一月一日……新たな年開け、ぶっちゃけお正月。
大晦日に大騒ぎをした稼津斗組の面々は、そのまま稼津斗宅にお泊りした訳であり、つまりは稼津斗宅で新年を迎える事と相成った。


なったのだが……

「和美、お前何祖企んでる?」

「気付かれたか……流石は稼津兄。
 まぁぶっちゃけ言うと『既成事実』を捏造しようかなってね!!
 大晦日って事で、昨日は稼津兄もしこたま飲んでたから、前後不覚になってもおかしくないし、どんな間違いが起きても酒のせいに出来て無問題!
 なので、下着姿で稼津兄に添い寝してりゃ既成事実の捏造くらいは出来ないかなと思ったんだけど如何よ?」

「如何よ?じゃないだろ!!お前は何か?俺を懲戒処分にしたいのか?
 俺だって男だからそっち方面に興味がないと言えば嘘になるし、お前等を抱きたいって気持ちが無い訳じゃないが、今はダメだろ絶対!!
 教師が生徒に手を出したってドンだけのスキャンダルになると思ってるんだお前は!!」

「大丈夫、学園長買収すればすべて何とかなるから!!」

「OK、取り敢えず麻帆良で一番恐ろしいのはお前だと言う事を認識した。」

「まぁ、冗談だけどね?」

「冗談は冗談らしいテンションで言ってくれ!!」


麻帆良のパパラッチがよからん事を企てたせいで、新年早々カオスディメンジョンが発動であった。
まぁ、愛する人と結ばれたいと言う気持ちも分からなくはないのだが、和美の場合些か積極的過ぎるのは否めないだろう……まぁ、彼女らしいが。


「まぁ、冗談ならば兎も角として、何れにしてもそう言うのはお前等が高校卒業したらな?其れまでは我慢せい――我慢もまた修業だ。」

「成程……だが敢えて言おう!!性欲を持て余す!!!!」

「其処まで面倒見切れるか!!自家発電で何とかしておけ!!!」


……取り敢えず新しい年の幕開けであった。











ネギま Story Of XX 146時間目
『謹賀新年も何時も通り!!』











と、こんな感じの騒動があったが時刻はまだ6時前であり、起床には少しばかり早い。
だが、稼津斗と和美の不毛な問答が繰り広げられている間に、亜子達も揃って起床していた――何故ならそろそろ朝日が昇ってくるからである。

『初日の出を皆で拝む』と言うのは、実は可成り前から決まっていた。
幾多の戦場を超えたとは言え、稼津斗組はほぼ全員が年頃の乙女――思い人と共に、初日の出を拝みたいと言うのはある意味で真理だろう。

だからこその早起き。
外気は可成り冷たいが、其れが逆に覚醒に一役買ってくれているらしかった。


「ふあぁあ……あけましておめでとう、稼津君!!」

「謹賀新年!今年も宜しくでござる♪」


で、裕奈と楓の新年のあいさつを皮切りに、次々と新年のあいさつをしていく。
まぁ、流石に新年のあいさつの、ある意味で定型文化された物を変に変える者は居ない――と言うか出来なかったと言うのが本音だろうが。


「あぁ、此方こそよろしくな。」


その新年のあいさつに、稼津斗もシンプルに返す。
飾り気のない新年のあいさつだが、其れがまた稼津斗らしいとも言えるので別に問題はないだろう。


寧ろ、冗談とは言え新年のあいさつもなしに何やら画策した和美の方が問題と言えば問題なのである。


「あ、そうだ……遅ればせながら、ハッピーニューイヤー稼津兄!今年も宜しくね〜〜〜〜〜♪」

「普通はそっちが先だろう和美……」


確かに新年の挨拶の方が先であろうが、和美的には別にどっちでも良かったらしい。
因みに何時の間にかちゃんと服を着ているのも何時もの事であり今更誰も突っ込まない。寧ろ突っ込んだら負けなのである。



