「オラァ、ぶっ飛びやがれぇ!!」


――ドゴォォォォォォォン!!


最終決戦地での戦いが大詰めを迎えていた頃、この空域での戦いもまた激しさを増していた。
倒せど倒せど、宛ら『台所のG』の如く湧いて来る召喚魔に対し、グレートパル様号・リペアも機体に搭載された銃火器を全開にして対処し、撃滅していく。

加えて、此処に連合艦隊の戦力も加わるのだから、この空域での戦闘で負ける事は先ず無いだろう。――此のままであったならば。


――グニャ………グゴゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴ……


「ん?なんだよアレ…!!!――正真正銘の、化け物じゃねぇか……!!冗談キツイぜ、本気でよ…!!」


突如、召喚魔が歪み、そして姿を変えたのだ――此れまで以上に異形な存在である、左右非対称の身体を持ち、身体に巨大な目玉のある姿に変わったのだ。
まるで、蠢く闇その物であるこの姿には、生理的嫌悪感を抱くのが普通だろうが――


「コイツは、最終決戦地で、始まりの魔法使いに何かあったって考えるべきだろうな……それも、こっちにとってプラスになる方向でな。
 だった此処で攻撃の手を休めるのは得策じゃねぇ!!弾薬の補給を切らさず、今まで以上に召喚魔を撃滅する!!異論は、ねぇなテメェ等!!!!」

「「「「「「「「「「おーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」


1−Aの面々には何のその!
見た目の気持ち悪さにドン引きするどころか、此れが好機と知ってテンションは鰻登りに大上昇!千雨の啖呵も、良い感じに1−Aのテンションを上げたようだ。


「早乙女!!」

「アイサー!ミ―ティア装備のストフリ10体出撃よぉぉぉ!!!」


更に、ハルナが自身のアーティファクトをフル活用して、戦力を倍どころではなく増大!!
如何やら、この空域での戦闘もまた、クライマックスに突入したようである――その結果は……恐らく、言うまでも無い事だろう。











ネギま Story Of XX 191時間目
『At the true end』











一方で、最終決戦地にもまた、生理的嫌悪感を催す異形の存在が現れていた。

其れは、稼津斗に制御装置を破壊されたザ・ワールドのなれの果てなのだが……果たしてこれを『生物』として見て良いのかは、実に判断に迷うだろう。


恐らくは、其れが頭部なのだろうが、其処は硬質のヘルメットで覆われたような外観で、赤く光る鋭い目が2つ確認できる。
だが、その下の口と思しき部分は、顎に相当する部分は無く、不気味な鋭い棘が無数に生えた穴があるのみで、更に身体には四肢は無く、宛らナメクジの様に
這って移動するしか、移動方法はないようなのだ。

此れだけでも充分気持ちが悪いのに、極めつけは其の全身に現れた大小様々な目玉だろう。
視力の有無は兎も角として、全ての目玉が不規則にギョロギョロと動いて辺りを見ているその様は、まるで性質の悪いB級ホラーを連想させてくれるのだ。


「ウゲ……何あれ、バイオハザード2のG5?」

「確かに、良く似ているが……別物だろうね。――湧き上がる生理的嫌悪感は凄まじい物があるけれどもな。」


この凄まじく気持ちの悪い外見には、稼津斗組とてドン引き状態。
よくよく見れば、あのエヴァンジェリンでさえ、あまりのインパクトに頬がヒクついているのだから、ドレだけの外見的インパクトが有ったのかは、押して知るべし。


「制御装置が無くなれば、お前はお前じゃなくなるとは思っていたが、まさか此処までの化け物に成っちまうとはな……其れに関しては、少し同情してやるよ。
 だが、だからと言ってお前を見逃すかと問われれば、其れは否だ――その状態のお前は、ある意味で今までよりも性質が悪いんでな。」


