イクサとアキラと言う頼もしい援軍を得た稼津斗は正に天下無敵の絶対最強で古今無双であった。
未だ気は戻っていないが、其れでも500年間戦いの中で極めて来た空手メインの格闘術は早々破られるものではない――と言うか突破不可。

中等部、高等部、大学部問わず『借り物』をしようと挑んでくるが――


「一撃必殺!!!」

「「「「「「「「「「ぺぎゃらっぱぁぁぁぁあぁ!?」」」」」」」」」」


正拳突き一発で鎧袖一触!
気が使えないにも拘らず、正拳突きの拳圧だけで10人以上の人間を吹き飛ばす等、流石は天然チートの面目躍如と言うところだろう。

更にこの拳圧から何とか逃れたとしても………


「大人しく闇に沈め!!!」

「ゴメンね……だけど稼津斗さんの事はやらせない!」

イクサとアキラが立ち塞がりゲームオーバー。
歴戦の戦士の力を受け継いだイクサと、日常の中で自然と鍛えられてきたナチュラルストロングのアキラにとってもこの程度は相手ではない。


「ふぅ……ん?………良し、気が戻った!!!」

更に此処で、魔法禁止弾の効果が消え、稼津斗は気の力を取り戻した――こうなっては稼津斗からの借り物は略不可能であろう。
バイオレンスの塊のような体育祭の全体イベントも、そろそろクライマックスが近いのかもしれない。











ネギま Story Of XX 140時間目
『此れはもう体育祭ではない』











そんな感じで現れる者達を倒しながら逃げる稼津斗達の前に新たに現れたのは――稼津斗の契約者の1人であるクスハだった。
一応彼女も3−Aメンバーとして数えられているので、クスハに借りられたからってペナルティにはならないが、一体何を借りに来たのだろうか?

「クスハ……」

「私の要求は…此れ!!」

明らかになったその要求とは――――


「予想通りか?」

「予想通りだな。」

「ある意味では予想外と言えるかもしれないんだけど……」

三者三様の反応を見せたクスハの借り物は―――『お揚げ』!!もう此処まで来ると当然のお約束!狐には油揚げなのだ!!此れは常識だ!
クスハも九尾とは言え、狐であるが故に油揚げには目がない!生物の本能恐るべしである!!


まぁ、この程度は全く害がないし、そもそもキラキラ眼でお揚げを期待しているクスハを撃滅するのは物凄い罪悪感を感じるものだ。
だが、今はお揚げなど持っていない事もまた事実!ならば如何するか!?

「クスハ……悪いが俺は今お揚げの持ち合わせは無い。
 だが、お前の望みを無碍にするのも気が引けるから……此れで好きなだけ買って良いって事で手打ちにしてくれ。」


クスハに差し出されたのは見るも美しい新品の諭吉さん、言うなれば皺一つない一万円札!
いや、確かに現物がない以上、現金渡して自分で購入して貰うと言うのは一つの手だが、油揚げの購入代金に1万円は幾ら何でも多過ぎだ。

「1万円もあれば沢山買えるね♪」

「あぁ、油揚げでも稲荷寿司でも好きなだけ買って食べてくれ。」

だが、クスハ的には全然OKであった。

当然だ。だって大好物の油揚げやら稲荷寿司がお腹一杯食べられるのだから。この際九尾としての威厳やら何やらはそっちのけである。
まぁ、クスハ本人が喜んでいるし、今ので3−Aに100倍のポイントが入ったのだから良いとしておくべきだろう。



「……平和的な解決が望める『借り物』は此れで最後だと思う人は挙手。」

「「はい。」」

「だよなぁ……?」

そして、稼津斗の言うように、平和的な解決が出来そうな『借り物』はこれ以降先ず間違いなく出て来る事は無いだろう。
そもそもにして、イクサとアキラ以外のパートナー達が、最初の攻撃以降一切姿を見せていないと言うのが、不気味で不穏な事この上ないのだ。

少なくとものどかの能力をフル活用すれば、稼津斗達が今何処に居て、これからどこに行こうとしているかなど完全に筒抜けの筈である。
そうであれば、進路に先回りしてトラップやら何やらを仕掛ける事くらいは容易い……にも拘らず一切動きを見せないと言うのは些かオカシイ。


