全速力で疾走する赤毛のベリーショートカットの少女――春日美空……何とも凄まじいスピードだ。
陸上部の面目躍如とばかりに全力疾走し、現在トップである。
このまま彼女が一着か?……いやいやそうではない。
そのすぐ後ろから亜麻色のツインテールの少女――カグラザカアスナ(本名フルネームだと長いので)が猛追!!
ゴールまで残り10mを切った辺りで完全に並ぶ。
だが美空だって陸上部と『3−A最強の瞬足』のプライドが故に簡単に抜かせはしない。
略真横に並んで――
――ダン!!
ゴールテープを切ったのはアスナ!だが、2人の差は僅か50cmにも満たない正に『僅差』!凄まじいデッドヒートだった事が覗えるだろう。
「ちょ…こらアスナ、陸上部に勝つなっての……」
「そうも行かないのよ…『明日菜』の記憶が『一度くらいは美空に勝て』ってね……中学生活最後でやっと勝てたわ。」
「くっそ〜〜〜、高校に行ったらまた勝負だからね!?」
「まぁまぁ、良いじゃない2人ともクラスの得点にはなるんだし。
それにしても、此れだけの観客が居ると、流石に少しばかり緊張するわね?」
「そう?中坊の競技なんてよっぽどのモノじゃない限り誰も見てないっしょ?」
そう言いながら見渡せば、確かに会場は観客で埋め尽くされ『満員御礼』『超満員札止め』状態だ――国立競技場並にデカい会場がだ。
本日は麻帆良学園体育祭……矢張りと言うか何と言うか、体育祭もこの学園に於いては規模やら何やらがケタ違いにぶっ飛んでいるらしい。
ネギま Story Of XX 138時間目
『ターゲットは稼津斗とネギ?』
そしてぶっ飛んでいるのは会場の大きさをはじめとした規模だけではない。
実施されている競技もまた、一般的な他の学校の体育祭とは一線を画すトンでもない物が行われていたりするのだ。
その一例をいくつか挙げると………
・学園横断パルクール大会
此れは学園都市の建物の屋上やら屋根をコースに見立てた長距離走である。
単純なスピードや持久力の他に、平坦ではない屋根を走るバランス感覚、屋根と屋根との間を飛ぶ跳躍力等々が要求される高難度競技!!
去年初めて実施されたのだが、思いのほか好評だったらしく、今年は参加人数が300人を超えると言うマンモス競技となっているらしい。
「へ〜〜、皆意外とやるやないか?」
この競技には小太郎もエントリーし、軽い気分で楽しんでいる。
本気を出したらほぼ確実に1位を取ってしまう短距離走よりも、確かに此方の方が小太郎は楽しめるのかもしれない。
尚この競技、屋根から落ちたらその場で失格である。(地面に落ちずに復帰した場合は続行可能。)
・本格サバイバルゲーム大会
読んだままである。
参加者は夫々得意な武器を手にしてゲームに臨むのだが、この武器は弾丸がゴム弾やペイント弾と言う以外は全て本物と同じなのだ。
更には、大会の会場となっている場所には踏むと爆音と閃光が発生する『疑似地雷』まで設置され……
「ちょ、幾ら何でも戦闘ヘリとか有りかオイ!?」
「まぁ、毎年こんなもんだが?」
「あんなのにアサルトライフルでどうやって挑めって言うんや〜〜〜!!」
戦闘ヘリまで出て来る始末。(当然機銃の弾丸はゴム弾かペイント弾ではあるのだが…)
張りぼてとは言えミサイルまで発射して来るのだから、既にサバイバルゲームの域を超えているだろう…如何に本格的と言えども。
「こうなったらアレか?アーティファクト展開してXXで対抗するか!?」
「ふむ……其れも一つの手かも知れないな?」
「いや、それやったら幾ら何でも反則やろ!?此処は鍛え抜いた身体能力だけで切り抜けなアカンて!」
3−Aから此れに参加してるのは、裕奈、真名、亜子の3名。
裕奈が『ツインサブマシンガン』、真名が『ミサイルランチャー』と『長射程マシンガン』、亜子が『アサルトライフル』を装備しての参戦である。
この3人が無変身とは言え本気を出したら、戦闘ヘリ位塵芥だろと言う意見はこの際受理しかねるのでご了承願いたい。
・巨大玉ころがし
これまた読んで字の如く……なのだが玉の大きさが通常の『大玉ころがし』の物とはケタが違う。平たく言えば直径10mほどの巨大さなのだ。
果たしてこれが本当に竹製の骨組みに紙を張り付けて色を塗ったモノなのかと言う疑問はさて置き、此れだけ大きいと迫力もまた段違い。
『さあ、このレースもいよいよ最終コーナーに差し掛かり……』
「イケイケ〜〜〜〜!!」
「抜きされ〜〜〜〜!!!」
その迫力に押されて沿道のギャラリーも大盛り上がり!