だが、そんな中でも稼津斗は怯む事なく、ザ・ワールドだった物に向き合い、静かにしかし力強く言う。
確かに、今の状態は、ある意味では今までよりも性質が悪いと言えるのかもしれない――ザ・ワールドの成れの果てである、このモンスターには『理性』と言う
物は存在せず、あるのは目に映るモノを只只管に破壊すると言う、極めて純粋な『殺戮と破壊の衝動』のみなのだ。

加えて理性が存在して居ないという事は、つまり攻撃には加減が無く、繰り出される攻撃はどれもが超必殺技クラスの破壊力を有していると見て間違いない。


「ファイナルランドでも倒しきれなかったという事は、此処からはエクストララウンド――正真正銘、此れで決着が付くって訳だ。」

「加えて、さっきまでは手出し無用って事だったけど、エクストララウンドに手を出すなとは言われてないんだよねぇ……今度は、私等も一緒に戦うよ稼津兄。」


其れでも、稼津斗は不敵に『エクストララウンド』を宣言し、和美が其れに乗っかる形で自分達も戦う事を宣言。
稼津斗も其れを止める事は無く、答えを返す代わりに再び気を集中。そして、其れと同時に、稼津斗の胴着の背に『武』一文字が現れ、闘気の高まりを示す。


『ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッァァァァアァ!!!!!』


――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!



が、その闘気の高まりに呼応したのは、ザ・ワールドの成れの果て――仮呼称として以降は『マーズイーター』と呼ぶ事にする――も同様らしく、体中に存在し
ている大小無数の目玉から、魔力砲撃を発射!!

宛らビームの乱れ撃ちの様な攻撃は、寸分違わず稼津斗達に向かうが、其処は最強無敵の稼津斗組、只の破壊の権化となったマーズイーターに後れを取る
様な、連中ではない。


「ったく、威力だけは高いってんだから、厄介極まりねーわ此れ!!」

「マッタク持って、その通りでござるな!!」


――ザシュ、バシュ、バスバス!!キュゴォォォォォォォォォォォォ!!!


その放たれた砲撃を、裕奈がキアーストレートのブレードで斬り弾いて無効にし、楓もまた蛟の天鎖嵐龍翔を使って砲撃を叩き落としていく。
だが、其れであってもマーズイーターからの攻撃は矢継ぎ早に続いており、此れでは防戦一方に成るのは確実だろう。


そこで、動いたのが真名とイクサ、そして亜子とクスハだ。


「厄介な攻撃だが、ならばその発生源を潰すだけの事さ。フルレンジ・バスター!

「刃以って血に染めよ……穿て、ブラッディダガ―!!


先ずは真名のフルレンジ・バスターと、イクサのブラッディダガーで無数の目の半分を潰し、マーズイーターの攻撃の手を半減する。


「亜子、その姿は?」

「精霊の同時融合で、龍の精霊と光の精霊と闇の精霊の3体と融合したんや――つまり今のウチは『混沌帝龍』や!!」

「何か凄そう!!それじゃあ、一緒に……」

「ブチかまそか!!喰らえや、セメタリー・オブ・ファイヤー!!

「妖狐炎術最大奥義……炎殺黒龍波ーーーーーーーーー!!!!


更に亜子とクスハの『超仲良しコンビ』が、闇の炎と黒炎の龍で、残りの目玉を焼き尽くし、マーズイーターの目は、頭と思しき場所の2つのみになった。


『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァアッァァァァァァァァ!!!!!』


――キィィィィィン……ドゴォォォォォォォォン!!



それでも、本能だけで暴れ回るマーズイーターには『退く』と言う選択肢が存在しない。
どんな状況にあっても、眼前のモノを破壊すると言う事を最優先にするが故に、目が潰されたら今度は口と思しき場所から波動砲の如き一撃を全開で発射!!

其れこそ、破壊力だけならば稼津斗の『覇王翔哮拳』にも負けずとも劣らないだろう。


「させません!!」


だが、その攻撃はのどかによって止められる。
自身のアーティファクト『薄明の魔導書』でコピーした、ネギの『敵弾吸収陣』を展開し、最大クラスの攻撃を逆に力として吸収したのだ。

しかも只吸収しただけではない。


「和美さん!!」

「ほいさぁ!!!漲って来たぁ!!」


吸収したエネルギーを和美に譲渡すると言う反則技で、次の一撃を放たんとしていた和美を一時的に超強化!!


