裕奈の見事な包囲射撃によって、稼津斗は気を、ネギは魔法を封じられてしまった。
如何に麻帆良学園教師のツートップと言えど、気も魔力も封印され身体能力のみでこの局面を切り抜けろと言われたら流石にきついだろう。


「居たぞ!子供先生と最強先生だ〜〜〜!!!」

「よし、捕らえろ!!早いモノがちだ〜〜〜〜!!!」

しかも、今は競技中故に3−Aの面々だけでなく、それ以外の参加者も相手にしなくてはならない。
普通の競技なら兎も角として、学園全体イベントともなればその参加者は数えるのが面倒になるほどの人数……相手にするだけで一苦労だ。


『うわ〜っはっは!此れで終わりだ2人とも!!我等の予算獲得の為に大人しくお縄になれい!!』

加えて体育祭では先ずお目にかかる事のない戦闘ヘリまで登場!(体育祭に限らず一般の学校では目にする事はないと思うが…)
最大限良く言えば、麻帆良らしさが全開の学園全体イベントと相成っているらしい。


「戦闘ヘリまで出すか普通?……まぁ、今更だが。
 ふぅ……こうなっては仕方ないな…ネギ、少しばかり俺の後ろに隠れていろ。」

「へ?カヅト?」

「覇ぁぁぁぁぁぁぁ……轟殺居合拳・氷薙稼津斗アレンジバージョン!!!


――ドガバァァァァン!!


だがしかし、如何に気を封じられたとは言え、そんなモノは稼津斗からしたら大したモノではないらしい。
実際問題として気を封じられた稼津斗が制限を受けるのは気功波と飛行だけであり、最大の武器である格闘戦には一切効果はないのだ。

憐れ今の一撃で、全ての戦闘ヘリと、参加者の一部が脱落してしまったようだ……努力の末のチートは凄まじく恐ろしい存在であるのだろう。











ネギま Story Of XX 139時間目
『Violence借り物競争!?』











「気は使ってないのに意外に吹き飛んだな?……此れはもう少しばかり加減が必要か。」

「気を使わない攻撃で此れ?…え?カヅトのチートバグって若しかしたらラカンさんよりも物凄い?」

あっさりと相手を撃破した稼津斗はあくまで余裕綽々!己の歩んできた道を思えば、気を封印された状態での1対多数など大した事ではない。
だが、今の一撃でも参加者の数%を撃破したに過ぎず、稼津斗とネギを狙う参加者は、未だわんさかいるのだ!


「いぃ!?また沢山来たよ!?」

「まぁ、学園全体イベントだからな……此れは固まって逃げるよりも、ばらけて逃げた方が安全かも知れないぞネギ?
 俺達が2人で逃げて居たら2人纏めて狙われるが、別れて逃げれば追手の数は半減する――そうなればある程度の反撃も出来るだろう?
 少なくとも気や魔力が使えるようになるまでは、そうやって時間を稼ぐが上策だ――まぁ、勝てそうな相手はやっても良いと思うけどな。」

物量で圧倒的に劣る場合、敵勢力を分散させるのは常套手段だ。
だが、此処でネギと分かれてしまってはネギが絶対不利なのは明白――如何に強くとも魔法無しでは少し強いだけの少年なのだから。


だが――


「何やおもろい事になってるやんかネギ?俺も混ぜろや!」

ネギの親友兼ライバルである小太郎が登場!
新たに湧いた参加者を影装術でブッ飛ばして堂々の参戦である。

急な参戦ではあるが、此れはネギにとっては有り難い事この上ない。魔力が封印状態の今、小太郎の様な前衛は非常に頼りになる存在だ。


「てか、何こんなパンピー共相手に苦戦モード入ってんねん?
 其れともなんか悪いモンでも食ったんか?お前も兄ちゃんも、何時もと比べたらメッチャ力弱くなってる気がすんやけど?」

「気のせいじゃないぞ小太郎、俺もネギも『3分間魔法禁止弾』をそれぞれ2発ずつ喰らって、都合6分間は気と魔力が一切使えない。」

「はぁ!?何でそんなモン喰らってんねん!油断し過ぎとちゃうか!?」

「いや、其れを撃ったの裕奈さん……」

「あ……裕奈姉ちゃんの射撃やったらしゃーないか…。あの精密超連射射撃は俺だって防ぎきれへんわ…
 アレ?せやったら今のは如何やったんや兄ちゃん?気を封印されとるのに、弩派手に連中ブッ飛ばしてなかったか?」

「あぁ、今のはなぁ……タカミチの轟殺居合拳とお前に教えた音速拳を融合して、轟殺の衝撃波を究極的に高めただけだ。」

「其れってトンでもない事とちゃうんかい!?」

そして突っ込むのは仕方ない、実際トンでもないのだから。
果たして大人数をブッ飛ばした稼津斗の先刻の一撃が、只の拳の一撃だと言って信じる者がドレだけいるのだろうか?……多分居ないだろう。


