イクサの放った最大クラスの、其れこそ星をも砕く事が可能と思われる集束砲が、ザ・ワールドに炸裂し、ザー・ワールドも其れに完全に飲み込まれ、魔力爆発
が起きた――並の魔法使いだったら、この魔力爆発の余波を受けただけでも致命傷だろう。


『クククク……中々の一撃だったが、残念だったな。』


しかし、其れだけの一撃を受けてもザ・ワールドは未だに健在!
即時回復したのかも知れないが、傷らしい傷は見えず、然程ダメージを負ったようにも見えずに、その巨体は全然ピンピンしている。


「そんな……ウソだろう?」


流石に此れには、一同も『絶望』を感じてしまった。
この空間内に散らばる力を全て集束して放った、イクサの『スターライトブレイカー』でも、ザ・ワールドに決定的なダメージを与える事は出来なかったのだから。


『そろそろ終わりにしよう……きえろ、ゴミが!!!』


其れを愉悦たっぷりに眺めながら、ザ・ワールドは先程よりも強烈な隕石魔法を発動!!
質量、物量共に、先程の一撃を大きく上回る、流星群の如き隕石を喰らったら、如何にオリハルコンの所有者とて無事では済まないのは、言うまでもない!!


だが――


「誰が消えるか、阿呆が……蒼月・連弾!!


突如として、凄まじい闘気の持ち主が現れ、拳脚から無数の鎌鼬を放って、圧倒的物量の隕石を、1つ残らずに完全相殺!!其れも欠片も残らずにだ。


「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」

「やっぱ無事やんやな、兄ちゃん!!」

「あぁ……待たせたな、皆!」


その正体は、氷薙稼津斗!!
虚無の空間で、龍との修業で更なる高みに上った無敵にして最強の戦士が、威風堂々とその場に存在していたのだった。











ネギま Story Of XX 190時間目
『This is gonna be a match to remember』











「「稼津斗さん!!」」

「稼津さん!!」

「稼津君!!」

「稼津斗殿!!」

「稼津兄!!」

「稼津斗にぃ……」

「稼津斗……!!」

「カヅトォ!!」



そして、稼津斗組にとって、稼津斗の帰還は何よりも嬉しい事だった。
如何に信じているとは言え、最悪の『万が一』を嫌でも想像してしまうのが、人であるが故に、気丈に振舞いながらも、彼女達は不安で一杯だった。……だが、
こうして稼津斗が戻って来たという事で、その不安が払拭されたのは間違いない事だろう。

感極まって、抱き付いてしまったのは、まぁご愛敬だ。


「スマナイ……随分と心配をかけてしまったな。
 だが、お前達のおかげで、俺は戻ってこれたし、お前達の力を得て、俺は更なる高みに到達する事も出来た……ありがとうな、皆。」


其れでも稼津斗は、其れを受け入れ、抱き付いて来た者達の頭や背を軽くたたいてやる……此れもまた、一つの愛情表現だろう。
が、そんな状態であっても、稼津斗組屈指の情報通である和美は実に耳聡い。それこそ『お前、本当は小型集音器装備してんじゃね?』という位に耳聡い!!


「私等のおかげで戻ってこれたってのは兎も角、私等の力を得て高みに上ったって如何言う事?
 少なくとも、捕らわれた稼津兄に、私等の力を届ける手段何てなかったと思うんだけど……その辺、ちょ〜〜〜〜っと、説明して貰っても良いかな稼津兄?」


すぐさま、自分達の力が稼津斗に力を与えたという部分に超反応し、興味津々に聞いて来る。或はこれも、ジャーナリストの本能なのかもしれないが。
無論稼津斗も、隠す必要はないので『勿論。』と頷いてから、簡単な説明を始める。


「確かに和美の言う通り、お前達の気や魔力が、直接虚無の空間に居た俺に届いた訳じゃない。
 だが、お前達の思いや、意志と言った物が、ザ・ワールドへの攻撃を通して感じる事が出来た――その思いの力を、言うなれば『心の力』を受け取った事で、
 俺は更なる高みに上る事が出来たって言う事さ。」

「つまり、ウチ等と稼津さんの絆が、稼津さんを更に強くした?」

「お、良い事言うでござるな亜子殿♪」

「な〜るほど納得!つー事は、私等だけじゃなくて、ネギ君達の『心の力』だって届いてる筈だから、つまり稼津君は本気で無敵で最強って事だよね!」


聞いてみれば、何とも抽象的だが、納得してしまう内容だった。
心の力など、科学的根拠のない根性論だと一刀両断出来そうだが、存外それは馬鹿に出来ない。特に、堅い絆で結ばれた者同士、或は親友、戦友と言った者
同士の絆が生み出す力は、科学では解明できない力を産む事が実際に有るのだから。


