「アカン…ウチの東風ノ檜扇と南風ノ末廣が全く効果ないわ……手足のひび割れみたいのも治らんし。
 何より2人とも体温がめっちゃ低くて呼吸も鼓動も弱い、まるで仮死状態や……」

石膏像のようになってしまった稼津斗とネギの治療を試みた木乃香の意見が此れだ。
略万能とも言える木乃香の治癒能力をもってしても治せないとなると、2人の治癒は現段階では不可能と見て良いだろう。

ただ、契約カードが生きている以上、稼津斗もネギも死んでしまったと言う訳では無いようだが。


「恐らく、御2人とも闇に飲まれる寸前で意識が踏みとどまり、危うい均衡を保っているのだと思います…」

「下手に動かすのは禁物か…」

その稼津斗とネギの攻撃を受けた栞とイクサも傷はすっかり治っている……流石にダメージを受けた事による消耗までは回復していないようだが…

「しかしこの土壇場で稼津斗殿とネギ坊主がこのような事になるとは…」

だが状況は一転して最悪レベルに悪くなってしまった。
蒼き翼のトップ2である稼津斗とネギが行動不能になり、戦力の大幅ダウンは否めない。

其れでもイクサがいるが、瞬獄殺のダメージが残る身体では100%の力の発揮は望めないだろう。
無論全員で掛かればフェイトとセクスドゥムを倒す事はさして難しくないが、稼津斗とネギが相手をするよりも時間が掛かるのは否めないのだ。

「前にやったみたく、ネギ君の手を握ってあげたら如何かな?
 稼津斗先生の方は、亜子達が握ってあげれば多分同じ効果が期待できると思うし…」

「まき絵殿…確かにそれが最も望みのある手段かもしれぬ…」

「けど、其れでも先生達が何時回復するかは…そもそも回復するかどうかも分からねぇって事か…」


回復させる手段がないと言う訳でも無いようだが、それでも回復するかどうかは全く分からない、正に運任せの状態であった。











ネギま Story Of XX 120時間目
『逆境への最大反抗』











更に、2人が戦闘不能になっても、墓所での戦闘が終わったわけではない。
未だ刹那が月詠と戦闘を行っているのだ。

「そうだ、刹那さんは!?」

「うむ…まだ戦っているアルな…あの危ない眼鏡女と。」

「えっと…助けに行かなくていいの?」

「必要ないで…せっちゃんやったら絶対大丈夫や…何があっても負ける事なんてあらへんから…ウチはそう信じてる。」

本来ならば助太刀に入るべきだろうが、木乃香がこう言うのであれば、逆に助太刀は刹那を信じていない事になるだろう。
ならば月詠は刹那に任せ、此方は現状をどうするかを考えるべきだ。

「…栞、貴様なぜその少年を…サウザントマスターの息子を助けたのだ?」

が、其処に横やりを入れて来たのは焔。



いや、焔だけではない。
環と暦を目を覚まし、蒼き翼の面々と対峙する。

「…懲りねーねアンタ等も…まだやるっての?」

ともすれば戦闘になりかねない状況故に、裕奈はキアー・ストレイトのブレードの切っ先を焔達に向けて牽制する。
戦闘になれば、先ず負けないのは既に実証済みだからこそ出来る事だろう。

尤も焔達にもこの場で蒼き翼と戦う気はない――勝てない事は嫌でも分からされてしまったのだから。
彼女達が聞きたいのは栞の行ったことについてだ。

「姫巫女の替え玉とガキ共の監視がお前の指名だった筈…其れなのになぜだ!!」

「其れは今から話しますわ焔…」

今にも炎を吹き出しそうな焔を前にして、しかし栞は冷静そのものだ。
尤も、栞が何者であるか知らないまき絵は盛大に頭の上に『?』を発生させているのだが…

「私達の目的は何です?この世界の『リライト』でしたわね?
 この20年来、フェイト様達がこの計画を急いでいたのは『魔法世界の崩壊』が目前に迫っていたからです。
 ですが…其れを防ぐ手立てがあるとしたらどうです?」

「其れは聞いた!!
 ふざけた話だ!所詮は子供と、のうのうと生きて来た者が考え出した机上の空論、口からの出任せだろうが!!」

「そーだ!」

「そうにゃ!!」


計画の無用さを訴える栞だが、その言葉は届かない。
栞と違い、焔達はフェイトから『自由行動』の権利を与えられていないせいもあるだろうが、兎に角聞く耳を持たないとはこの事だろう。

