エントランスでの戦いの熱は、上昇していくだけだと言うのは、最早言うまでもないだろう。

「エヴァ、僕達加勢しなくてもいいの?」

「良いと言うか、必要あるまいよ?
 私達が態々加勢せずとも、奴等が負ける事など万に一つも有り得んだろう?ならば、ラスボス戦に向けて、今は身体を休めておくのが上策だネギ。」

「なら、そうしておこうかな?」

とは言え、熱が帯びて来てるからと言ってこの面子の敗北だけはあり得ない。絶対に有り得ない。
逸早く、敵を撃破したネギとエヴァンジェリンも特に加勢する訳でもなく、夫々の戦いを観戦しながらバトル後のクールダウン&インターバル状態だ。


普通に考えれば、如何に自分のターゲットを撃破したからと言って、こんなにゆる〜〜〜い姿を曝すのは自殺行為であると言えよう。
だがしかし、今この場に於いてはそうではない……他の敵は、自分達を攻撃する余裕などないのだ――眼前の相手と戦う事で、文字通り手一杯だ。


「しかし、負ける事は無いとは言え稼津斗の奴は何を遊んでいるのだ?
 その気になれば、XXに変身した状態での覇王翔哮拳一発でカタが付くと思うのだが、それをしない所を見ると、より派手な事を考えているのか?
 その為に敢えて遊んでいる?……ククク………だとしたら、ドレだけ派手な幕引きを考えているのか実に楽しみだぞ!!」


其れでも、流石は600年以上生きていたと言うべきか、エヴァンジェリンは慧眼だった。
XXに変身してないから当然だが、稼津斗が未変身の状態であっても未だ8割程度の力しか解放して居ない事を、物の見事に看破していたようだ。

だが、だからと言ってそれを責める気は毛頭ない。
何故なら稼津斗がどんな幕引きを用意しているのかに興味が湧いたから。


――だが、稼津斗の考えは、自分の上を行っていたと、数分の後に知る事になるとは、この時エヴァンジェリンは考えてすらいなかった。











ネギま Story Of XX 173時間目
『無双して良いか?寧ろ無双しろ!』











その戦いだが……


「てりゃぁぁぁぁ!!外は堅いウロコで覆われた居たみたいアルが、流石に口の中までは装甲はなかったみたいアルな?」

「外は堅くても中は柔らかいってんなら、やりようもある感じだね!!」

「大口を開けた瞬間に……撃つ!」

古菲&クリス&リンのチームは、異形の大蛇『タワー』を相手に、戦いの主導権を握りつつあった。
戦闘が始まった当初は、物理攻撃もマジックアイテムでの魔法攻撃も跳ね返してしまうウロコに相当苦戦していた。
だが、噛みつこうとして来たタワーにの口に、古菲が放った棍での一撃が口に突き刺さった事で状況は一変した。

アーティファクトでの突きとは言え、此れまでの攻撃等とは比べ物にならない程にダメージを与えたらしく、タワーが悶絶したのだ。
余りにも分かり易いと言えば其れまでだが、その反応は古菲達にとっては金以上の価値があった――口内への攻撃は効くと言う証だったのだから。

其れを皮切りに、このチームは徹底してタワーの口に攻撃を集中!!
無論タワーとて、簡単に弱点を突かれてなるモノかと歯を食いしばって口内への攻撃を阻止せんとするが、棍と剣と格闘の同時攻撃は防御不可だ。

いとも簡単に、食いしばった歯を粉砕し、3つの攻撃はタワーの喉奥にクリティカルヒット!!
此れには異形の大蛇たるタワーも堪った物ではない!絶命こそしなかったが、口内から血反吐を撒き散らしてダウン!!戦闘不能は確実だろう。
エヴェ&ネギ組に続き、古菲&クリス&リンのチームもまた事実上の勝利となったらしい。





真名と超のコンビは、ある意味で最高の組み合わせであったかも知れない。
カシオペヤでの短距離ターンジャンプを繰り返して、死角からの攻撃を行う超に、鎧の関節部を的確に撃ち抜く真名は、正に阿吽の呼吸と言える。

「ホイッと……お前の動きは、文字通り『止まって見える』ナ?
 仮にも『戦車』の名を冠するならば、その名に恥じぬように私に決定的な一発を与えて欲しいモノだヨ……まぁ、其れは無理な相談だろうがネ!」

「脇がガラ空きだ……何ともちょろい仕事だな。」

何よりも厄介なのは、超に集中すれば真名に撃ち抜かれ、逆に真名を何とかしようとすれば超からの重い一撃が振りおろされる。
『実際の戦場』を経験している真名と超にとって、只身体能力が高いだけのミュータントなど恐れるに足りる存在ではない……その結果が此れだろう。


