この世に一切の敵が居ないのが無敵であり、この世の誰よりも強いのが最強であるが故に、無敵と最強の甲乙を付ける事は先ず不可能であろう。
だがしかし、敢えて問おう――ならば『無敵にして最強の存在』は如何だろうか?其れは間違いなく絶対的な存在であるのではないのだろうか?

尤も、此れだけを聞けば、極論を叫んでいるだけに過ぎないだろうが――多くの人は、この光景を見たら『無敵にして最強』を認めるしかない筈だ。


「道を開けろ雑魚共ぉ!貴様等如きと悠長に遊んでやる時間などないわぁ!!」

「オラオラオラァ!!最強集団のお通りだ!!大人しく道を開けな!!
 まぁ、開けねぇってんなら其れは其れで構わねぇが……そんときゃテメェ等を轢き殺して先に進むだけだ!!そうなりたくなかったら道を開けな!!」

「貴様等如きで足止めが出来ると思われていたとは、随分と舐められたモノだな?
 だが、その慢心が敗北に繋がると知るんだな――貴様等如き、俺達の相手じゃない!……消えろ、覇王翔哮拳!!


突入組の暫定トップ3である、稼津斗、エヴァンジェリン、ラカンの3人が先陣を切る形で快進撃するその様は、正に『無敵にして最強』の進撃そのもの。
エヴァンジェリンが魔法を放ち、ラカンが拳を振い、そして稼津斗が気功波を撃つ度に召喚魔は尋常でない数が葬られているのだ。


「オォォォォ……雷華崩拳!!


無論ネギ達も迎撃しているが、その撃墜数は月と鼈と言っても過言ではない程に差があるのだ。
とは言え、ネギと小太郎も、既にSランクの実力を有しているのだから、この程度の事には対処が出来る事だろう。


「如何やらここが第2ステージのようだな?」

そして散々ぱら走った末に、稼津斗が大きな扉を見つけ、全員が其れを見やる――高さ100mでは効かない高さだろう。
だが、そんな事は関係なしに……

「開けゴマ。」


――メキィイィィィィィィ!!


稼津斗が前蹴りを扉にブチかまして完全粉砕!!
何とも言えない力技ではあるが、寧ろこっちの方が稼津斗の性には合っているのかもしれない――非常にはた迷惑である事は否定できないが。
ともあれ、敵の本拠地の第2ステージ……此処からが本番なのは、恐らく間違いない事だろう……











ネギま Story Of XX 167時間目
『I'll dance by the last phase.』











そうして、ドアを蹴破って進んだ先あったのは、何とも言えない『簡素な広間』としか言いようのないモノであったのだが、その中央には何かが居た。
一見すると、其れは頭部を失った鎧のようにも見えるが、腕に付いている筋肉が鎧だけの存在である可能性を消去する。

と言う事はつまり、此処を守る門番の様な役割を持っているんだろうが、一切合切動かないのはオカシイだろうと思った矢先に其れは来た。


「You've come. Regretfully, fools to resist the Wizard of the First, here is your grave!
 (来たか、始まりの魔法使い様に刃向う愚か者め。残念だが、此処が貴様の墓場だ!)」

現れたのは蝙蝠の様な体躯をした異形のモンスター。
赤ん坊の様な身体に蝙蝠の翼を携え、頭部は人の頭蓋骨そのモノと言う、不気味極まりないモンスターが目の前に現れたのだ。


普通ならば、此れだけの異形と相対しただけで萎縮してしまうだろう。
だが、逆に言うならばこの程度の異形のモンスター如き、突入組にとっては別分驚くほどの事でもないと言うのが正直な所だろう。

元より、今この場は戦場であるが故、異形の相手に一々驚いていては戦う事など出来ないのだから。


「Don't say importantly, a small fry……if you want to preach, do it at the Hell.」(偉そうに吼えるな雑魚が……説教なら地獄でやってろ。)」

「You die here!Go, my menservants!!(貴様等は此処で死ぬのだ!行け、我が僕達よ!!)」

「Will you try to stop us though you are so weak?Laughable!!(この程度で俺達を止める気か?片腹痛いぜ!!)」


相手が英語だったからか、稼津斗も英語で返し手近に現れたモンスターに踵落としを炸裂させて一撃抹殺!
其れを皮切りに『道を開けろ雑魚共』と言わんばかりに蹴りで、拳で、手刀で、気功弾と気功波でモンスター共を現れた先から撃滅し滅殺していく。

勿論、ネギ達だって其れに後れを取らず、ネギの雷が、エヴァンジェリンの氷が、そして共に戦う仲間達の攻撃が無数に現れる異形共を鎧袖一触!


