番狂わせも何もなく、大衆の予想通りに稼津斗とラカンは大会を制し、1−A一行は現在テオドラ皇女に招かれて王宮の大広間に居た。
普通なら王宮に招かれたと言うだけで萎縮してしまいそうなものだが、この面々に限ってはそんな事はない。
寧ろ萎縮するどころか、普通なら絶対にお目にかかれない場所と言う事を十二分に満喫して居るくらいなのだ――矢張り1−Aは普通ではない。
「うむ、此れだけ寛いでくれれば妾もお主らを招待した甲斐があると言うモノだな♪」
「いやいや、私等こそ王宮に招待されるとは思ってなかったって!
マジで、一生に一度有るか無いかのレベルじゃないの、こんな王宮に招かれるなんてさ〜〜〜!本気で夢みたいだっての!!」
それを見たテオドラも満足そうであり、喜んでもらえたなら招待した甲斐もあったと言ったところだ。
何よりも、こう言っては失礼だが、皇女と言う立場にありながらもテオドラの精神年齢は、どちらかと言えば1−Aの面々に近い部分が有るのである。
故に、この王宮への招待も、テオドラからすれば『親しい友人』を招くのと、其れほど差はないのだ。
加えて1−Aの面々も、このフランクで親しみやすい皇女相手に遠慮も緊張もありはしない。
あるどころか、そんなモノは一切合財まとめて無視して、宇宙の彼方に蹴り飛ばして上等である――と言うか、現実に蹴り飛ばしているのだから。
「およそ1年ぶりの再会じゃ、大いに寛ぐがよい!
それに、今夜は大会の打ち上げを兼ねたダンスパーティと晩餐会が総督府で開かれる事になって居る故、そっちにも顔を出してもいいじゃろう。」
だが、何気なく発したテオドラのこの一言に反応した者がいる――言うまでもなく稼津斗とネギだ。
ぶっちゃけて言うと、稼津斗の大会出場は、クルトに面倒な手段を使わずに、自分達が此方に来た事を伝える手段でもあったのだ実は。
そのクルトが総督府でダンスパーティ兼晩餐会を開くと言う事は=何らかの話があると思って間違いないだろう。
ネギま Story Of XX 159時間目
『Danceparty from――』
とは言え、総督府でのダンスパーティ兼晩餐会と聞いた1−Aの大半は速攻で其方に興味を惹かれてしまうのは仕方ないだろう。
特に、去年の魔法世界の彼是を体験していない面々にとっては、総督府なる場所でのダンスパーティと言うだけで惹かれてしまうモノである。
だが、だからとって其れに思いを馳せる者を注意する程稼津斗もネギも無粋ではない。
それどころか、嗜めるどころか楽しんでくれとすら思っているのだ――少なくともクルトから会談の申し込みがあるまでは。
クルトの政治的手腕は非常に高いのは間違いない。
其れだけに、魔法世界の存続に直結する最終決戦に関係する事ならば、出来るだけ関係者以外には情報を漏らしたくないのが本心なのは当然。
だからこそ、大会の打ち上げを兼ねたイベントを開催する事で大衆の意識を其方に向け、真の目的は関係者のみが知るように仕向けたのである。
一見単純に見える事でも、実はその裏で色々動いているのだ。
んがしかし――
「総督府のダンスパーティか〜〜!今年は陰謀も何もなさそうだから、純粋に楽しませて貰おうかな〜〜♪」
「今年もドレスとかは借りられるんやろか?せやったら、楽しみやな♪」
「え、ドレス借りられるってマジ!?」
「マジやで〜〜?其れこそ和服まで選べるよりどりみどり状態やで〜〜♪
しかもレンタル料は無料から、どんな衣装でも選び放題や♪意外とクルト総督は、太っ腹なんやで〜〜?」
「何それ凄い!これはもう、思い切りめかしこまなきゃ損よね!!」
1−Aの面々の意識は、とっくに総督府でのイベントに向いている。完全に向いている。否定不可能なまでに向いている。
尤も、稼津斗組とネギ組の面々は、何かあると分かったうえで、周囲に合わせて盛り上がっている様を演じている様ではあるが……
兎も角、今宵の総督府で何か動きが有るのは間違いないだろう。
――――――
そしてあっと言う間に時間は夕刻となり、稼津斗とネギ、1−Aの面々に小太郎と千草とラカンは、総督府でのイベントに向けて準備の真っ最中だ。
まぁ、準備と言っても膨大な数の貸衣装の中から自分の衣装を選ぶだけであるのだが。
「宛ら、ポッポコーンに群がる御堀の鯉やなぁ……」
「師匠、気持ちは分かりますがもう少しオブラートに包んでモノを言ってください……」
「まぁ、言い得て妙でござるがなぁ……」
だがしかし、たったそれだけの事とは言え、御洒落を楽しみたい女子高生にとって和装洋装取り揃えてある、この貸衣装群は黙っていられない。
去年参加したメンバーは兎も角として、初参加メンバーはあれやこれやと手にとっては身体に合わせてを繰り返しているのだ。
千草の言った『ポップコーンに群がる御堀の鯉』とは、実に言い得て妙かも知れない。
「去年はウチ等も白熱したけど、客観的にみると結構アレな光景や――まるでデパートのタイムセール見とるみたいやで。」
「致し方あるまい?
