時刻はAM5:00。
まだ陽も昇りきっていない薄暗い世界で、グレートパル様号リペアのデッキには一つの人影があった。


「フッ!ハッ!いぃぃやぁぁっぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」

その人影の正体は稼津斗。

最終決戦間近であっても、日課である鍛錬を欠かす事はしないらしい――今この瞬間も、目視が難しいほどのスピードでシャドーを行っているのだ。


「ハッ!でやぁぁぁ……おぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!消え失せろ……刺突破砕撃!!!



――キィィィン……ドガバァァァァァァアァァァッァッァァァン!!



そのシャドーのラストを飾ったのは、貫通力に特化した気功波『刺突破砕撃』
果たしてシャドーの相手が誰であったのかは知る由もないが、しかしながら此れだけの攻防を繰り広げたのだから並大抵の相手ではないだろう。



―朝から精が出ますね稼津斗先生?


「……四葉か……まぁ、適正量の鍛錬ならば、やってやり過ぎると言う事はないからな……寧ろ俺からしたら、この程度のシャドーは普通レベルだ。
 其れよりも、シャドー中にも何とも言えな良い香りを感じたんだが、もしかして四葉が、朝飯の準備をしていたのかな?」


―はい、朝ごはんは一日の要になりますから。


そして早起きをしていたのは稼津斗だけではなく、五月もまた朝食の仕込みで早起きをしていたらしい。
適材適所と言うか、取り敢えず五月は自分の役目と言う物を確りと理解していたようだ――矢張り、1−Aの面々は敵には回したくない感じだ。

ともあれ既に日付が変わって5時間が経過している。
最終決戦開始は、少しずつ、しかし確実に訪れようとしていた。











ネギま Story Of XX 165時間目
『In time he'll make it over the top』











「うんめぇぇ〜〜〜〜〜!流石はさっちゃん!アンタは料理の天才だぜ!!」

「朝っぱらからへヴィな献立と思ったけど、蓋を開けてところがギッチョン!!
 ボリュームは満点でも一切くどくないし、ともすれば即刻エネルギーに変わる食材が多かったからね〜〜〜!此れはさっちゃん様様でしょう!!」


―ありがとうございます♪


――AM7:00


グレートパル様号リペアの多目的室では、多くの1−Aメンバーが朝食に舌鼓を打っていた。
称賛するしかない五月の料理はダイレクトに脳に響くが故に、皆箸が止まらない状況になって居た――四葉五月恐るべしと言って罰はあたるまい。

そう思う程に五月の料理は素晴らしかったと言う事なのだろうが。


「ふぅ……実に美味かった!御馳走様でした!!」

「「「「「「「ご馳走様〜〜〜〜!!」」」」」」」


で、あっという間に朝食終了!
因みに、同様の朝食はフライングマンタに搭乗しているメンバーや、クルトの艦隊にも配られている。きっと美味しく食された事だろう。





さて、朝食が無事に済んだからと言っても全ては寧ろ此処からが本番だ。
一同は再びブリーフィングルームに集まり、全艦と通信回路を開いての、ラストミーティングを行っていた。


「始まりの魔法使いとやらが言ってた『墓守の神殿』てのは、大体この辺になるわ。
 去年の墓守の宮殿とは違って、神殿を強固なバリアで覆ってる訳じゃないみたいだけど、代わりに周囲に召喚魔が多数現れてるってところだね。」

「数はまだまだ増えるやろうし、向こうに乗りこもうとしとるウチ等に対して、突撃してくる可能性はゼロやないしね。」

既に艦隊は、墓守の神殿が目視出来る場所にまでやってきている。
確かにハルナの言うように、神殿そのものはバリアでは覆われておらず、また艦に備えられたエネルギー検知装置にも反応はない。

が、これまたハルナの言うように、神殿周囲をうじゃうじゃと召喚魔が飛び交っているのもまた事実。
今は何もしてこないが、これ以上近付いたら間違いなく攻撃してくるだろうは火を見るより明らかであり、更にそうなれば敵の数も増す事だろう。


『此れは……矢張り、私達はギリギリのラインに留まり後方支援に回った方が良いでしょう。
 元より、幾らアスナ姫の加護があるとは言え、総督府の兵を神殿に突入させたところであまり役には立ちそうにない。
 ならば、我々は後方支援に徹し、君達の突入路を確保すると言うのが最もベターな方法であると思いますが、如何です稼津斗君、ネギ君?』