だが、だからと言って栞だって退く気はない。

「出任せではありませんわ!
 ネギさんと稼津斗さんの計画は必ず成功しますわ…1人の犠牲も出す事なく安全に!
 冷静になって考えて焔……先ずは魔法世界の崩壊を止めて魔法世界を安定化させる…そうしなければ私達の様な戦災孤児の真の救済は出来ないわ。」

「!!!」

魔法世界の崩壊を止めなければ、真なる救済は有り得ないと訴える。
此れも稼津斗とネギと話す機会が有ったからだろう……栞は『仮初の幸福』など意味のないまやかしだと考えるようになっていたのだ。

「ふ…ふざけるなよ!!認められるかそんなモノ!!!
 何の苦労も知らないお気楽者共が考え出した代替案など…認められる筈がないだろう!!!」

―――!!お気楽者などではありませんわ!ネギさんも…そして稼津斗さんも!!」

其れでも受け入れようとはしない焔に、栞が思わず声を荒げた。
いや、稼津斗とネギの事を知りもしないで発せられた焔の一言に堪忍袋の緒が切れたのかもしれない。

楓さん、稼津斗さんの事を話しても…?

構わぬよ…話したところで信じるかどうかは分からぬが…

稼津斗の秘密について話して良いモノかと、楓に念話で聞けば、答えは是。
ならばと、一呼吸置き…

「焔、暦、環……魔法世界の崩壊は直ぐそこまで来ているわ…けど、貴女達は滅びてしまった世界を想像できますか?
 自分以外の全てが敵と言う世界で500年も生きると言う地獄が想像できますか?」

「「「?」」」

「私達は確かに戦災孤児として、悲惨な世界を知っていますが、それでもフェイト様に救われましたわ。
 故に本当の滅びと地獄は体験しないで済みましたわ……けれど、稼津斗さんは今言った地獄を体験された人なの…信じるかどうか分からないけれど…」

其れを皮切りに、栞は稼津斗から聞いた事を全て話した。
稼津斗が平行世界の存在である事。
その平行世界は既に滅びてしまっている事。
その世界で、稼津斗はたった1人で500年間も戦い続けていた事。
そして、稼津斗はその世界で文字通り全てを失ってしまった事……全てを話した。

「人であることを奪われ、家族も友も失い、仲間も居ない状態で500年……想像もできませんわ私には…
 其れにネギさんだって、物心つく前から親は無く、幼い頃に村を焼かれ……戦争の影響で村や家族を失った私達と変わりませんわ。
 その2人が真摯にこの世界を救おうと考えた『リライト』に変わる案を、頭から否定するんですか焔!!
 其れでは大戦後のごたごたに紛れて、私達から家族や住む場所を奪った連中とやっている事は何ら変わりませんわよ!!
 焔、暦、環……私は、ネギさんと稼津斗さんを信じてみる心算です。」

「栞……貴様、裏切る心算か!!!」

其れでも届かなかった。
確かに栞のした事は焔達からすれば『裏切り』と取れる行動かもしれない――敵方の考えを信じてみると言うのだから。
其処だけを捉えて焔は激昂し、身体から炎が揺らめいている。

「待て焔。戦う必要はない…我々の勝ちだ。」

今にも飛び掛からん勢いだった焔を制したのはデュナミスだ。
半身を失って、それでも自分達の勝利だと言うのは一体どういう事なのか?

余りにも解せない物言いに蒼き翼の面々も『?』と言った感じだ。

「ふ…堕とし切れなかったのは残念だが、何れにせよ彼等はもう使い物にはならない――君達は我々に倒する切り札を失った。」

「な〜る…稼津君とネギ君が戦闘不能だから私等の負けって?
 確かに私等は稼津君には勝てないし、雷天大壮使ったネギ君を相手にするのはちっときついけど、それでもフェイト達には負ける気はないよ?」

「テルティウムとセクスドゥムの2人が、その2人と戦う事を前提に戦闘力の再調整をされていると言ってもかな?」

「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」

理由はフェイトとセクスドゥム、2人のアーウェルンクスに在った。
フェイトもセクスドゥムも、修行や鍛錬をせずに瞬間的に強さを手に入れる事が出来るのだ。

無論下地が薄いだけに、真なる強者との戦いにはやや向かない部分があるのだが、其れを差し引いても反則的な物であるのは間違いない。
そして、今その方法でフェイトは闇魔法装填状態のネギと、セクスドゥムは稼津斗と同等レベルになって居ると言うのだ。


