自らを『神』と称するザ・ワールドと、世界最強と言える軍団の戦いの火蓋は斬って落とされた。ともなれば、この場が只で済む筈はないだろう。


「コイツはあの時以上だなオイ……姫さん、アンタは近衛の嬢ちゃん連れて此処から離脱しろ!!
 如何にアンタでも、此れに巻き込まれたら只じゃ済まねぇだろうし、近衛の嬢ちゃんは即死っつても過言じゃねぇからな……早く行け!!」


そんな中で、ナギはアリカに『この場は危険すぎるから木乃香と共に離脱しろ』と言う。
確かに、世界大戦レベルのバトルが行われるのが略確定している場所に居ると言うのは安全面で大きな問題もある故に、ナギはアリカと木乃香を此処から離
脱させようとしたのだろう。――現実に、アリカならば木乃香を連れて此処から脱出する事くらいは造作もない事なのだから。

だが、だからと言ってアリカと木乃香が其れを『はい』と受け入れるかと言ったら、其れは絶対に否!


「馬鹿者!妾と詠春の娘が離脱したとて、主は如何する心算じゃナギ!!
 まさかとは思うが、自分もまたあの戦いに参加するなどと言う事は言うまいな?――いや、主ならば言ったところで然して驚かないのが本音なのだが……」

「だとしても、幾らウチの魔法で治したいうても、ナギさんは全開やないんやで!?
 そんな状態で戦うなんて自殺行為に等しいやろ……せやったら、そんなの絶対に行かせられへん!!ネギ君の家族が、またバラバラになるんは嫌や!!」


アリカも木乃香も矢張り其れは渋った。
まぁ、アリカの場合はナギの性格を知っているので、強く言っても徒労だと言う事は分かっているのだが、木乃香はそうは行かない。

和製聖女を絵に描いた様な彼女は、相手が誰であろうとも、自分の目の前で命が散る事を何よりも嫌う――其れが全面に出て来ているのだ。


「ったく、あの堅物の娘とは思えねぇよアンタは。
 だけど大丈夫だ……曲がりなりにも、俺は『初代サウザントマスター』だぜ?少なくともアイツ等の足で纏いにゃならねぇよ!
 大体にして、テメェのガキが前線に出張ってるのに、親父が出張らないなんて、そんな馬鹿な話はねぇだろ?――だから俺は行くんだ、死ぬ心算もないし!」


だが、ナギの言う事は其れを超える。
生来の負けず嫌い故に、身体が治癒されている状態ならば、自分を良いように操ってくれた相手に一発かまさないと済まないと言う事なのだろう――此れに
は、木乃香も何も言えなかった……言える筈もなかった。


「まぁ、そう言う事だから行ってくるぜ姫さん?」

「阿呆が……絶対に死ぬなよナギ?」

「俺を誰だと思ってんんだ?……俺は、ナギ・スプリングフィールドだぜ!!」


そんな木乃香を尻目に、ナギはアリカと少しばかり言葉を交わすと、其のまま魔力を解放して最終決戦に飛び入り参加!!
少なくとも、ネギ達の戦力が強化された事だけは間違いないだろう。










ネギま Story Of XX 187時間目
『Full strength last decisive battle』











一方、その決戦地はと言うと……


「ぶっ飛べ……スクリーンディバイド!!!

「水の力に耐えられるかな?……貫け、アクアパニッシャー!!!


正に最終決戦に相応しい激しく弩派手なバトルが展開されていた。
飛び交う魔力に、炸裂する打撃音と爆発音!更には、今し方裕奈が放った一撃と、アキラの放った一撃が、合体して1つになり、凄まじい破壊力でザ・ワールド
を強襲する。――が、ザ・ワールドは其れを受けても、全く動じないで平気の平左だ。


「コイツ……身体が鋼鉄ででも出来てるのか?……数回ぶっ叩いただけで、腕が痺れちまったぜ……」

「物理攻撃に対する耐性が高すぎるよね此れ……」

そんなザ・ワールドに倒して、トレジャーハンター組も奮闘しているが、如何せん相手の表皮が異常なまでの剛性を持って居るために、傷すらつける事は非常
に困難であると言わざるを得ないだろう……だが、この程度で諦めるクレイグ達ではない。