「ガァァァアァ!!!!!」

「五月蠅いネ!」

「そろそろ眠りな。」

チャリオットがハルバートを振り抜いたその隙に、真名の精密射撃と超の鋭い蹴りが炸裂!!矢張り、この2人のコンビは侮れないだろう。





「ダ〜〜ッハッハ!薄らデカい身体をしてるからって、このオレ様に勝てると思ったら大間違いだぜぇぇぇぇぇぇ?
 まぁ、デカい身体に見合ったタフさもあるようだが、コイツを喰らってもタフガイで居られるかぁ?喰らえ、エターナルネギフィーバー!!


――トバガァァァァァァァァァァァン!!


ラカン&アスナ組は何も言うなかれ。
ある意味ではチートバグ全開としか言いようのない組み合わせなのだ、この2人は。

ジャスティスの超巨体から繰り出される拳は、確かに普通の人間が喰らえば即死だろうが『剣が刺さらないオッサン』にはマッタク持って効果が無い。
それどころか、カウンターで全身からビームを出してくるような奴なのである、常識を銀河の果てに蹴り飛ばしたジャック・ラカンと言う男は。

更に……


「巨体ゆえに、攻撃後は隙だらけね。」

アスナが最小限の動きで攻撃を回避し、そして的確に天魔の剣で斬りつけているのだ。
しかも、只の斬撃でなく、自身を咸卦法で強化し、天魔の剣には魔力を送り込んで刀身を巨大化させて放つ破壊力抜群の斬撃でだ。
魔法世界の英雄と、姫巫女の前には正義の名を冠した巨大なミュータントもまた、塵芥に等しい存在であるようだ。






ハイエロファントと交戦している、千草、アイシャ、クレイグは……

「なぁ、クレイグはん?施設の外は海とは言え、コンクリートの床の一体何処からアイツはピラニアを呼び出しとるんやろうか?」

「……魔法的な何かって事で納得しねぇか?」

「まぁ、そう考えるのが一番でしょうけど……取り敢えず、ご退場願うわよ人喰いピラニアには!!」

「そうおすなぁ?ほな頼みますえ〜〜?式神符裏百八拾弐式『牛頭金剛』!!」

「んじゃまぁ、先ずは三枚下ろしにすっか!」

ハイエロファントが投げつけて来た、人喰いピラニアを調理していた。
投げつけられたピラニアを、クレイグが剣で三枚おろしにし、アイシャの炎魔法と、千草の呼び出した式神の火炎放射で見事に焼き魚の出来上がり。
其れこそ『沢山上手に、焼けました〜〜〜〜!』とか聞こえて来そうな位に見事な焼き上がりである。

そして、火炎放射を放った式神『牛頭金剛』が手にした棍棒で、ハイエロファントを叩きのめし、地に伏せさせる。
如何にミュータントと言えど、牛頭金剛は『地獄の番人』とも称される、牛の頭を持った剛力の巨大な『鬼』だ。力で叶う筈が無いのである。


「半魚人は抑えましたえ?
 ほな、クレイグはん、アイシャはん……トドメの一発頼みますわ〜〜〜♪」

この好機を逃す手はない。
年若い3人だが、千草は関西呪術教会のナンバー2として、クレイグとアイシャはトレジャーハンターとして幾多の戦いを経験しているが故の勘がある。
此処が決め所と判断し、千草は牛頭金剛に棍棒での圧力を更に強くするように命じ、クレイグとアイシャにフィニッシュを任せる。

で、フィニッシャーに指名されたこの2人が迷う筈もない。

「大役任されちゃったわね……『アレ』やるわよ、クレイグ!!」

「オーライ!タイミング間違えんなよ、アイシャ?」

「誰が間違えるかっての!!」

「おぉっと……コイツは来たぜ!!……喰らいな、半魚人のバケモンが!!!」


――バリィィィ!!


アイシャが、雷の魔法をクレイグの剣に落とし、その『稲妻の剣』でクレイグがハイエロファントを一閃!
半魚人と言う事はつまり、基本が『水属性』に属する訳であり、雷属性を付加した剣での一撃はまさに『効果は抜群』と言ったところだ。
陰陽師とトレジャーハンターのコンビは、意外なほどにかみ合っていた。







「ツインブレードタイプのチェーンソーってのはスゲーと思うけど、本来は木を切るモンでしょそれ?
 確かに頑丈かも知れないけど、私のキアー・ストレイトの大型ブレードは鋼鉄すら豆腐みたいに切れんのよ?そんなモンは一刀両断だっぜ!!」


――バキィィィン!!


