ザ・ワールドの放った魔力衝撃波は凄まじい威力を持って、戦闘区画の周囲を、一撃の下に更地にしてしまった。
それを真面に喰らったら、如何にネギ達と言えど芥子粒になっていてもおかしくないだろうが――


「強烈な一撃おすなぁ……せやけど、アンタは少しばかり東洋陰陽師の力を甘く見すぎや有りまへんか、ザ・ワールドはん?」

『式神を盾にして防いだだと?』


一行は、着弾の直前に千草が召喚した無数の式神妖怪『ヌリカベ』が作り出した、謂わば『妖怪ドーム』に護られて全然無傷!
それどころか、周囲を更地にする一撃を受けて尚健全なヌリカベが存在する辺り、千草の陰陽師としての力は関西呪術協会でもトップであるのは確実だろう。


が、しかし、よくよく見ると妖怪ドームの中には1名ほど足りない――そう、ジャック・ラカンの姿が無いのだ。
魔力衝撃波が発動する際に、一行と距離があったが故に妖怪ドームに逃げ込む事が出来ずに吹き飛ばされてしまったのだろうか?


「ラカンさん、何処行った?」

「多分その辺に居るのではござらんか?」

と普通なら考えるのだろうが、此のメンツはラカンが吹き飛ばされたなどと言う考えは何処にもない。と言うか、ある筈がないのである。
稼津斗をして『アイツを倒すにはXXに変身しないとならない』と言ったリアルに無限チートのバグキャラが、魔力衝撃波で吹き飛ぶか?――断じて否である!


――バガァァァァァァァァァァァン!!


更に、其れを示すかのように瓦礫の山が吹っ飛び………


「ハッハッハ!!今のは流石に効いたぜ、ザ・ワールドよぉ!!」


その中からジャック・ラカン堂々の登場!
鼻血を垂らし、頭から墳血状態と言う重傷レベルであっても何のその!この男にはこの程度全くダメージにはなって居ないのか、マダマダ元気一杯である。


「刹那、あの御仁はホンマに人間やろうか?」

「その答えは出ないと思いますよ師匠………」


取り敢えず、京都神鳴流&陰陽道の師弟の疑問に答えが出る事は、きっと永遠にないであろう。











ネギま Story Of XX 188時間目
『現実と幻想、二つの戦い』











『此れで無事とはな……否早、実に結構!
 尤もこの程度で吹き飛んでもらっては逆に興醒めだがな?……貴様等も、私に殺された後には私の一部となるのだからな!』

しかし、ラカンの異常っぷりを見てもザ・ワールドは何のその!
それどころか、今のを耐えられるくらいでなくては困ると、最終的には自分が吸収するとまで言ってのけたのだ――其れだけ自分の力に自信があるのだろう。


『だが、氷薙稼津斗の契約者達よ……貴様等が望むのならば、生きた状態で吸収してやっても良いぞ?
 生きた状態で私に吸収され、私の一部となれば、永遠に氷薙稼津斗とも一緒に居られるのだ――我が体内で意識を奪われた状態で永遠にな……?』

更には、稼津斗組には『生きた状態で吸収』してやろうかと言うが――


「アホでござるかお主は?」


楓が其れを一刀両断!!


「楓の言う通りやな……稼津さんとは一緒に居たいけど、アンタの体内でなんてのは真っ平御免やで?」

「大体にして、意識を奪われたら、一緒に居たってハグもキスも出来ないんじゃないか?――其れじゃあ何の意味もない、断固拒否するよ。」


更に亜子と真名が追撃し、『吸収?ふざけんな馬鹿野郎、一昨日きやがれ』の意思を分かりやすく伝える――真名のセリフは少しばかりアレかも知れないが。
それでも、此れが稼津斗組の総意なのは間違いないだろう。

イクサを初め、アキラも裕奈も、のどかもクスハも和美も『その通りだ』と言わんばかりに頷いているのだから。


「つーかさ、テメェ如きが稼津君の力を完全に扱えると思ってる訳?
 幾ら稼津君とアンタが遺伝子的にはフォーナイン(99.99%)同じだとしても、アンタと稼津君は別モンだ――その力を発揮する事は出来ねぇでしょ?」

「貴方はそもそもの考え方が間違っていたんですよ。
 この世界に降り立ったその時に、貴方は欲を捨てるべきだった……最低で最悪の『支配欲』を――其れが出来なかったが故にこんな事になってしまった。
 だからこそ、私達は貴方を此処で滅します!魔法世界の……いえ、全ての世界の未来の為に!!」


退く理由は何処にもない。
ならば戦って倒すだけ――只それだけだ。


「コイツ等の言う事は実に共感できるな?……不死となった私が言うのも何だが、貴様は少々生き汚すぎる――大人しく此処で散り果てろ!!」

「始まりの魔法使いも、そろそろ終わりの魔法使いになる時だ!!」


そして、第2ラウンド開始のゴング宜しく、エヴァンジェリンとネギの一撃が、ザ・ワールドの巨体に炸裂!!


