「う……ぐ……如何に不死とは言え、矢張り許容を超えたダメージを受けると些かキツイものがあるな…」

最終決戦が行われている最中、イクサは目を覚ました。
受けたダメージは甚大だが、オリハルコンの力を使えば即時回復は出来るので其れは問題ない……とは言え許容範囲以上のダメージ故にキツイが。

「小太郎……息はあるな、死んではいない。
 楓に和美、裕奈は不死とは言え、小太郎まで息があるとなると、連中は私達を殺す事は出来ない訳か……面倒な制限を受けているんだな。
 意識を刈り取るだけでなく、いっそ殺してしまった方が色々と楽だろうに…」

相手方の思惑は分からない……何故『殺害不可』の枷を嵌めているのかも。
だが、相手の思惑は兎も角として、誰1人として死んでいないのであれば何も問題はない。

イクサも状況が終幕に近い事を察しているのだろう、活を入れて楓、裕奈、和美の3人を叩き起こす。(小太郎は身体の事を考えて起こさない)

「くは…は〜〜〜……死ぬかと思ったでござるよ…」

「う〜〜〜……さっすがに効いた〜〜〜」

「な〜〜〜んか、まだ微妙に身体が痺れてんですけど…」

「うん、分かりきっていた事だが存外余裕だなお前達は。」

目を覚ました3人は、僅かに身体に痺れが残って居るモノの、極大攻撃を受けたとは思えないほどにピンピンしている。
此れならばオリハルコンの超回復を使えば問題はないだろう。


「お〜〜い、皆無事〜〜!?」

更に其処にまき絵とユエが合流。
此方も、ユエの魔法で痺れを回復して此方に来たようだ。

「まき絵殿、ユエ殿!……見ての通り無事でござるよ、流石に無傷とは行かぬが。」

「戦局はそろそろ終幕が近い……私達も皆と合流した方が良い。」

そして一行は最終決戦が行われている祭壇中央を目指して迷うことなく邁進、驀進、超突進!!戦いはいよいよクライマックスだ。











ネギま Story Of XX 129時間目
『最強最大にして究極の決着』











「うおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


――バキィィィィィ!!!


祭壇での戦いは徐々に、だが確実にネギがフェイトを抑えつつあった。
人知を超えた雷速瞬動はフェイトと言えど見切る事は不可能……それは同時にネギの攻撃を完全に捌くのは不可能であると言う事に他ならない。

現に今も、ネギの渾身の右拳がボディに炸裂してどてっ腹に風穴開けられた状態なのだ。

だが――


――
所詮は人形…何べんやっても結果は同じ……だが、今は以前の様な苛立ちを感じない……其れは相手が君だからかネギ君?


そんな状態にあって尚フェイトの口元には笑みが浮かんでいた。
諦めとか自嘲とかそう言ったモノではない、この戦いで得た満足感から来る笑みだ。

「終りが近いねネギ君……恐らくは次の攻防が最後になるだろうけど――その前に君達の言う『代替案』とやらを聞かせてもらっても良いかい?」

そんな状況で突然のフェイトの申し出。
今まで代替案などには聞く耳持たなかったフェイトの突然の申し出にネギは一瞬面食らった表情を浮かべるが、スグサマ不敵な笑みを浮かべる。

今さら何を……そう言うところだろう。

「如何言う風の吹き回しだフェイト?代替案は聞かないんだろう?」

「そうだったね……気紛れだ、忘れてくれネギ君……そうだ、全ては君との決着を付けてからでないと意味は無い!!」

ネギの言い分に薄く笑うと、何を思ったかフェイトは右腕を差し出す……まるで握手を求めるように。

「そう言う事か……良いだろう受けて立つ!そして此れが正真正銘のラストバトルだフェイト!!」

「ふ、君なら乗ってきてくれると思ったよネギ君!!さぁ、全力でやろう!!」

迷うことなくネギがその手を握った瞬間、2人の魔力が異常なまでに膨れ上がる――そう、此れで決着を付けるために!


「な!?シェイクハンドマッチってマジかおい!つーかあいつ等がガチでリミッター解除の一発かましたら宮殿ぶっ飛ぶぞ!?
 いや、それ以前にあんな至近距離で極大魔法使ったら、2人とも消し飛んじまうんじゃねぇのか!?…大丈夫なのかよ先生……!」

千雨の言う通り、この至近距離での極大魔法を撃てば勝とうが負けようが無事では済まない。
いや、それどころか下手したら双方吹き飛んでダブル消滅ともなりかねない……が、ネギとフェイトに手加減する心算など皆無。

何故なら2人とも全力の一撃を放つのに、凶悪に凶暴な笑みを浮かべているから。

「ったく……此れだから手加減できねぇガキの喧嘩ってのはめんどくせぇんだよな。
 けどよ、其れがアンタの選んだ決着の付け方なんだろ?……ならいっそのことやっちまえ………だけど、負けんなよ…アンタの嫁さんの為にもな。」

聞こえた訳ではないだろうが、千雨のこの一言が、奇しくも合図となった。


「ヴィシュ・タル リ・シュタル ヴァンゲイト!!契約により我に従え、奈落の王!!」

「ラス・テル マ・スキル マギステル!!契約により我に従え、高殿の王!!」


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


「来たれ、巨神を滅ぼす燃ゆる立つ雷霆!!百重千重となりて走れよ!!」

「地割れ来たれ、千条舐めつくす灼熱の奔流!!滾れ!迸れ!矍鑠たる滅びの地神!!」

限界を突破して高まる魔力!
2人を中心に魔力奔流が渦巻き、逆巻き、宮殿全てを覆い尽くしていくかのようだ。

千の雷!!!!