「It's untrue!They all are in the high rank of wizards……but why are they defeated so easily?It's, it's impossible!!
 (馬鹿な!コイツ等は全てが高位魔法使いレベルだと言うのに……其れがこんなにも簡単に……あ、有り得ん!!)」

「Unfortunately for you, we're eccentric in various ways……if you curse, curse for being shallow-minded..
 (生憎、俺達は色々と常識が通用しない存在でな……呪うなら、己の考えの甘さを呪うんだな。)」


現れた小悪魔的な者も、この結果には驚きを隠せないようだ。
稼津斗とネギとエヴァンジェリンは別格としても、それ以外の仲間も余りに強過ぎる。

其れでも、稼津斗組とネギ組の面子と、ネギの好敵手の小太郎と、チートバグの塊であるラカンは未だ許容範囲で片付ける事は出来るだろう。


「おらぁぁ……トレジャーハンターを舐めんじゃねぇ!!」

「トレジャーハンター的には、此れ位の刺激がないと拍子抜けなのよ〜?」

「いやぁ、流石に此れは太古の遺跡に潜り込んでも体験できない事だと思うけどね〜?」

「そう言いながら、割と楽しんでる……」

だがしかし、高々トレジャーハンターに過ぎないクレイグ、アイシャ、リン、クリスティンが予想外に……否、予想以上の強さを発揮してくれているのだ。
アイシャとリンがサポートに回り、クレイグとクリスティンが的確にモンスター達を葬り去って行く。

アスナの加護だけではない、『仲間と共に戦う』と言う思いが彼等の力を底上げしているのだ。


「Why frail people in the World of the Magic have such power!?It's impossible!Such thing is impossible by any means!!
 (矮小な魔法世界人が何故此処まで!……有り得ん!こんな事、絶対に有り得ん!!)」

「Du verachtest Leute in der Welt von der Magie allzu. Lern, sie sind nicht schwache Wesen, sondern unbesiegbare Helden.
 (貴様は魔法世界人を舐め過ぎだ。彼等は脆弱な存在ではなく、何よりも強い勇者達であったと知れ。)」


狼狽する敵に対してイクサが一気に間合いを詰め、その右掌を頭にあてがう。
地上では、稼津斗とネギが門番役であったと思われる巨大な存在を『天地覇王拳』と『雷華崩拳』で完全粉砕したところだ。

イクサがドイツ語(と言うかベルカ語?)なのは、矢張り相手が英語だから日本語は通じないと思ったからだろう。
だからと言ってドイツ語が通じるかはまた別問題である事はこの際無視するが……


「Wenn du denkst, dein Feind ist schwach, und siehst auf ihn herab, scheiterst du schwer.
 Dort ist die einzige Ursache von deiner Niderlage……sie ist eine einfache Antwort.
 Du hast Leute in der Welt von der Magie unterschaetzt…Verschwind spurlos!Diabolic Emission!
 (己の先入観で相手を見くびると痛い目に遭うと言う事だ。
  お前の敗北の理由は只一つ……シンプルな答えだ。お前は魔法世界人を見くびった…消えろ!デアボリックエミッション!)」


其れは其れとして、放たれた一撃は一瞬で敵を粉砕!
其れこそ、細胞の一欠片すら残らない位に完全消滅だ――稼津斗組最強のイクサの一撃は、矢張りトンでもないモノであるようだ。


「お見事………流石はイクサ、公式チートバグなだけはあるな。」

「お前が其れを言うか究極チートバグ。
 全ステータスがバグって正常な数値を表示しないような奴にチート呼ばわりをされたくはないな。」

「言えてる。」


それどころか、軽口を交わす余裕まであると来た。
何がドレだけ来てもこの余裕を保ち、フロアボス的な存在が相手であっても速攻滅殺をかます突入組に敵などない……有る筈がないのだ絶対に!!


