時は12月24日、世に言うクリスマスイブであり、1年の間でも最大のイベントと言っても過言ではない日である。

期末テストを見事にトップで通過した3−Aの面々も、今日この日を心行くまで堪能しているに違いない。
そして其れは、稼津斗達とて同じ事――イブのパーティーを全員で企画して、大いに楽しもうとしていた。


「金は俺が出すから、是非ともメインは七面鳥にしてほしい!!
 ローストチキンは何度も食べた事があるが、ローストターキーは800年以上生きて来て一度も食べた事が無い!是非ともこの機会に七面鳥を!!」

「OK、分かったよ?メインディッシュは七面鳥のローストとして……そのほかは如何する?」

「ケーキは私とのどかが担当しよう。
 我がオリジナルの知識で、八神家のケーキを再現する事は可能だし、のどかならば菓子を作るのは得意だろう?」

「は、はい!一生懸命頑張ります!!」


「なら私と裕奈とアキラは飾りつけを担当やなぁ?クスハも手伝ってや♪」

「勿論♪」

「然らば拙者と真名は前菜とスープを担当するのが良いでござるな?……宜しいか、真名?」

「異論はないさ。」

「となると残った私が買い出しってか?……フッフッフ、最高の材料を集めて見せるさね♪」


共に特別な人と過ごす聖夜を、素敵なモノにしたいと言う気持ちは変わらない。変わる筈がない!!変わってはいけないのである!!多分絶対!!


とは言え、この面子でのクリスマスパーティともなれば、少しばかり普通とは違う物になるかもしれないと思っても罰は当たらないだろう…











ネギま Story Of XX 144時間目
『Merry Christmas&Holly Night』











さて、クリスマスパーティーは夕暮れからとは言っても、その準備を考えると早目の買い出しが必要であるのもまた事実であり当然である。

「丸鳥の七面鳥が6000円……おっちゃん、此れもう少しだけ安くならない?
 折角のイブだから豪遊したいってんだけど、さっすがにこの値段は中学生には手が出ないんだけどさ〜〜〜……」

「あん?あぁ、七面鳥の丸鳥か……売れ残っても面倒だし――5500円で如何だい?」

「ん〜〜〜〜……未だ高いかな?」

「なら5000円だ!!」

「悪くないけど、此処はおっちゃんの漢気を見せてもう一声!!」

「よっしゃ〜〜!其れなら、手羽先スモークを10本つけて4700円で如何だ!!」

「追加のおまけつきでその値段……文句なし!!買った〜〜〜〜!!!」

麻帆良の商店街にある肉屋では、和美が七面鳥の丸鳥を、おまけつきで安く買う事に成功していた。この交渉術は見事である。
取り敢えず最大の目的物をゲットした訳だが、だからと言って此れで買い出しが終わりではない……クリスマスパーティは必要な物が多いのだ。


「え〜〜〜っと、鳥は此れで良いとして、後はカナッペ用のプレーンクラッカーと、ケーキのトッピング用のフルーツとチョコレート。
 私達用のノンアルコールのシャンパンと、稼津兄用のスパークリングワイン――稼津兄的にはウォッカかジンの方が良いんじゃないかね?」

そして、流石に愛する人の好みは分かっている様子。
如何にクリスマスイブと言えど、稼津斗的にはスパークリングワインよりも、ウォッカやジンの方がありがたいだろう。だって好物だし。

普通に考えれば、此れだけの強い酒をボトルで開けるなど常軌を逸していると思うだろうが、稼津斗的には無問題で、寧ろバッチ来いであるのだ。


「七面鳥で1300円浮いたし、それでウォッカも買っとくかね♪」


そして即決だった。
クリスマスらしくはないかも知れないが、どうせなら好みのモノの方が良いと考えるのは、ある意味で当然と言えるだろう。

「序に、チーズとかも買い足した方が良さそうさね♪」

和美も和美で買い物を楽しんでいる様子。
まぁ、稼津斗組全員に言える事だが、思い人と共に過ごす聖夜など特別なモノこの上ないのだから、気分がウキウキするのも当然の事であるのだ。

夜のパーティを思い浮かべ、和美はルンルン気分で買い物を続けて行った。








――――――








さて、一方の稼津斗宅では料理の準備が着々と進められていた。
メインの七面鳥は和美が帰って来てからだが、スープやマッシュポテトに、ケーキのスポンジなんかは今から作っても問題はないのである。


「ねぇ亜子、クリスマスっぽいお揚げ料理って何か無い?」

「そら無茶振りやでクスハ……何やねんクリスマスっぽいお揚げって……中にパエリアでも詰めたお稲荷さん作ればえぇの?」

「其れはあんまり美味しくなさそうだよ?」

「いや、お揚げを洋風に味付けすれば案外……」

等と如何でも良い会話をしながら、飾りつけの方も順調である。
で、肝心の料理の方だが……


「待て楓!!其れを一体如何する心算だ!?」

「オマールエビの事にござるか?頭ごと縦割りにしてそのままスープの出汁にござるよ?
 前にテレビで見た物でござるが、真に良い出汁が取れて、スープの味を一層深めてくれるらしいでござる♪」