「最強か……あくまで暫定だがな。
 けどまぁ、俺が戻ってくるまで、良く持ち堪えてくれた――だから、此処からは俺がやる。捕らわれてた間の分を、キッチリ埋め合わせしないとだからな。」

「稼津斗にぃなら、そう言うと思ったよ。
 隕石は撃激したが、其れで如何にかなるアイツじゃないだろうから、やっちゃってくれ。」

「あぁ、終わりにしてやる。」


そして、稼津斗は最終決戦のラストファイナルラウンドに挑まんと、拳を鳴らして闘気を高める。
隕石と蒼月が弩派手にぶつかった事で発生した煙は未だに晴れないが、その煙の向こうでザ・ワールドが健在なのは、気を探れば直ぐに分かるのだから。


――シュゥゥゥゥゥゥ……


『貴様……どうやって、あの空間から抜け出した!?』



煙が晴れると、其処には予想通りザ・ワールドが、稼津斗を吸収した時の状態のままで存在していた。


「貴様の虚無の空間の特性を利用し、最強の爺さんに稽古を付けて貰ってね。
 そんで、お前が受けた最大の一撃が、虚無の空間に外側から罅を入れたのさ。其れを利用して、罅を内側から修業で得た力で砕いただけの事だ。
 其れよりも、お前は何だって、俺の巨人バージョンみたいな姿で居る?
 俺を取り込んでその姿になったって言うなら、俺が外に出た今は、その姿は解除されてないと、おかしいんじゃないのか?」

『アノ虚無の空間の特性を逆利用したか……確かに貴様なら、其れ位は出来るだろうな。
 して、この姿か……知れた事、貴様を取り込んだその時に、貴様の強さを万が一に備えてデータ化して我にインストールしただけの事だ!!
 つまり、貴様が帰還したところで、我は貴様の力を得ている事に変わりはない!!如何足掻いても、我に勝つ事は出来ないのだ!!!』



如何やら、ザ・ワールドは万が一を考えての一手を用意していたらしい。
確かに、稼津斗の力をデータ化してインストールしておけば、仮に稼津斗が脱出したところで大した事は無い。既にその能力はインストールされてるのだから。

つまり、ザ・ワールドは未だに自身の力にXXVの稼津斗の力を上乗せした状態で居る事に相違ないのである。
普通に考えるならば、自身の最強形態に他の力が上乗せされた相手に勝つのは難しいだろう。上乗せ分だけ、相手の方が能力が上なのだから。



だが、其れはあくまでも帰還後の力が、帰還前と同じだった場合に限る。



「勝てないか……そいつは如何かな?」


ザ・ワールドのセリフに、稼津斗は口元に不敵な笑みを浮かべると、虚無の空間を脱出した時の様に気を解放し、新たな力を其処に顕現させる。


――轟!!


「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」


だが、其れを見た裕奈達は思わず目を疑った。
いや、裕奈達だけでなく、この場に居た全員が、それこそザ・ワールドですら目を疑ったかもしれない――稼津斗の姿が、殆ど変わっていなかったのだから。

気を解放したにも拘わらず、稼津斗は黒髪のまま。
XXの特徴である稲妻オーラを纏い、瞳は蒼く変化しているのだが、放出されているエネルギーは通常のXXよりも小さい……筈なのに、稼津斗自身から感じられ
る力は、XXVよりも更に数倍強大なモノとなっているのだ。


『き、貴様……その姿は!!』

「此れが俺の辿り着いた新たな高み。放出して居るエネルギーと、仲間の心の力を己の内に取り込んだXXの究極形態。
 殆ど姿を変えずに、XXVをも超える力を発揮する、オリハルコンの真の力『XX/Zero』……俺1人では、辿り着けなかった世界だ!」

『貴様……ならば、再び我の中に取り込んで、その力も吸収してくれる!!』


その答えを聞いたザ・ワールドは、すかさず泥を精製し、再び稼津斗を取り込まんと放つが、今の稼津斗にそんなモノは通じない。
其れよりも、一度喰らった罠を喰らう稼津斗ではないのだ。


「一度喰らった罠を二度喰らうのは、二流以下のやる事だ。
 その泥は、付着させなければ良いだけの事……なら、くっつく前に吹き飛ばせば万事問題なしって事だよな?……吹き飛べ、爆閃衝!!