「アンタ、コンだけやったんだからもう良いでしょ?……眠りなよ――魔天葬送華!!!


その超強化を施された和美の魔天葬送華は凄まじく、マーズイーターの超巨体をも揺らがす程であった。


「閻魔への言い訳は考え付いたか?」


そして、此処で稼津斗!!
マーズイーターに肉薄して正拳突きの構えを取り、左拳に練り込まれた闘気はMAX120%状態だ。


『ゴアァァァァアッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァ!!!』


――グン……ドスゥゥゥゥゥゥゥ!!


だが、マーズイーターは、本能的に『この一撃は喰らってはいけない』と感じたのか、体中から槍状の触手を作り出し、其れで稼津斗の身体を貫く。
両肩、両大腿部、腹に胸……並の人間だら、此れで絶命して居てもおかしくないだろう。


「この程度、俺には致命傷に成らないと言う事まで忘れたのか、お前は……其処までぶっ壊れちまうとはな。」

『!?』


しかし、此れを受けたのは稼津斗だ。オリハルコンの心臓を持ち、天下無敵にして絶対最強の不死者である稼津斗なのだ。
心臓が一欠けらの細胞でも残っていれば復活できる稼津斗にとって、この攻撃は必殺たり得ないのである――事実、攻撃を喰らっても全然平気なのだから。


「貴様との因縁も、此処で終わりだ!……覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁ……一撃必殺、天地覇王拳!!!


――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!


全身を貫かれながらも繰り出された最強の左拳の一戦は、マーズイーターの数tはあると思われる巨体を、いとも簡単に殴り飛ばす。其れこそ、子供がオハジキ
を指で弾くかの如くに――稼津斗のパワーの凄まじさがうかがえるだろう。


だが、相手は腐っても不死の存在。
その存在を分子レベルで消滅させなければ倒す事は出来ない……其れこそ、今度は血の一滴も残さずに消し去らねばならないのだが―――


「此れで終わりにする……お前達の力、使わせて貰うぜ!!!」


此れが終焉の時とばかりに、稼津斗は気を集中。
それも、己の気だけではなく、この空間にばら撒かれた己のパートナー達やネギ達の魔力や気の残骸をも取り込んで、最大の一撃を放つ心算なのだろう。


『ガァァァアァッァァァァァァァァ!!』


マーズイーターも、本能的に危機を感じたのだろうか、其れを放たせんと突進するが、既に場は整っていた。


「やらせない……動きを封じよ、蒼龍!!


アキラが、実に50体もの水龍を呼び出し、それら全てをマーズイーターの身体に巻き付けて動きを完全に封殺!!
此れだけの水龍に絡みつかれたら動けないのは道理だが、水のエキスパートであるアキラが作り出した蒼龍の強さは半端ではなく、引き千切る事は不可能。


そして、其れはつまり、マーズイーターには稼津斗の最大の一撃を防ぐ手段がなくなったのと同義な訳で――


「此れで終わりだザ・ワールド……今度こそ、三途の川を超えて彼岸に渡るんだな――そして、閻魔の裁きを受けて地獄に落ちるが良い。
 おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!滅殺剛覇王翔哮拳!!!


――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!


放たれた稼津斗の最強の気功波は、マーズイーターの巨体を、いとも簡単に飲み込んで行った――








――――――








時同じくして、再び空戦領域では……


『『『『『『『『ぎょわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』』』』』

「!?……なんだ、行き成り苦しみ出して……」


召喚魔が、突如として苦しみはじめ、中には自己崩壊を起こして消える者まで現れたのだ――如何考えても、普通ではない事態だ。


だが、千雨には、其れが如何して起きたのかと言う事が瞬間的に分かった。理屈ではない、本能的に理解したのだ。


「召喚魔がぶっ壊れたって事は……やったんだな稼津斗先生とネギ先生が!!だったら遠慮もへったくれもねぇぜ!!!
 こうなりゃアイツ等はやられ専門の雑魚に過ぎねぇ!!――全力全壊でやっちまえ、幽霊!!」

は〜〜い!