無論、アキラとイクサの2人が稼津斗側に付いた事で当初の作戦を変更せざるを得なくなった可能性もあるが、矢張り解せない。


「マッタク、楓達は何を考えているのやら……まぁ良い、力も戻ったし、仕掛けてきたら相手になるだけだ。
 其れに、楓以外とはトレーニングでのスパーリングだけだからな?……少しばかり本気で戦ってみるのも悪くない!」

が、根っからの武闘家である稼津斗は例え契約を交わしたパートナーであっても戦うのならば加減はすれど手は抜かない。抜く心算はない。
気が復活した事も有って、XXVを解放して景気付けとばかりに空を飛ぶ戦闘ヘリと向かってくる参加者を全方向への気弾で撃滅!!

気弾が唸り、戦闘ヘリが舞い、参加者吹っ飛んで時折爆炎も上がる此れはもう体育祭ではないような気がするが、あくまでも体育祭である。
誰が何と言おうと体育祭である!

学園長が『体育祭じゃよ♪』と言っている限り、断じて体育祭なのである!異論は認めないのでその心算で居てほしい。








――――――








一方で、ネギ達の前には目下最強の相手が姿を現していた。

「エヴァンジェリンさん……」

「ククク……そう警戒するなネギ。何も取って食おうと言う訳ではない。」

現れたのは師匠でもある最強の真祖の吸血鬼、エヴァンジェリン.A.K.マクダウェルその人である。
エヴァの態度は何時も通りとはいえ、流石に此れは緊張が隠せない。

如何にネギが闇の魔法を習得したとは言え、其れだけで勝てるかと言えば其れは断じて否であるからだ。

いや、ネギが雷天双壮を発動した状態で、エヴァンジェリンが何時ものままならば闇の魔法の恩赦で押し切る事が出来るかもしれない。
だが闇の魔法はそもそもエヴァンジェリンが開発したモノであり、と言う事はエヴァンジェリンだって当然使えるのだ。

つまり、ネギが闇の魔法を使ったところで、エヴァンジェリンもまた闇の魔法を使ったのならば絶対に勝てないのである。少なくとも今は。


「我が秘術を受け継いだお前と戦うと言うのも悪くはないが――あくまでもこれは借り物競争だからなぁ?
 私の要求にお前が応えてくれればそれでいいのではないか?」

「確かにそうですが……あの、僕に出来る範囲の事でお願いしますよ!?流石に無茶振りが多くて疲れました、精神的に……

しかし、エヴァンジェリンとて今は戦う気は全く無いらしく、普通にネギに『借り物要求』をして来た。
まぁ、其れならば大丈夫かもしれないが、相手は真祖の吸血鬼――どんな要求が出て来るのかもちょっとドキドキであろう…寧ろ微妙に怖い。


そして取り出された借り物メモは――




『ネギ・スプリングフィールド』




直球であった。

「「「は?」」」

ネギだけでなく、アスナと小太郎も目が点になる。当然だろう、一体何をどうしろと言うのかである。

「ネギよ……正直に言おう、お前の全てを私に寄越せ!代わりに私の全てをお前にくれてやる!!
 何今直ぐ全部と言う訳ではない……と言うかだなぁ……お前一度くらいちゃんと私に対する想いを言葉にしてくれても良いんじゃないのか!?
 600年以上生きてる真祖とは言え、私だって女だぞ!惚れた相手から一度くらいはハッキリ確り愛の告白位受けたいのだぞォォォ!!!」

そして暴走した。暴発した。爆発した。
真祖であってもエヴァンジェリンとて女の子。600年以上生きて居ようとも心は意外に乙女なのである!絶賛恋する少女なのである!
確りと深い絆があるように見えるネギとエヴァンジェリンだが、何と言うかどちらもハッキリとその想いを相手に伝えた事はなかったらしい。

とは言え、普通だったら行き成りこんな事を言われたら、言われた方だって狼狽するだろう。
だが此れを言われたのは若干10歳でありながらも、英国紳士全開のネギである!ならばどうなるか?答えは簡単だ。


