麻帆良学園の図書館島の地下深くで、アリカ女王は永き封印から解放され、今再びこの世界に戻って来ていた。
その場に居合わせたアルの喜びようは言い表わす事など出来ないだろう。(アル本人が顔には出さないので、分かり辛いかもしれないが。)


「うぅむ……如何にも頭がグラグラするの……アルよ、妾が眠りについてから、一体どれだけの時が流れたのじゃ?」

「大体10年と言う所でしょうか?……いやはや、中々の時が過ぎた物ですねマッタク。
 ですが、貴女が解放されたと言う事は、始まりの魔法使いに捕らわれていたナギが解放されたと言う事でもあります……その上で、どうしますかアリカ女王?」


其れでも、再会の喜びよりも、現状を重視するのはアルらしいと言えるのかもしれない。
だが――


「そうじゃ!!妾が解放されたと言う事はナギも解放されたと言う事に他ならぬ!!
 だが、アレの支配をぶち壊すのは並大抵の事ではない筈………一体誰が其れを成したと言うのじゃ?」


アリカ女王はアルの僅かな言葉から、ナギの解放を感じ取っていた。
まぁ、アルもまたこの質問位は予想の範疇だったのだろう、顔に薄い笑みを浮かべて――


「誰かと問われたら、其れは貴女の息子ですよアリカ女王。
 貴女とナギの息子であるネギ・スプリングフィールド君が、ナギを始まりの魔法使いから解放したのですよ――頼れる仲間達と共にね。」


そう告げる。


だが、其れを聞いてもアリカ女王は、うつむきもせず、タダ結果だけを聞いていた――其れで充分だったのだろう。


「アル、今直ぐ妾をネギの下に連れて行け!!」

「貴女ならそう言うと思って居ましたよ……地下のゲートには、タカミチ君達が陣取っているので、安全の方は保証します――では行きますか!!!」


阿吽の呼吸と言う感じで、アリカ女王は魔法世界に10年の時を経て降り立つ事になったのだった。











ネギま Story Of XX 181時間目
『ナギの解放、そしてラウンド2へ』











一方此方は最終決戦地のビル屋上。
ネギとエヴァンジェリンの最大の一撃を喰らった始まりの魔法使いは無事では済まないだろう……今の一撃の余波でヘリポートは彼方此方罅割れを起こしてい
るのだから、直撃を喰らった者がどうなったかなど想像したくもない。少なくとも粉々にはなっていないだろうが……


「派手な一撃だな……まぁ、必殺感は出ているけどね。」

「確かに弩派手やなぁ♪」


観戦していた一行も、ネギ達の勝利を確信していた――其れだけの一発だったのだネギとエヴァンジェリンの放った『氷河雷龍拳』は。


「ネギ君が勝ったらえぇんやけど、ウチは何で連れてこられたんカっちゃん?」

「ぶっちゃけナギの治療だな……始まりの魔法使いに乗っ取られてたとは言え、受けたダメージは甚大だろうからな。」


そんな中で、発せられた木乃香の疑問にも、稼津斗は冷静に対処していく――此れで木乃香も納得!!自分の力を生かせる場所は有り難いのだろう!!


「任せといてカっちゃん!!ナギさんの事、見事に治療して見せるからな〜〜〜♪」


近衛木乃香と言う少女は、おっとりした性格ではあるが、肝も据わっており意志も強い。若しかしたら『戦場医療』の場には、最も向いている人物かも知れない。



ともあれ、漸く攻撃により巻き起こった粉塵が晴れ、ネギ達の様子が明らかになる。



「「「僕(私)の……勝ちだ!!!」」」



其処には、天に向かって拳を振り上げたネギ、妖艶な笑みを浮かべて腕を組んでいるエヴァンジェリン、双眸を閉じて剣を地面に突き刺しているアスナの姿が!
三者三様の勝利ポーズだが、此れが実に決まっていてカッコいい。正にこれは勝者の姿だった。