フェイトの方はまだ何とかなる。
闇魔法装填状態のネギと同レベルと言うのは確かに厄介だが、稼津斗のパートナー達と小太郎が力を合わせれば勝つ事は難しくないから。

だが、正直セクスドゥムの方は絶望的だ。
如何に貼り付けた強さと言えど、稼津斗と同レベルなど想像もしたくない。

もしも本当にそのレベルにまで強さが引き上げられているならば、この面子ではどうしようもないだろう。
更に、唯一稼津斗レベルとタイマンで互角の勝負が出来るイクサが万全でないと言うのも痛い点だ。

「黄昏の姫巫女と、最後の鍵は宮殿最奥部にてテルティウムとセクスドゥムに守られ、最後の儀式は発動し、あと70分程で我等の計画は成る。
 超強化されたアーウェルンクスシリーズには、その2人でなければ対抗し得ないであろう。
 フフフ…フフハハハ、諸君等は失敗した!!私1人とその2人が引き換えならば安いモノだ、寧ろ釣りが来る!
 フフフハハハハハハハハッハハハハハハ!!!今回こそは我々の勝ちだ!!誰が如何足掻こうともな!!」

勝利を確信しているのだろう、デュナミスは高笑いし意気揚々と言ったところだ。


――ミシィ!!


むぼべぇ!?

が、その顔面に古菲のアーティファクトが炸裂した。
高笑いで大口を開けていた横っ面に一発、此れは痛い。

上だけのくせにエラそう言うなアル。

「デュナミス様に何するか貴様ーーーー!!!」

焔が何か叫んでいるが、其れは無視……取り敢えず煩かったのでデュナミスの事を黙らせただけなのだから――物理的に。


とは言っても状況が好転するわけではない。
残り時間は70分…1時間10分しかない上に、土壇場でラスボスが超強化と来ている上に此方は戦力大幅ダウンなのだ。

だがそれでも…

「それでも…」

「うん、それでも…」

「それでも、か……良いんじゃねぇか?女子中学生が悪の組織相手に大立ち回りってのもさ。」

「うむ…行こう!此処で諦める訳には行かぬでござる!!」

「うむ!」

「「「「「「「おーーーーー!!」」」」」」」」

それでもこのメンバーは諦めない。
状況は悪いが其れでも勝率は0ではないのだ――諦める理由など何処にもない。


「ふむ…では木乃香殿は引き続き稼津斗殿とネギ坊主の回復を。」

「はいな!」

「まぁ、私もこっち残るわ……戦場に出ても役に立ちそうにゃねぇからな。回復の手伝いでもしながらバックアップに回らせてもらうぜ。」

とことん抗うとなれば、即刻行動開始。
取り敢えずは戦闘メンバーが最優先で向かうべきだろう。

「さて、残るはおぬし等の処分にござるが…」

「!……やるか!?」

其れとは別に焔達の事も有る。
亜子の魔法薬で危険ドーピングの副作用は消え去ったが、其れで逆に元気になっているようだ。

「うむ…先程の戦いでおぬし等の力量は分かった。
 デュナミス殿がリタイアした以上、おぬし等は敵ではない……時間もないゆえに、やるとなったら全力で叩き潰すでござる。」

「なっ……!!」

だが、だからと言って楓達を止められる筈もない――事実、先程の戦闘では完膚なきまでに叩きのめされたのだから。

「その上でデュナミス殿には最上級の魔物相当の封印を受けて頂こう。」

「ふ……もう手は出さぬよ。不戦を強制契約してくれても良い――観劇させてくれないか?諸君等の足掻くさまを。」

しかしデュナミスは余裕の態度を崩さない。
状況は覆ることは無いと高を括っているのか、以前に市街地でフェイトが落としていった魔道具と同じ物を取り出して不戦の強制契約まで言い出す始末だ。

「…よかろう…だが、契約具は此方の物を使わせてもらうでござるよ。」

「ふふ…慎重だな。」

念には念を、契約具は自分達の物を使うのは、まぁ当然の事だろう。
兎に角これにてデュナミスは身体が再生しようとも蒼き翼の面々と戦う事は出来なくなったわけだ。


「みなしゃ〜〜〜ん!」

状況はどうなってますか?