其れに応えるように巨大すぎる玉もスピードを増してガンガン進む!進むったら進む!!何があろうと進み続けるゴールまでは!!!
そして、此れだけの巨大玉が2つ併走できる幅30mの道路がある麻帆良学園都市は、矢張りどう贔屓目に見ても普通ではないのである。
・格闘大会ウルティマホラ
言わずと知れた格闘大会であり、前年度は古菲が頂点に立った事でも有名である。
無論古菲は今年も2連覇を目指して出場中!更に高等部からは高音もエントリーしている………のだが…
「おろ?」
――コン……バキィィィィン!!
『古菲選手貫禄の勝利!!』
「……あら?」
――ス……ドゴォォォォォォン!!
『高音選手も予想外の大健闘〜〜!寧ろ余裕勝ちか〜〜〜!?』
魔法世界で色々ぶっ飛んだ大バトルを経験した古菲と高音にとって、麻帆良の一般格闘戦士など既に相手ではなかったようである。
こうなると決勝は古菲vs高音で間違いないだろうが、其れまで2人には消化試合以下の戦いが――強すぎるのも時に問題であるようだ。
――――――
「あぁ…え?判定勝ち?決勝の相手は高音……柔の格闘技は意外とやり辛かったか――だが優勝したんだろ?ならおめでとうだ。
――ネギ、判定勝ちだったが古菲は格闘大会を制したらしいぞ?決勝の相手は高音だったそうだ。」
「高音さんが?…でも優勝するとは流石は老師!」
さて、体育祭に於いて教員は『教職員競技』以外での出番は無いのは麻帆良でも変わりない。
稼津斗とネギもまた、クラスの成績を把握しながら自分の出番を待っている状態だ。
「其れにしてもカヅトはまたそれ?好きだねその服……」
「無駄がなくて動きやすいんだよこの『山吹色の胴着』は――流石は日本が世界に誇る最強戦士の胴着だねぇ…」
で、稼津斗はなんでかまたしても某野菜の戦士が愛用している山吹色の胴着を着用している――まぁ動き易さ重視なのだろう。
其れに本人が気に入ってるようなのだから、彼是言うのは無粋と言うモノだ。
まぁ、其れは其れとして、流石は最強クラスの3−A、各競技で何れも参加者が上位入賞を果たし、現在ぶっちぎりのトップ成績である。
一応魔法やら何やらの使用は禁じ手としては居るが、其れであってもトンでもクラスの勢いを止められる者は早々居ないらしい。
「まぁ、3−Aが全体優勝を勝ち取るのは兎も角として――問題は和美が言ってた、俺とネギに対する『宣戦布告』だな。
学園全体イベントを使うと言っていたが……果たして何を仕掛けて来るのか……」
「朝倉さんが本気で企んだ事だと、僕達も油断できないよね……」
目下最大の不安と言うかアレは、和美が言っていた稼津斗とネギに対する『宣戦布告』の学園全体イベント。
結局内容は一切不明なまま当日を迎えた事も有り、今や学園最強となっているこの2人であってもやや緊張は隠せないようだ。
「!!…ネギ!!」
「――此れは!!!」
――ドドォォォォォン!!!
