虚無の空間にて、龍から手解きを受けている稼津斗は、龍のアドバイスから『何か』を掴みかけていた。
「放出するエネルギーが大きすぎる……なら、ソイツを体中の筋肉に回したら……」
――ボゴン!!
放出するエネルギーが大きいと言う事なので、放出して居るエネルギーを全身の筋肉に張り巡らしてみたところ、一気に四肢の筋肉と、胸筋と、腹筋と、背筋が
急激に肥大化し、ボディビルダーやプロレースラーですら吃驚するような、筋骨隆々のメガマッチョが大完成!!
「ダメだな此れは。」
「うむ、全然ダメだな。力は凄いが、素早さが全く死んでいる。」
が、此れは稼津斗も龍も速攻でダメ出し。
この姿だと、パワーは星を砕くほどに凄まじいが、スピードがまるっきり死んでしまい、その凄まじいパワーを当てる事など大凡出来ない状態なのだ。
「だが、着眼点は悪くない。
放出して居るエネルギーを、如何すれば良いのか……それをよく考えてみろ。」
「分かってるよ爺さん……こんな所で立ち止まるって言うのは嫌だし、次の高みが見えてるのに諦めるなんて言うのは、何とも俺らしくない――そうだろ?」
「そうだ。――諦めずに目標に向かってこそお前だ。
何やら、大きな戦いの最中であるようだが、この戦いの行方は、お前が次の高みに上れるかどうかに掛かっているだろうからな?……超えて見せろ、壁を。」
「勿論、その心算だぜ!!」
其れでも、失敗を糧として稼津斗は再び気を解放し、次なる高みを目指す。
その結果は未だ分からないが、この修業を終えた先に存在するのが『全てを超えし者』であるのは、先ず間違いないと見て良いだろう――
ネギま Story Of XX 189時間目
『Go For Broken!!』
一方、ザ・ワールドと交戦してた面々は、隕石攻撃を喰らって満身創痍状態に陥っていた。
オリハルコンを持つ稼津斗組の面々は即時回復&再生が成されるので、肉体的なダメージはゼロだが、ネギ達に関してはそうも行かないのが現実だ。
余りにもすさまじい隕石攻撃に、ネギも、エヴァも、刹那も千草も、ナギとトレジャーハンターとアスナ、そしてラカンまでもが完全にTKO状態で戦闘不能状態!!
『理解したか?……如何に強い蟻で有ろうとも、ティラノサウルスを倒す事は出来ぬのだ。
貴様等の力は見事だったが、見ての通り我には通じぬ――諦めて、無駄な抵抗は止めろ……さすれば、安らかなる死が待っているぞ?』
其れを確認したザ・ワールドは、勝利は我に在りとばかりに降参するように言うが、果たして此処にいるメンバーが受け入れるだろうか?――あり得ない。
こんなふざけた提案を受け入れるメンバーは、1人も居はしない。居る筈がないのだ!!
「無駄な抵抗?……其れが如何したの?
無駄な抵抗でも、諦めずに続ければ、アンタに決定打を与える事が出来るかもよ?」
「其れに、安らかな死なんてもんには興味ないでござるよ――稼津斗殿との、刺激たっぷりの人生の方が万倍楽しそうでござるからな。」
となれば当然稼津斗組も、そんな提案(と言う名の脅迫)を受け入れはしない。
其れを示すかのように、和美と楓が強烈な『言葉でのカウンター』をブチかまし、『絶対に屈さない』の意を、改めてザ・ワールドに示して、再び臨戦態勢を取る。
こんな所で止まる事など出来ないのだ。
『まだ挑むか……愚かな。
貴様等の攻撃では、我を倒す事など出来ず、それどころが我を強化するだけだと言うのが未だ分からんのか?貴様等は死の運命からは逃れらんのだ!!』
しかしここは相手が相手。和美と楓のモノ言いに、超反応するように、ザ・ワールドは腕を振り被って必殺の一撃を放たんとする。
この一撃の破壊力は、核弾頭3発分くらいは有るだろう――そんなモノが放たれたら、間違いなく魔法世界は消滅してしまうのは間違いないだろう。
――が
「な〜〜〜〜に、偉そうに演説ぶっこいてんや、やられ専門の雑魚ボスが!!!」
――バキィィィィィ!!!
