「俺達が乗り込むのは良いとして、残してく嬢ちゃん達は大丈夫なのか?
 まぁ、ノドカも残るみたいだから大概の事は如何にかなるかも知れないが、兄ちゃんや坊主と契約してねぇ嬢ちゃん達は危なくねぇか?」

ラストダンジョンに突入するした一行だが、先に進む前にクレイグが残された者達は大丈夫なのかと、当然の疑問を投げかけてくれた。


確かに待機組には和美と亜子とのどかが居るので、戦力的には問題ないだろうが、物量で攻め込まれたらその限りではないだろう。
まして、2隻の飛空艇の周囲に直接召喚魔を呼び出されたら、如何に稼津斗とネギでも如何しようもないが故、クレイグの疑問は当然の事と言える。


「其れについては問題ありまへん。
 自ら戦う力を持たない嬢ちゃん達には、何枚かの式神符を配っておいたさかい、召喚魔程度やったら撃退出来る筈や。」

「流石に、良い仕事をしてくれるな天ヶ崎。」

「誰一人欠ける事なく勝利を手にせんと、マッタク持って意味はありまへんからなぁ?」

だがそれも、千草が式神符を配ってくれたおかげで如何にかなりそうだ――類稀な能力を持つ陰陽の巫女は洞察力にも優れていたらしい。


ともあれ、此れで待機組の心配も一切ないだろう。
式神ではどうにもならない相手が出て来たその時は、和美と亜子とのどかがXX2ndを解放して相手をすれば、其れで如何にかなるのだから。


「其処まで考えてたのか……なら、待機組は大丈夫って事だな?」

「おうよ!……メンドクセー事は一切なしにして、俺等はラスボスぶっ倒すために暴れまわりゃ其れで良い…だろ、兄ちゃん、坊主!!」

「一切の手加減は不要だジャック……やりたいように、思いっきり暴れてくれ。」

「寧ろそれくらいで丁度良いレベルですから――小細工抜きでブチかましましょう!!」

そして、突入組に戸惑いも何もありはしない!至極シンプルに、正面からぶち当たってブッ飛ばす、やるべきことは其れだけである。



ファイナルステージ、最終決戦……いざ開始!!











ネギま Story Of XX 166時間目
『ラストダンジョンで大暴れだ!』











稼津斗達が乗り込んだのと同じ頃、グレートパル様号リペア内部では、和美が艦のメインコンピューターを、千雨がノートPCを夫々起動していた。
何をしているのかは傍目には分からないが、2人の異常なまでのタイピングスピードから重要な何かをしている事は想像に難くない。

とは言え、待機組の大半からすれば残されたのは退屈な事極まりない。寧ろ1−Aの性質を考えると、此れはある意味で拷問かもしれない。


「メッチャ暇〜〜〜〜!!何とかして〜〜〜〜!!!」

「暇を持て余すってこう言う事なんだ……刺激が欲しい。」


稼津斗達が突入して5分と経たずに我慢の限界を超える者が現れたのだ――ある意味で予想通りとは言えるが。
と言うか、待機組の大半からしたら置いて行かれた事が不満であるのは間違いないだろう――彼女達だって共に戦いたかったのだから。


「って言うか、何で待機組〜〜〜?私達だって戦えるのに〜〜〜〜!!」

「アホ、私等だからこそ待機組なんだよ。稼津斗先生とネギ先生が、何も考えずに私等を待機組にしたと思ってんのかテメェは?」


だが、不満たらたらの者達に対して、千雨が決して大きな声ではないが其れを諌めた事で空気が一気に変わった。
千雨も、そして和美――並びに他の稼津斗の契約者は、稼津斗とネギが待機組を作った意味を完全に看破しているようだ……と言うかしている。


「何も考えず?……何か意味があったの?」

「あったりめーだ……そうだろ朝倉?」

「勿論当然さね。――去年大冒険を一緒にした人達には分かってる事だろうけど、去年の儀式はアスナの力を反転させて行う物だった。
 けど、今年は其れが難しいし、今更アスナを攫うのは絶対に不可能と見て間違いないっしょ?
 だったら敵さんが、アスナの力を反転させたのと同じような効果を発揮する魔法装置を開発したとて、何もオカシイ事はないと思わない?」


「「「「「「「「「「!!!!!」」」」」」」」」」


明かされた事実に、一同騒然!!
まさか、去年はアスナそのものを利用して失敗したにも関わらず、今度はアスナの力の反転のみを使えるモノを作り出すとは予想の範囲外だろう。

去年の参加者でも、稼津斗組でもネギ組でもない者には予想できなかった事かも知れない。


「えっと、って言う事はつまり、私等の役目って言うのは其れの発見と破壊?
 私が待機組として残されたのも、私のアーティファクトなら気付かれずに突入が出来るから……って言う事だよね?」