其処に上層に居たさよと、船で待機していたアクアが駆けつけて来た。
さよは上層で起きている事の伝達で、アクアは使い魔契約でネギと繋がっている事により、ネギの異変を感じ取って来たのだろう。

って、嫌な予感が当たってしまいました…ご主人、何と言う姿に…!!



・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



なるほど、中々に最悪な状況ですね……この土壇場でご主人と稼津斗さんがこの様な事になってしまうとは…

「しかもアスナの奴はフェイト達に連れてかれたってか…」

「は、はい。フェイトさんが指を鳴らした瞬間に消えたとか…」

互いの持つ情報を交換し、更に自体は悪いと認識する。
だが、まだ可能性はある以上諦めはしないのだが……そうなると可成り練り込んだ作戦が必要になるだろう。


状況を整理しましょう。
 ご主人と稼津斗さんが倒したと言う、其処の上半身だけのは、20年前の大戦の生き残りで組織の頭脳かつ計画立案者…つまりは実質トップですね?


「うむ…まぁ、おおむね間違ってはいないよスライム娘よ。」

其れを行動不能にし、更に不戦の強制契約までさせたのは大きいですね。
 となると残る敵はフェイトとセクスドゥムの2名と言う事……になるのでしょうか栞さん?


「いえ、恐らくは調が儀式のオペレーターとしてフェイト様達と一緒に居る筈です。
 其れともう1人、『墓所の主』なる人物が……こちらは小柄な少女の様でもあり老婆の様でもある、何とも不思議な人物なのですが…」

こう言う時、元々敵側だった栞の存在は実にありがたい。
蒼き翼の面々が知らない情報がポンポン出て来るのだから……最早栞は蒼き翼の一員であると言っても過言ではないかもしれない。

「まだそんな奴が……だがそれでも数は少ねぇよ、4人だしな。
 だがそうなると儀式とやらが行われる場所が何処なのか、其処は現状でどうなってんのかが大事になって来る…宮崎。」

「はい!…デュナミスさん、アスナさんと最後の鍵の在処、そしてその周囲の状況はどうなっていますか?」

更に現状を詳細に知るとなればのどかの出番だ。
相手の考えを尽く読む事が出来るのどかの前に幾ら嘘を並び立てても意味はないのだ。

「ふ…ミヤザキ・ノドカか…矢張り危険な能力だな君の力は…総督府ではまず君を消しておくべきだったか…
 だが、心を読まれると言うのは些か不愉快なのでな、私から話してやろう――私を倒したサービスとしてな。」

其の力知っているデュナミスは、読まれるのは不愉快だからと自ら話す。
まぁ、それでも嘘を言っているかどうかを確認する為にのどかに思考はバッチリ読まれているのだが…

「20年前と違い、魔力溜まりの中心はこの墓所ではない。
 よって儀式の祭壇は、墓所上層の外部に設置されている……この場所だな。」

光学スクリーンまで起動させて説明していく……勝利を確信しているからこそ出来る事なのだろう。

「祭壇中央に黄昏の姫巫女、幾分離れたところに最後の鍵だ。」

「アスナと最後の鍵……目算だが200mくらいは離れてるみてえだな?…よし!」

その余裕の情報公開も今はありがたい事だ。
千雨とアクアは何かに合点したように顔を見合わせ頷くと、改めて作戦会議を開始する。

「先ずは確認だ、今の私等の戦力でフェイト達を倒すのは難しいが…」

最大限ぶっちゃけて、彼等を倒す必要は全くありません。アスナさんと最後の鍵を手に入れればそれでOKです。

状況的にはフェイトとセクスドゥムの撃破は困難だろう。
だが、アクアの言う通り倒す必要は全く無い――アスナの奪還と最後の鍵の奪取が出来ればそれでいいのだ。

「……あ、村上のアーティファクト。」

其れでアキラは気付いたのだろう、如何言う作戦であるかを。

はい…『孤独な黒子』の能力は完全ステルス。
 さよさんの話から、フェイト達にも効果があるのは実証済みでしょう。

「なる〜〜…つまり夏美ちんのスーパーステルスでギリギリまで近づいて、アスナと鍵の両方GET!
 でもって速攻ドロンのトンズラ決め込むって事ね?」

「そういう事になるんだが、そうなると村上のアーティファクトは作戦の要になるからな、ステルス性能がどれくらいかってのが問題になる。
 (A)物理的に透明になる事で敵の目に映らない。
 (B)姿は消えていないがアーティファクトを装着している限り敵の目に映らない。
 最高なのは(C)、AかBの能力に加えて、アーティファクトを付けた瞬間に相手が村上の存在を忘れちまう能力なんだが…」