エンプレスの相手をしている裕奈とアキラだが、先ずは裕奈がエンプレスの武器破壊に成功していた。
巨体と腕力にモノを言わせての巨大なツインブレードタイプのチェーンソーを振り回してくるのは危険だったが、見切れない攻撃でもなかったのだろう。

流石に素手ではと言う事で、アキラがサポートに回り裕奈がメインでバトルを行い、今し方チェーンソーの粉砕と相成ったのだ。


「此れで終わりにする。」

「!?」


更に、チェーンソーを壊された事に驚くエンプレスの身体を、アキラが『大気中の水蒸気を集めて作った水の鎖』で拘束し自由を奪う。
別にアイコンタクトやら何やらをしたわけではない。付き合いの長い、裕奈とアキラゆえに言葉にせずとも通じる阿吽の呼吸と言う奴なのだ。


「今だ、裕奈!」

「良いねぇアキラ?私が男だったら惚れちゃうぜ〜〜?
 ともあれ、水のエキスパートのアキラが作った『水の鎖』を力で破れるのは、稼津君以外に存在しねーからね?覚悟しやがれ、似非女帝が!!」


そして、その直後、裕奈のブレードでの一閃がエンプレスに炸裂したのだった。







「あぁ、もう鬱陶しいわ!!この腐れ蜘蛛がアァぁぁ!!」


――メキィィ!!


ハーミットの堅い外骨格に、予想外の苦戦を強いられていた楓と小太郎だが、小太郎がヤケクソ気味に放ったアックスパンチが意外な効果を齎した。
マッタクの無意識ではあるが、小太郎はこのアックスパンチを『剛爆拳』の要領で放って居たのだ。

片腕の拳打であっても抜群の破壊力を破壊力を有する剛爆拳を、両手を使うアックスパンチで放ったらどうなるだろうか?



答えは簡単――其れは圧倒的な破壊力を有する、最強の『破壊拳』となるだろう。
事実、小太郎のアックスパンチは、鋼鉄の如き堅牢さを誇っていた、ハーミットの外骨格の一部を粉砕したのだから。

そして、装甲の一部損壊は大きな好機!
其れはつまり、確実な弱点が出来た証明であり、其処に攻撃を集中すれば大ダメージが確定なのだ。


「その装甲破損、利用させて貰うでござる!破ッ!!」

その粉砕された部分に、楓がアーティファクト『翡翠』を打ち込み、そして適当に差し込んだ後に爆発!!此れはハーミットからしたら堪らないだろう。
装甲で覆っていた、最も弱い部分を直接攻撃されたのだから。

更に今の一撃で、装甲が更に剥がれたのだから笑えない。


「如何やら終いみたいやな蜘蛛野郎?雑魚は雑魚らしく、大人しく俺等に倒されとけやダボが!ほな、トドメいくでぇ?
 オォォォォ〜〜〜………オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」


其処に、小太郎が音速拳を使っての超絶の猛ラッシュ!!
秒間30発は下らないだろう、超光速突きのラッシュ、ラッシュ、ラッシュ!!詰まる所、まごう事なくタコ殴り!!

兎に角殴る!息つく暇さえ与えず殴る!!瞬きを許さない程に殴る!殴る!!殴る!!!殴り倒す!!!男はパンチを、地で行っている感じだ。


取り敢えず、こっちも問題はないだろう。







そして稼津斗組最強名をほしいままにするイクサは、『力』の名を冠するストレングス相手に、まるで余裕その物だった。

「だから、その程度は見切れると言っているだろう?」

巨大なチェーンソーを振り回しながら襲い来るストレングスであっても、元々チート級の力を有しているイクサにとっては取るに足らない相手だった。


チェーンソーでの斬りつけも、簡単に回避してカウンターを叩き込み、更に追尾性のサーチャーを飛ばしてストレングスの位置を常に把握してたのだ。
故に、イクサにとってストレングスを葬ることは、児戯に等しい事なのである。


「稼津斗が、何やら考えている様なのでもう暫く遊んでやるが、私と遊ぶなら相応の覚悟をしておいてくれよ?
 アーティファクトと言うのもまた、進化するようだからね。」

ストレングスを蹴り飛ばしたイクサはそう告げて、アーティファクトを展開する――が、其の形状は異なって居た。
以前のデバイスは、右腕用の籠手と、左手用のペンデュラム付きの指輪だったが、新たな姿は四肢に展開される籠手と具足のセット。

