挑発や軽口ともまた違う、ある意味で最も『シックリくる』言葉を交わし、稼津斗とネギは祭壇に降り立つ。
フェイトとセクスドゥムも、着地を狙って奇襲を掛けるなどと言う無粋な真似はせずに、2人が地に足を付けるのを只待っている。


其処に浮上してきたのはグレートパル様号。
被弾した部位の応急処置を終え、稼津斗とネギが、そして墓所で戦っている刹那が勝利した場合に即離脱が出来るようにスタンバイしているのだ。

『ネギ君、カヅっち…大丈夫?大丈夫…だよね?』

「はい、僕達に全て任せて下さい。」

「ただし、アイツ等との戦いは決定事項だ。
 その戦いで発生する余波がどれくらいになるかは、正直言って予想が付かない――備えておけ。」

『うっす…了解!』

ハルナとの短い通信を終え、2人の『最強』は祭壇中央部のど真ん中へと足を進める。

同時に、2人のアーウェルンクスもまた祭壇中央部の中心へと向かってくる。
そんな中で、何を思ったか稼津斗とネギは変身状態を解除し――そして4人が対峙した。

ネギとフェイトは略密着状態と言えるほどにまで近づき、稼津斗とセクスドゥムは人1人分ほどの距離を開けて対峙している。

交錯する視線。

4人とも闘気は未だ穏やかであるにも関わらず、周囲にはその身から発せられたエネルギーによる旋風のような物が逆巻いている。
本気で闘気を解放したらどうなってしまうのか――考えると寒気がするのは仕方ないだろう。


そして4人が対峙したのと略同時に、刹那を除く墓所組が祭壇に転送されてきた。
正確に言うならば、祭壇に徒歩で向かっていた途中でアーニャと合流し、其処から転移魔法で此処まで転送されてきたのだが…

ともあれ、此れで最終決戦の舞台は、役者、観客共に揃った――あとは開幕を待つのみ。










ネギま Story Of XX 126時間目
『決戦ーThe violence Battle』











「よし、ドンピシャ!祭壇だ!!……先生達は何処だ!?」

「千雨ちゃん、あそこ!!」

「!!お、おい!稼津斗先生は兎も角、何でネギ先生は雷化を解いてるんだよ!?
 幾ら何でも、生身じゃフェイトの攻撃にゃ耐えられねぇだろうが!!下手すりゃ木端微塵に吹っ飛ぶぞ!?何考えてんだあの野郎!?」

転送されてきた墓所組が見たのはある意味で信じられない光景だった。
稼津斗とネギが、フェイトとセクスドゥムと対峙しているのは別に良い、戦闘は決定事項なのだから。
だが、問題はネギが雷化を解いていると言う事だ。

ネギの異常な強さと打たれ強さは、全て雷化あっての事だと言っても過言ではない――特に打たれ強さに関しては。
そもそも雷化しているネギには物理攻撃は先ず通用しないし、そもそも当てる事すら難しい……故に『打たれ強い』のだ。
だが、生身ではその特性は失われ、外的攻撃には己の肉体強度のみで耐えるしかないのだが、生身のネギの身体ではフェイトの攻撃には…

「出来れば話し合いで決めたい。」

「…本気で言ってる訳じゃないだろう?」

先程とは一転、今度は酷く重い調子で言葉は紡がれる――視線は互いに相手を捉えて離さないままだ。

刹那、フェイトの闘気が膨れ上がり、ネギの顔面に向かって右拳一閃!
ネギは見えているだろうが避ける素振りはなく、それどころか真正面からその拳を受ける。

ドレだけの力が込められているのか、拳がぶち当たった衝撃だけで砂煙が舞い上がるほどだ。
此れだけの拳を受けてネギは無事なのか?稼津斗以外の誰もがそう思って居る事だろうが――


「!!」

「悪くない一発だ…」

ネギは無事だった!
殴られた部分に闇の魔法特有の紋様が浮かび上がり、一切無傷!

