4月――其れは新たな始まりを告げる時。
旧3−Aの面々も無事に高等部に進学し、本日より『麻帆良女子中等部3−A』改め、『麻帆良女子高等部1−A』として再始動開始である。


因みに、旧3−Aが進学したのは、麻帆良女子高等部の代名詞とも言える『ウルスラ』ではなく、其れとは別の女子高等部。
そうなったのは、旧3−Aメンバーの特異性と言うのが最大の事であり、更に魔法生徒の高音がウルスラに在籍していると言う事も影響している。

早い話が『すでに魔法生徒が存在しているウルスラに、新たに魔法関係者をブっ混むのは幾ら何でも危険だ』と言う事だ。


もっと言うなら、近右衛門が『戦力がウルスラに集中するのは良くない』と判断し、彼女達を別の女子高等部に振り分けた裏事情があるのだが……



ともあれ、4月からは制服も新たに彼のメンバー達の新たな1年が幕を開ける訳で……


「1年A組〜〜〜〜〜!!」

「「「「「「「「「「氷薙先生〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」」」」」」」」」」


此処1−Aの教室では、和美の号令(?)により、他のクラスでは絶対起こり得ない新学年の盛り上がりが起こっていた。


まぁ、此れもある意味でお約束であるのだろう……










ネギま Story Of XX 150時間目
『春だ、新学期だ、高校生だ!!』











「全く、相変わらず元気だなお前達は?俺のパートナーは兎も角として、実は全員がオリハルコンの力を得てるんじゃないかと時々疑いたくなるな?
 まぁ、元気であるのは良い事だし、元気が一番、元気があれば何でもできるって言うからな――寧ろこのテンションは平常運転か。」

だが、このクラスの担任である稼津斗からすれば、此れ位のハイテンションは普通の事であり、寧ろ此れが平常運転。
静かに大人しかったら、逆にそっちの方が大問題とも言えるのだ、この面子に限っては。

だから多少騒がしくとも稼津斗は其れを咎めたりはしない――皆が元気である証なのだから。


「さてと……改めて、高等部進学おめでとう。
 今更自己紹介もないだろうが、今年1年は俺がお前達の担任を務めさせてもらう――色々あるだろうが、まぁ、宜しくな?」

「勿の論でしょうに稼津兄!!
 私等新1−Aは、旧3−Aと何ら変わらない!!ドタバタも非日常も何でもござれの最強集団てね!!」

「そうそう!
 確かに色々あるかも知れねーけど、私等に不可能なんて無いっての!!ノリと勢いでどんな困難でも乗り越えちゃうのが私等……そうでしょ皆!」

「「「「「「「「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」」」」」」」」」


だから互いに畏まる事もない。
和美と裕奈の一言に、クラスは速攻で超同調!!正にクラスとしての絆の強さを覗わせてくれる。



「頼もしいな……まぁ、そう遠くなくお前達の力は絶対に必要になるから、その時は頼む。」

「了解にござる。……時に稼津斗殿、ネギ坊主は何処に?
 ネギ坊主は、今年はこのクラスの副担任で有った筈と記憶しているが………」

改めてホームルーム……と言うところで、楓がネギの不在に気が付いた。

確かに楓の言う通り、ネギは今年度はこの1−Aの副担任として教師業に携わる事が決定しているが――その姿が教室の何処にもないのである。
流石に初日からの不在と言う事態には、少しばかりの疑問を抱いたとて、其れは当然と言えるだろう。


「ネギ?……あぁ、アイツは今魔法世界だ。
 例の計画に進展があったとかで、そっちの方に力を入れるらしい……ネギがこっちに来るのは、どんなに早くても10日後だな。」


そしてネギが居ない理由は、魔法世界の改良が原因だった。
滅びを待つしかなかった世界を安定させる計画は、順調に進んでいるが、しかし一朝一夕で如何にかなるモノでもないのもまた事実。