ザ・ワールドの横っ面に漆黒の暴風がぶち当たり、世界を消滅させてしまうであろう攻撃を、強制的に中断させた。
「やっとこさ到着したで……ったく、行き成り世界を作り変えよってからにーーーーーー!!!」
『貴様……!!』
その正体は小太郎!
スターとの戦いの後、メッキリ姿が見えなくなっていた小太郎が現れ、出会い頭にザ・ワールドに強烈極まりない飛び蹴りをお見舞いしてくれた――しかも、助
走を付けて、此れでもかと言う位に勢いを付けた、ブロック塀をも粉砕するであろう一撃をだ。
「ったく、あのクソをぶっ倒した直後に世界が変わって、気が付いたらスラム街のど真ん中や!
ホンマ、此処まで来るのに苦労したわ〜〜〜……その苦労はキッチリと清算させて貰うでコラ!!――覚悟は出来とるやろな、このクソダボが。」
『躾の成って居ない犬っころが……格の違いを教えてくれるわ!!』
当然、トドメの一撃を邪魔されたザ・ワールドは面白くない。
否、面白くないどころではないだろう。
自分が放ったミュータント達が倒されるところまでは予想通りだったし、稼津斗を吸収する事も出来た――其れで全てが完結する筈であったにも関わらず、そう
では無いのが今の現状なのだ。
圧倒的な力を見せつけようとも、絶対に折れない稼津斗の従者達。
多大なダメージを受け、回復魔法で回復したところで碌に戦えないだろうにも関わらず、その瞳からはマダマダ闘気の炎が消えていないネギ達。
そして、土壇場で現れたバリバリ元気一杯の小太郎――最終段階にきて、自らの計画通りに事が進んでいないのだから。
「てか、随分こっぴどくやられたなぁネギ?なんや、コイツそんなに強いんか?」
「まぁ、戦闘力は確かに凄いかも知れないよ?稼津斗を取り込んでるしね。
おまけに、こっちが与えたダメージ分だけ能力が上昇するって言うんだから、本気でチートモードも良い所だよ……負ける心算は無いけどね――!!!」
ザ・ワールドが余裕の態度の裏でイラついて居るなどと言う事は露ほども知らず、小太郎とネギはライバル兼親友の何時ものノリの会話。
尤もネギは、最大の友にしてライバルである小太郎の出現で気合が充実したのか、ボロボロの身体で無理矢理に立ちあがる。殆ど気力で立った様なモノだ。
「オイオイ、無理すんなやネギ?
此処は俺や楓姉ちゃん達に任せて、お前は大人しくしとけや?ダメージもそうやけど、魔力の方かてキツイやろ?」
「冗談、君がやるのに僕が休む?――あり得ないねそんな事。
大体、ライバルが頑張るってのに、主役が休むなんてそんな事は出来ない……そうだろ、小太郎君?」
「言われてみりゃ、其れもそうやな?
てか、アイツ兄ちゃんの事吸収しくさったんか?其れやったら、確かに強いかも知れへんけど、そのチート能力なかったら普通にぶっ倒されてんとちゃうか?