完全に近接戦に特化した物だが、アンカーワイヤーをも打ち出す機構を備えた腕部武装は脅威極まりないだろう。

それを本能的に感じたのか――


「ウガァァァァアッァァァァァアッァァァァァァァァァ!!」


言うまでもなくストレングスだ。
獣としての本能が刺激され、手当たり次第に破壊活動を始めるが――其れも長くは続かない。

1分ほどたったところでイクサが背後に回り込み、ストレングスの腰をホールドして、見事なジャーマン・スープレックスを一閃!!
恐らく、長い歴史を紐解いても、ミュータントにジャーマンスープレックスを喰らわせたのは、間違いなくイクサが最初だろう。間違えようもない。

ストレングスの頭が地面にめり込んでいる辺り、ドンだけの破壊力だと言いたくなるが其れは言うだけ無駄だろう。


ともあれ、マジシャンが呼び出したミュータントは、ほぼ壊滅状態に陥ってた――








――――――









「こんなモノなのかマジシャン?
 前に俺と戦った時はこんなモンじゃなかったぜ?…時が、俺とお前に決定的な差を生み出したんだろうが、それを考えても『ガッカリ』だマジシャン。
 今の貴様如きは、準備運動にすらならないぜ?」

「ほざくか!!」


そして稼津斗vsマジシャン。
此れは言うまでもなく、稼津斗が天下無双を展開していた。

残像が残る位の超速で動くマジシャンだが、この程度のスピードは稼津斗には止まって見えるのだ。

「分かり易いな……」

「べぎゃぁぁぁ!!?」

攻撃してきたマジシャンに対し、裏拳一閃で撃退!

余りにも圧倒的とはこの事だ。


そして仕込みは此れだけではない。


「さてと、そろそろフィニッシュって所だが、最後は派手な演出で送ってやるから覚悟を決めておけよマジシャン君?」

「派手な演出だと?」

「良く考えてみろよマジシャン、この施設は海の上に建っている……つまり施設の外には何があるんだ?」

「海……莫大な水か!!」

「正解!……極めし水の力を舐めるなよ?――アキラ!!」

「はい!!」

既に仕込みが出来ていたらしく、稼津斗がアキラを呼ぶと、アキラも速攻で呪文を唱える……速過ぎて知覚は出来なかったが。

だが、其れと同時に外壁の外から聞こえて来る不気味な音が、マジシャン達に未知の恐怖を思い起こさせる。
一体施設外の海で何が起こっているのか?――その答えは、然る後に明らかになった。


「鎌首を上げよ……蒼龍!!

アキラが叫ぶと同時に、エントランスの外から、エントランスの中を見下ろすように10体の『水の龍』が現れたのだ。
此れはつまり、アキラが生み出した蒼龍と見て間違いないだろう――莫大な水を利用した攻撃法は、習わずとも感覚で理解していたようだ。


「異形のミュータントを喰い破れ!」

『『『『『『『『『『ギョワァァァァァァァァァァッァァァァァァ!!!!』』』』』』』』』』


そして、アキラの命を受けた10体の蒼龍は、エントランスのミュータントに突撃!!

直後、眩いばかりの閃光が、エントランスを覆い尽くしたのだった。








――――――








一方の裏ミッション組は、始まりの魔法使いの手記を手に入れた後、一端分岐点に戻って、もう一方の道を進んで、大きな扉の前に到着していた。
一本道だったが故に、この扉を開けねば先に進めないのだが――扉を開けたその瞬間、一行は猛烈な吐き気を覚えた。


仕方ないだろう――扉を開けた瞬間に『強烈な腐敗臭』が襲って来たのだから。


「ゲホ……此れは一体?」

これ程の腐敗臭がするとは、一体何が原因かと思い、のどかは雷魔法を応用した閃光を放ち、部屋全体を照らすが………


「げ……な、なんじゃこりゃぁぁぁ!?」

「嘘でしょ此れ………」

現れた其れは、正に地獄絵図その物だった。
数えるのも面倒になるほどの『人の亡骸』が天井から吊るされて部屋を覆っていたのだ――其れこそ白骨化した物から腐乱した物まで。

其れだけでも、吐き気を催すが、更に最悪だったのは其の亡骸を貪り食う存在が居た事だろう。

「ぎぎ……ガフガフガフ……ゲフゥ。」


其れは、巨大な猿――否、身体の特徴的に『ナマケモノ』と言った方が的確かも知れない。
兎に角、人の亡骸を貪ると言う異常にして異様なミュータント『ザ・フール』が、裏ミッション組の眼前に、その姿を現していた――













 To Be Continued…