「ジャック・ラカンだと?
 ふん、如何に強かろうとも、貴様如きはこの『造物主の鍵』の前には塵芥に等しい!再び幻へと帰るが良い!!」

復活したラカンに怯む事もなく、2は造物主の鍵を発動し、ラカンを再度消し去ろうと攻撃を仕掛ける。
だが、ラカンはその攻撃を尽く紙一重で躱して決定打を打たせない――歴戦の英雄と、調整を施されただけに過ぎない人形との差なのだろう。

「厄介なシロモンだが……当たらなきゃ大して意味はねぇよな其れ?」

「!?」

一瞬で2の背後を取ったラカンは不敵に笑いながら、右ストレート一閃!
その威力の何とすさまじい事か…2はまるでゴムボールの如く簡単に吹っ飛ばされて壁に大激突!ラカンのチートバグっぷりは相変わらず健在である。


そして此れだけではなく…

「懲りないわね……また私に氷漬けにされたいのかしら、間抜けな氷使いさん?」

「ほざいてろ……今度は負けないから!!」




「所詮は過去に敗北した輩の残党か……思ったよりも楽かもしれんな。」

「くくく……確かになぁ?だが、相手をする以上は手加減などは一切不要だ!……纏めて叩き潰してくれる!!……ネギの負傷分を上乗せしてな!」

稼津斗やエヴァンジェリンもやる気は充実!!まぁ、エヴァンジェリンには多分に私情が含まれて居る気がしなくもないが……
兎に角、この面子が負ける事は、恐らく億に一つもないのかもしれない……











ネギま Story Of XX 131時間目
『3−A魔法世界に全員集合!』











稼津斗達との戦いとは別に、祭壇の中央部では儀式を反転させるべく千雨達が奮闘していた。

「栞さん、マジで此れで良いのか!?」

「理論上は此れで行けるはずです……調が倒れた以上は、もうこれ以上の策は思いつきません。」

戦いの勝敗とは別に、儀式の停止とアスナの覚醒もまたこの場での最重要任務と言っても過言では無いだろう。
千雨は、敵の凶行によって消された調の代わりに、データその他の管理を行い、儀式の反転を試みていた。

「後は『親友』である皆さんで呼びかけを装置を通じてアスナさんに送って目覚めさせるより他に方法はありません。」

「世界の命運が私等の肩にかかってるってか?……冗談きつすぎだろ其れは流石に…」

相変わらず皮肉気な事を口にしながら、しかし千雨の顔には覚悟を決めた笑みが浮かんでいた。
千雨自身、魔法世界に来て色々思う事は有ったのだろう……だが、幾ら非常識なクラスメイトだって己の命を張る価値はある……故の余裕だろう。

「おし!戦闘要員じゃない奴等は今直ぐ祭壇に集合しろ!
 私等の思いやら何やらを、纏めてアスナに打ち込んでやる!!気合入れろよお前等!!」


この千雨のセリフに呼応するかのごとく、魔方世界残留組は祭壇に次々と集合して来た――強い力は仲間を呼び寄せるのだろう。
集まった仲間同士で手を繋ぎ、一丸に『アスナ目覚めろ』の思いを乗せて心で呼びかける。

栞が言うには、口に出すよりも強く念じた方がこの場では効果があるとの事なのだ。


――クソ……目覚める気配がねぇ!起きろアスナ!テメェは薬で眠らされて好きなように使われるなんて魂じゃねぇだろ!!


だが、呼びかけられたアスナはまるで起きる気配がない……余程強力な薬で眠らされているのだろう。

「つかさ千雨ちゃんや、この面子だと『アスナの親友』ってのには、ち〜〜〜〜〜っとたんなくないっすかね?特に私とか…」

「るせぇ春日!んなこたわ〜ってるっつ〜の!!
 だけど現状は此れしか居ねぇんだ!なら私等でやるしかねぇだろ!!つべこべ言ってねぇでアイツ起こす事に集中しろ!真面目にやらねぇとシスターにチクるぞ!

確かに美空の言う通り、此処に居る面子ではアスナの『仲間』ではあっても『親友』と言うにはちょっと足りない。
贅沢な事を言うなら、エヴァンジェリンが此方側に居てくれれば最高なのだが、生憎と彼女は現在戦闘の真っ最中であるから此方には手を貸せない。


分かってはいるが、焦るのも仕方ないだろう。
戦闘で発生するエネルギーで魔法世界のエネルギーを補うのだって限界はあるし、そもそも戦闘は無限に続く訳ではないのだから。

一刻も早くアスナを目覚めさせ、その力でもって魔法世界を元に戻さねば取り返しのつかない事になってしまう。


――起きろ!起きろよ!!一体何時まで寝てやがんだこの寝坊助が!!!