其れを証明するかの如く、気を爆発させる広範囲攻撃で泥を吹き飛ばし、暗に『この技は二度と通じない』とザ・ワールドに伝える。
同時に其れは、ラストファイナルラウンド開始のゴングだ。


泥を吹き飛ばした稼津斗は、一瞬でザ・ワールドに肉薄すると、その巨体に左拳を一閃!!
其れを喰らったザ・ワールドの巨体がくの字に折れ曲がったのを見ても、威力は充分凄まじく、ザ・ワールドの特性でもダメージを無効に出来なかったらしい。

そうなっては、稼津斗の攻撃を受ける事によるパワーアップは望めないだろう。あくまでもあのパワーアップは、ダメージを無効にする事が大事なのだから。
ダメージを無効に出来ないのであれば、其れを己の力には転換できないのである。


『舐めるなよ、貴様ぁ!!』


其れでも、ザ・ワールドは稼津斗の動きを先読みし、両の拳を組んで必殺の『アックスパンチ』を繰り出す。
この巨体から繰り出される、アックスパンチなど、常人が喰らえば間違いなく木端微塵が確定だが―――


『んな……馬鹿な!?』

「デカい図体してこんなモンか……如何やら、俺のパワーアップは、俺とお前の差を、更に大きくしたみたいだなザ・ワールド。」


何と稼津斗は指一本で其れを止め、更に『デコピン』でその拳を弾いて砕く。
尤も拳を砕かれた程度では、ザ・ワールドにはダメージにはなり得ないが、今のカウンターは寧ろメンタルダメージの方が大きいだろう事は間違いないだろう。

一撃必殺だった筈の攻撃が指一本で防がれ、更には拳を砕かれたのだから。
如何に砕かれた拳は即時再生するとは言え、このメンタルダメージは相当だろう――ザ・ワールドのプライドを、真っ向から砕いたのだから。


『貴様……許さん、許さんぞ!!今この場で朽ち果てろぉぉぉぉぉ!!』

「誰が朽ち果てるか馬鹿が。」


そのザ・ワールドは、其れは認められないとばかりに魔力弾を撃ちまくるが、その乱れ撃ちも、稼津斗にとっては何のその。
一部は躱し、一部は弾き飛ばし、また一部は自分のエネルギーとして吸収する始末なのだ。


「寧ろテメェが朽ち果てろ……!!」

『ぬあぁにぃぃぃぃぃぃっぃ!!?』


更に、突進しながら放った拳が、ザ・ワールドの身体を貫通し、大ダメージどころではないダメージを叩き込んで行く。
新たな高みへと到達した稼津斗の強さは、誰の目にも火を見るより明らかだった――そう、其れこそ今の稼津斗は最強の戦士と言っても過言ではないのだ。



『お、おのれぇぇ……!殺す、殺してやるぅ!!』

「出来るかなお前に……此れが何か分かるか?」


そして、喚くザ・ワールドに対し、稼津斗は『何か』を見せる。
其れは赤黒く、脈打っている不気味な物体だが、其れを見たザ・ワールドは、目に見えて慌てていた。


『そ、其れは!!』

「アレだけの数のミュータントと、俺の力を取り込むなんて普通じゃないし、其れを制御する物がなければ。お前の自我は消え去ってしまうだろう?
 そう思って制御装置があるんじゃないかと思ったが、ビンゴだったぜ。
 って言うか、制御装置を心臓の付近に隠しておくのは悪手と知れ……其処は人体内部で、尤も狙われやすい場所だからな。
 そして、この制御装置をぶっ壊したら、お前は一体どうなるんだろうな、ザ・ワールドよ?」

『や、止めろ!!其れを壊したら、私は!!』

「自我を保てなくなる――つまり精神的な死を迎えるって事だろ?
 なら迷う事は無い……此れを砕いて、自我の崩壊した貴様を倒せば、其れで終いと言う事だろうからな……此処で貴様はお終いだザ・ワールド!!」


――グシャァァァァァアァァァァァ!!


言うが早いか、稼津斗は『制御装置』を握りつぶし、ザ・ワールドの人格崩壊のスイッチをオンにする。


『いぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!』


瞬間、途轍もない断末魔が発動し、ザ・ワールドの身体が分解されて行く――深い闇の波動だけを残して。


そして―――



『ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』


現れたのは、巨大な肉塊のような姿になった、制御装置を失ったザ・ワールドのなれの果てであった。











 To Be Continued…