引き裂く大地!!!

放たれた極大の一撃!!
その力は完全に拮抗!こうなったが最後、此処からは気合いと根性のぶつかり合い!早い話が負けず嫌いな方が勝つと言う事だ。


「雷と溶岩のせめぎ合い……決める心算だなネギ。」

「何と言うか、宛ら世紀末大決戦にござるなぁ……」


その波動は移動中のイクサ達にまで届くほどに強い。

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」

いずれにしても、此れが最後の攻防である事は間違いないだろう。








――――――








そしてこの攻防の様子は麻帆良学園からも見る事が出来ていた。

「千の雷と引き裂く大地か……マッタク無茶をするなネギよ……師匠としては気苦労が絶えんが、其れが良い!
 どうせやるなら徹底的にやってしまえネギ!不完全燃焼など断じて許さん!少なくともそいつとの決着はお前が付けろ!あとは私が出張ってやる!」

「だな……始まりの魔法使いって言うのは気になるが、今はこっちとあっちを何とかするのが先決だ。
 と、言う訳でそろそろ行かないかマクダウェル?身体は温めておいた方が良いだろう?」

「そうだな、ウォームアップは大切だ。」

だが、其れを見ても麻帆良の2強はなんのその。
アレはネギの戦いなのだからネギに任せるのが道理、寧ろそれが普通、手助け?ぶっちゃけ余計な横槍だろと言わんばかりである。
流石に数百年も生きていると、色々と感覚が一般人とはずれているのだろう。全く持って今更だが。

「そう言う事だから、俺とマクダウェルは召喚魔の殲滅に向かうが、良いよな爺さん?」

「良いよ〜、ワシ公認しちゃうから思い切りやっちゃって♪」

この学園長も大概である……まぁ、其れだけ稼津斗とエヴァンジェリンを信頼していると言う事だろう。
そして学園長公認となればこの2人が黙って居る筈などない。

絶対強者のみに許される獰猛な『肉食獣の笑み』を一瞬だけ浮かべたかと思うと弾かれたようにその場から飛び立ち――


「消えろゴミ屑!」

「お呼びじゃないぜ三下。」

適当な召喚魔を一撃粉砕!
麻帆良学園の暫定最強タッグに掛かれば、召喚魔如き一撃で99999のダメージを与えてオーバーキルだ。


「うおぉぉ!アレは麻帆良武闘会のチャンピオンと、ネギ君と激闘を繰り広げたお嬢さん!此れは負けてられねぇ!!」

「うっしゃーー!麻帆良生の底力見せてやんぜオラァ!!!」


この2人の参戦が召喚魔迎撃に当たっている一般生徒の士気を引き上げる。
真の強者は戦場に存在するだけで味方を鼓舞すると言うのは、どうやら本当の事であるようだ。


「稼津斗君!何故ここに…」

「ガンドルフィーニか……何だって良いだろ?今大事なのはコイツ等をぶちのめす事だ、違うか?」

「そうだが……えぇい、今更現れて君は!!こちらは大変だったのだよ!?」

「俺の方だって大変だったよ!てか其れは何か?若しかして助けてほしかったのか?」

「馬鹿な事言うな、そんな筈ないだろう!!」

戦っていれば他の魔法先生とも鉢合わせる。
生憎と鉢合わせたのはガンドルフィーニだったが、互いに軽口と憎まれ口を叩きながらも正確かつ確実に召喚魔を撃滅、滅殺、大掃討!!


「全く素直じゃないなガンドルフィーニ……お前さんだって彼の力は認めているだろうに…」

「ホントに……まぁ、其処がガンドルフィーニ先生らしいと言えばらしいんですけどね。」

神多羅木と瀬流彦も思わず苦笑いを浮かべてしまう。
だが、適当に反目しながらも稼津斗とガンドルフィーニは召喚魔を滅していくだけでなく魔法世界から落ちてきている浮遊石も破壊している。

稼津斗もガンドルフィーニも馬が合わなくとも互いに互いの実力は認めているが故に、戦場で共闘した場合にはその強さがハンパない。
嘗て大喧嘩の余波で麻帆良に入り込んだ賊を殲滅したのもその延長線上だろう……多分、きっと。

だが、其れとは別に最強2トップは矢張り稼津斗とエヴァンジェリン。


「デカいのを行くぞ!合わせろよ稼津斗!!」

「誰にモノを言ってるマクダウェル?俺がタイミングを外すとでも思っているのか?」

「思って等いないわ、只の確認だ!決めるぞ……消え去れ、おわる世界!!!」

滅殺……でりゃぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁ!!!!