「……そう言う事か。」

何かに合点した様子のフェイトに対し、ネギは振り抜かれたフェイトの拳を軽くたたくと、お返しとばかりに中国拳法式拳打をボディに炸裂!
腰の入った重い一撃は、吹っ飛ばしこそしなかったものの、フェイトの身体を数m後退させるには充分な威力があったようだ。


「フ…フフフフ…見事だよネギ君。
 以前に京都で、僕は君に今は未だ無理だと言った事が有ったね?……遂に此処まで来たか……」

「何時だったか、君は僕に『何も知らないただの子供』と言ったね?……僕自身の答えを携えて此処まで来たぞ?」

「その答えは到底受け入れらない。」

「そんな事は分かってる――だから……拳で分からせてやるって言ってんだ、フェイト!!」

「フ…」

普段とは違う、何処か荒っぽい口調のネギに、フェイトも(傍目には分からない程度の極薄い)笑みを浮かべる。



此れに驚いたのは『生身のネギではフェイトの攻撃は耐えられない』と思っていた連中だ。

「な、何でネギはあんなの喰らって平気なの!?」

「ま、まさか!!」


「分かったアル!
 此れはつまり内面で試練的なあれをして闇の力を我がものとして取り込んだとかそーゆー流れあるね!?常にスーパー○○○人状態を維持とかそーゆー!!

「おぉ!良く分かんないけど強そうね!!」


「最後の最後でやってくれるわねネギ君…!!」


「其れはつまり、あの闇の魔法の副作用を克服して、更に自分の物にしたっていう…」


「ス、スゴイ…」

「ネギ先生…何て子なの…」


皆ネギの強化に驚く。
アレだけ凶暴な闇の魔法の副作用――浸食を克服し、闇の魔法を『異物』ではなく自らの物としたのならばこれ以上ない位に頼もしいだろう。

ただ、千雨だけはその強化の裏に潜む『代償』に気が付いていたが、しかし何も言わなかった。

「ま……取り敢えず、エヴァンジェリンにだけは教えといてやるか――旦那がお前と同じになったって事だけはな。」

其れはネギも覚悟し受け入れている事だから。



そして、ネギだけではない。

「貴方は彼の強化に驚かないのね?」

「ネギを喰らおうとしていた闇を、逆にネギが喰らっただけの話だろ?
 別分驚くほどの事じゃない――俺も似たようなものだからな。尤も、俺の場合はネギと違って元から人じゃないがな。」

稼津斗もまた超強化がされている。
オリハルコンに勝るとも劣らない、凶悪な闇の力を2つも取り込み自らの力とした稼津斗の強さはネギの比ではない。
いや、石膏像と化す前の稼津斗と比べても倍は強くなって居る事だろう――無変身状態でXX特有の稲妻オーラが発生してるのがその証だ。

「俺に言わせれば、お前とフェイトこそ何があった?
 前に戦った時とは違って、今のお前達は何かに期待している――そんな感じを受けるんだがな?気のせいか?

「さぁ、如何かしらね?」

稼津斗とセクスドゥムの方は互いにまだ手は出さない。
だが、溢れ出す闘気は次第にどんどん強くなり、2人が立っている部分を中心に床に亀裂が入り始めている。




「じゃあやろうか……ネギ君。」

その闘気に弾かれたかのように、フェイトとネギは本格的に交戦開始!
同時に地を蹴り、互いに相手に顔面パンチ!
その衝撃で双方後退るが、再び接近し目にも留まらぬ高速拳打のラッシュ、ラッシュ、猛ラッシュ!
かち合う拳は衝撃波を発生させ、その衝撃波が粉塵を巻き上げ、巻き上げられた粉塵が闘気のスパークで粉塵爆発まで起こす始末。

だが、体術勝負ならば日々鍛錬をしていた分だけネギに一日の長がある。
フェイトの高速拳打をギリギリで躱すと、カウンターの肘打ちを叩き込み、追撃に大砲の如き前蹴りが一閃!

この前蹴りで、フェイトの身体は祭壇の端まで吹き飛ばされてしまったが……ネギの追撃は止まらない。

魔法の射手 連弾・光の1001矢!!!

1001本の魔法の矢を放ち、フェイト相手に戦いの主導権を握りつつあった。








――――――








「…始まったな?」

「そうね。」

その傍では、稼津斗とセクスドゥムが未だ動かずにいた。

「派手な戦いだとは思うけれど……もっとこう、スマートに戦えないモノかしら?」

「言ってやるな――男の子同士の喧嘩は全力でやるモノと相場が決まってる。
 ネギもフェイトも間違いなく男の子だが、あの2人が本気で喧嘩すれば、此れ位の規模のバトルになるのは寧ろ当たり前じゃないのか?」