「そう言う事や夏美。序に言っとくと、桜子も『運の値が100倍になって作戦の成功率が上がるから』って事みたいやで〜〜〜?」

つまりは、待機組は裏方としての重要な――重要過ぎると言える役割があったのだ。
先ず間違いなくその装置はあると見て良いだろうし、其れを発見&破壊できれば、少なくとも始まりの魔法使いが魔法世界を即滅する事は不可能。

稼津斗とネギ達が行うであろう、弩派手な戦闘と比べれば地味なのは否めないが、其れでも此れは非常に重要な任務であると言えよう。


「そりゃ責任重大だ〜〜〜!でも、何とかなるんじゃな〜〜い?」

「桜子大明神が居れば大概の事は運で何とかなる!つまりこの裏方任務もどうかなる!」

「イイねイイね〜〜〜!スパイ大作戦みたいで燃えて来るじゃない!!
 てか、待機組とか言っといて、そんなドキドキの任務を残してくれるとはさっすがカヅ君とネギ君よね〜〜〜!テンション上がってくるじゃないの!」


だが、其れが如何した!
重要な任務であろうとも、自分達にもやるべき事があると分かってテンションが上がらない彼女達ではない。
寧ろ重要であるからこそ、表面上は軽く捉えているように見えても、心の内では『任務達成』を誓っている上に、自分達なら出来ると信じているのだ。


確かに残ったのは、稼津斗組とネギ組でもバックスやサポーター的な者達と未契約者ではあるが、寧ろ裏方の戦力としては充分と言えるだろう。



「去年担任代理をやってた頃から思ってたけど、彼女達には怖いものは無いのかな?」

「有ったら『鬼の新田』が居る学校で、アンだけはっちゃけた大騒ぎはしないんじゃないかしら?」


フェイトとディズもこのテンションには疑問が残るようだが、最大限ぶっちゃけると此れが1−Aなのだ。恐れず進んでこその彼女達なのだ。


「え〜〜〜と……栞、コイツ等は何時もこんな感じか?」

「ですわね……けれど焔、だからこそ頼りになるんですよ彼女達は。」


自身も1−Aのメンバーとして、旧3−A時代から約1年を共に過ごした栞もまた、此れだからこそ頼りになるのだと言う事を理解していた。

更に、何時ものテンションMAX状態になった彼女達を、千雨が『ったくしょうがねぇ奴等だ』とばかりの笑みを浮かべて見ている事も大きいと言える。
その表情とは裏腹に、千雨がこの表情を浮かべるのは同時に『まぁ、コイツ等ならどうにか出来んだろう』と思って居る証拠なのだから。

「まぁ、つまりそう言うこった。
 弩派手な戦闘は先生達に任せて、私等は裏方として精々やってやろうじゃねぇか!ふざけた野望を抱いてる馬鹿の鼻を明かしてやろうぜ!!」

「「「「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」」」」」

待機組のやる気は充実した上で、テンション限界を突破し突き進む。
若しかしなくても、麻帆良女子高等部1−Aは最も敵に回したくない集団であるのかもしれない事は間違いないだろう。








――――――








一方で、突入した稼津斗達の前には、予想通り敵勢力が迎撃に現れていた。
その敵戦力は完全なる世界の幹部であるデュナミス――の大群!恐らくは始まりの魔法使いが複製したモノであり、確固たる自我はないようだ。

更に本物と比べると些か能力も落ちるらしく、物量の割には其れほど苦戦する相手ではないらしい。


「幹部クラスが大量増殖とは……数多のゲーマーを苦しめた格ゲーのラスボスが、次作で使用可能キャラに降格された悲しさを感じるな……」

「言い得て妙だね其れ。」

大漁のデュナミス劣化版を葬りつつ、去年苦渋を飲まされた稼津斗とネギは何とも微妙な表情であった。
曲がりなりにも自分達を死の淵寸前まで追い込んだ相手が、大量増殖して雑兵扱いで現れれば何とも言えない気分にもなるのは仕方ないだろう。


だがそうであっても、XXVと雷天双壮を展開した稼津斗とネギに敵はなく、天然バグなラカンは無双状態で、エヴァンジェリンも余裕綽々。
アスナにはそもそも敵が居ないし、稼津斗組武闘派とネギ組武闘派、小太郎とトレジャーハンター達にとっても負ける事がない相手でしかない。


「総督府で俺が切ったのもこいつ等って事か?……まるで手応えがねぇな。」

「コイツ等は、所詮は雑兵って事だろうから、なぁ!!」

鎧袖一触と言うのも生温いほどの勢いで、一行は進む、進む、兎に角進む!
息つく暇さえない程に進む。本当に敵勢力が出て来ているのかを思う程のスピードで進みまくる!!止まる理由など何処にもありはしないのだから。


「一気に押し切る!!合わせろ裕奈!!」

「っしゃ〜〜!やってやるっぜ〜〜〜!!」


「破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ……消えろ、雷神覇王翔哮拳!!!

