完全燃焼感が否めないのだが、今年のウルティマホラはその限りではない。


『さ〜て、さてさて!!見事大会三連覇を達成した古菲選手には、この後特別エキシビションマッチとして、去年の麻帆良武道会の覇者である、氷薙稼津斗との
 史上最強のエキシヴィションが待っている!!!此れは、もう興奮するなってのが無理ってもんよね!!
 去年の麻帆良武道会の覇者と、ウルティマホラ三連覇の猛者は、果たしてどっちが強いのか!?その戦いを期待するなってのが、無理ってもんよね!!』



ある意味で、真打は決勝後の特別エキシビションであると言っても過言ではないのだ。
確かに、ウルティマホラ3連覇の古菲と、去年の麻帆良武道会の覇者である稼津斗の超特別エキシビションマッチともなれば、結果は如何あれその組み合わせ
に、期待する者は多いだろう。


滅多に見る事の出来ない、達人同士のぶつかり合いと言うモノは、思った以上に観客の心をくすぐるモノであるようだ。



「ま、大体予想してたが、俺の相手は矢張りお前か古菲……ま、相手にとって不足はないがな。」

「私こそ、稼津斗老子と戦う機会が有った事は幸運アル。
 手加減なし!――とは、稼津斗老子相手だと言えないアルが、少なくとも私は今の私の全力を老子にぶつけるアル!!――一槍稽古お願いするアル老子!」

「良い闘気だ……遠慮せずに掛かって来い――俺の闘気の炎が、お前を呼んでるぜ。」

「なら、燃え尽きるまで戦うアル!」


そして、当のバトルを行う達人2人も闘気マックスでノリも最高潮!

稼津斗が気で発生させた赤い炎を手に翳して言えば、古菲も負けじと気で練り上げた白い炎を拳に宿して其れに答える。――詰まる所、やる気はメガマックス!
こうなった以上、誰にもこの2人を止める事は出来ないだろう。


『こ・れ・は〜〜〜!達人双方ともに気合と闘気は、限界突破のオーバーマックス状態か!?
 やっべ〜〜!下手したら、此のエキシビションで麻帆良が吹っ飛ぶのも覚悟しとかないとアレだけど――だからと言って、加減なんぞするなよ御二人さん!!
 私等が望むのは、達人同士のガチンコ!!!その期待を裏切らないでくれ〜〜〜〜!!!』


更に、実況の和美が場を盛り上げ、観客のテンションも限界突破のバーニングソウル状態!
此れはもう、最高のパフォーマンスをする以外に選択肢はないだろう。――元より、最高を超えた極上のパフォーマンスを披露する心算ではいたのだが。


「行くぜ?」

「受けて立つある、老子!」



――轟!!!



ともあれ、氷薙稼津斗と古菲と言う、2人の達人の戦いの火蓋が、ウルティマホラの特別エキシビションの舞台で切って落とされたのだった。












 To Be Continued…