さて、全員起床したとなれば勿論、早速初日の出を拝みに行く訳なのだが、絶好のスポットである海岸や世界樹広場は恐らく大混雑。
下手をしたら揉みくちゃにされて、碌に初日の出を拝めなかった等と言う事にもなりかねない――寧ろその率が高い、麻帆良的には絶対に。


だがしかし、稼津斗達には一般人には絶対に不可能な絶好のポイントがある。


そう『空』である。
気やら魔法やらで全員が空を飛べるのならばこれ以上の絶好ポイントはないだろう。



「雲一つない薄明の空――新しい年の初めに相応しい景色だな。」

「で、ござるなぁ♪」

そして、稼津斗とイクサの瞬間移動を使って、一行はあっと言う間に大空に。
ぶっちゃけると、一行が居る高度は余裕でジェット機とかの飛行高度を超え、もう少し上昇すれば成層圏突入なのだが、不死身だと問題ないらしい。

まぁ、稼津斗の戦友であるどこぞの英雄は不死身でもない生身の人間でありながら成層圏突破してたりするのだが……






――閑話休題(それはさて置き)





兎も角、此処が絶好の初日の出ポイントであるのは間違いないだろう。
一行が此処に来てから約1分後に、新年を照らす眩い陽光が薄明の空を茜色に染め上げ、新たなる年の始まりを日本全土に告げた。



因みに、此処よりも1000mほど低い高度で、ネギとエヴァンジェリンが同様に初日の出を拝んでいたのはある意味でお約束である。








――――――








さて、初日の出を拝んだ後は……矢張りお正月と言えば初詣である。
此処麻帆良では、数少ない神社である『龍宮神社』に溢れかえらんばかりの人、人、人!!よくも此れだけ集まったモノだと感心するくらいだ。


その人だらけの神社の入り口で……


「凄い人の数だね……」

「幾ら何でも多過ぎるやろ……」

「此れは、下手したら東京の明治神宮とタメ張れるかもしれないな……」

稼津斗、ネギ、小太郎の3人は己のパートナー達を待っていた。尤も居合わせたのは全くの偶然なのだが。



彼等のパートナー達は、何やら準備があるらしく、野郎3人は先に神社で待っていると言う訳である。




何の準備かって?



其れは勿論――


「稼津君お待たせ〜〜♪」

「思ったよりも手間取ったわ〜〜〜。」

「まぁ、普段あまり着るモノじゃないし……」

「ぶっちゃけ正月以外で着るとしたら成人式位っしょ?」

「でござろうな〜〜〜……」

「まぁ、私の場合は実家の手伝いで巫女服を着る事はあるんだがな……」

「えと……その、似合ってますか?」

「着物と言うのも初めて着たんだが……おかしくないだろうか……?」

「そう言えばお母さんの人間状態は着物だったな〜〜〜……」



「待たせたなネギよ……如何だ、似合っているか?」

「木乃香が着付けできて助かったわ……千雨が着付け出来たのは意外だったけど……」

「和服キャラのコスプレとかしてる内に覚えちまったんだよ………」

「流石は千雨さん、実益を兼ね備えた趣味と言うのは素晴らしいと思います。」



「えっと……ど、如何かな小太郎君?……千鶴姉に着付けして貰ったんだけど……おかしくないかな?///



着物に、もっと言うなら振袖に着替えていたのだ!!
女子の初詣は着物で振袖!此れは鉄板であり、大和撫子の常識であり、反対意見は宇宙の彼方に蹴り飛ばす真理である!!
寧ろ日本の伝統である着物で初詣をすると言うのはある意味で日本人の心意気だ!古事記にも日本書紀にもそう記されている。(大嘘)


「良く似合ってるじゃないか?
 種類は違えど、此れだけの絢爛な『華』が揃うと、何とも煌びやかだな……着る者が良いからこそまた振袖も引き立つか……」

「良く似合ってますよエヴァ、アスナさん、千雨さん、茶々丸さん♪」

「えっと……まぁ、俺はそう言うのは良く分からんけど――まぁ、アレや……俺は良いと思うで夏美姉ちゃん///

そして勿論、稼津斗達だって彼女達の振り袖姿に異論はない!
何れも劣らぬ美人揃い――その美女達が夫々の魅力を最大限に引き出すデザインの振り袖を纏っているのだから異論など有る筈もない!!