諦める心算はないが、迫るタイムリミットに焦りが募る。


だが、天運は何時だって諦めない者にこそ味方するモノだ。


「スミマセン、手間取ってしまいました!」

「どうやら中々に切迫した状況のようだね?」

「桜咲、龍宮!!」

この土壇場で、刹那と真名が合流!
特に刹那の合流はお世辞抜きの有り難さだ。何と言ってもこの面子の中でアスナの大親友的立場に居るのは刹那なのだから。

「詳しい説明は後だ!お前等も兎に角アスナが目覚めるように念を送ってくれ!
 特に桜咲、アンタが来てくれたのは僥倖だぜ――なんつったって、アンタはアスナの『大親友』なんだからよ!!」

「大親友だなんて……ですが、私の力がアスナさんの覚醒に必要だと言うならば、惜しみなく協力させていただきます!」

「やれやれ……寝坊助のお姫様を起こすのが次の仕事かい?……まぁ、此ればっかりは無料奉仕も仕方ないね!」

たった2人、されど2人――この加入は大きいモノだ。


「うし、良い感じに流れが傾いて来たぜ!
 欲を言うなら、委員長が居てくれりゃ尚いいんだが……流石に其れは高望みだよな。」


「あら?呼びましたか千雨さん?」

「!?」

更に更に、何処から現れたか委員長こと雪広あやか+麻帆良に居る筈の残りの3−Aの面子がこの場に大集合!
突然の事態に千雨だって驚いてしまう。

「な!?アンタなんで……」

「私がお連れしました……戦力は多いに越した事は有りませんし、なによりも此処が土壇場の大勝負でしょう?」

「ポヨ!?……いや、ザジさんの方か!
 確かにそうだけどよ、今此処は最終決戦の真っ最中だぜ?幾ら何でも危険てモンがあるんじゃねぇか?」

「全責任は私が……其れに、こうなってしまった以上此方も彼方も絶対安全と言える場所など有りません……そうでしょう?
 ならば、私達3−Aらしく最終決戦に全員で介入して無敵にハッピーエンドと言うのが良いと思いませんか?」

「……アンタ、意外と喋る奴だったんだな………けどまぁ、確かにその通りだ。
 おっしゃ!此処が踏ん張りどころだ!!行くぜお前等、全員でアスナの奴を叩き起こす!!
 此れが失敗したら、私等も火星の大地に放り出されてお陀仏だからな……気合い入れろよお前等!!!」

「「「「「「「「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」」」」」」」」」

非常識空間麻帆良学園都市に於いて尚『非常識軍団』と名高い女子中等部3−Aが集結して、更に一致団結!此れはもう最強だ。
全員の『アスナ目覚めろ』の思いが、まばゆい光を放ちながら儀式の装置を通じてアスナに送られていく。


――目覚めて下さいアスナさん……今この時、貴女の力が必要なんです……どうか、目を覚まして!!


――寝て居る場合ではありませんわよアスナさん!……ネギ先生も、エヴァンジェリンさんも今この時を戦っていますのよ?
   そんな時に、貴女は1人で眠って居る心算ですの?……違うでしょう?
   こんな時だからこそ貴女は立ち上がり、そして誰が相手だろうと正面から向かって行く……私の一番の親友は、そう言う人ですわ…


――聞こえてんだろ?お前を起こそうと、3−Aの奴等が全員集まってんだぜ?テメェの危険を顧みずにだ。
   オメェは、この馬鹿共の思いを裏切るような奴じゃねぇだろ?
   魔法世界のお姫様だか何だか知らねぇが、私に言わせりゃ非常識な仲間の1人なんだ…面倒な事は要らねぇ……いい加減起きろよアスナ!!


思いは無限の力となりて、アスナに流れ込んでいく。
そして、その思いの力に呼応するが如く、アスナの指がホンの僅かだけ動き……そして軽くだが、確実に右手が『拳』を形作っていた。








――――――








「行くぜオラァ!!全力全壊手加減不要!一撃必殺天下無敵の……全開ラカンインパクトォォォォォォォォォ!!!!!

「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……消えろ!覇王……翔哮拳ーーーーーーーーー!!!!

轟殺居合拳!!!


――ドバゴガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!


そして戦いの方は、分かりきった事だが稼津斗達が圧倒的である。圧倒的過ぎて、此れは戦いではなく蹂躙と言った方が正しいかも知れない。
特に稼津斗とラカンはその中でも特出しているのは間違いない。

不死身の稼津斗と、限りなく不死身に近いラカン……更に2人とも努力の末に絶対の力を手にした天下無敵の猛者なのだ。
その2人に精々『強いだけの人形』が勝てるだろうか?……無理である。天地がひっくり返って空から神様が降って来たって無理である。

更に、この2人には大幅に劣るとは言え、同様に努力で呪文詠唱不可のハンデを埋めたタカミチに、特Aレベルの魔法使いが勢揃い!
チート無限の反則チーム?……知った事では無い、この最終決戦は何が何でも勝たねばならぬのだから面倒な事は言いっこなしだ。

「今だ、ブチかませマクダウェル!!」

「言われるまでもない、既に我が最大の一撃は準備できているわ!!!」

そして、世界的に有名な無敵にして不死の魔法使いエヴァンジェリン……最強による最強の魔法は既に準備が完了して居るようだ。

「氷れる雷もて 魂なき人形を囚えよ。
 妙なる静謐 白薔薇咲き乱れる永遠の牢獄……終わりなく白き九天!!!!


