1学期も半分を消化したこの季節は、同時に麻帆良学園都市の年間行事に於いて最大のイベントが行われる時期でもある。
そう、超大規模学園祭『麻帆良祭』である。

既に開催までは残り1週間となり、あらゆる学部を問わずどんな出し物をするかで連日大賑わい!!
其れは当然の如く、1−Aとて例外ではない――寧ろ、お祭り大好きの筆頭とも言える1−Aだけに、クラスの出し物についての会議は超白熱状態だ。


「え〜〜と、多数決の結果は去年お流れになった『メイド喫茶』で決定だな。
 まぁ、此れだけの華が揃ってるクラスだから、メイド喫茶も相当華やかになるだろうが――だからこそ聞きたい、この際どいメイド衣装はなんだ!!」

「客寄せには多少のエロも必要だぜ稼津君!!
 エプロンドレスのエレガントさを失わずに、しかし直接的な表現は極力抑えたエロっぽさを加えたこのメイド服は正に至高の一品!!」

超却下(ふざけんな馬鹿)!風俗営業法に抵触しそうだから無理だろ!?
 それ以前に裕奈、お前をはじめとする俺のパートナーのこんな衣装姿は誰にも見せたくない……ネギもそうだろ?」

「そうだね……エヴァやアスナ姉さんのこんな衣装姿は誰にも見せたくないかも……」


尤も出し物そのものは決定しており、問題はウェイトレスのコスチュームなのだが……如何やらメイド衣装をエロっぽくアレンジしてしまったらしい。
稼津斗もネギも、自分のパートナー達が其れを着た姿を公衆の面前に曝したくはないし、勿論パートナー以外の生徒に関しても同様の思いだ。


「むぅ…そう言う事なら仕方ないから、ベーシックなエプロンドレスにするとしようかね?
 だけど稼津兄、望むなら私等全員が此れを着て個人的な御奉仕をする事は吝かじゃないし、寧ろやる気なんだけど如何よ?」

「魅力的な提案ではあるが、お前等が全員其れを着て現れたら流石に理性が持たないのでやめて下さい、割とマジで。
 その気が無い訳じゃないけど、懲戒処分だけは絶対に喰らいたくないからな………俺はニートにだけはなりたくない。」

「ならば此処は自重でござるなぁ♪」


と、この様に会議は色んな意味で白熱し、そして会議が終われば速攻で出し物の準備!!
そして、稼津斗がチート能力をフル活用した事で、出し物である『メイド喫茶』の内装も形になり――麻帆良学園都市最大のイベントの幕開けとなった。











ネギま Story Of XX 152時間目
『消化イベント其の弐〜学園祭〜』











麻帆良祭の盛況ぶりは言うまでもなく、本年もまた初日から10万人を超す来場客で賑わっている。

1日目は大盛況の祭りの幕開けだが、2日目にはある場所で大盛り上がりのイベントが開催されていた――その場所は『龍宮神社』。
そう、去年大盛況だった『麻帆良武道会』が、今年もこの龍宮神社で開催されているのだ――此れは盛り上がらない筈がない!盛り上がって然りだ。

稼津斗、ネギ、小太郎、エヴァンジェリンは去年から引き続き参加し、他の参加者を圧倒する実力を見せつけ、順当にベスト4まで駒を進めている。
そして、準決勝第1試合は、誇張抜きにして『人外のバトル』が展開されていた。


覇王……翔哮拳!!

凍てつく猛吹雪!!



稼津斗vsエヴァンジェリンの戦いは、其れこそ一歩間違えば麻帆良全土が吹き飛びかねない激しさだ!
極大の気功波と、氷属性の極大直射砲がぶつかり合い、激しくスパークを起こし、そして限界を超えての大爆発!!観客的には大盛り上がりだが…


だがしかし、稼津斗はXXを発動していないし、エヴァンジェリンも闇の魔法は使ってないから、流石にセーブはしているのだろう。
尤もセーブした状態で『リング無用の大バトル』を展開しているのだから空恐ろしい事に変わりはないのだが――


『此れはすさまじい大バトル!!
 去年の王者である氷薙稼津斗に対して、エヴァンジェリン選手も一歩も退かず、寧ろ互角レベルの大バトル!!良いぞもっとやっちまえ〜〜〜!!』