全員が率直な感想を口にし、パートナー達も嬉しそうだ。
因みに小太郎と夏美が何とも初々しいのが非常に微笑ましい。



で、合流したとなればお参りなのだが、この大混雑では本殿に辿り着くのも30分ではきかないだろう。
尤も、待ち時間の間でも適当に話をしているだけで暇を潰せるので、其れはあまり問題ではなかったりするのだが………



そして待つこと35分、漸く一行のお参りの番。
人数は多いが、稼津斗組、ネギ組、小太郎&夏美と分けると余計に時間が掛かるので、大人数で一気にお参り。

「ちょっと待て稼津斗にぃ!其れは家としては有り難いんだが、本当にお賽銭に諭吉さんを入れて良いのかい!?」

「給料はたんまりもらってるがあまり使い道もなくてな……財布の肥やしにするよりも有効活用してくれた方が良いだろう?」

「其れは……なら、その好意は有り難く頂いておくよ。」

稼津斗が賽銭箱に諭吉さんと一葉さんと英世さんを1枚ずつ投入していたのだが、まぁ賽銭で大事なのは心なので、此れ位でも問題ないだろう。



――パンッ、パンッ!!



柏手を打ち、暫し沈黙……願い事の差異はあるだろうが、その根幹に在る物は変わらない。





――今年一年を無事に……




それ以外にはないだろう。





さて、お参りが終われば此れまたお約束の御神籤!!


なのだが、稼津斗が若干匹渋っている。他のメンバーは全員引き、大吉だの小吉だの盛り上がっていると言うのに如何したのだろうか?


「どったの稼津兄?」

「稼津さんは引かへんの?」

「いや……京都でトンでもないのを引いたから、またアレなモノを引くんじゃないかと思ってな……」

原因は1学期の修学旅行。
あの時東大寺で『最凶』と言う謎神籤を引いてしまった故に、今回も何か変なモノを引くんじゃないかと思ってしまったらしい……特に新年だけに。


「只の運試し故に引いては如何でござろう?」

「流石に家でも、正月は凶系は極端に少なくしてるからアレレベルは引き当てないとは思うよ?」

「……だよな?流石にアレレベルがもう一発はないよな……」

其れでもパートナー達の後押しもあって、稼津斗も覚悟を決めて御神籤をドロー!!!!
そしてその結果は………


「やっぱり引かない方が良かったかもな……」

「「「「「「「「「うっわ〜〜〜〜〜〜〜………」」」」」」」」」


その結果は……なんと『史上最凶』
『凶』が『強』ならば間違ってるとは言えないのだが、此れはダメージが大きい。そもそも『最凶』――最も禍々しいとは何なのか説明が欲しいものだ。


追記として、ネギと小太郎は揃って大吉であった。
最強チートバグレベルの稼津斗であっても、運居天賊だけは如何しようもないらしい――天運を神に任せるとは至言であった。








――――――








初詣を済ませた稼津斗一行は、再び稼津斗宅に集結し、今度はミニ新年会。
裕奈と亜子とのどかとイクサで作った特製のお節料理に、楓とアキラで作ったお雑煮、真名と和美が仕込んだお屠蘇で、正月を満喫。


「ね〜〜〜、稼津君お年玉は〜〜〜?」

「お正月と言えばお年玉……稼津兄、お年玉プリーズ!!!」

「そう来ると思って既に用意してあるから、自分の名前が書かれたのし袋を持ってけ。」

気前よくお年玉まで出ている様子。


新たな年の幕開けは、賑やかに過ぎて行くのだった……











 To Be Continued…