此れは一体何だ!?
非常識集団として有名な1−Aの面々でも、目の前で繰り広げられている光景にはそう思うしかなかった。


「はっは〜〜!1年ぶりだが、随分と腕を上げたじゃねえか兄ちゃん!」

「お前もなジャック、まさか俺と互角に戦える奴が居るとは、正直言って驚きだぜ。」


そう思うのも無理はない――だって、目の前で稼津斗vsラカンと言う最強の組み合わせでのスパーリングが、文字通り全力で行われているから。


ハッキリ言って、既にこの2人の戦闘がスパーリングの域を超えている事などは容易に想像できるだろう。
拳が、蹴りが、気功波がかち合う度に火花放電とエネルギー爆発が起こり、ともすればまるで世界の最終戦争と言っても過言ではないと言える。

だがしかし、スパーリングを行うチートバグ2名はそんな事どこ吹く風!


オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオアオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオアオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオアオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオアオラオラオラオラオラオラオ〜ラァ!!


ドララララララララララドラドラドラドラドラドララララララララララドラァァァ!!!


略零距離で、拳のスピードにモノを言わせたパンチラッシュの応酬!
その拳の速さたるや、目視不能のレベルであり、奮われた腕の残像すら見える始末!――果たしてどれだけのスピードで拳を奮っているのか…


だがしかし、この超絶ラッシュも唐突に終わりを告げる事になる


「好い加減にせんか、この空手バカと筋肉達磨がーーーー!!!」


終了の鐘を鳴らしたのはエヴァンジェリン――如何やら真祖の姫であっても看過できない事が、このスパーリングには有ったようだ……











ネギま Story Of XX 156時間目
『チートバグは混ぜるな危険!』











そして、稼津斗とラカンは、只今絶賛正座で説教の真っ最中。
如何にリミッター付きのスパーリングとは言っても、世界戦争レベルな戦いは、些か問題があったのだろう――でなければこうは成らないのだから。


「マッタク、スパーリングとは言え、アレだけの事をする奴が居るか馬鹿共が!!
 只のスパーリングならば兎も角、貴様等に限ってはリミッター付きのスパーリングですら世界を崩壊させかねん力を持っていると知れ!!」

「「は〜〜〜い。」」


故にこの説教だ。
確かにスパーリングで世界を壊しました何て事は洒落にもならない事だ、エヴァも其れを憂慮しての事なのだろう。


「だがまぁマクダウェル、戦う者としては、スパーリングでも気を抜けないと言う事を理解してくれないか?
 確かに1年ぶりの再会となりジャックとのスパーリングに興奮して、ついやり過ぎてしまった感は否めないが――此れ位は大目に見てくれよ?」

「其れは分かっているが、だが貴様等はもう少し己の戦闘力について正しい認識を持て!!
 貴様等がやりあったら、某龍玉的漫画の如く、惑星レベルでの破壊が起きるだろうがぁぁぁ!!その辺を自覚せんか馬鹿共がぁ!」


何とも酷い言われようだが、エヴァが言う事は真実であるから否定も出来ない。
尤も、そうならない為にもリミッターを掛けて居る訳なのだが……其れでも尚、戦っていた2人を中心にクレーターが発生するなど有り得ない事だ。

果たしてリミッターを解除した状態ならば如何なっていたのかなどは、空恐ろしくて考えたくもない。


「大会参加者の為にも、あの2人は魔力やら気やらを封印する魔具でも付けた方が良いんじゃねぇか?」

「其れは余り意味ないかと思いますよ千雨さん。
 あの2人に限っては、只のパンチが核兵器になりかねません。気や魔力を封印したところで、それらがハンデにはならないと思います。」

「そうだろうとは思ったけど、やっぱりかよ!
 不死身と、限り違なく不死身に近いチートバグコンビは本気でトンでもねぇなオイ!!此れはアレだ『混ぜるな危険』てやつだろ絶対!!」