絢爛豪華な宮殿でのダンスパーティ兼晩餐会など、普通の女子高生では生涯経験し得ない事だからな?思う存分楽しむが良いさ。」
されどエヴァンジェリンの言う事もまた然り。
如何に常識破り上等な麻帆良で暮らしていようとも、流石に宮殿でのダンスパーティなどは生涯経験できないだろう。
詰まるところ、衣装選びの段階から楽しんだ者の勝ちと言うのは変わりはしないのである。
「あ〜〜〜!そのタイプの青色あったの!?青があったら借りようと思ってたのに〜〜〜!」
「え?何此れ…此れもドレス?……一見ワンピースタイプだけど、必要最低限のとこしか隠してないよね此れ………」
「「私達双子に合うサイズのドレスはないの〜〜〜〜!!?」」
尤も、衣装選びはまだまだ続きそうであるが。
――で、それから20分後。
色々あったが、1−Aの面々は全員が衣装を選び終え、着替え終わって居た。
同時に部屋の中は一気に華やかさが増したと言えるだろう。
タイプは違うが、一様に美少女が揃った1−Aの面々が着飾るとその華やかさはハンパではない。
艶やかな華、煌びやかな華、妖艶な華、慎ましげな華と甲乙付けがたい見事な『華』が咲き誇っている状態なのだ。
「うわぁ、綺麗ですね皆さん!」
「去年よりも凄い事になっとるなぁ……人数多いから当然やけど。」
其処にやって来たのは、着替え終わったネギと小太郎だ。因みに子供の姿では格好が付かないとの事で、年齢詐称薬で大人モードに変身中。
更に付け加えると、ネギと小太郎の衣装は、今年はネギが燕尾服で小太郎がスーツである。
「はわぁ……去年の燕尾服も良かったけどスーツも中々似合ってるよ小太郎君///」
「そ、そうか?着慣れてへんから窮屈なんやけど、そう言ってもらえると嬉しいで。
ま、まぁ夏美姉ちゃんも、そのドレスはよう似合ってると思うで?………その、アレや……ぶっちゃけ惚れ直したわ……///」
「ふえぇぇ!?……そ、其れは実は私もかな///」
「ふむ、布地の光沢すら消した漆黒の燕尾服か?実によく似合っているではないかネギよ?」
「ありがとうございます。
でも、エヴァもその闇に溶けそうな漆黒のドレスが白い肌に映えて良く似合ってますよ?お世辞抜きに綺麗です。」
「ククク…英国紳士は口が巧いな?
だが、お前の其の評価は素直に受け取っておこう――アスナは例外としても、私以外の女をダンスのパートナーに選んでくれるなよ?」
「勿論ですよ、My Sweet Princess.」
で、恋人達は速攻で激甘空間を生成してくれた。
耐性のない者ならば速攻で撃沈されているのは間違いない。固有結界『無限の愛』が発動されていると言っても過言ではないのだ。
んが、しかし其処は1−A!
ネギ&エヴァンジェリン、小太郎&夏美が作り出す激甘空間を喰らったところで精神ダメージは皆無!寧ろ『良いぞもっとやれ』と言わんばかりだ。
まぁ、そんな事を言われるまでもなく、恋人達は何の遠慮も無い訳だが。
「馬に蹴られたくはねぇからアイツ等の事は放置するとして、稼津斗先生とオッサン――理論常識撃滅上等チートバグコンビはまだこねぇのか?」
「2人とも身体大きいから、衣装が結構限定されてるのかもしれないさね。」
しかしながら馴れとは恐ろしいモノで、千雨は激甘空間を生成してる恋人達の事は意識の外に除外し、未だ姿を現さないチート2名が気になった。
まぁ、和美の言うように衣装選びに戸惑っているのかもしれないのだが。
「よう、またせたな嬢ちゃん達!」
「スマナイ、少しばかり衣装選びに時間を取った。」
其れを示すように、少しばかり遅れて稼津斗とラカンが登場。
「「「「「「極上のイケメン来た此れーーーーー!!!!」」」」」」
が、この2人の登場に1ーAの面々は沸き立つ!