「其れは失礼しました!!女性にこんな事を言わせてしまうとは……紳士として失格ですね。」

潔いまでの謝罪をし、そしてエヴァンジェリンの手を取る。

「エヴァンジェリンさん……貴女の事が好きです――いえ、貴女を愛しています。
 ネギ・スプリングフィールドは、世界の誰よりも貴女を愛しています……時が許す限り、僕と共に居て頂けますか?」

そしてエヴァンジェリンの要求以上に弩直球であった!
いや、もうこれは愛の告白を通り越してプロポーズである!史上最年少先生は、史上最年少で本気プロポーズまで敢行してしまったらしい!

「う、ウム///…無論だ……私とてお前をそのなぁ?……うん、愛しているぞ?///

「はい…!」


更にそれだけではなく、エヴァンジェリンの顔を上向かせてそのまま口付け!もうどう見ても夫婦です、ありがとうございました状態だ。
たっぷり10秒間……小太郎は目を逸らし、アスナは殆ど表情を変えずに其れを見ている。

で、唇を離したら離したでそのまま抱擁……もうこのまま式挙げても良いじゃなかろうか?そう思っても間違いではないだろう。


だが、此れは意外とトンでもない効果を生み出してくれた。
ネギとエヴァンジェリンを中心に『特濃ラブオーラドーム』が発生し、一部の耐性を持つ者以外を寄せ付けない結界が出来上がったのだ!
そしてそうなればイベント参加者の98%が此れに弾かれるのは当然であり、其れはつまりネギはエヴァンジェリンと一緒ならば安全と言う事。


「……将来的にキティは妹になるのかしら?」

「いや、気にすべきところは其処とちゃうやろアスナ姉ちゃん……」

突っ込み所はあれど、此方はタイムアップまではもう安全であるだろう。





尚これもまたお約束であるが……


「テンメェはマジで分からねぇっつーか、懲りねぇ奴だなボケロボォ!!盗撮は止めろって言ってんだろうが!!」

「記録はしていませんので此れは盗撮ではありません!正確に言うならば覗き、或は出歯亀と言う奴です!!」

「尚のこと悪いわ、この廃スペックガイノイドがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あぁ!ギブ!ギブアップです千雨さん!!!」


――○長谷川千雨(2分10秒 サソリ固め)絡繰茶々丸●――


毎度の千雨と茶々丸であった……ある意味此れも良い関係と言えるのだろう……多分きっと。








――――――








再び稼津斗達だが、タイムアップ30分前になって、遂にパートナー達が仕掛けて来ていた。
数の上では3vs6だが、戦況は完全に拮抗していた。

単純な力で言えば、稼津斗とイクサは圧倒的であり、アキラもXXへの変身は第1段階とは言え筋力はパートナーの誰よりも強い。
だが、反対に裕奈達の方はのどかの読心術や楓の忍術、真名の偏向射撃に亜子のドーピングと和美の情報管制と技と業で勝るのだ。

故に拮抗!
互いに手の内を知っていると言う事が其れに拍車をかけているのだろう……互いに決め手を欠くとはこの事だ。

まぁ、この人外バトルを行うに当たって、ウルティマホラの会場付近まで来たと言うのはある意味正解だろう。
飛びかう気弾に気功波に魔力弾に魔砲と魔法……恐らくは麻帆良に於いても此処まで非常識な戦いは滅多にお目にかかれないだろう。


だが其れも唐突に終わりを告げる。


「覚悟は良いな?」

「!!ヤバイ、全員退避〜〜〜〜〜!!!」

「塵と砕けろォォォ!!!」


――ドゴォォォォォォン!!!!