更に、去年から引き続きリングアナウンサーを務める和美が例によって煽りまくって観客を盛り上げる。
『魔法の秘匿は?』とも思うだろうが、そもそも去年の麻帆良武道会でも人外バトルが多数展開されていた事を考えれば、マッタク持って今更である。

序に言っとくと、観客の多くは『何て弩派手な演出なんだ!!』『此れは燃えるバトル展開!!』とか思っているので一切問題ない。
更には去年と違って、今年のこの大会は『学園長公認』だから誰も何も言えないのである。


尤も、其れを抜きにしても気功術と魔法の戦いは兎も角、純粋な格闘ともなれば『剛の稼津斗』と『柔のエヴァンジェリン』の対決は見る者を魅了する。
時に柔よく剛を制し、ある時は剛よく柔を折る、正に一進一退でどちらも退かない。

そしてその激しい攻防の中で、先に勝負を仕掛けたのはエヴァンジェリンの方だった。

「貰ったぁ!!」

「!!」

稼津斗が繰り出した後ろ回し蹴りに超反応し、その勢いを利用しての合気投げを叩き込み――

雷鳴轟破投げぇ!!

ダウンした稼津斗を引き起こすようにして、再度投げつける。

「フンッ!!」

更に其れでも終わらず、体移動のみで稼津斗を放り投げ、其処に強烈な飛び足刀蹴りを叩き込んで場外に吹き飛ばす!!
流石は600年も生きて来た真祖の姫は、こと戦いに関しては稼津斗と完全にタメが張れるようだ――尤も、稼津斗が無変身であればだが。

ともあれ、稼津斗は吹き飛ばされ場外の池に転落し――そのまま上がってこない。




KOされたのだろうか?



いや、そうではない――水中を移動していたのだ。



――バガァァァァン!!



リングのほぼ中央から水柱と共に、リングをぶち破りながら稼津斗が現れ、その勢いのままにエヴァンジェリンを鋭い跳び蹴りで強襲!!
ギリギリで其れを防いだエヴァンジェリンだが、其処から矢継ぎ早に放たれる稼津斗の拳と蹴りを対処するのは流石に至難の業なのか防戦一方。

そして今度は完全に稼津斗のターン。
息も吐かせぬ連続攻撃でエヴァンジェリンを釘付けにし――


「一撃必殺……天地覇王拳!!


――ドゴガァァァァァァァァァァァ!!


超必殺の正拳突きが炸裂!!

「此れで止めだ!」

「!?」

「喰らえ……キン肉バスター!!

更に吹き飛んだエヴァンジェリンを空中で極め、最強奥義と名高い『キン肉バスター』を炸裂させる。
頸椎、両肩、両大腿部の合計5か所に同時にダメージを与える超必殺技を喰らえば、エヴァンジェリンとて只では済まない……此れにて決着だろう。


『決まった〜〜〜〜!!最強奥義キン肉バスターーーー!!
 この必殺技を喰らったエヴァちゃんは……起き上がる事が出来ない!!10カウントが此処で終了し、勝者は氷薙稼津斗〜〜〜〜!!!』





――○稼津斗(24分43秒 キン肉バスター)エヴァンジェリン●――




結果、稼津斗は見事2年連続での決勝進出と相成ったのだが、此処で誰も予想していない事が起きた。


「さてと……和美、俺は此処で棄権する。」

「は?」

何と勝者である稼津斗が決勝戦を棄権すると言うのだ。


「俺は去年優勝してるからな、別に二連覇しようって気もない。
 其れよりも、今年はライバル兼親友のバトルで決勝戦をやった方が盛り上がると思うが――その辺は如何思う?」


そして其れは、何とも粋な計らいだった。
自分は去年優勝してるから二連覇には興味がないと言いつつ、しかしライバル兼親友の戦いを決勝戦に変えると言う、何とも惚れ惚れする心意気だ。


「其れは大会規定的に可能だけど……其れで良いの稼津兄は?」

「構わないさ……何よりもライバル対決ってのは準決勝で行われる物じゃないだろ?
 ネギと小太郎の本気の戦いは決勝戦の舞台にこそ相応しい――それこそ、麻帆良武道会のファイナルを飾る戦いにはこれ以上の物は存在しない。」

