殊更大きな事は何もなく、気が付けば3学期も半分以上を消化し、残すは学年末考査と卒業式と言ったところである。



だがしかし、2月に半ばである本日2月14日は乙女にとって外せない1年の中での最大イベント――そう、バレンタインデーである!!
最大限ぶっちゃけると、3−Aには本命を持つ者が実に10人近いと言う異常事態であり、その内8人は同じ人物が好きだと言うのだから驚愕だ!!


で、其の8人とは言わずがな稼津斗組の彼女達。
最強の絆を紡いでいるが故に、バレンタインデーと言う事もないだろうと思うだろうが――甘い!!

最強の絆を紡いでいようとも、思い人にバレンタインデーのプレゼントをしたいの乙女の真理だ、世界の常識なのだ!!(多分違うだろうが…)


「つーわけで、稼津兄が満足するチョコを誠心誠意作り上げるぞ〜〜〜〜〜!!!」

「「「「「「「お〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」」」」」


でもって、エヴァンジェリンのダイオラマ内部では、乙女達による『ドキ!手作りチョコレートでアピール大作戦』が展開されたいた。
稼津斗のパートナー達は言うに及ばず、エヴァンジェリンも参加して居る辺りは可成りのガチだと見て良いだろう。


尤も稼津斗もネギも、彼女達からのバレンタインプレゼントならば文句の一つも言わずに貰いそうだが――其処は大して問題ではないのだろう。
大切なのは、ドレだけ気持ちを込め、其れが伝えられたかなのだ………キッチンが一種の修羅場と化してしまうのは恐らく仕方のない事だ……


はてさて、一体どんなチョコレートが出来る事やら…











ネギま Story Of XX 147時間目
『Saint Valentine Rhapsody』











「ハート型も良いけど、稼津さんやったら洋酒を加えたトリュフの方が良いやろうか?」

「確かに其れはアリかも……ハーフ&ハーフで詰めるのがベターかな?」

「ネギは甘めの味が好きなようだが、だからと言って甘すぎるのは良くない……
 砂糖は標準の半分程度に抑え、代わりにミルクとクリームをふんだんに使って自然な甘さと濃厚さを演出したトリュフの方が良いだろうな………」


皆真剣である!この上なく真剣である。
特にネギの事を思ってあれこれ考えているエヴァンジェリンは非常に可愛らしい!!


其れこそ茶々丸が録画するほどである――その茶々丸は千雨の手によってどこぞに強制連行されてしまったのだが……まぁ、頑張れ。




其れは其れとして、手作りチョコレートとは言っても、結局は市販のお菓子用チョコレートを湯せんして溶かして、成形したモノに他ならない。
カカオから作れと言うのは余りにも無茶振りである故に、この方法がポピュラーである。


同時に、だからこそ個性がモノを言うのは否めない。
成形段階までが略同じであるのならば、其処から先で個性を際立たせねばアピールは不可能なのだ。


結果として、稼津斗組のバレンタインチョコは、ハート形有、チョコレートケーキ有り、チョコレートクッキー有りと言うフリーダム状態になりそうである。


エヴァンジェリンの方は、相手がネギ1人なのでそれほど苦労はないようだが、どんなモノを作るか未だに悩んでいるようだ――其れも仕方ないが。




「そう言えば前々から気になってたんだけど、稼津兄ってば毒とか効くのかね?」

して、チョコレートを作ってる最中に唐突に和美がこんな事をのたまってくれた。


「唐突だな和美……」

「いや、自分でもどうかと思うんだけど、チョコレート作ってたら、この前見たサスペンスドラマで手作りの料理に一服盛ってってのを思い出してさ?
 私等も基本不死身だけど、稼津兄ってば不死身の上に無敵じゃん?……果たして即死レベルの毒が効くのかなぁと思ってね?」

一応どうかと思う自覚はあったらしいが、改めて言われると確かに少々気になる案件ではある。
オリハルコンの特性故に、頭ふっとばされても死なない正真正銘に不死身な稼津斗に致死性の毒が効くのかと言うのは疑問もあるだろう。

まぁ、750mlのウォッカを一気飲みして全然平気な顔をして居る辺り、稼津斗の肝臓が持つ解毒能力は並外れているのだろうが……


「いっそ試してみる?」

「待つでござる和美殿!!流石に毒を盛るのは……」

「あ〜〜〜……大丈夫、毒じゃなくて超りん特製の『超濃厚バイア○ラ』(効果は通常の5倍)だから。」

「なぁ!?ある意味青酸カリより性質が悪いよ其れ!?」

「もしも此れが効果抜群だった場合、稼津兄は催淫の波動に目覚めて、一晩中野獣の様に私達を求めて……」

「其れは色々やばすぎるよ!?」

「まぁ、冗談だけどね?因みに此れはバニラエッセンスだよん〜〜〜♪

冗談は冗談らしいテンションで言ってください!!和美さんが言うと割と本気に聞こえて怖いです……

マッタクである。



ともあれこの話題は此処までだ。
確かに気になるだろうが、流石に一服盛って試す訳にも行かないし、冗談はさておいてもそんな事はしたくないのが本音である。


因みにクスハだが、亜子よりココアで煮たお揚げを貰ってご満悦である。(きつね的には全然OKな一品であるらしい。)