「出汁……本当に出汁だけだな!?身は入れないな!?と言うか入れないでくれ!!エビはダメなんだエビは!!
 と言うかどうしてみんな普通に此れを食べる事が出来るんだ!?言い方は悪いが……その、殆ど虫じゃないか此れは!!」

「まぁ、節足動物にござるからなぁ?……しかし真名、見た目だけを言うなら蝦蛄の方がもっと虫でござるよ?」

「更に上が居た!?」



「ホールケーキとブッシュ・ド・ノエルのどちらにしよう?……いっそのこと両方作るか?」

「ケーキ2つですか?……稼津斗さんなら食べ尽しますねきっと……」


騒がしいモノの、順調に進んでいた。


「たっだいま〜〜!必要なモン全部買ってきたよ〜〜!!」

そして其処に買い出しに行っていた和美が戻って来た事で、一気に料理はスパートが掛かる!!
特にメインである七面鳥のローストの下拵えには、全員が気合十分!!

此れは今宵の聖夜の宴は、何とも盛大で楽しいモノになりそうである。









――――――








その頃、稼津斗は適当に麻帆良の街をぶらついていた。
別にサボって居る訳では無い……最大限ぶっちゃけて言うならば『戦力外通告』を受けてしまっていたのである。

飾りつけは亜子達で充分間に合うし、料理の手伝いは以ての外!稼津斗が手を出したら、たちまち世界中の生物が死滅する毒が完成してしまう。
それ故に、やる事がないため、邪魔にならない様に街に繰り出して来たと言う訳だ。

「まぁ、俺が居ても役には立たないからな……ふむ、クリスマスプレゼントでも買っていくか。」

だからと言って何もしないと言うのは気が引ける事この上ない。
パーティの準備をパートナー達が一生懸命やっていると言うならば、彼女達にクリスマスプレゼントの1つでも用意したって罰は当たらないだろう。


「とは言っても何をプレゼントすればいいんだ?
 アクセサリーの類は前にプレゼントしてるから、また同じ物って言うのも味気ないし……コイツは意外と難しい問題かもしれないな。」

「まぁ、女の子のプレゼントは確かに迷いますなぁ?」

「!!……天ヶ崎か。」

「どうも〜〜〜。稼津斗さんも今夜はクリスマスパーティおすか?」

「まぁな……お前もか?」

「はい〜〜〜、刹那とお嬢様に誘われましたので〜〜♪」

で、プレゼントさがしの最中に千草とばったり。
如何やら千草も、刹那と木乃香へのクリスマスプレゼントを買いに来ているらしい。

「丁度良かった、良ければ一緒にプレゼントを選ばないか?正直、何をプレゼントしたモノか迷っててな……」

「構いませんえ?まぁ、あの子達やったら、稼津斗さんからもらえるモンやったら、何でも喜ぶと思いますけどなぁ?」

「だとしてもさ。」

其のまま流れで、一緒にプレゼントを選ぶ事に。
傍から見れば『美男美女のカップル』に見えなくもないこの2人だが、互いにそんな感情はないし、会話内容も『仲の良い異性の友達』レベル。
故に、訪れた店で勘違いされる事は先ず無いだろう。


「それにしても、京都に居た頃には無縁のモノやったから、クリスマス言うのも楽しみですわぁ♪」

「関西呪術教会だと、やっぱり西洋文化のクリスマスは御法度だったのか?」

「その通りおすなぁ。
 まぁ、私や長に言わせれば、多文化が入り混じる現代に於いて、排他的な西洋文化排斥体質は時代に取り残されるだけや思うんやけど……」

「言えてるな。
 大体にして、今の日本人に宗教的な云々の事は大して重要じゃないんじゃないのか?
 生まれりゃ神式、死んだら仏式、クリスマスには教会で賛美歌歌って、その1週間後には神社で柏手打ってる訳だからな……」

「なんや、そう言うともう無茶苦茶のカオス空間おすな…」(汗)

身も蓋もないが、確かに一理あるかも知れない。流石は八百万の神が住まう日本であると言えるだろう。(絶対に違うと思うが。)
だがまぁ、クリスマスなんかは既に日本に於いては年中行事の1つでしかない為、恐らく本来の意味や伝承などはそれほど重要ではないのだろう。