「確かに――なら、大人の男性である貴方は、私をどういう風に戦いへと誘ってくれるの?」

此方は此方で如何始めるのか……其れを問われ、稼津斗は数瞬考える。
此処でイキナリ殴りかかっても良いが、其れは何となく後味が悪いし、女性相手に其れは厳禁。
かと言って試合開始のゴングや、戦闘開始の突撃ラッパがある訳でもない――と、考えた末に、

「…Shall we dance?Mysterious lady.(踊って頂けますか?不思議なお嬢さん。)」

舞踏会で女性にダンスパートナーを頼むかのように手を差し出した。
7にやった挑発的なモノではなく、本当にダンスに誘うように…

「…えぇ…喜んで…。」

そしてその手をセクスドゥムが取ろうとした瞬間に――光が爆ぜた。

二人の手が触れる正に刹那の瞬間にセクスドゥムが水撃弾を、稼津斗が気弾を放ち、其れがぶつかってスパークを発生させたのだ。

「始めようかセクスドゥム、世界一激しくて暴力的な舞踏会を。」

「貴方がダンスパートナーなら、其れは最高の宴になりそうね…」

其れが戦闘開始の合図!
先手必勝と繰り出された稼津斗の拳は、セクスドゥムの水の盾で防がれるが、そんなことはお構いなしに盾ごとブッ飛ばす!

虚空穿!!

そのまま追いかけての肉弾戦ではなく、気功波で追撃!
気功波系の技では最も基本的な技の一つだが、其れでも稼津斗の力で放てば基本技でも即必殺技に早変わりしてしまう……恐るべしだ。

「…包み込め。」

其れに対し、セクスドゥムは濃霧を発生させて姿を隠し稼津斗の虚空穿は霧を吹き飛ばすに留まる。
そして今度は反対に、稼津斗の頭上から拳大の雹が雨あられと降り注ぐ。

幾ら不死身とは言え、こんな物が大量に当たっては堪らない――死ななくても矢張り痛いモノは痛いのだから。

「覇ぁぁぁぁ……滅殺剛波動!!」

其れを殺意の波動の技で相殺すると今度は、稼津斗の周囲に濃い霧が。
いや、其れは霧ではなく極めて細かい粒の氷。其れも1つ1つの粒が鋭利な刃物のように尖った氷だ。
動くだけで身体を傷付ける氷の結界が、稼津斗の周囲に発生していた。

だからと言って動かなれば只の的。
それに、この氷の粒で傷は追っても其れは微々たるもので致命的なダメージにはなりはしない――とは行かない。

その氷の粒に混じって、明らかに大きな氷の刃まで混ざってきた。
動きを制限したうえで、確実なダメージを与えようと言うのだろう。氷の結界と合わさって見事な技だ。

「下手に動くと危険か…なら吹き飛ばすだけだ。爆閃衝!!」

だが其れも周囲360度全てを攻撃する事が出来る稼津斗には脱出するのに難はなかった。
氷の粒も氷の刃も全て吹き飛ばし――たら頭上に巨大な水の塊が!

其れこそプール3つ分の水を纏めたかのような巨大な水の塊が…落ちて来た!
直ぐにバックステップで避けるが、地面に激突した水の塊の中からセクスドゥムが強襲し、跳び回し蹴り!

其れは防がれるが、着地と同時に裏拳!……も入らない!
だが其処で止まらず、流れるような動きで腰の入った正拳突き!

これに対して、稼津斗もまた正拳突きを繰り出して拳と拳が激突し動きが止まる。

「変幻自在……矢張りやりにくいな水使いは。
 其れにお前…この空手は単純にインストールしただけのモノじゃないな?…少なくとも何度も同じ技を反復して精度を高めたんじゃいか?
 其れ位の自主鍛錬をしていなければ、インストールしただけの力で此処までの連続攻撃と、基本を押さえた正拳突きは打てないからな。」

「えぇ…勿論――この力をインストールされてから、随分と我流とは言え空手の技を繰り返し練習したわ。
 私だけじゃない…フェイトだって、彼と戦うために暇さえあれば中国拳法の打撃を何度も練習してもの。」

意外にもセクスドゥムもフェイトも、実戦訓練はしていないとは言え、己に与えられた力を磨いてはいたようだ。

「そうか……其れを聞いて安心したよセクスドゥム。
 もし此処に現れたお前達が、以前にオスティアの市街地で会った時の様な『人形』のままだったら、正直興醒めだったが――要らん心配だった。」