「言い得て妙さね………」



「良くもまぁ、あんなのと戦うことが出来ましたなぁ、坊ちゃんも小太郎も……」

「ホンマ、良く生きてたな俺等……」

「ホントだよね……」


取り敢えず、改めて1−A+αの面々は、稼津斗とラカンの非常識な強さを再認識したようだ。
まぁ、『死なない男』と『剣の刺さらないオッサン』に常識を求めろなどと言う事は全く持って今更ではあるのだろうが……


「しっかし兄ちゃん、1年ぶりだが随分と腕を上げたじゃねぇか?
 お互いに本気を出しちゃいないが、今のスパーリングでも兄ちゃんの強さが去年の大会出場時の比じゃねぇってこたぁ良く分かったぜ?」

「武道家たる者、鍛錬を怠るなかれ。日々これ精進なりってな。
 そう言うお前こそ随分と腕を上げたじゃないかジャック?未変身とは言え、俺と互角にやりあえるとは思ってなかったぞ?」

「だっはっは、せめて無変身状態の兄ちゃんとタメ張れるくらいじゃねぇとかっこ付かねぇからな?
 まぁ、目標は最強形態になった兄ちゃんとタメ張る事だけどなぁ!ワ〜〜〜〜ッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」

そのチートバグ2人は、何時の間にやら正座を崩し、互いに強くなった事を讃えあっていた。
性質は違えど、稼津斗もラカンも武道家であるのだろう――つまりは強敵との戦いには否応なしに心が躍るのだ。此れはもう本能と言うしかない。



「やる気充分かよ!
 ……こりゃ、テオドラ皇女様に会場の結界の強化をするように言っといた方が良いかもしれねぇな……」

「ドンだけ効果があるかは不明でござるがなぁ………」



とは言え、組んではいけないかもしれない2人がこうしてタッグを結成してしまった以上、もう今年のナギスプリングフィールド杯の結果は決定だろう。


そして千雨は同時に思った――『魔法世界をブッ飛ばしてくれるなよ』と。








――――――








そして、あっという間に大会当日!
会場は言うまでもなく大入りの超満員札止め状態であり、観客席は完全に埋まって立ち見客の姿も見て取れる。

一応会場の外にも、所謂『パブリックビュー』が設置されているが、恐らくはその前も人だかりだろう――其れだけ関心が高いのだこの大会は。


だが其れも無理はない。
前大会の優勝者が、伝説の英雄と組んで参加すると言うのだから注目するな、盛り上がるなと言うのが土台無理な要求なのだ。

そして大会運営側も其れを分かっているのか、稼津斗とラカンのコンビは一番最後の登場になるように対戦表を弄っていた。
まぁ、稼津斗とラカンのコンビを最終戦の位置に配置しただけで、相手そのものは普通にくじ引きで決定したのではあるが。




其れは兎も角、試合は進み、遂に1回戦の最終試合がやって来た。


『さぁ、1回戦も此れが最後の試合!そして、皆が待ちに待った最強のタッグの出陣だ〜〜!!
 昨年の優勝者の1人であるサイ・ダブルエックスが、今年は伝説の英雄であるジャック・ラカンとコンビを組んでの出場!!
 絶対無敵とも言えるこのタッグはどんな戦いを見せてくれるのか!!解説役の私ですらドキドキとワクワクが止まりません!!!』


司会進行ですら興奮気味な事を考えると、観客の興奮と期待度は言うまでもないだろう。



尤も1−Aの面々は、誰もが『如何足掻いても負ける筈がない』と闘技場を見守ってはいたが。

「去年は悟空で、今年はベジットかよ稼津斗先生よぉ……」

稼津斗の衣装に対し、千雨は1人誰にも聞こえない程の突っ込みを展開していた――毎度の事ながらご苦労様である。



『んではまぁ、試合開始〜〜〜〜!!!』


ともあれ試合は開始さえれるが………


「セイヤァァァァァ!!!」

「オラァァアァ!!」



――バキィィィィ!!