其処に突如降り注ぐ(ゴム弾の)マイクロミサイル!
サバイバルゲームの流れ弾などではない……確実に稼津斗とネギを狙って放たれたモノだ。
「此れは……まさか、始まったのか――学園全体イベントが!!」
「えぇ!?まさかの大戦争!?」
まさかの学園全体イベント開始?
要領を得ないが、今の攻撃を見るに『宣戦布告』と銘打たれた学園全体イベントが始まったと見ても恐らく間違いではないだろう。
「おいおい……体育祭に戦車は出て来ないだろ普通?」
「いや、戦車どころかなんなのあの迷彩服の集団は……」
更に現れたのは戦車と何やら軍隊チックな集団――幾ら非常識の塊な麻帆良であっても、此れは大凡体育祭に出て来るモノではない筈だ。
が、其れが平然と出て来る辺りが矢張り此処は麻帆良なのである!!
『最優先目標、最強先生&子供先生確認!繰り返す、ターゲット確認!!此れより捕獲作戦を開始する!
ターゲーットの2人は、件の麻帆良武道会優勝者と準優勝者だ、くれぐれも注意しろ!!』
「如何やら本気で始まったみたいだな……学園全体イベントが…」
「えぇ!?って、本気で僕と稼津斗で学園全生徒を相手にするの〜〜〜!?」
稼津斗とネギを相手にと言う事を考えると、この攻撃は如何考えてもイベントが始まった事は間違いないだろう。
だが一体どんな競技だと言うのか!?
『聞こえますか、稼津斗先生、ネギ先生!此方は全学園の軍事&サバゲー関連サークル体育祭混成部隊!
貴方達は完全に包囲されている!大人しく我々の要求に従いなさい!……ってゆーか、皆の者掛かれ!!全軍突撃ぃぃぃぃ!!!!』
「「「了解!!」」」
「「「ラジャー!!」」」
「「「Jawohl!!」」」
「突撃するなら最初から降伏勧告なんてするなよ……ネギ、取り敢えず――戦略的撤退!!一撃でアレを沈めるのは流石に拙い。」
「りょ、了解!!」
イキナリの全軍突撃に、稼津斗とネギも空を飛んで回避!
捕獲機能付きのナパーム弾やら戦車砲やらアサルトライフルの乱れ撃ちも、上空に回避されたのではさほど意味は無い。
そして此処で漸くイベント開始のアナウンスが!
『さぁぁぁ始まりました本年度の学園全体イベント!『教師突撃☆スーパー借り物競争』〜〜〜!!
毎回教師に対する無理難題な借り物要求が好評のこのイベント!今年は何とスペシャルボーナス付き!!
そのスペシャルボーナスのターゲットは…麻帆良女子中等部担任のネギ先生と、同副担任の稼津斗先生〜〜〜!!
何かと話題のこの2人から借り物に成功した団体には何と……何とボーナスとしてポイントが100倍に!!』
「幾ら何でも倍加し過ぎだろ和美!!何処のインチキクイズ番組だ!?」
立体映像として現れた和美に対して思わず突っ込んでしまうのも無理はない。
幾らハードな条件とは言え100倍はやり過ぎだろう、100倍は!!最早一発逆転どころの騒ぎではない。
『受け持ちクラス以外の生徒から借りられるとペナルティ〜〜!
ネギ君は100倍、稼津兄は1000倍のペナルティだから頑張って逃げてね〜〜〜♪』
そしてこの和美ノリノリである。
まぁ、稼津斗とネギから借り物(と呼べるかどうかは不明だが)をするなど、確かにハードモードを超えた最高難易度ではあるのだが……
だが如何せん物量が違いすぎる!!