――するが、小動もしない。それどころか、先程よりも防御力が増している感じするのだ。


『そうだ、一つ言い忘れていた……我は貴様等の攻撃を受ける度に、そのダメージを吸収して我が力とする。
 ドレだけ強力な攻撃であろうとも、我を一撃の下に消滅させぬ限り、我を倒す事はドンドン困難になるぞ?まぁ、氷薙稼津斗が我の中に居る限り、我を消滅
 させる事など出来ぬだろうがな?其れをしたら、中に居る氷薙稼津斗もお陀仏だからなぁ?』


其れは間違いではなく、此れまでの攻撃で受けたダメージを自らの力に変換していたのだ。マッタク持って弩チート極まりない能力であると言えるだろう。
自らは不死故に、存在そのものを抹消されぬ限りは、例え頭を斬り落とされても再生すると言うのに、その上で受けたダメージ分だけパワーアップとは、最強効
果の重ね技であるとしか言いようがない。

更に、倒すためには存在の完全抹消しかないにも拘らず、稼津斗が体内に捕らわれて居る為に其れも不可能とは、何とも分の悪い戦いだろう。



「其れは、何とも厄介な能力ですけど、やったら自身の力として吸収できる許容量を超えたダメージを与えれば、アンタを消滅させずともダメージは入るっちゅう
 事になりますなぁ?倒しきる事は出来へんかも知れへんけど、それやったらこっちが攻撃する事だって可能ですえ?
 大体にして、稼津斗さんの帰還は決定事項やし、ネギの坊ちゃんと先の大戦の英雄、更に黄昏の姫巫女、稼津斗さんの契約者とウチとウチの愛弟子、更に
 は、本屋ちゃんの仲間のトレジャーハンターの皆さんまで居るんですえ?アンタを滅しきる事が出来ずとも、敗北だけは有り得まへんなぁ?」


だが、其処は千草が目聡く『弱点』と言うか、攻略の糸口を探し出してくれた。
確かにトンでもない効果の重ね技だが、一度にエネルギーとして吸収できるダメージの許容量は無限に近いが有限である。だからこそ、指を切り落とされると
言った『物理的ダメージ』が発生するのだから。


『ククク………確かに其の通りだが、果たしてそれが出来るかな?
 先程の貴様等の攻撃のおかげで、我の力は先程までの1.75倍程度に跳ね上がっているのだぞ?――加えて、こんなのは如何かな?』


その糸口を聞いても尚ザ・ワールドの余裕は崩れない。確かに、パワーアップしている事実があるからだ。
更には――


「ウゲ、マジか此れ?」

「ったく、趣味が悪いねぇ?センスがねぇんだよ、センスがよぉ?」


大量の『人間サイズ』のザ・ワールドが浮かんでいた。
尤もその姿は、稼津斗を吸収する前の物だが、其れでも其れが100体以上も居ると言うのは不気味で仕方ない。ナギが顔を歪めたのも、ある意味道理だ。


『強化された我と、我には及ばぬが我の分身たる御奴等が居る以上、貴様等が我に触れる事など二度と不可能よ!……やれ!!』


そして号令と共に、無数のザ・ワールドの分裂体が襲い来る。

勿論ネギ達も即座に応戦し、激しいバトルが展開される。
魔法が飛び交い、気が弾け、打撃音が響き渡り、時には式神が現れ、クスハの黒炎龍とアキラの水龍が荒れ狂う。

その間にもザ・ワールドからの攻撃は敢行されるが、魔法攻撃は全てアスナが天魔の剣で切り裂き、切り落とし、切り消して無効化している。
完全魔法無効体質持ちの黄昏の姫巫女が味方に居る限り、魔法攻撃は略間違いなく無効になると言うのは心強い事この上ないだろう。


中でも、活躍が目覚ましいのは裕奈だ。
持ち前の運動神経を目一杯活用し、迫りくる敵をアーティファクトで殴り、或は踏ん付け、時には足場代わりにして着実にザ・ワールド本体に近付いて行く。


『『『シネェェェェェェェェェェェ!!』』』

「やられ専門の、経験値稼ぎ用雑魚は黙ってろ!!スクリーンディバイド!!


