総督府での突然の襲撃は、しかし1−Aの面々が見事な避難誘導を行ってくれた事で、今のところ1人の犠牲者も出してはいない。
武闘派である稼津斗組とネギ組は、召喚魔を現れた端から滅殺・抹殺・大虐殺!!とも言うべき爆殺を行い、そうでない者も的確に動いている。
特に避難に関しては、夏美のアーティファクトが大きな役割を果たし、彼女の存在が避難を円滑かつ安全なモノにしていたと言っても過言ではない。
「は……流石は夏美姉ちゃんや、こんなトンでもない状況でも取り乱さずに避難誘導をするとは大したモンや――改めて惚れ直したで!!
せやったら、俺が気張らんとカッコつかへんよなぁ?……上等やないか、テメェ等如き俺の爪牙の錆にもならんへんで、この三下以下がぁぁぁぁ!」
その夏美の姿を見た小太郎が、エンジン全開でリミッターを解除し、戦闘力が倍率ドン!
拳が振るわれただけで、10体近い召喚魔が葬られたと言うのだから、その破壊力は推して知るべきだ――稼津斗組の面々は更に凄いのだが…
だが、盤石と思っている状況であっても必ず予想外の事態は発生するモノである。
――ミシィ!!
「「「!?」」」
この激しい戦闘に耐えられなかったのだろうか?……のどか、クレイグ、アイシャの居た場所の床が突如抜け、あっと言う間に3人は真っ逆さまだ。
尤も、3人とも飛行の術は身に付けているので、慌てる事はなかったが。
「ちょ、大丈夫かのどか〜〜〜!?」
「大丈夫ですよ亜子さん!
ですが、此処から其方に戻るのは得策じゃありませんから、私達は別ルートでドッグエリアに向かいます――其処でまた会いましょう。」
「其れがベターか……了解や、必ずドッグに来るんやで?」
「勿論です!!」
総督府からの脱出劇は、そう簡単に済むモノでもないようだ――
ネギま Story Of XX 163時間目
『大脱出!Ultimate Escapeだ!』
「しっかし去年に引き続き、今年も総督府でのパーティでの最中に厄介事って……私達って中々に凶運だと思わない、クレイグ?」
「かも知れねぇが、だからって尻尾巻いて逃げられるか?
何よりも、俺達の仲間であるのどか嬢ちゃんが逃げずに突き進んでるんだぜ?……此処で退いたら、先輩トレジャーハンターの面目がねぇだろ!」
「だよねぇ?……んじゃ、もう一頑張りと行きますか!!」
地下のドッグエリアに向かっているのどか、クレイグ、アイシャの3人はこの状況に置いても軽口を叩く位の余裕さをまだ持っていた。
いや、ある意味で当然と言えるかもしれない。
稼津斗の従者であるのどかは兎も角として、トレジャーハンターであるクレイグとアイシャも、肝の据わり方は半端ではない。
しかも、クレイグとアイシャは現在アスナの加護を受けてリライトが効かない状態なのだ。
そんな3人が力を合わせて召喚魔に後れを取る事など有るのか?―――其れは断じて否である。
のどかの魔法が敵を打ち崩し、クレイグの剣が敵を切り裂き、アイシャが支援魔法で2人を補助する……この3人はチームとしても見事なのだから。
「よぉし、このまま行けばもうすぐドッグエリアだ!飛ばしていくぜ!!」
意気揚々と進む一行だが………矢張りと言うか、お約束と言うか、目的地を目前にしてボスレベルの敵が現れるのは世の常であるようだ。
「人形風情が……目障りな。」
「テメェは……良いねぇ、去年の借りを返させてもらおうか?」
道を塞ぐように現れたのは、黒いローブを纏った長身の男――完全なる世界の大幹部たるデュナミスと見て間違いないだろう。
だが、デュナミスは去年の戦いの際に、エヴァンジェリンによって永久凍結地獄に閉じこめられたはずだが………
「デュナミスさん……ではありませんよね?
恐らくは容姿と記憶をコピーした別物――差し詰め『デュナミス´』とでも言った所でしょうか?」
真っ先にのどかがデュナミス本人ではない事を看破していた。
彼女のアーティファクトやら魔道具の能力を駆使すれば、完全に見た目も能力も、そして記憶すらもコピーした所で『別人』である事は誤魔化せない。
「あぁ?如何言うこった嬢ちゃん?コイツは別モンなのか?」
「有体に言えばそう言う事です。
見た目も記憶も、恐らくは能力も同じでしょうがデュナミスさん本人ではなく、全てをコピーして作られた人造兵とでも言った所でしょうか?