想像したくもない『おわる世界』と『滅殺剛覇王翔哮拳』の合体技……召喚魔はあえなく全滅!最強2トップに隙はなかった。








―――――








極大魔法のぶつかり合いがおきた魔法世界では、その余波が少しずつ治まって来た。
粉塵と蒸気が少しずつ晴れ、最終決戦の結末が顕わになって来る。

「………」

そして見えたのはフェイトの姿……ネギの姿はない。

吹き飛んだのだろうか?………いや、そうではない。


――ガシィ!!


1人残ったフェイトの手を何者かが掴んだ。

「?」

ネギだろうか?……だが、ネギにしては手が大きい――此れはまるで大人の手だ。


「よぉ、テルティウム。」

「な!?」

その手の主はネギではなく、なんと『ナギ』。
フェイトの目の前には『サウザントマスター』ことナギ・スプリングフィールドの姿があった。

「いや、今はフェイトだったか?まぁ、どっちでもいいけどよ。
 けどなぁ、久々に会ってみりゃ、テメェはなぁに俺様の息子の代替案を拒否ってくれてやがんだこの白タコ!」

「!!!!」

親☆馬鹿☆パンチ!!!


――ゴスゥ!!!


その本気の拳が炸裂!
史上最強のバグキャラと名高いナギの本気の拳など想像もしたくないが、フェイトの思考を混乱させるには充分だった。


――此れは一体!!……まさか、儀式の逆流!?


「任務に託けて俺様の息子とバトってりゃそれで満足かおい?
 ド阿呆が!ジャックの馬鹿が言ってる『楽しめ』ってのはそう言うこっちゃねぇだろうが、このポンチキィ!!!」


――ドガァ!!


「人間を、舐めんなぁ!!!!!!!」


更にもう一発!
だが此れで終わりではない。

「テメェも…テメェも人間だとよフェイト。おっとコイツは坊主の受け売りだがな。
 あんまり『自分』を舐め腐ってんじゃねぇぞフェイト。」

今度現れたのはラカン。
自信たっぷりの不敵な笑みは、フェイトの記憶にあるままだ。

「コイツの影響で俺もお前さんの過去を知っちまったが、詰まる所あれだろ?惚れた女の淹れたコーヒーが美味いとかそう言う事だろ?」

「黙れ!!」

今度はフェイトも黙ってはいずに殴る。
だがラカンは動じない。

「ははは!図星か?意外と単純じゃねぇかテメェ!いや、人間は単純に限るぜ!
 まぁ、アレだ女の事は忘れるに限る!この際だ、オッサンと一緒に酒でも飲もうぜぇ?お前さんとはいい酒が飲めそうだ!」

「黙れと言っている!!」


――メキィ!!!


渾身の一発!……だが其れを受けたのはラカンではなくネギだった。

「ネギ君……」

「多分アスナさんの力だろうけど、ラカンさんの言うように僕も君の過去を見た……
 栞さんのお姉さん……あのコーヒーの女の人だけじゃない…其れは分かってるつもりだ。
 だけどフェイト、この世界を真の意味で救うのは今なんだ!父さん達がなす事の出来なかった事をやり遂げるのは今なんだ!
 だから力を貸してくれ、僕達の代替案であっても君達の協力は必要不可欠なんだ。
 勿論この代替案が途中で頓挫して失敗したら、その時は君達の本来の目的を果たすしか策はないだろう。
 だけど今は力を貸してくれフェイト!僕達の手で、神様の力なんて借りないで……出来る筈だろ僕達なら?」

今までの激闘が嘘のようにネギはフェイトに笑いかける。
其れに面食らうフェイトだが、矢張り譲れないのだろう。

「ネギ君…何度言えば分かるんだい――

「あぁ、分かってる…だから力尽くなんだろ?」

其れを最後まで言わせずにネギは続ける。

「正真正銘、最後の一撃で僕が勝ったら従って貰う、そう言う約束だろ?」

「全くどの口が言うのかな君は?
 父と師匠、挙句の果てには助けるべき姫巫女の力まで借りて……勝負が聞いて呆れるよ。」

「ホントに頭が固いなフェイト。
 そもそも僕と君の戦いはルールのある試合じゃないんだ、勝つためなら使えるモノはなんだって最大限使うさ。
 だけど、カッコ悪くても子供でも、自分の意思を貫き通す事が出来たら、其れは何よりも価値があるモノだと僕は思ってる。」

「単純極まりないね……まぁ、君は所詮10歳の子供だからね……」

「揚げ足を取るようだけど、君だって12歳の子供だろ?」

互いに視線は外さず、だが今までの様な激しさはない。



「……」

「!!」

僅かに握った手にフェイトが力を加えるが、其れも直ぐに解放され、互いの手は離れる。

「いや、やめよう……負けを認めよう、言い訳が出来ないくらいの完敗だ……君の勝ちだ、ネギ君…」

穏やかな笑みを浮かべ、フェイトは本当の握手の為に、改めて右手を差し出して来ていたのだった。












 To Be Continued…