中がどうなってるかは知らんけど、あの兄ちゃんが只吸収されて終わりとは思えへんし――自力で戻ってこれへんのやったら、俺達で引っ張り出すだけや!」
そうであっても、ネギの闘気は揺るがない……それどころか、ドンドン強くなっているようにすら感じるのだ――ライバル効果恐るべしだ。
だが、其れでも気力だけで如何にかなる訳でもないのもまた事実。
気力で少しは戦えても、其れは極めて短時間の刹那的な物に過ぎない――要するに、本気で戦うとなったら体力と魔力の回復は必須であるのだ、矢張り。
「まだまだやる気とは……マッタク、我ながらトンでもない奴に惚れたモノだ――いや、そんな所に惚れたのかも知れんがな。
ネギよ、少し此方に来い。」
「エヴァ?如何したの?」
そんなネギに、エヴァンジェリンが呼びかける。
当然、ネギは『如何したのか』と近付き――
「未だ戦うならば、私の力を持っていけ。」
行き成りエヴァンジェリンにキスをされた。
勿論突然の事にネギは驚くが、キスと同時に自らの口内に流れ込んできた『鉄の味』に一気に頭がクリアになった。
――そう、キスを通して、エヴァンジェリンの血が自らの口内に入って来ていると気付いたのだ。
普通ならば咽て吐き出すところだが、口を塞がれているために其れも出来ず、ネギは流れ込んできた血を否応なしに飲み込む事になったのだが、
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
その血を飲み込んだその瞬間に、ネギの魔力と体力は一気に完全回復!
攻撃で負った傷こそ治っていないが、体力と魔力が満タン状態ならば、ヴァンパイアの超回復で傷も治す事が出来るだろう。
「此れは……」
「お前が私と同じ存在になったが故に出来た事だ。ヴァンパイアは、自らの血を他の同族に飲ませる事で、体力と魔力の回復を行う事が出来るからな。
一生使う事は無い能力だと思っていたが、お前が人でなくなった事で使う機会に恵まれたという事か。
――今一度行ってこいネギ!そして忘れるな、例え戦えなくとも、私はお前と共に居る……お前の中には私の血が入ったのだからな。」
「!!……分かった、行ってくるよエヴァ!!」
――轟!!
エヴァンジェリンからの粋な回復をして貰ったネギは、一機に魔力を解放して再び戦闘態勢!
しかも、エヴァンジェリンの血での回復を行った影響か、魔力を解放したネギの髪は燃えるような赤から、眩いブロンドに一次的に変化しているのだ。
「思わぬ援軍が、思わぬ戦力強化となるとは……マッタク、何がどうなるかは分からんものだね。」
「其れが戦いと言う物でござろう真名?――何れにしても、もう一頑張りにござるよ!!」
そして、其れを皮切りに再び戦闘開始!
『ゴミ共が……消し去ってくれるわ!!』
先ずは先制とばかりに、ザ・ワールドが無数の魔力弾を放って、殲滅戦としてくる。
「そう簡単にやられるかっての!
先陣突破!コタ、ネギ君!お願い!!」
「任せとけや和美姉ちゃん!行くで、ネギ!!」
「うん!!」
「んな、ヘタレ技が通じるかい!!喰らえや、兄ちゃん直伝――爆閃衝!!」
其れを見た和美が、作戦参謀宜しくネギと小太郎に指示を飛ばす。
指示を受けたネギと小太郎も、速攻で役目を理解し、先ずは小太郎が『爆閃衝』でザ・ワールドの放った魔力弾を纏めて掃滅!!
「おぉぉぉぉぉ……雷華崩拳!!」
――バリィィィィィィ!!
其処に追撃として、雷天双壮を展開したネギの『雷華崩拳』が炸裂!!
「マダマダぁ!!裕奈、楓、真名!!!」
「了解にござる和美殿!!……いい加減にくたばるでござるよ!紅血刃!!」
「大人しく眠りに付くんだね……ハイパー・バースト!!」
「アンタは調子に乗り過ぎた……その代償を、此処で払っとけっての!!スクリーンディバイド!!」
――ドゴォォォォォォォォオォオォォン!!!
其れだけでは終わらずに、今度は真名と楓と裕奈の一撃必殺級の攻撃が炸裂し、ザ・ワールドにダメージを与えて行く。
だが、まだこれでは終わらない!