「確かに其れが良いだろうな。
 俺達が近づけば、奴等は当然襲ってくるだろうが、其れのみならず魔法世界中に散らばろうとするだろうから、其れを止める戦力が必要だしな。」

「露払い役を押し付けてしまう形になりますが、お願いしますクルトさん。」

『いえ……我等は所詮は裏方であり、舞台で舞う出演者は君達ですからね。
 ですが、舞台に上がる役者が力を出し切れるようにするのもまた裏方の役目です。召喚魔は我々に任せて、君達は精々派手にやって下さい。』


「是非もねぇな。
 最強の兄ちゃんに、最強の俺様、最強の『悪の魔法使い』に最強の坊主、其れに最強の嬢ちゃんが揃ってんだ、思いっきり派手に行くぜオラァ!」

だが、既に作戦は決まって居た模様。
否、或はクルトは最初から総督府の艦隊は露払いをするためと割り切って居たのかもしれない――つまり魔法世界の命運を1−A達に託したのだ。


『ククク……言われてみればさもありなん。
 神殿に突入する部隊には、魔法世界と旧世界を併せての最強戦力が集っているのでした……御武運を皆さん、必ず勝つと信じていますよ。』

「任せておけ……奴は俺達で完全に滅する――二度と復活しないように、細胞の欠片すら残らず完全にな。」

武闘家としての血が騒ぐのだろう、稼津斗の顔には不敵な笑みが浮かび無意識のうちに闘気が高まってきている。
いや、稼津斗のみならず、ネギもエヴァンジェリンも、ラカンも小太郎も、そして1−Aの面々+αも同様にやる気や闘気が鰻上りに上昇!超上昇!

クルトもモニター越しに其れを感じたのだろう。
『マッタク持って恐ろしい方々だ――良い意味でね。』と呟くと通信を終了して、艦隊の指揮に戻って行った。



そして、グレートパル様号リペアと、まだ通信が繋がっているフライングマンタMkUでは……


「いよいよ最終決戦だ……闘気とやる気の貯蔵は充分かお前等ーーーーー!!!!!」

「「「「「「「「「「おぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」」」」」」」」」」


「誇張でもなく誇大でもなく、魔法世界の命運は僕達に託されました――必ず勝ちましょう、僕達なら出来ます!」

「「「「「「「「「「っしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」」」」」」」」」」


稼津斗とネギが、決戦前の気合注入(?)的な事をおこない、1−A+αのテンションとかその他色々は、始まる前からMAX限界突破の臨界状態!
見る人が見たら、グレートパル様号リペアとフライングマンタMkUが其の色々なエネルギーによって輝いていたのが分かったかもしれない。


「ったく、相変わらずのアホ共だが、だがだからこそ頼りになるってか?……そんな事を考えるとか本気で、私もトコトン染まっちまったみてぇだ。
 だが悪い気はしねぇ。……んじゃあ、突入前にバッチリ決めてくれよ主人公!精々弩派手な祭りと行こうじゃねぇか!!」

「おぉ?そんな事言うなんて、千雨ちゃんも存外やる気?」

「るせぇ明石!こうなった以上開き直りだ開き直り!!
 つーか、如何足掻いたって非常識な日常からは逃れられねぇのは確実なんだ……だったら、トコトンまでやってやろうじゃねぇか!!
 それになぁ『長谷川千雨』は事なかれ主義かもしれねぇが、最強ハッカー兼ナンバーワンネットアイドル『ちう』は負けるのが大嫌いなんだよ!!
 敵に背なんか向けられるか!大体にして、非常識な日常だろうと何だろうと、平穏な日々を壊されるのは我慢ならねぇからな。」

千雨もその空気に乗ったのか、やる気は充分だ。
或は、彼女的に『非常識』な事を受け入れ、その上で平穏に暮らすと言う事を選んだから故の事であるのかもしれないが……

其れは其れとして、バッチリ決めてくれと言われた『主人公』とは稼津斗とネギの事だろう。
その2人は、一度互いを見合うと薄く笑を浮かべ――


「「行くぜ(ぞ)、皆!!!」」

シンプルながらも、力強い言葉でラストダンジョン突入を宣言し、其れと同時にグレートパル様号リペアとフライングマンタMkUは出撃。
其れに追走する形で、総督府の艦隊も発進し、最終決戦の地へと進んで行った。