更に………


「いってぇ……ったく、ちっとは手加減しろよネギ、エヴァ、姫子ちゃんよぉ!
 幾ら俺でも、アレはちっとキツイぜぇ?……つーか、俺じゃなかったら死んでるっつ〜の!!」


始まりの魔法使いの支配から解放されたと思しきナギの姿が!
だが、その姿は思ったよりもダメージを受けた様には見えない……いや、自分でキツイと言ってるあたり、ダメージはあったのだろうが、大凡そうは見えない辺り
が、ナギのナギたる所なのかもしれない。尤も、始まりの魔法使いを追い出すには、充分過ぎるダメージあったようではあるが。

ともあれ、此れでナギは解放された訳で、ネギとナギの感動の親子対面――


「フン!!」

「せい!!」



――バキィィィィィィ!!


「のわぁぁぁぁ!?」


になるかと思われた瞬間に、ネギとエヴァンジェリンの拳がナギに炸裂!!しかも、手加減とか無しの、可成り本気の拳がだ。
此れには、流石のナギも打っ飛ぶ!いや、辛うじて持ち堪えたが、其れでもダメージは大きいだろう。


「の……行き成り何しやがる!!再会した父親&旧友を行き成りブッ飛ばすとは、如何言う了見だオラァ!!」

「如何言う了見?……育児放棄してた分際で何を言いますか父さん!!僕が、ドレだけ寂しい思いをしてたと思ってるんですか貴方はぁぁぁぁ!!!」

「デカい魔力にモノを言わせて、適当な封印を施しよってからに……おかげで15年も中学生をやる羽目になったではないかこのボケ!!
 そもそも、果たせもしない約束などするなアホ!!今の一発は、貴様の罪に対する罰だと思って、甘んじて受け入れろアホンダラ!!」


当然の如く抗議するが、ネギとエヴァンジェリンのカウンターにナギは何も言えないのだった……まぁ、仕方ないだろう、事実だし。


「其れに付いては……まぁ、悪かったよ。理由はあっても、言い分けにしかならねぇからな。
 だが、お前等のおかげで、漸く自由になれた、ありがとよ―――で、改めて、デカくなったなネギ……立派になったもんだぜ…」


だが、意外にもナギはそれ以上は何も言わず、己の非を認めて、改めてネギと向き合った。
其処には、普段の軽い雰囲気など微塵もなく、あるのは『子の成長を喜ぶ父の姿』だった――何だかんだで、ナギもまたネギの事は大切には思って居たのだ。


「フン、立派になるに決まっているだろう?コイツの師が誰だと思って居る、私だぞ?それも、封印が解かれて力を取り戻した私だ。
 ネギの事は徹底的に鍛えたからな……最早コイツは、全盛期のお前をとうに超えているだろうよ。」

「エヴァ、マジかそりゃ!?……うっそ〜ん、サウザントマスターの面目丸つぶれじゃねえか其れ?」

「序に言うなら、ネギはお前の10倍以上の魔法をアンチョコなしの無詠唱で使えるからな?
 それから、貴様は私のモノにはならなかったが、ネギは私のモノにさせて貰ったからな!!絶対に返さんからな!!ネギはもう、私のモノだ、誰にも渡さん!」

「如何してそうなったのか、そっちが知りてぇ!!色々と理解が追い付かねぇよ此れ!!」


しかし、其れもまたエヴァンジェリンの爆弾発言で爆発四散!!
シリアスになりかけた雰囲気は何処へやら、再びドタバタな雰囲気が満載である――まぁ、こっちの方がナギのいる空気としてはらしいのかもしれないが。



「ナギさ〜〜ん、治療するえ〜〜〜♪」


更に其処に、木乃香がナギを治療せんと加わり、場は更に騒然となるが、きっと此れで良いのだろう。









そんな光景を見ながら、しかし稼津斗の表情は引き締まって居た。

「もう少しって所だな……着替えるか。」

「稼津斗さん?」


何かを呟き、稼津斗は一瞬で着替え、何時もの黒一色の出で立ちから、最早戦闘時のお馴染みとなっている『山吹色の胴着』に換装!!