「亜子、のどか、クスハ!!」
「任せて下さい!!宇宙魔法……グランド・クロス!」
「此れがウチ等の全力や!……此れで目を覚ましてや稼津さん!!龍精霊融合最大奥義、滅びのバーストストリーム!!」
「お前なんて燃え尽きちゃえ……炎殺黒龍波ーーーーー!!」
続けざまに、のどか、亜子、クスハの最大級の一撃が放たれ、ザ・ワールドに確実にダメージを叩き込んで行く。
『き、貴様等……舐めるな雑魚共が!!』
「だ〜れが雑魚だって?
仮に私等が雑魚だとして、その雑魚を一撃の下に葬る事すら出来ないアンタは、雑魚以下だろ!!――喰らえ、魔天葬送華!!」
勿論、ザ・ワールドとて黙っては居ずに反撃に出るが、其れを呼んだ和美がカウンターの一撃をブチかまして反撃の芽をむしり取る。
「鎌首を上げろ…蒼龍!!」
更に、アキラが12体の水の龍を呼び出し、其れを持ってしてザ・ワールドの動きを完全に封じてしまった。
如何にザ・ワールドと言えど、12体もの水龍に巻きつかれたら簡単に解く事など出来ないだろう。
そして――
「此れが最大の好機!やっちまえイクサ!!」
「言われるまでも無い!
――咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。――貫け閃光!!」
その拘束の意味は大きく、イクサが最大の一撃を放つための時間を稼いだ――やはり水の力は侮れないらしい。
「スターライトブレイカー!!」
――キイィィィィィィィィィン……ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!
そして放たれた最強の一撃!
此の集束砲は、ザ・ワールドの身体を貫くほどの物だった――
――――――
イクサの最大の一撃が炸裂したのとほぼ同時刻、虚無の空間に捕らわれた稼津斗は、新たな高みに上ろうとしていた。
「ぐ……ぬ……でりゃあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁああ!!!!」
――ドゴォォォォォォォオオォオォォォオォォォォォッォォォォォン!!
数えきれない程の失敗を繰り返し、丁度50回目の挑戦にして――
「遂に辿り着いたか……見事なり。」
遂に龍が、稼津斗の新たな強化形態にゴーサインを出した――此れは、実に凄い事であると言えるだろう。全人未踏の高みに、稼津斗は到達したのだから。
「此れは……成程、俺1人じゃ到達できなかった世界だぜ……」
「そうだ、其れこそ貴様の最強形態よ稼津斗。
己の力のみならず、仲間の闘気をも自らの中に取り込んだその姿こそが貴様の辿り着いた『極』の一つのゴールだ……やってしまえ!」
――ピシィ!!
其れと同時に、虚無の空間に亀裂が走る。
言わずもがな、イクサの『スターライトブレイカー』がザ・ワールドを撃ち貫き、特大のダメージを与えたのだ。
如何に内部からは脱出不可能だと言えども、外部からの一撃で空間に亀裂が入ったと言うならばその限りではないだろう。
「さぁ、そろそろ目を覚ます時間ではないか?」
「分かってるよ爺さん……アンタにもう一度会えてよかったよ。」
そして稼津斗は薄く笑みを浮かべて龍との別れを済ませると、間髪入れずに両の手に気を集中!!!
「やっぱりアンタは俺の最高の師匠だぜ爺さん……行ってくるよ、未来を掴むためにな!!
――さぁて、年貢の納め時だぜザ・ワールド?……キッチリと熨斗付けて、ぶち殺してやるから覚悟しておけよな……行くぜ、覇王翔哮拳!!!」
――キュゴォォォォォォォォォ……バガァァァァァアァァァァァアァァァァァン!!!
亀裂の入った虚無の空間に放たれた、極大気功波『覇王翔哮拳』!!
その一撃は、何にも阻まれる事なく、亀裂の入った虚無の空間を、物の見事に粉砕し、稼津斗の進む道を照らし出して行った――
To Be Continued… 
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