「だが、目の前の困難に諦めてたらトレジャーハンターは出来ねぇからな?アイシャ、デカいの行くぜ!!」

「了解!序にそのデカブツには加減とか必要ないでしょうから……全力全壊で行くわよクレイグ!一番頑丈な剣を使いなさいな!!」

「合点だい!!」

只の剣が効かないなら、魔法剣をブチかますとばかりに、アイシャの放った特大の雷がクレイグの剣に宿り、黄金に煌めく『雷の剣』が完成する。
其れと同時に、クリスティンの剣にはリンが魔法アイテムで放った紫炎が纏わりつき、燃え盛る『炎の剣』と姿を変えていた。

そして、その剣での一閃!!
斬撃+魔法の一撃ならならば通常の斬撃よりも効果は高いだろう――現実に、この2人の一撃はザ・ワールドの指を2本斬り飛ばしたのだから。


『此れは此れは……矮小な雑魚と思っていたが中々……だが、無駄無駄無駄ぁ!!効かぬわぁ!!』


――ジュボォォォォ!!



だが、斬られた傍から指を再生し、ザ・ワールドはダメージ皆無!流石は不死身と言ったところだろう。


「伊達に、兄ちゃんを取り込んだわけじゃねぇって所か?……だが、俺等トレジャーハンターの最強の仲間を忘れんなよ?」

「やっちゃいなさいノドカ!!」

「手加減は要らないよ!する心算なんて無いだろうけどね。」

「……やって。」

「はい、任せて下さい!!」


だが、だからと言って攻撃を止める等と言う事は無い!クレイグ達は次なる一手をのどかに託したのだ。
のどかは麻帆良の生徒で稼津斗組の一員だが、同時にクレイグ達のトレジャーハンターグループの一員でもあるのだ、仲間の期待には応えてなんぼだろう。


「貴様を倒せば、稼津斗も戻ってくるのだろう?ならば手加減など必要ないな。」

「所詮は紛い物だろうお前は?……ここらで消えておくのが一番さ。」


更には、イクサと真名が魔力を集中し――


「行きます!宇宙魔法、メテオレイン!!

「遠き地にて、深き闇に沈め……デアボリックエミッション!!

「此れでも喰らっておけ……ハイパー・バースト!!


のどかの隕石落下魔法、イクサの広範囲殲滅魔法、真名の超射程砲撃魔法が炸裂!!
それらはザ・ワールドを覆い尽くし、そして貫き、誰が如何見ても『此れ普通に死んだだろ?』と思うような大爆発が、轟音を伴って炸裂!炸裂!!大炸裂!!

実際に、此れだけの攻撃を喰らったら、ナギやラカンでも消し炭は間違いないレベルだろう。(ラカンは其れでも即復活しそうだが。)




『クハハハハハハハハハハハハ!無駄無駄無駄と言っているだろうが!
 貴様等の攻撃が如何に苛烈であろうとも、氷薙稼津斗を取り込み『神』となった私にとっては塵芥に等しい児戯に過ぎんと言う事を理解するが良い!!
 加えて、私は不死なのだぞ?――貴様等が勝利する可能性など、私が氷薙稼津斗を取り込んだその時にゼロになっているのだ!!』



にも拘らず、爆炎の中から現れたザ・ワールドは全く持って無傷!!しかも、まるでダメージを受けたように見えないのだ。
稼津斗を取り込んで巨大化した際に、その巨体に見合った耐久力を手にし、それが不死の能力で更に強化されているという事なのだろうが、だとしても此れは
異常だとしか言いようがない……果たして、ザ・ワールドはドレだけのパワーアップを果たしたと言うのだろうか?


「あぁん?勝率0%だぁ?上等じゃねぇかコラ!
 こちとら高々4人程度で大戦期を生き抜いて来たんだぜぇ?高々勝率0%で退く気なんざねぇんだよ!!」

「0%の可能性も、足掻きゃ1%位にゃ出来るからな?……1%の可能性が見いだせれば其れで充分なんだよ、俺達はな!!」


其れでも、戦意を喪失する事などは絶対に無い。
ラカンとナギの拳が炸裂し、その勢いでザ・ワールドの巨体が僅かではあるが揺らいだのだ――此れは好機だろう。


「ヒーロー役は譲ってやるぜネギ、精々カッコ良く極めて見せな!!エヴァもな!!」


一撃をブチかましたナギは、己の息子とそのパートナーに激を飛ばし、追撃依頼!
其れを受けたネギとエヴァンジェリンとて、言われるまでも無く既に魔力が迸って準備は万端である!!!


「言われるまでも有りませんよ父さん。」

「マッタク誰にモノを言っているのか……行くぞネギ!!」

「うん、行こうエヴァ!N&E超殲滅コンビネーション、轟雷と氷河の二重唱(ライト&フリーザー)――

「吹き飛べ、下衆が!!!」


――ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!……ガキィィィン!!!