……そんな貴方が、魔法世界の人達を『人形』と呼ぶなんて滑稽ですね?人形は、貴方の方じゃないですか!!」
だが、だからと言って目の前の存在を無視するかと言えば其れは有り得ない。
元よりデュナミス´(仮)は道を譲る心算はないようだし、クレイグも去年の借りは返しておきたい。
そして何よりも、去年目の前で仲間を消されたのどかが、例えコピーであったとしても其れを同じ姿の者を許す筈がないのである。
「封縛……吼えよ!!」
――バガァァァァァァァァン!!
すぐさま、仲間であるイクサからコピーした炸裂するバインドでデュナミス´(仮)を攻撃し、更に追撃に稼津斗直伝の空手式足刀蹴りで吹き飛ばす。
如何に格闘戦が苦手とは言え、XX2ndの効果で戦闘能力が250倍に膨れ上がっている状態での一撃は半端なモノではない。
デュナミス´(仮)が吹き飛ばされたのが良い証拠だろう。
「今です、クレイグさん!!!」
「オウよ!コピーってのが気に入らねぇが、其れでも借りは返させてもらうぜ!でぇぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
――ズバァァァァァァァァァァァアァ!!
更にトドメとばかりにクレイグの剣が真一文字に一閃され、デュナミス´(仮)は、果たして何をしに出て来たのか分からないくらいにアッサリ撃沈!!
コピーは所詮コピーだった言う事か、或はこのトレジャーハンターチームの能力が高かったのか……恐らくは両方だろう。
――シュゥゥゥ……
両断された其れは、直ぐに塵と消え跡形もなくなる――如何やら、コピーではあっても幾らでも作れる『量産兵』であるのかもしれない。
とは言え、此れで邪魔者は居なくなった。
「いや〜〜……1年の間にまた強くなったわねノドカ?」
「本気でスゲェな……ったく、本気で俺達のチームの正式メンバーになって欲しいもんだぜ。」
「1年間頑張ってきましたから♪
其れとクレイグさん、私は常駐してる訳じゃないですけど、クレイグさん達のトレジャーハンターチームの正式メンバーの心算だったんですけど……
……やっぱり私は正式メンバーとしては認められてなかったんですね?……所詮私は突発的に加入した臨時メンバー……」
「そんな事ないわよノドカは私達の仲間よ?
本当に、クレイグッたら朴念仁と言うかデリカシーが無いって言うか、女心が分かってないって言うか、兎に角そう言う事だから許してあげてね?」
「大丈夫ですアイシャさん、私大丈夫ですから!」
「あぁん、何て良い子なのノドカ!!」
「……あ〜〜〜……取り敢えず気は済んだか?
んなアカラサマに棒読みなセリフじゃ流石に俺も驚かねぇからな?つーか、思った以上に余裕だなアイシャもノドカもよぉ……」
そして、トレジャーハンター組は如何でも良い寸劇を展開するくらいには余裕であった。
「んで、何だってこんな寸劇を披露してくれたんだ?」
「「何となく、空気的にやっておかないといけない気がしたから。」」
「身も蓋もねぇなオイ!!?」
余裕であった。
とは言え、何時までも馬鹿をやってても仕方ないので、一行は一路ドッグエリアを目指して進んでった。
――――――
さて、1−Aの非戦闘員組の避難も、此れは中々見事であった。
全員が自らの安全を確保しつつ、舞踏会に参加して居たセレブ階級の人達の避難誘導も怠っては居ない。
彼女達の働きと、総督府に配置された警備兵の働きで、突然の事態にも関わらず、しかし大きな混乱を起こす事なく人々の避難は成されていた。
現実に、既に参加者の8割は避難用の飛空艇に乗り込んでこの場から離脱しているのだから、彼女達の働きの高さは疑いようもないだろう。
だが、この場は戦場――予想だにしない事態と言うのは起きて然りだ。
『グガァァァァァアァァァァァァァッァ!!!!』
「「「「!!!!」」」」
――バキィィィィ!!
召喚魔の一撃が総督府の一部を破壊し、その影響でバルコニーの一部が崩れ、まき絵、円、美砂、美空が其処から真っ逆さまに!
幾ら何でも20メートル以上の高さから地面に落下したらお陀仏は避けようがない――
「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」」」」
4人も思わず『死』を覚悟するが――
「どえりゃぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあっぁぁあぁ!!!」
――ポスン
落下中の彼女達を『何か』が受け止め、地面との激突を回避する。
「よう、無事かいまき絵嬢ちゃん!!」
「この声……ジョニーさん!?」
彼女達の危機を救ったのは、魔法世界のトラック野郎であるジョニー。最新型のマンタを使って、落下する彼女達を受け止めたようだ。
如何やら、偶々舞踏会に必要な物資を総督府に運び込みに来たところで、この騒動に巻き込まれたらしい。
「ったく、去年と言い今年と言い、如何にも厄介事に巻き込まれる体質みたいだな俺も?