――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!



そして、千雨の指示を受けたさよも、ノリノリのトリガーハッピー状態で、召喚魔を見事なまでに完全撃滅!!幽霊は、意外と侮れない存在であるようだ。

何れにしても、此れで召喚魔は全滅!!


連合艦隊と、グレートパル様号リペアは、見事に最終防衛ラインを護り切ったのだった。








――――――








そして、最終決戦地だが――固有結界的な世界は消え去り、其処には無機質な石造りの部屋が存在してるだけ……其れはつまり、マーズイーターの力が、世
界に対しての力を失っている事の証明だった。


「贅肉を剥がせば、残るのは此れか……まぁ、当然だがな。」


其処で稼津斗は、アースイーターが吹き飛んだ場所に残された真紅の結晶体を手にする――言うまでもなく、其れはオリハルコンだ。


尤も、稼津斗の持つオリハルコンとは違い、此方は天然のオリハルコンを解析して作りだされた人工物ではあるのだが、基本性能の差はないに等しいのだ。



が、其れは今は如何でも良い事だろう。

稼津斗は其の人工オリハルコンを手にし――


「もう良いだろ?……此れで終いだ!!」


その結晶に、狂気の奥義『瞬獄殺』を発動!!
瞬きの瞬間に地獄を見せる『死の奥義』を喰らえば、人工のオリハルコンとて無事では済まないのは、誰の目を見ても明らかだろう。


「我こそ、拳を極めし者――!」


――シャキィィィィィィン!!



そして、大方の予想通りに、瞬獄殺は欠片も残さずにマーズイーターの心臓である人工オリハルコンを完全滅殺!!
其れこそ、一滴の血も残さずに、分子レベルで消し去られたのだから、かの存在がもう一度その姿を現す事は、未来永劫絶対に無い事だろう。



次元と時空を超えた因縁の戦いは、今此処で完全に決着したのだった。



「俺の……勝ちだ!!」



そう、稼津斗の高らかな勝利宣言をもってして――








――――――








――
数日後・オスティア総督府



「ったく、俺は英雄なんてガラじゃないんだがな……いっそ、お前が解決した事にしないかネギ?」

「其れはダメ!最終的に、アイツを倒したのは稼津斗なんだから、此処は稼津斗が出るべきだよ?」

「……期待しちゃいなかったが、そうだよなぁ――はぁ……トドメはお前に任せるべきだったって、本気で後悔してるよ。――今更だけどな。」


其処では1年前と同じく、今回の厄災を防いだ英雄を民に紹介するイベントが執り行われていた。

稼津斗としては不参加を貫きたかったのだが、彼の立場が其れを許さなかった――そんな訳で、ある意味での、強制参加と相成ったのだ。



「まぁ、出るって言うなら、やらせて貰うだけだ……」


稼津斗の眼前には、無数の魔法世界の住人――如何やら、稼津斗が望まずして『英雄』となるのは、間違いない事であるようだ。


『其れでは、今回の厄災を退けた英雄に登場して貰いましょう!!天下無敵の最強戦士――氷薙稼津斗――――――!!』

「「「「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」」」



万感の拍手と歓声。

稼津斗的には、自分に合わないのかも知れないが、だからと言ってこの拍手と歓声を無碍に出来るかと言われれば、其れは断じて否だ。



「さて、行くか。」


覚悟を決めた稼津斗は、其のまま歩を進め、魔法世界の住人にその姿を現した――後に此れは『真の自由の日』と称される事に成るが、其れはまた別の話だ。



何れにしても勝ったのは稼津斗達……全ての事案は、真の意味で此処に終焉を見たのだった――













 To Be Continued…