「だけど、ラスボスまでにはまだ遠い……けど僕達なら負けない!
 行きましょう皆さん!!今程度の相手は、マダマダステージ1に過ぎません――寧ろ此処からが本番である筈です、気を引き締めて行きましょう!」


其れを知って居る訳ではないだろうが、ネギもこの先にマダマダ厄介事が待っていると感じながらもだからと言って止まる心算は毛頭ない。
寧ろドンドン先に進んで、面倒事が起きたら其処で対処と言う事なのだろう――何ともシンプルで分かり易い戦術であろう。


だが、現状はこれ以上の戦術は有り得ない。


「言われるまでもない……消えろ雑魚共――滅殺!!

そのネギの一言に応えるように、新たに現れた無数のモンスターを稼津斗が『瞬獄殺』で瞬殺!
このままの勢いで突き進めば、ラスボスである『始まりの魔法使い』とのバトルは意外と早く始まりそうである――








――――――








「おし、敵さんが設置した機械のある場所は大体特定できた――今から突入するぜ。」

「おぉ、待ってました〜〜〜〜!!!」


一方の待機組だが、此方は此方で千雨と和美と言う『情報収集限定チートバグコンビ』の尽力で、敵方の設置した装置の場所を割り出していた。
大方の予想通り、その場所は厳重な処置で隔離された空間であるようだが、其処に突入すること自体は難しくはない。

夏美のアーティファクトを使えば、理論上は如何なる人数であろうとも見つからずに運ぶ事が出来るのだから可能だろう。
更に運の値を上昇させる桜子が居ればこの作戦は成功したも同然と言って過言ではない。


だが、だからと言って何の作戦もなく突入するのは愚の極みであると言えるだろう。
だからこそ夏美と桜子は必須メンバーなのだ。敵に認知されない夏美のアーティファクトと、強運を超強化する桜子のアーティファクトは必須なのだ。


「突入するのは、村上と椎名と、そしてお前等だ!
 私と茶々丸さんは、不測の事態に備えて此処に残る――何かあったら、必ず連絡を入れろよ?其れが私との約束だ。」

「「「「「おいぃ〜〜っす!!」」」」」」」


千雨の号令で、待機組のテンションも一瞬にしてMAX状態!
最終決戦の裏バトルも、今此処に開幕したのである。








――――――








「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!消え去れぇぇ!!」

「く……やりますなぁ、取り敢えず先輩の剣術には誰も敵う者は居ない筈や。」


所変わって今度は刹那だが、予想以上に凄まじいバトルが展開されていると言っても過言ではないだろう。
月詠の実力は確かに強烈無比なモノだったが、只それだけだ――真に守るべき者を得た刹那からすれば、この程度の剣術など恐れる物ではない


「そろそろ終わりにしようか月詠………貴様のような外道は、今此処で死すべきだ。
 勿論私も貴様を滅した業は背負う心算だが――業を背負う覚悟もなく、己の悦楽の為に人を斬って来た貴様は今此処で滅する!!
 ――覚悟は良いな、月詠!!!」

「あは……心地良い殺気ですなぁ?
 もっとや、もっとその殺気を向けおくれやす……先輩の愛を、目一杯私に注いでおくれやすぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「貴様に愛などくれてやるか狂人が!
 私が貴様にくれてやるのはただ一つ――我が誇りと魂が形となった、この刀での無慈悲な一閃、其れだけだ!!!」


最早完全に精神が崩壊したとしか思えない月詠に対し、しかし刹那は心を乱す事はない。


「消えろ月詠!!」

「ウチの愛を受け取っておくれやす先輩ぃぃぃぃぃぃ!!!」


一瞬の後、刹那は大きく踏み込んでからの神速の居合いを放ち、月詠は二刀を持ってしての一撃を放つ。



技の破壊力は略互角。
互いに獲物がぶち当たった状態だが、だからと言ってどちらかが一方的に有利と言う状況でもない……正に膠着状態そのものだが――



――バシュゥゥゥ!!



「え?」

「……あの居合いを防いだのは見事だが、所詮は其れだけだ。」


月詠の胸が裂け、おびただしい量の血が噴出するが、しかし刹那は何処までも冷酷だった。
僅かに力を引いた刹那が、引きながらも月詠の胸を逆袈裟に切り裂いていた――つまりはそう言う事なのだろう。


「貴様の下らん享楽の為に斬り殺された者達の無念を一身に浴びて死ね……其れが外道に堕ちた者には相応しい末路だ。」


其れだけ言うと、刹那は匕首・十六串呂を月詠の周囲に配置し――一切の戸惑いもなく一斉掃射!!




その結果の果てに待つのは月詠の死――否、月詠の死である筈だったのだ……















 To Be Continued…