現実に、クリスマスそのものよりも、前日のイブの方が大いに盛り上がる訳だから。


「要は、難しい事は考えずに楽しむのが一番て事なんだろうな。」

「かも知れませんなぁ?ウチは弟子とお嬢様と一緒に、稼津斗はんはパートナーの子達と一緒に……きっとそれが一番おすな♪」

と、まぁ大体こんな感じで、ひっじょ〜〜〜〜〜に珍しい組み合わせでのショッピングは続いて行った。








――――――








時は過ぎて、あっという間に夜!
稼津斗宅は、華やかな飾りつけがなされ、更に用意されたテーブルには美味しそうな料理が所狭しと並んでいる。


「「「「「「「「「メリークリスマス!!」」」」」」」」」

お決まりのセリフと共に、全員がクラスを掲げ、いざクリスマスパーティーの開始だ。
室内には、ジャズミュージックが流れて雰囲気やら何やらもバッチリである。


「さてと、随分と気合いが入った飾りつけとご馳走を用意してくれたな。
 早速いただきます!!……と、行きたい所なんだが、その前に俺から皆にクリスマスプレゼントだ。」

そして先ずはプレゼント。
何やら大きな紙袋を取り出したかと思うと、袋の中からパートナー達の名前が書いた付箋を張り付けた包みが合計9個。

大小様々であるのは、それぞれ違うモノを用意したと言う事だろう。

で、プレゼントされたパートナー達は勿論大喜びである。


「稼津君からクリスマスプレゼントなんて、正直思ってなかったよ〜〜。つーか私等プレゼントの事なんて完全に忘れてたし。」

「せやなぁ……稼津さんとクリスマスを過ごせる言う事で浮足立っとったわ〜〜〜……」

「此れは来年は注意しなくてはならんでござるな……」

「まぁ、気にするな……と言うか、俺も戦力外通告受けて街に出なかったら思いつかなかったかもしれないからな………」

「其れはまた何とも……開けても良いかい稼津斗にぃ?」

「是非開けてみてくれ。」

日本では後で開ける事が多いかもしれないが、海外に於いてはプレゼントは貰ったその場で開けるのが礼儀とする国もある。(らしい。)
まぁ、確かにその場で貰ったモノを確認し、そして礼と感想を言うと言うのも悪い事ではない。

それに開けてみてくれと言われて開けないのは、逆に失礼に当たるとも言える。
なので、全員その場で開封し――

「「「「「「「「おぉ〜〜〜〜〜〜〜!!」」」」」」」」

思わず感嘆の声を漏らした。
プレゼントの内容を言うと、和美は最新のデジカメとボイスレコーダーと言うジャーナリスト必携のアイテムで、裕奈には人気ブランドのスニーカー。
亜子には可愛い絆創膏の詰め合わせで、アキラには動物のぬいぐるみを数個。
真名にはダーツのセット、楓には模造刀の小太刀でのどかには言うまでもなく数冊の本。そしてイクサにはお茶のセットでクスハにはチョーカーだ。

「お気に召してくれたか?」

「もっちろん!!凄く嬉しいよ稼津兄!!」

「ふふ、此れで美味しいお茶を入れるのが楽しみだな。」

「後でゆっくりと楽しく読ませてもらいますね♪」

「折角だから、後で此れでダーツ大会と言うのも良いかもしれないね。」

プレゼントは大いに喜んでもらえたらしい――此れならば送った甲斐があったと言うモノだろう。


「喜んでくれたようで何よりだ。
 それじゃあ、改めてこの手間暇かけてくれたご馳走を頂くとしようか?……いただきます!!!」

「「「「「「「「いただきます♪」」」」」」」」


楽しい聖夜の宴は、ゲームやら何やらを交えつつ、夜遅くまで続いたのだった。








――――――








因みに――


「千雨さん、如何して私はこんな所で子供達の相手をしているんでしょうか?いえ、嫌な訳では無いのですが……」

「あぁ?アンタをエヴァの所に置いといたら、絶対に先生とエヴァの2人きりのイブを影から盗撮するだろうが!!
 そうさせない為にこっち連れて来たんだよ……まぁ、那波の手伝いって事で納得して頑張れよサンタクロース?」

「……何やら釈然としませんが、分かりました。」

千雨と茶々丸は、那波が手伝っている保育園でクリスマスパーティのお手伝いをしていた。
と言うよりも、千雨が茶々丸の事をネギとエヴァンジェリンの元から引き剥がす口実として、那波に何か手伝う事がないかと打診していただけのだが。


「ですが私を引き剥がしても無駄ですよ?マスターとネギ先生の幸福な時間は、給仕係を任されている私の妹達に録画を命じてありますので。」

「あめぇな?その録画機能は私のアーティファクトでハッキングして、明日の朝まで使用不能にさせて貰ったからな?」

!!……な、何と言う事を……!!
 良いでしょう、その行為は私への挑戦と受け取りました……この仕事が終わったら覚悟しておいてください千雨さん!」

「言ってろボケロボ。絶賛私に連敗中のくせに偉そうに。」

クリスマスイブであっても千雨と茶々丸は相変わらずであった。

なお、数秒の後に、睨み合いを繰り広げていた2人が、那波の無言の圧力たっぷりの笑顔で黙らせられたのは言うまでもない……











 To Be Continued…