「話は変わるけどさぁ……エヴァちゃんとネギ君はもう周知のカップルになってる訳だけど……」

「ん?如何した明石裕奈?」

「いや……もしエヴァちゃんとネギ君がくっついてなかったら、絶対に委員長が『等身大のネギ君チョコ』を作った気がすんのは私だけかな?」

「実はウチも思った。」

「奇遇だな私もだ……オリジナルの主は『彼』ベースで作りそうだがな…


確かにやりそうではある。
もっともエヴァが居る現在ならば、ベーシックなトリュフの詰め合わせ(特上の高級品)になるのだろうが……


んがしかし、此れに喰いついた者が居る――言わずもがなエヴァンジェリンである。


「それだぁぁあぁぁぁぁぁ!!!
 私とネギの等身大チョコレートならば、多少量は増えるが私だけのプレゼントとする事が出来る!!」

どんなチョコレートにするか悩んでいただけに、等身大のチョコレートと言う発想は直球ドストレートだったらしい。
とは言っても、実際に等身大のチョコレートを作るとなると、材料が圧倒的に足りないのもまた事実!!と言うか、明らかな予算オーバーである。


「待てやエヴァちゃん!!幾ら何でも等身大はアカン!!
 材料費が高騰する上に、ネギ君かて食べきれへんやろ!?食べきる前に悪くなって、半分以上が残ったまま生ごみになってまうで!?」

「そ、そうだよ?
 気持ちは分からなくもないけど、此処は普通に初期案通りの濃厚トリュフを作っておくべきだと思うよ?」

「む……確かに食べ物を粗末にするのは良くないか……」

其れも亜子とアキラの説得の甲斐あって、何とか回避できたようではあるが………


「む?和美、それはウィスキーボンボンかい?」

「うんにゃ、稼津兄の好みに合わせて『ウォッカボンボン』。」

「其れ美味しいのでござろうか?」

「さぁ?」

「チョコレートとウォッカは流石に合わねーでしょうに……」

「稼津斗ならば普通に食しそうだがな…」

「無類の酒好きですからね稼津斗さんは……しかもウォッカとかジンとか強いのばかり……」


そんなこんなで、所々でカオス空間が発生しながらも、極めて順調に(?)チョコレート作りは進んで行った。








――――――








そしてバレンタインデー当日!
稼津斗組もエヴァンジェリンも、問題なく渡す物は渡したのだが……

「く……生徒から貰えるとは羨ましい事この上ない!!妻から本命を貰えるとは言え、矢張り生徒からのがないと言うのはプライドがぁぁぁ!!!」

「知るか!!てか、其れで俺に当たるのはお門違いだろガンドルフィーニ!!
 生徒から貰いたいなら、生徒の方から『この先生にはバレンタインのプレゼントをしたい』って思われるような先生になれば良いだけの事だろ!?
 あの新田のオヤッさんだって『お父さんみたいだから』って理由で女子からチョコレート貰ってる訳だし……お前もう少し頑張れ!!」

「何をどう頑張れと言うのダァァァ!!!!」


生徒から1つも貰えなかったガンドルフィーニが、本命+αで15個以上のチョコレートを貰っている稼津斗に突っかかっていた。
尤も総量から言えば、ネギは本命+その他多数によって30個を超えているのだが、其処は突っ込まないお約束なのだろう。

因みに小太郎は夏美からの本命と、千鶴からの『姉から弟へのプレゼント』的なモノの合計2つ。
更に言うとフェイトはディズからデカデカと『義理』と書かれた義理チョコのみ……フェイトはバレンタインデーは完全な負け組であった。


「く……だが数では負けても、私には妻からの最高の1個が……」

「その最高の1個と同等の物が、俺の場合は8個もある訳だけどな?」

「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!!
 もう絶対に許さん!!ある意味で男の夢であるハーレム状態を体現して居る等万死に値するぞ稼津斗君!!」

「望んでそうなった訳じゃないが……良い男には、自然と良い女が集まるって事さ……歴史を紐解いても権力や財力には人が群がるがな。
 だがしかし、俺の場合は、そんなモノはそっちのけで『俺』に惚れてくれたんだ――これ以上に男冥利に尽きる事はないだろ?」

「サラッと言ったね君は!?
 しかも君が言うと物凄く説得力があるから、其れが逆にムカつくと言うか許し難いと言うか……取り敢えず一発殴らせてくれるかな!?」

「お前の拳程度じゃ蚊ほども効かんが……だが断る!!
 生憎と俺はマゾヒストじゃないんだ……進んで殴られてやるような特殊な性癖は持ち合わせていなくてね。」

「ぶっ殺す!!!」

「やってみろ……!!」


で、職員室は一触即発の睨みあい状態。
まぁ、仮にバトルに発展したその時は、即座に稼津斗がガンドルフィーニの首っ玉を掴んで校舎外に連れ出して無問題なのだが………



「全く懲りないのぉガンドルフィーニよ……」

「止めますか?」

「いや、面白いからもう少しこのままにしとこう♪
 それにじゃ、バトルになったらなったで稼津斗君が見る側が惚れ惚れする瞬殺を見せてくれそうじゃしのぉ♪」

「では、このままにしておきますね♪」

「其れで良いんですか学園長〜〜〜〜〜〜!?」

そして、愛する孫娘と、その護衛を務める剣士と、熟練の陰陽師の女性からバレンタインのプレゼントを貰った近右衛門は頭のネジが緩んでいた。







以上が、今年度のバレンタインの全容である。




追記として、エヴァンジェリンの何かが暴走してネギと一線を超えたと言う噂が立ったが真相は闇の中である。


更に超の調査結果として、稼津斗はフグ毒ですら即時解毒するだけの解毒能力を有していたとかなんとか………不死身は本気で不死身であった。









 To Be Continued…