春休みを利用して、アレや此れやとやってきて、漸く春先に計画を大幅に進める事が出来たのだ――ネギのバイタリティには脱帽レベルである。


で、その計画の最重要人物であるネギは、本日は魔法世界に居る為に麻帆良には不在状態。
或は、計画の促進を見越して近右衛門はネギを『副担任』と言う位置に置いたのかもしれない。



因みに、少しだけ付けくわえると、ネギは春休み中に一度ウェールズに帰省し、メルディナ魔法学校で『卒業試験合格』の通知を受け取っていた。
『日本で先生をやる』と言うぶっ飛んだ卒業課題も、あの爆裂大冒険の夏休みの事も有って見事に課題クリアと相成ったのだ。

尤も、その背景には『此処でネギを不合格にしたら闇の福音に殺されるんじゃね?』と言う、魔法学校長の考えが無くはなかったのだが……



だが、此れに少しばかり不満な顔をしたのはエヴァンジェリンである。
ナギに掛けられた呪いがなくなった今、彼女もまた高等部へと進学していた――ある程度成長した姿故、女子高生でも違和感はない。


「なんだ、向こうに行っていたのか?
 初めて着る高等部の制服をネギに見せたかったのだがな………まぁ、ネギが帰って来た時に披露してやれば良い。
 愛する者を待つ事が出来るのもまた『良い女』の条件だからな………この制服を着た私を見てネギが何と言うか楽しみだな♪」

だがしかし、すぐさま思考をシフトし『ネギが帰って来た時に見せてやれば良い』という方向に変わる。
尤も、其れでも寂しさはあるのだろう――少しばかり哀愁を含んだエヴァンジェリンの笑顔は『芸術品』の如き美しさがあった。


そして、そんなエヴァンジェリンを放っておくはずがない者が約1名……


「薄く頬を染め、愛する人の帰りを待ちわびるマスター………此れは堪りません!!」

言わずもがな茶々丸である。
最早彼女にとって『可愛らしいマスター』の姿を記録するのは常識であり、絶対の事なのだろう。

「此れはもう静止画で30枚、動画で2分間記録した上でトリプルSレベルのプロテクトを掛けて永久保存しなくては満足できません!!」

「………如何にもテメェは学ばねぇみたいだなボケロボ――人の恋路をテメェの欲望充填の為に使うなって何度言えば分かるんだオメェは!!」

例によって暴走し始めた茶々丸だが、其処に最強のストッパーである千雨が乱入!!


アントニオ猪木も吃驚の延髄斬りを一閃したかと思うと、カール・ゴッチも絶賛モノのジャーマンスープレックスを炸裂!!
更に其処から連続ジャーマンに繋ぎ、トドメはルー・テーズが見たら100点満点の評価を下すであろうバックドロップホールド!!


「カウント開始!!1!2!!3!!!……千雨ちゃんの大勝利〜〜〜〜〜!!」



――○長谷川千雨(0分32秒 バックドロップホールド)絡繰茶々丸●――



結果は千雨の完全勝利!!
自称一般人を謳う千雨は茶々丸限定で最強であった――其れでも本人は一般人だと思っているのだが……


「あ〜〜〜〜……何やらあれだが、兎に角高等部もこの面子で過ごす事になるだろうから、宜しくな?」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


ともあれ新生『高等部1−A』が此処に降誕!!






後にこのクラスは旧3−Aと併せて『麻帆良最強学級』として後世に名を残す事になるが、其れはまだまだ先の話である。








――――――








そして、高校に進学したとは言っても日々の鍛錬に何か変化があると言う訳でもない。
稼津斗組、ネギ組ともに更なる高みを目指して精進あるのみ!!――なのだが、今日に限っては少しばかり様子が違っていた。


「おぉぉぉぉぉぉぉ……!!!」

「ちぃ、パワーとスピードを完璧に兼ね備えた相手が此処まで厄介だとはな……」

原因は稼津斗とエヴァンジェリンが手加減不要の模擬戦を行っているからに他ならない。


自他共に最強を認める稼津斗だが、エヴァンジェリンとて600年以上を生きて来た歴戦の強者――其れゆえに互いに有効打を決められずにいる。


だからこその泥仕合。


互いに決定打が入らない上に、逆に相手の動きを読める事で完全な泥仕合と化しているが、稼津斗もエヴァンジェリンもそんな事は無問題だ。


「おぉぉぉぉ!!」

「させるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


稼津斗の『禊』とエヴァンジェリンの『アッパー掌底』がかち合い、激しくスパーク!!――最強の不死者の戦いは模擬戦であっても全力全壊である。




「……互角か……」

「いや、私の負けだ――通常状態のお前と互角ならば、お前がXXに変身したら私は勝つ事は出来んだろうからな……お前の勝ちだ稼津斗。」



結果としては稼津斗の勝利!