「そう?私もフェイトも所詮は人形である事実は変わらないと思うけれど?」

「心を持たない人形がそんな顔をするか。……お前、今凄く楽しそうに笑っているんだぞ?」

無意識である事は間違いないだろうが、セクスドゥムの顔には稼津斗の言うように笑みが浮かんでいる。
其れも心の底からの笑みが、己の望みが叶った事に対する歓喜の笑みが浮かんでいた。

「楽しそうに?…えぇ、そうかもしれないわ!楽しいし、此れが嬉しいって事なのかしら?
 貴方と再び戦えた事に、私は……今まで感じた事のない感覚を覚えているわ――此れが歓喜って言うものなの?」

「お前がそう感じてるならそうなんだろう?
 ふ……如何やらお前は、俺が本気を出すに値する相手に成長してくれたらしい。」

明らかに、以前とは違うセクスドゥムに、稼津斗も笑みを漏らし、そして内なる力を解放する事を決める。
気が高まり、稼津斗の纏う稲妻オーラがそのスパークを強くする。

「お前の望みに俺の本気で応えるとしよう……覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


――ドゴォォォォォォォォォォォン!!!


「だが、今度の俺は少し強いぞ?」

気が弾け、現れたのはXXV状態の稼津斗。
だが、殺意の波動と暗黒パワーを完全に取り込み制御した事で纏うオーラに闇色が混じり、稲妻オーラの他に黒炎のオーラを纏っている。

最強の闘志の降臨!
だが、其れを目にしても尚セクスドゥムの顔から笑みは消えて居なかった――まるで、やっと其れになってくれたとばかりに…








――――――








そして、ネギもまた自身の十八番の『雷天大壮』を発動していた。
1001本の魔法の矢で追撃し、更に同数の矢を練り込んだ拳での『雷華崩拳』を仕掛けたが、其れはフェイトの石化の邪眼で止められてしまった。

更に石化の邪眼の連続攻撃に、間合いを離さざるを得なくなった所に、極大の石の息吹が炸裂!
余りにも巨大なそれを回避不能と判断したネギは、雷の暴風で其れを吹き飛ばしたのだ。

だが、其処で終わらず今度は千刃黒耀剣!
千の刃を高速の中国拳法で全て叩き割ったその先には、千刃黒耀剣を上回る物量の『万象貫く黒杭の円環』が!

此れは幾ら何でも凌ぎきれない――ならば如何するか?
答えは簡単、発射される前に術者を潰して魔法をキャンセルさえればいい。

其れを行うべく雷天大壮を発動し、雷速ラッシュを仕掛けたのだ。
そして効果は抜群!

雷速ボディブローから、肘打ち、そして裏拳!
吹き飛んだところにこれまた、今度は助走付の雷速ボディブローが炸裂し、フェイトの身体は祭壇の下層部分に大激突!


――この重さ…5とは比べるべくもない。
「くくく……ははははは!!」


――ガキィィン!!


笑い声を上げたかと思えば、何と更なる追撃をして来たネギに渾身のカウンター!此れは効いただろう。
そのカウンターを喰らいながらも即座に体勢を立て直したネギも大したものだが。

「ネギ君、その技への対策は君の師匠が全国ネットで公開済みだろう?
 ダメだよネギ君、この戦いに出し惜しみは無しだ。」

「え?見てたの?

如何やら拳闘大会の準決勝は確りと視聴していたらしい――寧ろそれに驚きだ。

だが――


――
解放!固定!!掌握!!!術式装填…雷天双壮!!!!
「此れで満足か、フェイト?」

見られていたなら別に良い、もとより何れは出す心算だった技なのだから。

「大いに満足だよネギ君。
 かの、J・ラカンすら対応しきれなかった君の独自魔法――見事だ、僕からも称賛を贈ろう。」

――いつもは無表情な君が…今日は良く笑うじゃないか。」

賞賛の言葉を贈るフェイトの横に、ネギが音もなく立つ――雷天双壮のスピードがあればこそ出来る事だ。

「楽しいからだよネギ君……僕にとっては、君との戦いこそが唯一の望みだった。」

「唯一?」


――ガキィィン!!


再び激突!
ネギは断罪の剣で、フェイトは石の巨剣で鍔迫り合い状態に!どちらも一歩も動かない。

「唯一だって?
 君の僕に対する評価が其処まで高かったとは意外だな?…なら応えようじゃないかフェイト!!」

「フ……さぁ、見せて貰おうか?君の全てを!!」




魔法世界強制リライトまで、残り15分――













 To Be Continued…