作戦の大筋は決まっているが、そうなると今度は要となる夏美のアーティファクトの性能が重要になって来る。
その性能如何で、作戦の内容が完全決定されると言ってもいいのだ。

「そこまで便利じゃないと思うよ。皆でいろいろ試したんだけどね。
 たぶん性能的には(B)が一番近いかな?うん、相手の盲点に入り込むって感じ…視覚、聴覚、嗅覚、あらゆる盲点だけど。」

「となると、アスナと鍵を奪って姿を消しても、其処に透明人間がいる事はバレバレってこったな?」

「大呪文で一帯を吹き飛ばされれば一巻の終わりか……連中を引き離す必要があるな。」

「うむ…囮役が必要でござるが…セクスドゥムの相手はイクサ殿に頼むでござる。
 瞬獄殺のダメージが残っている故に酷だろうが、イクサ殿でなければ稼津斗どのレベルの敵は相手に出来ぬでござるからな。」

「なに、足止めをする程度ならなんとかなるさ。」

ドンドン作戦は構築されていく。
どうやら、囮役がフェイトとセクスドゥムを引き付け、その隙に――と言う事になりそうだ。

だが…

「ちょお待って?
 確かアスナの力は『魔法をダメにする』力やったよね?…せやったらその力が高まってる祭壇周辺は大丈夫なんやろか?
 アスナの力で夏美のアーティファクトの能力が薄れたりはせぇへんの?」

亜子が問題を提起してくれた。
確かにそうなのだ――アスナの『完全魔法無効能力』が儀式の力で増大している今、祭壇中心部付近は魔法が一切効かないと見て良いだろう。

そしてその範囲が不明となれば近づくのは自殺行為以外の何物でもない。
だからと言って現状ではこれ以外に作戦はないのだ。


『すみません、上層のユエです。話は聞いたです。
 今の件、私なら如何にか出来るかもしれません
――対処はそれほど難しくないです。』

其れでも仲間はまだ居る。
上層のユエからの通信で、一気に問題は何とかなりそうな状況に。

『楓姉ちゃん、フェイトのヤローの方は俺が引き受けるで?リインがセクスドゥムの相手をするならフェイトは俺や。
 陽動の間にアスナ姉ちゃんを祭壇から引き剥がせるのは楓姉ちゃんしかおらへんし、その場からの離脱はのどか姉ちゃんの瞬間移動やないと無理や。
 のどか姉ちゃん、夏美姉ちゃんをたのむで…俺の大切な人や。』

「小太郎…うむ、承知した!」

「任せてください小太郎君!」

更に小太郎がフェイトの相手を買って出てくれた。
確かにネギと同レベルにある小太郎ならば、フェイトの相手もこなせるだろう。

「…200m…この鍵は如何するの?」

「え?まぁ其れは何とか…」

「私なら巧くやれると思うよ?私も行く。」

加えてまき絵まで参戦表明!
確かにまき絵のアーティファクトのリボンならば、相手の間合い外から最後の鍵を奪取する事も難しくないだろう。

「危険かもしれないけど夏美ちゃんも行くんでしょ?だったら私達が行っても良いじゃん…適材適所だよ!」

「だね…戦力は有って困る訳じゃないから私も行くよ!」

裕奈も参戦だ。
危険が如何とか言って居られるか、状況は押し迫っているのだ――動けるモノは全員だ。

『下層の茶々丸です。
 陽動作戦ならば私も参加します。私の参加で陽動の成功率は飛躍的にアップする筈ですから。』

挙句には下層で待機している茶々丸まで参戦表明。
正に総力戦だ。

『ネギ先生と稼津斗先生は大丈夫です……危険な状態ではありますが必ず回復されます。
 お2人が作り出してくれたこの状況
――我々の手でハッピーエンドに導きましょう。』

「うむ…そうでござるな!其れでは行くか!!」

作戦は決まった。
後は其れを成すだけである。



この時点で、魔法世界リライトまで、あと63分…








――――――








儀式の祭壇では大きな力が膨れ上がっていた。

祭壇中央のアスナの力を、最後の鍵が増幅しているのだろう――儀式は順調のようだ。


「これで…私達の役目が一つ終わるわ…」

「そうだね…残る目的は『彼』の復活か…」













 To Be Continued…