次の瞬間、ザ・ワールドに轟音と共に雷が矢継ぎ早に10発降り注ぎ、更に長さ30cmは有ろうかと言うつららの様な氷が一緒に降り注ぐ。
更に氷は着弾すると同時に周囲を凍結しはじめ、ザ・ワールドの自由を奪っていく――何とも恐ろしい合体魔法だとしか言いようがないだろう。

結果としてザ・ワールドには雷撃が全て炸裂し、更には身体が氷で覆われる結果となった。






――





――ピシ、パキ……バリィィィィン!!!


その氷に罅が入り、そして砕け散り、中から現れたザ・ワールドは全く持って無傷!
幾ら何でも、あり得ない程の頑丈さだと言わざるを得ない――稼津斗を取り込んだだけで、トンでもない存在になってしまったようだ。


『温い…弱い……この程度で私を倒そうなど、片腹痛いわぁ!!』


――轟!!!



更に恐るべきはその攻撃力だろう。

ザ・ワールドが腕を一振りした、其れだけの事で凄まじい衝撃波が発生し、ネギ達を吹き飛ばす。――只の衝撃波故にダメージは皆無であったが。


『此れが私と貴様等の差だゴミ共が!!
 貴様等では、神となった私を倒す事など出来ぬわ!!其れこそ天地がひっくり返ったってあり得ぬ事だ!!』


圧倒的な力を見せつけた上で、ザ・ワールドは高らかに宣言する。『己が負ける事は有り得ない』と。


だが、其れを聞いたネギ達は――特に稼津斗組は、あからさまな溜息をついていた。『アホかコイツ?何言ってんの?』と言わんばかりに。


「お主は阿呆でござるか?古来より、神になろうとした愚者には相応の末路が待って居るモノでござるよ?
 そんな事すら分からぬとは、相当に耄碌したか、或は本質を見極める目が腐ってしまったようでござるな、ザ・ワールド殿!!」

「この程度でウチ等が怯むかい!!」


あくまでも強気の姿勢は崩さない!!其れが稼津斗組なのだろう――否、其れが1−Aなのだ。

怯む理由は何処にもない――ならば倒しきるだけだ。


『あくまでも抵抗を貫くか……ならば絶望を与えてやろう――消え去るが良い!!!』


しかし、諦めない相手に対して業を煮やしていたのがザ・ワールドだった。
当初の計画では、稼津斗を取り込んで力を増した末に世界を手にする心算だったのだが、其れを邪魔する者が複数体――ならば殺してしまえ!!


そう言った感情が爆発し―――



『纏めて消えろ、貴様等に在るのは、選択だ!!滅びか従属かのどちらかのな!』


腕を一閃しただけで、周囲数百メートルを更地にしてしまう――其れだけの力の持ち主なのだろうザ・ワールドは。


『消えろ……そして恐怖におののけ!!!』


そして追撃とばかりに放たれた魔力衝撃波!!
その攻撃による閃光が眩く溢れていた……








――――――









一方の稼津斗は外ではドレだけの戦闘が行われて居るのかなど知らずに、虚無の空間にて――


「ふぅ……やっぱりウォッカは、ウィルキンソンの50℃に限るな。」


一杯やって居た。
アルコール度数50のウォッカを瓶で一気飲みして平気だと言うのは、まぁ何時もの事だが――此の虚無の空間で、稼津斗は何処から酒を調達したのか?

其れは相当な疑問だろう。


「実に美味い……だが、此れが真実か。」


そうつぶやいた瞬間、稼津斗が手にしていたウォッカの瓶は消えてなくなった――つまりは幻想だったという事だろう。


「取り込まれた人間の願いを再現し、其れを頼りにフィールドを作り出す……分かり易い方法だぜ。
 此れを繰り返せば、確かに取り込まれた人間の心は摩耗し『己の望む世界』に居る事を望むだろうな……だが、逆を返すと、どんなモンでも具現化するか…」


其れでも稼津斗は慌てず、


「なら、こう言う事だって可能な訳だよな?」


気を集中。そして……


「む……何用だ稼津斗よ?」

「久しぶりだな爺さん。」

目の前には、稼津斗の最大のライバルにして師である、『伝説の暗殺者』龍の姿が!
稼津斗はこの空間の特性を利用し、龍の事を此の虚無の空間に呼び出したのだった――そう、己が更なる高みに上り、そしてザ・ワールドを倒すために……















 To Be Continued…