ハッキリ言って試合にすらなって居ない。
開始と同時に、稼津斗とラカンが強襲し、相手を拳でブッ飛ばす!其れこそ魔力も気も何も使わない、純粋な拳での一発で吹き飛ばしたのだ。

そして其れだけで終わる筈もなく、吹き飛んだ相手を追従し、稼津斗は強引に相手を引き寄せてからのダイナミックな背負い投げで叩き付ける。
ラカンはラカンで、アルゼンチンバックブリーカーで締めあげた後に、デスバレーボムで叩き付ける――正にトンでもない攻撃と言えるだろう。


しかも恐ろしい事に此れで終わりではないのだ。


「決めるぞジャック!!」

「オウよ!!」

半分KO状態になった相手に対し、稼津斗とラカンは気を溜めて最大の気功波を放つ準備をしているのだ。
チートバグ全開なこの2人の放つ気功波がドレだけの威力になるのかなどは出来る事なら考えたくない――と言うか考えるだけ無駄な威力だろう。


だが、同時に此れを放つと言う事は完全なるダメ押し。
既に大ダメージを負った相手には回避手段も防御手段もないだろう――無敵と最強が組むとどうなるかと言う良いお手本のような試合展開だった。


「「喰らえ、ダブル気合弾!!!」」


放たれた一発は、相手に命中し、此処で試合終了!!
無敵にして最強の2人にとって、1回戦の相手は雑兵にもならないと言う事がハッキリと示された瞬間でもあった……








――――――








その夜、テオドラはモニターで昼間の大会の様子を見ていた。
そしてどうしても、稼津斗とラカンのコンビに惹かれてしまう――圧倒的な戦闘力は、テオドラ皇女ですら魅了する物であったようだ。

尤も、テオドラの格闘好きは万民の知るところであるが故に、稼津斗とラカンの圧倒的な強さに身が震えたのかもしれない。


「最恐と最強が組むと此処まですさまじいとは……」

その皇女をしてなお、稼津斗とラカンの戦闘能力の高さには驚くらしい――其れほどまでに稼津斗とラカンのコンビは無敵にして最強なのである。



此れは若しかしたら2回戦も瞬殺か?




誰もがそう思う事だが、しかし事はそう簡単に進むモノではない。
翌日の2回戦で、観客も、1−Aの面々も、そしてテオドラ自身も目を疑うような光景が待ち構えているのだった。







――――――








大会2日目ともなると、盛り上がりは更に凄くなり、会場前のパブリックビュー前には昨日の1.5倍近い人が集まって居る。
大会2日目で此れならば、果たして決勝戦はどうなってしまうのか、その辺は想像するのも恐ろしい領域であるのかも知れない。


だがしかし、そんな事は稼津斗もラカンも関係ない!


「いよいよ2回戦か――しかも相手はシード選手だ、ワクワクしてくるってやつか?」

「かもな……だが油断するなよ?
 2回戦の相手は中々に癖のある奴みたいだからな?」


既に2回戦も、残るところは稼津斗とラカンの試合だけである。
尤も、この2人が出張る以上は負ける事はないのだろうが――しかし対戦相手であるシード選手は余りにも異質過ぎた。



「…………」

黒いロングコートに、白の覆面をしていたせいで表情は覗えないが――しかし、野望は秘めているようだ。


「ムッハァァァァァl!!
 まぁたしても、貴様と戦う事が出来るとは思わなかったぞ!!――去年の屈辱をここどぅぇはぁらしてくれる!!!!」


そしてコートを脱ぎ捨てた中から現れたのはルガール。
去年の大会で稼津斗とイクサにフルボッコにされ、更には総督府で自爆を敢行してこの世から消え去った筈だが――如何やら復活したらしい。



「よう兄ちゃん、アイツは手加減なしでブッ飛ばしてもいいんだろ?」

「問題ないぜジャック……力の限りブッ飛ばして、二度と復活なんて事が出来ないようにしてやるだけだ!!」


其れを見た稼津斗は手加減不要のフルボッコを作戦に。



2回戦の最終試合は、如何やら一筋縄では行かないようである――同時に観客は有り得ない程の大盛り上がりの様相を呈していた。




2回戦の最終試合は、如何やら普通のバトルで終わるなどと言う事だけは無さそうである。











 To Be Continued…