「居たぞ〜〜〜!!!先生ネクタイ貸して〜〜!!」
「眼鏡を!!!」
「胴着貸してください!!!」
「靴プリーズ!!!」
「取り敢えずパンツを〜〜〜〜!!!」
ターゲットを確認するや否や、本気で全校生徒と思える人数が大殺到!!
中には『何を借りようとしてやがるオンドリャア!!!!』と叫びたくなるような輩もいるが、其処はイベントのテンションと言う事で納得すべし。
「本気で全校生徒を相手にしろって?……やってくれるじゃないか和美……ならば応えよう!1/10万…覇王翔哮拳!!!!」
「ちょっとカヅト〜〜〜〜!?」
だが始まったのならばやるしかない。
更なる上空へ移動しながら、威力をギリギリまで削った覇王翔哮拳を放ち、稼津斗は群がる輩を一撃粉砕!!
突っ込みを入れながらも、ネギも上空へ移動しながら『魔法の射手』を放っているのだから大概だろう。
「うわぁ……ホントに凄いなぁ麻帆良の皆は…今更だけど……」
「本気でオリハルコン内蔵してるんじゃないだろうな……と、其れよりも今はイベント終了まで逃げ切るぞ!
他のクラスの連中に捕まるとペナルティだが、3−Aの面々もどんな無理難題付付けて来るか分からないからな?」
「う、うん!!」
だが、此れだけの攻撃であっても『やり過ぎ』と言う事はないだろう――相手は麻帆良生なのだから。
「なんだありゃ!?と、兎に角捕獲弾を撃て〜〜〜!!」
「ヘリも出せ!確実に捕まえるんだ〜〜〜〜!!!」
「……此れ体育祭だよな?」
「だと思う…多分、きっと……」
果たして世界中を探しても、捕獲用の弾丸やら何やらが飛び交う体育祭など存在するのだろうか?
この麻帆良以外にそんな体育祭が存在すると言うのならば、是非ともテレビのバラエティー番組で特番を組んでほしいモノである。
尤もそれらを駆使しても稼津斗とネギを捕らえられるモノではない。
放たれた弾薬やらは、全て回避&相殺されているのだから……これならばイベント終了まで逃げるのもまた不可能ではないかも知れない。
――キュゴウ!!
「「!!!」」
3−Aの生徒がこのイベントに参加して居なければ。
突如稼津斗とネギに襲い掛かって来たのは、誘導性をもった弾丸。
恐らくは魔力弾か、其れに近い特殊弾なのだろうが、何ともしつこく避けても避けても追って来るというホーミングバレット!
あちこちから襲い来る其れに曝されては幾らこの2人でも動きは制限されるし、上下左右360度からの攻撃を全回避など不可能だ。
――ドン!!!
「く……!!」
「うわぁ!?」
遂に稼津斗とネギは2発ずつ被弾し、その衝撃で堪らず最も近い建物の屋根に不時着。
だが――
「…へ?魔力が抜ける!?」
「気が集中しない……此れは一体?……まさか!!!」
着地した2人は魔法と気が使えない状態になってしまったようだ。
間違いなく今の弾丸の効果である事は疑いようもないだろう――そしてこの2人に対して攻撃を当てる事が出来る人物など限られてくる。
「ふ…魔法禁止3分×2弾……此れで稼津君とネギ君は6分間の間力を封じられたって事だね……」
「お前か……良い射撃だったぞ、裕奈!!」
この特殊弾を放ったのは裕奈!
そして其れと共に、和美にハルナにまき絵と美砂も御登場!!
「へっへ〜〜、余裕ぶっこいてると痛い目見るぜ、稼津君、ネギ君!!」
「女の子の本気を甘く見てるとヒドイわよん!?」
本年度麻帆良体育祭メインイベント!稼津斗&ネギvs麻帆良女子中等部3−A……いざ戦闘開始である!!!
To Be Continued… 
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