「カヅト、なんだか物凄く強くなってない?」

「実は体育祭前に、異世界に置いて来た分身体がやって来て『能力の同期』をしてくれって言ってな?
 でもって同期したら、俺も向こうの俺と同期して、目出度く禁止カードレベルの強さになってしまったと言う訳だ……いや吃驚。」

「其れって分かり易く言ったらドンだけの強さやねん?」

「そうだなぁ?………ブ○リーが超サイ○人4になったくらいの強さか?」

「ドンだけのチートキャラやねん其れは!?」


そして稼津斗は最早誰も辿り着く事の出来ないチートキャラへと変貌していた。(尤もラカンだけはこの稼津斗とタメ張れるかもしれないが。)
まぁ、其れは其れとして、稼津斗とネギから『借り物』をしようとする生徒や学生は次から次へと津波の如く押し寄せて来ている。

「足を止めるのは得策じゃないし、固まって逃げるのは更なる悪手だな…?
 矢張り二手に分かれて逃げた方が良いな?小太郎、お前はネギと一緒に行ってくれ、ネギの魔力が復活するまで頼む。」

「其れ位お安い御用やで兄ちゃん!6分間ネギを護る位は如何って事ないで!!」

「ゴメン、頼むよ小太郎君!!」

この物量を相手に固まって逃げるのは非常に宜しくない。
幸い小太郎が合流してくれたなら、小太郎とネギを組ませて逃げさせれば多分大丈夫だろう――ネギの魔力が復活すれば最強タッグだし。

稼津斗は1人でも、極悪チートキャラなので問題はないだろう。


すぐさま二手に分かれて、逃走開始!
ネギと小太郎は此れまで通り屋根を、稼津斗は道路に降りてそのまま猛ダッシュだ。

だが、相手は一般常識の枠組みから逸脱した麻帆良生!二手に分かれたのを見るや否や、己の目的の相手の方に即座に突貫!


「せいやぁ!!!」


――ドゴォォォォン!!!


「「「「「「「「「「「「「「「たわらばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」」」」」」」」」」」」

されど稼津斗は余裕綽々!
地面を殴りつけて衝撃波を発生させ、更にその一撃で砕けたコンクリート片までも飛ばして参加者を迎撃!

そのまま圧倒的な脚力にモノを言わせて戦略的撤退!
気を使わずとも、稼津斗のスピードは100mを3.1秒で走破するほどの物、果たして一般人が付いて行けるか?否!断じて否である!!

其れでも此れは体育祭と言う『祭り』。
その祭りの空気に当てられた麻帆良生のテンションは鰻上りに上昇し、潜在能力が解放状態と言う厄介な状態になっている故、ある意味無敵。

次から次へと来るわ来るわ……果たして何を借りる心算なのやらである。



この数の多さには、流石の稼津斗も少々面倒になったのか、適当な建物を壁にしてキックジャンプを行い、別の道路に着地!
自分を追って来た相手は、此れで暫くまく事が出来るだろう……が、着地した場所が思いのほか悪かった。

「稼津斗老師……!!」

「超か…!!」

其処に居たのは超鈴音――麻帆良の頭脳とも呼ばれ、格闘技にも精通している別の意味でチートな3−Aの女子生徒である。
彼女は余りこんな事には興味を持たないと思われがちだが、確りとこの全体イベントには参加して居たらしい。


「此れは良い所で会ったナ老師!私の借り物に答えて貰おうカ?」

そして、目の前に稼津斗が現れた超は、当たり前の様に借り物が書かれた紙を提示。
其処に書かれていたのは……『最新の戦闘力情報』――どうやら現在の稼津斗の戦闘力の最新データが欲しいらしい。
確かに此れなら実害は皆無だし、そもそも自クラスの生徒であるならば借り物に応えたところでペナルティにはなり得ない…ならば受けるべき。


「其れ位なら別に構わないが……今の俺は気の使用を封印されているからなぁ?望みのデータが取れる保証はないぞ?」

「え?マジでカ?」

「大マジだ。しかも原因は魔法禁止弾――アレ作ったのお前だったよな?

試作品のアレか!?……裕奈さんに3箱譲ってほしいと言われたが、目的は此れだったか……」


だが、気を封印された稼津斗ではその正確な戦闘力を割り出す事は難しい。
尤も、気が使える状態の本気を測定しようとしたら、最新の『戦闘力測定器』ですら吹っ飛びかねない訳ではあるのだが……超は退かない!