――――――








「来ましたか……全艦に告ぐ、全ての武装を展開して召喚魔を迎え撃て!1匹たりとも逃さずに、そしてネギ君達の進路を確保するのです!!」

「了解!!」


進撃した連合艦隊(仮)には、予想通り、数えるのが面倒になりそうなほどの召喚魔が襲い掛かって来た。
ドレだけ少なく見積もっても1000は下らない数だが、クルトは慌てずに艦隊に指示を出して召喚魔の迎撃に打って出る。

普通に考えれば総督府の艦隊の攻撃では召喚魔を相手にするのは心許ないが、今は艦隊全てがアスナの加護を受けている最強状態だ。
故に、艦隊の攻撃は召喚魔には普通に効くし、仮に『鍵』を使われても操舵士などがリライトされて消えてしまう事もない。

総督府の艦隊の切れ目のない攻撃に、召喚魔は次々と葬られて行く。
そして、その間を縫ってグレートパル様号リペアとフライングマンタMkUが疾走し、最終決戦の地に向けて驀進する!見事な連携である。



だが、如何に露払いが居るとは言え、次々と現れる召喚魔全てに対応出来る訳ではない。
2隻の進行方向上に現れた召喚魔は如何しようもないのである。

「やっぱし一筋縄では行かないか……だけど甘いぜ?
 このグレートパル様号リペアは、只の改修機じゃねぇんだぜ?今こそ、その真の姿を見せてやるわ!!グレートパル様号リペア……変身!」

しかしそれも何のその。
グレートパル様号リペアには切り札があったらしく、ハルナが其れを発動し、艦の形が大きく変わって行く。

何処かファンシーだった見てくれは形を潜め、その形は大空を舞う機械龍の如き姿へと変貌しているのだ。
更に、両翼にはビーム砲とリニアランチャー、10連装ミサイルポッド、プラズマ集束キャノンが搭載され、船首主砲には所謂『陽電子砲』を搭載!!

『グレートパル様号リペア・戦闘艇形態』とも言うべき姿が其処には有ったのだ。


「此れは……この武装は、超、お前がやったな?」

「出し惜しみは無しだよ稼津斗老師。
 この戦いは歴史に於いてもとても重要なモノであり、ネギ坊主が勝たねばならない戦い……せめてもの手助けくらいするさ。」

超が関わったと言うのならば、搭載された超兵器も、成程納得するだろう。



「艇長、マルチロックオン完了……何時でも撃てます。」

「OK。……さて聞いた通りだから――さよちゃん、やっておしまい。」

「は〜〜い!!」


更にはマルチロックオンシステムまであるらしく、茶々丸がロックオン完了を告げると同時に、さよがスイッチを押して、フルバーストを発動!!
グレートパル様号リペアから放たれた無数のビームやミサイルは問答無用で、敵の召喚魔を超絶撃滅し、進路を確保していく。

勿論、召喚魔は次から次へと現れるが、そんな事は何のその!!
超科学の結晶体とも言える、超兵器をぶっぱなしながら、グレートパル様号リペアは邁進し、フライングマンタMkUも其れに追走する。


「オラオラオラァ!!道を開けろ雑魚共ぉ!!
 お前等なんかに用はねぇんだっての!!大人しく道を開けやがれぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!!!」

あまりにも楽勝な状況に、ハルナのテンションが若干おかしな方向に行ってしまったようだが、其れすらも今は些細な問題にすらならない。
何故なら、もう目的地は目の前であり、此処で減速するなんて言う事はあり得ない――全力全壊で突っ込むのみである。


「止まるな、このまま突っ込め!!!」

「了解、現行速度を維持し、武装展開は其のままに着陸体勢に入ります。」



稼津斗もそう考えていたのだろう、止まらずに突っ込めと言い、茶々丸も其れを受けて、最も効率の良い着陸手段を演算してそれを実行。




――ズゥゥゥン………




程なく、グレートパル様号リペアとフライングマンタMkUは無事に着陸し、最終決戦の地に降り立ったのだった。








――――――








さて、最終決戦の地に降り立った一行だが、流石に全員で乗り込むと言う訳には行かない。
稼津斗組(武闘派限定)とネギ組(矢張り武闘派のみ)、其れに小太郎とラカンと千草とトレジャーハンターの面々が乗り込み組で、後は待機組だ。

尤も待機組には待機組で、補助や回復と言った重要な役割があるのだが。


ともあれ、ラストダンジョンには到着したのだから、後は戦うだけだ。


「行くぞ。」


決意と覚悟を胸に、突入組は進撃を開始。




今此処に、魔法世界の命運をかけた最強にして最大の戦いの火蓋が切って落とされたのだった――
















 To Be Continued…