「一撃必殺、全力全壊!!星光殲滅激(スターライト・ブレイカー)!!

その快進撃の締めを飾ったのは稼津斗の極大気功波と、裕奈の超極大魔力集束砲!!
弩派手では済まない一撃は、劣化デュナミスの大群をいとも簡単に飲み込み、同時に新たに現れようとしていた者をも吹き飛ばしてしまった。

正にチートにして最強の存在は何処までも無敵だったと言う事だろう。



だが、次の部屋に通じるであろう扉に差し掛かったところで、刹那が其れとは別の扉を見やって居た……それも物凄く真剣な表情で。


「どうかしましたか刹那さん?」

「……すみませんネギ先生、私は此処で別行動です。
 あの扉……アレの先には、私が倒すべき……否、倒さねばならない相手が居るようですので……私は其方の扉に向かいます!」

或は刹那は感じ取ったのかもしれない――この扉の先に居る狂気の存在に。
ならばだからこそ刹那は別行動を申し入れたのだ――全ての因縁に決着を付けるために。


「大丈夫なんですね、刹那さん?」

「私を信じて下さい、ネギ先生。」

「………分かりました、そちらの扉は刹那さんにお任せします!
 ですが、無理はしないでください。どうにもならないと感じたら仮契約カードをを使って離脱してください――約束してくれますね?」

「はい……善処します。」


ネギもまた釘を刺さしながら刹那の事は心配しているのだろう――だからこその約束なのかもしれないが。



ともあれ刹那は此処で離脱した事になるが、だからと言ってこの弩チート集団が止まるかと言えば、そんな事は絶対に有り得ない!!


「オラオラオアラァ!下手に近付くと火傷じゃ済まねぇ痛手を被るぜぇ?ぶっ飛べ、ラカンインパクトォォォォォォ!!!!


最強上等だと言わんばかりに、一行は新たに現れた敵戦力を、抹殺・撃滅・完全滅殺!!ラストステージの敵とは何なのかと思うレベルだ。
だが止まらない!現れた先から殴って砕いて最強状態!或はこの戦力だけは始まりの魔法使いでも予測できなかったのかもしれない。








――――――








快進撃を続ける稼津斗達とは別に、刹那は自ら選んだ扉の先の部屋へと来ていた。

「真面な神経を持った奴の部屋ではないか……居るのは分かっているぞ月詠!コソコソしないで出てこい!!」

一面赤黒い部屋――部屋を染め上げたのが人の血であると言う事を感じとり、同時に月詠の存在も看破していた。
烏族の能力を最大限使えば此れ位はお手のモノなのだろう。


「キシシシシ……やっぱり来てくれましたなぁ先輩ぃ……ウチ、心底楽しみにしとったんですえ……先輩とやりあうのを。
 さぁ、やりあいましょ?斬り合いましょ?殺し合いましょ?……先輩の愛をウチに目一杯注いでおくれやす〜〜〜〜。」

「断る!私が愛を向けるのはお嬢様だけだ――貴様如きは無慈悲に斬り捨てる相手にしかならん!!
 だが月詠よ、貴様が己の欲望を満たすために斬り殺してきた者達の魂は今も尚この世界に留まっている…彼等の無念と怒りを刻み込んでやる!」



――ガキィィィィィィン!!



大太刀『夕凪』と、二刀小太刀がかち合い、其れが戦闘開始の合図!



「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉおぉ!!」

「て〜や〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

火花を散らすレベルの剣戟は正に超人同士の戦いと言って過言ではない!一足早く最強の決戦が始まりの撃鉄を鳴らしたのだろう。


護るべき者を持つ正道の神鳴流と、守るべき者を持たず、己の本能に従う邪法の神鳴流……正邪の戦いが今此処に火蓋を切って落とされた――








――――――








――
同刻


稼津斗達一行は扉の先に進み、新たな道を得んとしていたのだが……妨害戦力は当然存在していた。
現れたるは無限のデュナミスと、劣化版の魔導騎士……戦力は凄いだろうが、だからと言って負けてやる心算は毛頭ない。


「さて、行くか。」

稼津斗の号令(?)で一行は臨戦態勢!

中でも稼津斗の闘気は膨れ上がり、此れでもかと言わんばかりに目の前の扉を(半ば力尽くで)完全オープン!!


――バキィィィィィィ!!


次なる部屋に連なる扉を粉砕して、一行は先に進む。
目指すは最上階――始まりの魔法使いただ一人であるのだから……止まらぬ一行は、さらに先へと進んで行くのであった……













 To Be Continued…