「大体予想はしてたけど、やっぱり其れなんだね稼津君……しかも、妙に似合ってるし。」

「因みに今回は『復活のF』仕様にしてみた。」

こっちもこっちで中々にアレだが、全員が稼津斗の纏う闘気から、『此れで終わりではない』と言う事を感じ取っていた。








――――――








「此れは……目に見えて召喚魔が減って来た……?」

その頃、召喚魔を相手にドンパチやってた連合艦隊の最高司令官であるクルトは、今までよりも極端に召喚魔が減ってきている事を感じ取っていた。
其れこそ、此れまでの軍勢が万の軍勢だとしたら、今の軍勢は千程度の軍勢なのだ。此れならば、持てる火力の全てを集中すれば押し切る事も出来るだろう。


「召喚魔の減少と言う事は……つまりは、やったと言う事ですかネギ君!!」


その理由は、始まりの魔法使いが倒されたからだと推測し、クルトの顔にも希望が宿る。
始まりの魔法使いが倒されてしまえば、その配下である召喚魔は、もう無限に現れる事は出来ない――つまりは、此れを凌げば勝利は絶対なのである。


だが、中々問屋はそうは下ろさないらしい。


『よぉ、聞こえてるか提督?1−Aの長谷川千雨だ。
 今召喚魔の数が減っているのは、ネギ先生が『一時的』に始まりの魔法使いをブッ飛ばしたからだ――だが、此れで終わりじゃねぇ!!!
 ネギ先生が倒したのは、言うなれば第一形態に過ぎねぇ……奴等はまたすぐに復活するぞ!!』



グレートパル様号・リペアから千雨の通信が入り、此れだ終わりではないと告げる。
其れに、クルトも改めて表情を引き締め、通信に対応する。


「此れで終わりではないとは、如何言う事でしょうか?」

『言葉の通りだぜ提督。確かにネギ先生達はやってくれたが、始まりの魔法使いはまだ死んでねぇ……寧ろ、此処からが本番だからろうからな。
 一時的な、戦力低下はあるだろうが、野郎が完全に打っ飛ぶまでは油断禁物だぜ提督!!――完全勝利の為に、もう一頑張りと行こうぜ!!!』


その通信からもたらされたのは、まだ始まりの魔法使いは滅していないと言う事だったが、そんなモノは、大した脅威にはなり得ない。
なぜならば、この艦隊はあらゆる事態に対応できるように編成されているのだから――



「成程……ならば、もう一頑張りですね!!」


されどクルトは冷静に対処し、この状況を分析していた。


そして数分後には、対召喚魔用の戦闘陣形が出来上がっていた――正に隙なしの陣形が、今此処に完成したのであった。









――――――








場所は再び、最終決戦場。
ナギの復活に伴って、ネギとエヴァンジェリンの彼是が勃発し、更には何処からともなくアリカ女王が現れて、場は正に『カオス』の雰囲気を醸し出していたが、ア
リカの登場は有り難かっただろう――特にネギは、ずっと行方知れずだった母と再会できたのだから、その喜びは言うまでもないだろう。



だが、此れで大団円と言う訳には行かないのが此処だ。



「ソロソロだな……」


そして言うが早いか、稼津斗は大団円の間に向かい、ネギもまた大団円の間から出て来た――考える事は一緒なのだろう。


「第一ラウンドご苦労!此処からは俺が引き受けるぜ。」

「うん、頼むよカヅト!!!」


ナギは解放したが、其れで終わりではない!!!
ネギからバトンを受け継いだ稼津斗は、闘気を完全開放!最終決戦のバトルはきっと、凄まじいのもになるのは間違いないだろう。



「さて、第2ラウンドを始めるか!!!」



XXにこそ変身していないが、稼津斗の闘気はマックス120%状態!!――真のラスボスとの戦いは、秒読み状態だった……












 To Be Continued…