如何にエヴァンジェリンと言えども、ラカンをも上回る『チート無限のバグキャラ』が相手では相当に分が悪かったのだろう。


ともあれ、この模擬戦もまたトレーニングの一環であり、未変身とは言え稼津斗が『本気』を出せる数少ない場所となっている。
それ故にこの場所は最高の『鍛錬場』として認識されているらしく、時たま魔法とは無関係の格闘家擬きが集まってくるが、其れは強制退去だ。


「ふぅ……」

「お疲れ様。」


一戦を終えた稼津斗に、アキラはよ〜〜く冷えたスポーツドリンクを差し出す……この辺の気遣いも実に見事である。


「ふぅ……感謝するよアキラ………未変身状態でエヴァンジェリンの本気を受けきるのは流石に骨が折れたからな。
 一息入れたいと思っていたし、このよく冷えたアクエリアスは正直非常にありがたいよ。」



稼津斗に他意は無い――言うなれば素直に、率直に感謝の辞を述べたに過ぎないのだが――


「べ、別に大した事じゃないよ――此れ位はパートナーとして当然の事だと思うし………///

「其れでもその気遣いには感謝だ。」


愛する人からの感謝に照れるなと言うのが無理な注文だ!!絶対不可能だ!!
更に稼津斗はアキラを優しく抱擁し、額に軽く口付ける――此れだけで、アキラは爆発寸前である!!


「あう…あう……あうぅぅぅぅぅ………///


その証拠に顔を真っ赤にしてフリーズしてしまった。恋する乙女は、いつ何時でも初心であるらしい――この時のアキラは極上レベルで可愛かった。




「和美、今の稼津君のナチュラルジゴロの戦闘力はドレくらいよ?」

「どんなに少なく見積もっても15億は下らないね〜〜〜………天然イケメン恐るべし……」


その横で、なんだか良く分からないモノを計測していた一団が存在していたが、取り敢えず麻帆良は新たな季節を迎えても概ね平和であった。








――――――








其れと同じ頃、魔法世界の辺境の果てにて………


「まさかこんな所があるとは意外でしたわ〜〜〜………此処で力を蓄えて刹那先輩と再戦……あは、想像しただけでイってまいそうやなぁ……」

恍惚とした表情を浮かべ、『快楽殺人者』こと月詠は刹那との再戦を心待ちにしていた。
と言うか、刹那との再戦を想像しただけで達しかけるなど、月詠は完全に『異常者』と見て間違いないだろう――真面な精神は欠片もない筈だ。


そしてその傍らには、玉座を思わせる椅子に腰かけるローブの男――始まりの魔法使い。


異常性癖全開の月詠を冷ややかな目で一瞬見やったと思うと、再び視線を足元におとして瞑想に入る。



「……………」


かの者が何を考えて力を蓄えているのかを知る者は居ない。



魔法世界の救済を目した計画の裏で、少しずつ――しかし確実に『最終決戦』へと至るであろう事柄は進行していた……






「あふ……うふふふふふ……刹那先輩ともう一度愛し合える(殺し合える)なんて、想像しただけで………あはぁん……あふふふふふふふ……」

「………………少し、弄り過ぎたか……」


何やら、かの者が月詠の異常性に拍車をかける『何か』をしたらしい。
尤も何をしたのかは分からないが……

しかし、如何考えてもぶっ飛んだ奴が居る以上、何れ起きるであろう最終決戦は(主に刹那限定で)真面な戦いにはならないであろう…














 To Be Continued…