――轟!!!!!


放たれたるは、白き冷凍雷撃!!
雷を纏った氷の竜巻は『人形』のみを狙って吹き荒れ、そして攻撃対象を的確に狙って放たれる。


――ガキィィン!!


「!?ば、馬鹿な!!!」

其れに触れたら最後、多重障壁があるにもかかわらず一瞬で完全冷凍!闇の福音の本領発揮とも言える弩派手な大魔法だ。

「我等使徒の多重障壁を無いが如く凍らせるだと!?」

「ハハハハハ!!貴様等の様な、障壁頼りの性能馬鹿を殲滅する為に開発したオリジナルスペルだ!
 我が白薔薇の雷氷の蔓は、貴様等大量生産品を嗅ぎ分け、御大層な障壁ごと包み込み『その周囲を氷らせ続ける』!」

更に魔力が炸裂し、1人また1人と完全なる世界の残党が氷漬けになっていく。
勿論それから逃れようとする者も居るが、エヴァンジェリンのオリジナルスペルから逃れる事など出来る筈がない。

「無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!我が雷氷の蔓、意思なき人形に逃れること能わず!
 無駄な抵抗と逃走は止めて、大人しく無様な氷のオブジェとなるが良い!!!」

遂に最後の1人が捉えられ、そのまま完全凍結!!
氷の竜巻が消えたその後には、溶岩すら完全に凍結した『氷の大地』が出来上がっていた……闇の福音恐るべし。

「と、まぁざっとこんなもんだ♪」

「溶岩まで氷るとは……推定摂氏−279.3度『絶対零度』か…」

「す、凄いですエヴァンジェリンさん。」

「ふん///

ネギに凄いと言われ、少し顔が赤くなるのはご愛嬌である。

「だが、実際に凄い魔法だ此れは。
 連中の周囲を凍らせ続けるから、奴等は死んでないし、死んでないから再生も出来ない……再生による不死を逆手に取ったか。」

「因みに精神はそのまま生かしてあるが……もう私にも解けんから、奴等には永遠に恐怖が続くと言う訳だ。」

「成程、追加効果もえげつないな。」

「あぁ……だが、今のはあくまでも『人形』限定の必殺魔法に過ぎん。この状況を鑑みるに、『奴』もまた此処に来ているだろう!
 そして奴には今の呪文は効いてなど居ない筈だ!!稼津斗、今の内にネギ達を連れて麻帆良に退避しろ!!」

だが、完全なる世界の残党を倒したからと言って終わりではない………そう、まだ敵は居るのだ。
此処に来る前に確認したら、図書館島の地下から姿を消していた『封印されし存在』が此処に来て居る筈なのだ。


「……そうはさせんよエヴァンジェリン……」

「「!!!!!」」


――此れは…!


――金縛り!?…や、やべぇぞ……!!


「今のは見事な術だ……我が娘よ。」

現れたのは、漆黒のローブに身を包んだ長身の『誰か』。
不滅にして、魔法世界を生み出したとも言われる最強の存在………そして、この戦いにおける最大級の敵『始まりの魔法使い』が其処に居た。

金縛りに掛けられたエヴァンジェリンとラカンは動けないし、満身創痍のネギとフェイトはもっての外。
ディズもまた、自らの創造主である始まりの魔法使いに攻撃する事は出来ない。

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」

「「むぅぅぅぅん!!!」」

それでも、動く事が出来るタカミチ、詠春、クルト、アル、近右衛門が同時攻撃を仕掛けるが、全く通じず、それどころか簡単に吹き飛ばされる。


「ちぃ!!」

更に稼津斗も攻撃せんと動くが……


――ドスドスドスゥ!!!


「が……なにぃ!?」

地面から生えた無数の剣が全身を貫通し、縫い付けられるように動きを封じられてしまった。


邪魔者は全て封じた……そう言わんばかりに、始まりの魔法使いはネギに近付き、そしてその首を締め上げる。
全ての力を使い果たしたネギに逃れる術はない……このままでは窒息か首の骨を折られるかして絶命してしまうだろう。

「ネギ!!!」

「あ……ぐ………」

絶体絶命………だが――


――ザァ……



同時に、儀式の祭壇では亜麻色の髪が眩く輝き、魔力の風にたなびいていた――













 To Be Continued…