「では仮定の話として、気も魔力も使えず、格闘技の経験もない一般人が戦闘力1だとしたら、今の老師はドレくらいだ?」

「通常状態で50億は下らないだろうな。」

「何と!?…其れを踏まえると……3兆7500億!?……もう老師1人で世界征服できるんじゃないのカ?」

「やろうと思えば出来るかもな。」

実際出来そうだから達の悪い事この上ない。
だがしかし、この答えに超は満足したのだろう。ニッコリ笑って『此れでクラスのポイントが増えたヨ』と言うばかり。
取り敢えず、それ程面倒な相手に捕まった訳ではないようだ。

「良い答えに感謝するヨ老師。ふむ……礼と言っては何だが……」

「?」

超の姿が一瞬で消え、次の瞬間また現れる。
『カシオペア』を使った単距離時間移動を利用した疑似瞬間移動だろうが――戻って来た超はアキラとイクサの2人を連れていた。

「超!?」

「おぉっと、あわてるなヨ老師?この2人は老師に借り物を求めてはいないネ。」

「その通りだ稼津斗……私はお前から『イクサ』と言う名を貰ったからな……それ以上の借り物は思い浮かばなかったよ。」

「私も……その、思いに答えて貰って契約してくれたから、今はこれ以上は……」

で、その2人は稼津斗に対して『借り物』を求めてはいなかった。
まぁ、厳密に言えば裕奈達とて祭りの雰囲気を楽しんでいるだけで、本気で稼津斗に何かを求めて居る訳ではないのだが……

「其れなら良いが……イクサは俺と戦う心算だったんじゃないのか?」

「その心算だったんだが…アキラに『稼津斗さんとリインフォースが本気で戦ったら学園全体が消えて無くなる』って言われてね……」

「……確かに俺とお前が本気で戦ったら、その余波で麻帆良が吹っ飛ぶかもしれんな……」

そしてアキラは地味に学園を護る事に成功していたようだ。

ともあれアキラとイクサの助太刀は有り難い。
如何に稼津斗と言えど、パートナー達がXX2ndに変身した状態で徒党を組んで掛かってきたら、負けないまでも苦戦は必至なのだから。
パートナー最強のイクサと、2ndには未覚醒ながら基礎能力の高いアキラが居てくれるなら気が封印されていても何とかなるだろう。


「まぁ、其れじゃあ頼むわアキラ、イクサ!
 ……だが、幾ら何でも体操服のままって言うのは、些か色気も何もなさすぎじゃないか?」

「だろうな……だったらこれで如何だ?」

「此れなら良いよね」

更に、イクサは騎士服を、アキラは真契約カードに登録した『ジーパン+レザージャケット』の姿に。
三者三様、格闘戦士と祝福の騎士と蒼海の人魚の揃踏みは中々に迫力がある――此れはイベントの難易度も上がり更に盛り上がるだろう。


「其れじゃあ行くか……魔法禁止弾の効果が切れるまで後4分……其れまでは頼むぞ?」

「Jawohl Meister KATZUTO!(了解だ、我が主稼津斗!)」

「うん……任せて!!」

稼津斗がイクサに掴れば、そのまま一気に急上昇!空を飛んでいれば、取り敢えず地上の相手は完全封殺できるだろう。
アキラも同様に蒼空に飛び出し、共に空を掛ける……此れならば稼津斗のパートナー及び、サバゲー的サークル以外から攻撃される事は無い。


「行ったか……うぅむ、純粋な愛は美しいナ♪
 だがしかし、3−A勝利の為にはもっとポイントが必要だナ?……朝倉さんに老師達の逃走経路を送っておくカ♪」

嗚呼、超鈴音!彼女もまた麻帆良生であった……矢張りイベントは楽しむ派なのだろう――頑張れ稼津斗である。








――――――








「中学最後の体育祭だから気持ちは分からなくもないけど、流石に学園イベントまで私物化はやり過ぎじゃない?」

「そら今更やろアスナ姉ちゃん…」

「今更ですよ姉さん…」

一方でネギの方にも頼りになる援軍が駆けつけて来てくれていた――言うまでもない、ネギの実姉であるアスナである。
アスナもまた今更ネギから借りる物など持ち合わせては居ない。

敢えて言うなら姪っ子か甥っ子の顔を見たいと言うところだろうが、其れは最低でも8年後のネギとエヴァンジェリンに期待すべき事だろう。


「まぁ良いわ……此れだけの馬鹿騒ぎで命の危険がないなんて、ある意味最高じゃない?
 付き合うわよネギ?どうせなら一暴れしましょうか?…何と言っても貴女の元祖パートナーはこの私――カグラザカアスナなんだから。」

「姉さん……はい、行きましょう!!」

「アスナ姉ちゃんが味方か……こらおもろい事になりそうや!!いっちょやったるか!!」


此方でもネギ、アスナ、小太郎のチームが結成!
学園全体イベントは、此処からが本番なのかもしれないが――取り敢えず、学園が吹っ飛ばない事を祈らずにはいられないだろう。






因みに………


「こんなに必死になって、一体僕から何を借りたいのかなぁ?」

「其れを問うのは無粋ですが………気を抜いたらその瞬間やられかねません!!」

別の場所ではタカミチや刀子が群がる生徒と学生を、圧倒的実力差で撃滅していた。




――大凡体育祭の雰囲気でないのはもう仕方ないのかもしれない……マッタク持って今更だが……












 To Be Continued…