進路上に現れた敵も何のその!一刀の下に斬り伏せて行く。
恐らく、初めて己の父親以外で『愛』を向けた存在だけに、裕奈の中での稼津斗の存在は、相当に大きいモノであるのだろう――故にこの力なのだろう。


「成程な……使いな嬢ちゃん!」

「ラカンさん!……サンキュー!」


加えて、進撃する裕奈にラカンが自身のアーティファクトを起動して剣を一本投げてよこしてくれた。恐らくは裕奈が何をしようとしてるか察したのだろう。

で、伝説の傭兵の剣を手にした裕奈は更に進撃の速度を速め、敵を切り裂いて行く。


「どっせい!!」

『ムベ!?』


新たに突撃して来た1体を踏みつけると、其のままラカンから渡された剣を投擲!
何にも隔てられなかった其れは、回転しながら飛翔し、ザ・ワールドの肋骨辺りに見事に突き刺さり――その剣の上に裕奈が降り立つ。


「二度と触れる事は出来ないとか言ってたけど――こうして、見事に触れてやったぜ?」


そして、挑発丸出しで、ドアをノックするかのようにザ・ワールドの身体を叩く――その姿は余裕綽々そのモノだ。


『小娘が……永遠に其処に張り付いていろ!』


無論、そんな裕奈に対して分裂体が襲い掛かるが、腕を振るった先に裕奈の姿はなく、ザ・ワールド本体に僅かな傷を刻み込んだだけに留まった。


「稼津君やネギ君のMAXスピードに比べれば、蠅が止まる位に鈍いっての!」


――ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


その裕奈は、一瞬で背後に回り込み、攻撃して来た相手をアーティファクトの魔力銃で一撃撃滅!尤も、分裂体が倒されたところで本体に影響は無いが。


『小娘が……!!』

「やっぱ稼津君が戻ってこなきゃ無理か……ま、取り敢えずは此のデカブツと力の限りやるとしますかね!!」


言うが早いか、裕奈は飛翔し、仲間と共に敵を撃滅していく。
マダマダ外での戦いは終わりそうにはないようだ。








――――――








その頃、捕らわれた稼津斗はと言うと………


覇王翔哮拳!!

「気を溜める時間が長い!!」


己が呼び出した龍から直々に稽古を付けて貰っていた。
闇の魔法の試練にて、龍を超えた稼津斗だが、この空間では『自分のイメージ』が再現されるため、稼津斗のイメージ通りの『自分よりも強い龍』が再生され、
その結果、稼津斗はXXVに変身しながらも、一度たりとて模擬戦には勝って居ないのだ。


「はぁ、はぁ……ったく、本気で強いな爺さん?其れでこそ、俺が目標とした爺さんだけどな。」

「貴様も中々に腕を上げたな稼津斗よ?冥界から馳せ参じた甲斐も有ったと言う物だ。
 だが、此れまで戦ってみて分かった事も有るぞ……XXVとか言う、その力は実に見事だが、少しばかり外にエネルギーを放出し過ぎているのではないか?
 髪型すら変えるほどの気の集中は見事だが、如何にもエネルギーを無駄に消費している部分が見て取れる。」


だが、だからこそ効果は絶大だった。
此れまでの間に、稼津斗の基礎能力が大幅に強化された事は間違いないのだから。

更に龍は、今の稼津斗の強化状態には、端的に言って『無駄がある』との指摘までしてのけたのだ――生涯を武に捧げた達人の目は実に鋭い物だ。



「無駄にエネルギーを?」

「うむ……外に放出しているエネルギー量が多過ぎる。
 その放出して居るエネルギーを、己の中に取り込み、そして力とする事が出来れば、お主は更なる高みに上れるだろう。」

「放出して居るエネルギーを中に……考えた事もなかったな。」


そして、その達人からのアドバイスは、稼津斗にとっても何かを掴むヒントになったらしい。


此処からの帰還の方法はまだ分からないが、其れでも稼津斗が次なるステップに至る為の糸口を掴んだのは、如何やら間違いないだろう。








――――――








一方外では、激しい戦いが続いていた。
だが、無数に現れる分裂体がウザったいとは言え、戦況はネギ達の方が有利であった――精鋭揃いのこのチームに負けなどないだろう。


『小賢しい!!……消えて無くなれ……スーパーノヴァ!!!』


その戦いに堪忍袋の緒が切れたのか、ザ・ワールドは宇宙魔法クラスの極大魔法を発動!!

数百に近い隕石が流れ落ち、地面が揺れて全てを喰らい尽くして滅ぼすと言う絶対の一撃!!其れが炸裂したと言うのはトンでもない事だ!
如何にアスナの力で対抗できると言っても、余りにも物量が違い過ぎる故に、全てに対処するのは幾ら何でも不可能だろう。



――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォッォン!!



「あぐ……此れは流石に効いた……」

「まさか、物理的に隕石を落としてくるとは思わなかったでござるよ……!」



そして、その結果として――ザ・ワールドと交戦していた全員が、無視できない特大級のダメージを負ったのだった…………















 To Be Continued…