何故かって、稼津斗もラカンも実に見事に着飾ってくれてたからだ――其れも己の魅力を最大に引き出すが如くに。
ラカンは、去年使用していた大型サイズの燕尾服ではなく、ダークレッドのスーツを着用し、更に額のバンダナも外してワイルドさを押し出している。
褐色の肌と相まって、このラカンは正に『ワイルド系イケメン』の見本そのものと言って良いだろう。
そして稼津斗は、純黒の髪をオールバックに纏めて、そして身に纏う衣装は目の覚めるようなブルーのコートと漆黒のインナーの組み合わせ。
其処まで自己主張の強い衣装ではないが、稼津斗の長身と顔の傷痕が相まって何とも言えない『漢の色香』を醸し出してくれているのである。
「稼津兄カッコいい…」
「惚れ直すでござるよ此れは///」
「破壊力がハンパ無いね此れは……」
現実に自らのパートナー達が略KO状態なのだから。天然イケメン乙である。
だがまぁ、此れにて全員が衣装を決めたのは間違いない故、後は総督府でのダンスパーティ兼晩餐会が始まるのを待つばかりだろう。
――――――
――PM6:30
――バァァァァアッァァン!パパパァン!!
総督府の周辺では花火が挙げられ、ダンスパーティ兼晩餐会が始まると言う事を周囲に知らせていた。
稼津斗とネギ、及び1−Aの面々は既に会場入りしているので開始合図などはさして関係はないが――この会場では予想だにしない再会もあった。
「ノドカじゃない!
あの時以来だから……大体1年ぶりよね?……こんのぉ、たった1年で随分な美人さんに成長したもんじゃないのよ!コノコノォ!」
「痛い、痛いですよアイシャさん!
たった1年、されど1年ですから、成長するには充分な時間じゃないですか?」
「マッタク持ってその通りだな……だが、また会えて嬉しいぜぜノドカ嬢ちゃん。」
「はい、私もまた会えて嬉しいですクレイグさん♪」
「トサカさ〜〜ん!1年ぶりや、元気しとった!?」
「お久しぶりです……変わらず元気そうで安心しました。」
「アコとアキラか……まぁ、見ての通り相変わらずの雑用だが、其れなりにやらせて貰ってるさ。
――だがまぁ今は俺も一介の給仕に過ぎねぇからな?俺の事なんぞ気にしないで、精々思い切りこのダンスパーティを楽しみゃいいぜ。」
のどかはトレジャーハンターのクレイグ達と、亜子とアキラはトサカと再会を果たしていた。
約1年ぶりともなれば、再会の思いも一入だろう――尤も、トサカに限っては生来の天邪鬼が影響して何処か素直になりきれない態度なのだが。
まぁ、其れは其れとして、稼津斗、ネギ、小太郎、ラカンの『達人野郎四天王』(命名千雨)はこの状況でも周囲の警戒は怠って居ない。
今年は去年と違って、クルトが謀略を巡らす事は無いだろうが、其れとは別に『始まりの魔法使い』がどんな奇襲を仕掛けて来るかも分からない。
故に、警戒してし過ぎると言う事は無いのである。
―――〜〜♪〜〜♪♪〜〜♪〜〜
そして其れを知ってか知らずか、会場ではオーケストラが演奏を開始し、同時に其れはダンスパーティ開始の合図に他ならない。
その演奏に合わせるように、集まった紳士淑女は夫々がダンスパートナーを探しだし、即座にダンスを始める。
「えっと…一曲えぇか夏美姉ちゃん?」
「私で良ければ、喜んで……」
「Shall we dance Eva?(踊って頂けますかエヴァ?)」
「ふ……Sure.(是非に。)」
「無粋なダンスで済まないが、一曲お願いできるかイクサ?」
「其れがお前の望みであるなら是非もないさ。」
「俺様の相手は……よっしゃ、丁度良いぜ!千雨嬢ちゃん、ちょいと相手してくんな!!!」
「よりにもよって私かよ!!
つーか、オッサンダンスできんのか!?スピンで回され過ぎで目を回したなんてのは流石に勘弁だぜ!?」
「ガッハッハ!心配すんな、こう見えてもパーティの作法は心得てる心算だからな。嬢ちゃんに恥はかかせねぇよ。」
「なら、確りとエスコートしてくれよな。」
稼津斗、ネギ、小太郎、ラカン夫々、三者三様の対応をしてくれたが、取り敢えず全員がダンスパートナーを得たのは間違いないだろう。
そして此れを皮切りに、総督府でのダンスパーティは上限知らずに盛り上がって行くのであった。
――――――
だが、煌びやかな宴の裏で暗躍する者がいるのは、ある意味で当然であり必然だ。
「クフフフフ……あの神殿に刹那先輩が……この一撃を炸裂させれば刹那先輩を落とすのは難しくないからなぁ?
早う、早う来てください刹那先輩……もう一度愛し合いましょ…力の限り……先輩から全てを奪ったらどんな顔するのか…アハ…今から楽しみ。」
その筆頭とも言える月詠は、既に人としての感情を失っているのかかもしれない。
宮殿での煌びやかさとは裏腹に、その外では着々と最終決戦に向けての準備が進行している模様だ。
そして、その火蓋が切って落とされるのは、そう遠くないだろう――
To Be Continued… 
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