「確かに……ってーと……『え〜〜、只今準決勝第1試合を制した稼津斗選手が、決勝を棄権すると申し入れてきました。
 負けたエヴァンジェリン選手には決勝進出の権利が無いので、大会規定により次の準決勝第2試合、ネギvs小太郎の試合を決勝戦とします!!』



稼津斗棄権に会場からブーイングが上がるかとも思ったが、そんな事はなく逆に大盛り上がり!
或は去年の大会で唯一の判定となったこの戦いを、今度は決勝で完全決着を付けてほしかったと言うのもあるのだろう――誰も異を唱えなかった。



『其れでは麻帆良武道会決勝戦!!
 片や何かと話題の子供先生『ネギ・スプリングフィールド』!!そして対するは、そのネギ君のライバルにして親友の『犬上小太郎』!!
 去年の準決勝でも、大人顔負けの激しいバトルを見せてくれた好敵手同士のバトル!今年は何方に勝利の女神が微笑むのか〜〜〜〜〜!?
 何にしても、此れが今年のファイナル!!悔いを残さずバッチリ行こうぜ!!決勝戦ネギvs小太郎……試合開始ぃぃぃぃぃ!!!!』



「行くよ、小太郎君!!」

「来いやネギ――どっちが上か白黒ハッキリさえようやないか!!」


そして始まったライバル対決の決勝戦!!
先の稼津斗vsエヴァンジェリンをも凌駕する激しい戦いは、結果だけを言うならば僅差でネギが勝利した。

だが、この決勝戦は後に今年度の『麻帆良ベストバウト』として歴史にその名を残す事になるのだった。








――――――








さて、学園祭に於いてパートナーがいる稼津斗は、例によって日にち別の時間割で、自分のパートナー達とデートの予定が満載である。
1日目に裕奈、アキラ、真名を消化し、2日目には麻帆良武道会までに楓とアキラを消化し、大会後は亜子とのデートと相成っている――のだが……


「まさか、今年もあの筋肉達磨に拉致されるとは思わなかったで……」

「強引な勧誘にも程があるだろ……学園祭実行委員の方で取り締まれよ……」

去年同様に、デートの最中に突如現れた筋肉達磨に拉致られ、『ベストカップル』コンテストに(半ば強制的に)出場する事になってしまったのだ。




とは言え、出るからには矢張り勝ちたい。
まして去年がダブル優勝だっただけに、今年はオンリーワンの優勝をもぎ取りたい所だろう。


「狙うは優勝だな……」

「せやね。」


その気持ちは稼津斗も亜子も同じ!!
衣装選びにも熱が入り、稼津斗は『黒いレザージャケット』を選択し、亜子は『真紅のイブニングドレス』をチョイスし――圧倒的な大差で優勝を決めた。


稼津斗が亜子の手を引いて舞台に立ち、そしてそのままお姫様抱っこを敢行し、更には額にキスを落としたと言うのが観客のハートをガッチリキャッチ!
もっと言うならば、其れのお返しとして亜子が稼津斗の頬にキスしたのも大きいだろう……観客の一部は砂を吐いていたが、其れも仕方ない事だろう。


なお、この結果を知った他のパートナー達が『来年は私と』と、稼津斗に迫ったのはある意味でお約束であった。








――――――








三日目は予想通りと言うか、其れこそ大いに盛り上がった。

去年大人気だった全体イベントがさらにグレードアップして開催されたのだから、其れも当然の事だ。
特に今年は去年と違って、超の企みやら何やらはマッタク無い完全な『娯楽イベント』であるので、魔法先生達も気を張らずにイベントに参加していた。


麻帆良全体で、火花やら光線が飛び交い、防衛組のお助けユニットである『ヒーローユニット』と、侵略者サイドの『インベーダーユニット』が超バトル!!



もっとも去年とは違い、今年は侵略者サイドが負ける事が最初から決まってる、ある意味での『出来レース』なのだが皆が楽しんでいるから無問題。
開始から2時間が経つ頃には侵略者サイドの戦力は半分以下になり、防衛組が一気にイケイケムードとなり、その勢いのままゲームエンドに!!



そしてゲームエンドと共に、夜空には無数の花火が……超のニクイ演出だろう。


ともあれ、今年の麻帆良祭は去年以上に盛り上がったと言っても過言ではないだろう。





なお、打ち上げパーティに於いて稼津斗がウォッカをストレートで5本空けると言うトンでもない事をした事を明記しておく……
















 To Be Continued…