だが、トラック野郎は義理と人情には厚いんでな?……係わっちまった以上はトコトン付き合うぜ嬢ちゃん達!
取り敢えず、上部ハッチを解放するから全員中に入ってくんな!!」
「ありがとうございますジョニーさん!」
マッタク、人の縁とは何処でどんな役を果たしてくれるか分からないモノだ。
よもや、去年偶発的に知り合いになったジョニーがこの局面で助けに来てくれるなどまき絵は想像すらしてなかった事だろう。
「ようまき絵ちゃん、1年ぶりだが随分と『良い女』になったな?本気で惚れちまいそうだぜ。」
「もう、ジョニーさんたらぁ♪」
とは言え、まき絵とジョニーは気心が知れた間柄である故、1年ぶりの再会であっても緊張も何もなく、実に自然体でのやり取りである。
だが、だからと言って真剣でない訳ではない。
「まぁ、積もる話はあるが、先ずは此処から脱出しなきゃ如何しようもねぇ。
少しばっかり荒っぽくなるから、嬢ちゃん達は確り手摺やら何やらに捕まっといてくれや!!行くぜぇぇぇっぇぇぇぇえっぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「「「「!?」」」」
裂帛の気合が一閃したかと思った瞬間、フライングマンタの運動性能が目に見えて向上した。
並の操縦士では不可能なほどの見事なフライングテクニックで召喚魔の攻撃を次々と躱しているのは見事と言う他ないだろう。
思わぬ助っ人の参上は、しかしながら現状に於いては有り難い物であった。
――――――
そして稼津斗達は……
「会場の人達の避難は完了した、俺達も離脱するぞ!!」
「この短時間で避難が完了とは……君達のお仲間の能力の高さは半端ではないようですね……」
此方も総督府の特別室に現れた召喚魔を、有無を言わさずに滅殺・撃滅・完全抹殺し、総督府からの離脱を始めていた。
『そう来ると思って、準備は万全だぜ!!』
其処に誂えたように現れたのは『グレートパル様号リペア』――去年の一件で中破したグレートパル様号を強化改修した飛空艇だ。
ジョニーが確保した4人と、1−Aの面々は如何やら無事であるらしい。
「ハルナさん!……良いタイミングです、皆さん中に!!」
「おうよ、邪魔するぜ!!!」
何の遠慮もなしにラカンが乗り込み、其れに続くようにクルトも船内に入って来た。
だが――
「カヅト!?」
「そんなに驚く事でもないだろネギ?
邪魔な召喚魔をぶちのめす――ただそれだけの事だからな!!」
稼津斗だけは船内に入らず、あくまでも真正面から敵にぶつかる心算なのだろう――なれば誰にも異は唱えられないし止める権利もないのである。
「ふぅ……多いな?
手加減をして何とかなるとも思えないし、一気に決めるか――イクサ!!」
「私の出番か?」
何よりも仲間が居るのだから恐れる事は何もないだろう。
「「ユニゾン・イン!!!」」
イクサとユニゾンし稼津斗は正に最強その物!
只でさえ能力を大幅に上昇させた上で一切の常識が通じない相手なのに、其処にアインスがユニゾンしたらどうなってしまうのか想像も出来ない。
とは言え、ユニゾン稼津斗の戦闘力はドレだけ少なく見積もっても一億は下らない……其れがユニゾン状態であるのだから。
「雑魚が雁首並べて偉そうにするな!!」
《見るのも汚らわしい……消えされ!!》
「『覇ぁぁぁぁぁぁぁっぁぁあぁ……デアボリック覇王翔哮拳!!!』」
――キィィィン……ドガバァァン!!
正に最強!!それ以外の異名は認めないと言わんばかりだ。
ともあれ、稼津斗の圧倒的な一撃により、総督府に現れた召喚魔は1体残さず『完全滅殺・抹殺』したようだ……
何れにしても総督府での被害はゼロだったのだから、一切の問題はない筈だ。
ともあれ一行は総督府から見事に脱出し、来たるべき最終決戦に向けて意識を集中しているようだった。
同時に、今回の一件で起こった総督府の修理・改修費に必要な金額に、クルトが真っ白になって居たと言う事を明記しておく――
To Be Continued… 
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