突如稼津斗が禊を発動し、和美達を纏めて吹き飛ばす!
アキラはイクサに連れられて空に逃げたので大丈夫だが、攻撃の余波を受けた裕奈達は此れで戦闘不能だろう。


「わ、分かっていたが矢張り強過ぎにござる……」

「XX2nd状態をウチの魔法薬で更に強化したのに通じへんなんて……」

「それ以前に思考を読んでる事が全くアドバンテージにならないなんて……完敗です。」

見事に全員がテクニカルノックアウト判定であった。
矢張り、500年以上も只只管戦い続けて来た絶対強者にはマダマダ及ばなかったらしい。


「マッタク…今更ながら、お前達が本気で連携すると凄まじいな?
 もしXXVに覚醒してなかったら押し切られていたかもしれないぞ……お世辞抜きに大したモンだ。
 で……行き成り戦闘状態になったからアレなんだが、結局お前達は俺から何を借りる――と言うか何を要求する心算だったんだ?」

「あはは……まぁ、ぶっちゃけて言うと要求するもんは特にないさね。
 敢えて言うなら、稼津兄と一度本気で戦ってみたかったってとこだね?……まぁ、突き詰めるなら稼津兄の『童○』ってのもあるんだけど…」

「よし、其れは絶対にやめろ。」


何やらトンでもない事を考えてはいたらしい。


「まぁ、其れは兎も角としてさ――私等永遠の時を一緒に過ごす訳じゃん?一度くらいは本気でぶつかっても良いかと思ったんだよね〜。」

「もっと言うなれば、稼津斗殿と共に歩むだけの力量があるかどうかを知りたかった……まるで敵わなかったでござるがなぁ……」

だが、要するに全体イベントに託けての全力バトルを仕掛けたと言う事らしい。
本当ならばアキラとイクサにも其れを話す心算だったのだが、其れより先に稼津斗側に付いてしまったと言う事なのだろう。

尤もその場合、稼津斗とイクサの攻撃の余波で本気で麻帆良が更地になる可能性があったのだが。


「あ〜〜〜……まぁ、俺は規格外だからなぁ?比較対象としてそもそも間違ってるんだが……お前達で申し分ないさ。
 と言うかな?お前達の覚悟はとっくに受け取ってるんだ……今更力量云々で何か言う事もないだろ?」

「分かってはいるんですけど……何と言うか乙女心的には一押しほしいと言いますか……」

嗚呼乙女心とは複雑也!
稼津斗は信じていても、自らの中に有る不安は払拭したかったのだろう……故のこの戦い!純粋な思いの結果であった。


「ならこの言葉で納得してくれ……俺はお前達の事を何が有っても離さない……未来永劫無限の時を共に歩む事を此処に誓うさ。」

「!!……マッタク、稼津にぃは其れがあるから参るよ。
 そんなに直球で言われたら、不安も何もない……挑んだ私達が馬鹿みたいじゃないか……だけど、其れを聞いてほっとしたよ。」



――ピンポーン



『只今を持ちまして学園全体イベントを終了します。繰り返します――』


と、此処でタイムアップ!
何ともいいタイミングで競技が終了してくれたものだ――競技が終わればもう襲って来る者も居ないだろう。
ダイナミックな特撮宜しい借り物競争も此れにて閉幕である……まぁ、副産物として稼津斗とパートナー達の絆が深まったのだからOKだ。

ネギとエヴァンジェリンの絆が金剛石の強さとなったので無問題だ。


「此れにて終了か……さて閉会式に行くか。」

「そうやなあ♪」

そして此れにて麻帆良体育祭の全日程も終了である。

「あ、そうだ……皆。」

「「「「「「「「??」」」」」」」」

「お疲れ様。」

閉会式会場に移動する前に、稼津斗はパートナー全員に労いの言葉を掛け、そして軽くキスを落としていった。
当然やられた方は全員真っ赤!!………如何やら何をどうやっても稼津斗に勝つ事は出来ないらしい。


こうして、凄まじい体育祭は其の幕を閉じた。





尚、学園全体イベントにて超とクスハが稼津斗から、エヴァンジェリンがネギから借り物に成功した事で3−Aの得点は都合100万倍!!
誰が何と言おうとも、文句なしの優勝であった。
序に、来年から学園全体イベントのボーナスポイントが大幅に引き下げられる事になったのは言うまでもない…



もう一つ付け足すと……


「出遅れたわね。」

「『仮契約』?……ディズ、君は何を考えてるの?」


ディズが何か考えて居たっぽかった――もう何が何やらであるが………兎に角体育祭は此れにて閉幕である!!閉幕であるのだ!!!!













 To Be Continued…